女装して入学することになった暗殺者によるIS学園生活 作:灰崎 快人
第51話「お誘いと話」
八月、IS学園は遅めの夏休みに入る。そのせいで、世界中からやってきた学園生は現在ほぼ半分が規制中。シャルロットやセシリア、ラウラもこの中に含まれていた。
夏休みを満喫したいところであるがそうはいかない。夏の臨海学校によって起きた事件による無断出撃、この立案者である俺にはほか専用機持ちよりも重い罰が与えられていた。
その為、夏休みを満喫どころかそもそも学園から出られない。出られたとしても夏休み後半の数週間程度しか外出できないだろう。
「レポートはあと十数枚と言ったところか。まあ思うところもあったし、十数枚で済むのであれば安いものだろう」
手持ちのパソコンを起動し、自身のどこに落ち度があったのかなど片っ端から記載していく。
あの時もしもの事があれば俺が責任を取れるのか?と聞かれれば限度は必ずある。それに専用機持ちであるだけで、代表候補生でもなんでもない俺に出来ることは限られている。
後ろ盾もない状況。下手をした場合最悪退学、そして監視が付くことになるのは間違いないだろう。それ以上の可能性も十分あるのだが……
(まだ軽くて助かったと言ったところだろうか?あのディスクが役に立って良かった)
専用機には稼働データ、戦闘データを記録するためにフロッピーディスクを挿入することができるようになっている。
これによりISのデータを戦いの中で記録することが可能になっている、《銀の福音》のデータが記録されていたフロッピーディスクを俺が所持していたのはこれが理由だった。
これによりナターシャ・ファイルスから処分を軽くして欲しいと、声を上げてもらえたことが幸いしたようだ。
(これで借りは返した。とでも言いそうだが、この程度で返せると思うなよ?)
別にあのフロッピーディスクにしか《銀の福音》のデータが入っているとは一言もいっていない。ISを〘一極限定モード〙で展開し一枚のフロッピーディスクを取り出す。
そのディスクには《銀の福音》と記載されていた。
他にも《白式》《紅椿》《ブルー・ティアーズ》《甲龍》《ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ》《シュヴァルツェア・レーゲン》。
その他には《サイレント・ゼフィルス》《アラクネ》《ヘル・バウンドVer2.5》などデータが記録されたフロッピーディスクが保管されている。
もちろん量産機も例外ではない。
ただし後者の三機に関しては戦闘データは存在せず、スペック値のみである。
「よし、このくらいで休憩するか……」
パソコンから一旦手を離し冷蔵庫から麦茶を取り出す。暑い夏の季節にはこれが1番だ。よくテレビのCMでも流れてるだろ?「健康ミネラル麦茶♪」って、後は最近見なくなったが「大人が飲んだら逮捕だぞ♡」とか流れてた炭酸飲料水などがあった気がしたな。
なんか噂ではコンプラ?か露出?で批判が殺到したのだとか、正直気にしないので普通に流せば良いと思うのにな。
ただし詐欺メール、お前は許さん。なにが「ハッピーメール」「Amaz〇nからのお知らせ」「東京電力からのお知らせ」「お祈りメール」だ。
詐欺集団は一人の居らず根絶やしにしてやるからな、覚悟しとけよ。
(って……なにを思ってるんだ俺は)
渇いた喉を潤すように麦茶が体内に浸透していく。今頃千冬や山田先生は色々な書類などを片付けているのだろう。教師というのも大変だな。
コンコン。誰かが部屋を訪ねてきたのか、扉が数回ノックされる。ラウラによって部屋の鍵は破壊されたままであり、誰でもこの部屋に侵入することができる様になっている。しかしそれを教えるような事はしない。
教えてしまったが最後、面倒なことが色々と起きてしまうだろう。さっさと千冬に報告して直して貰うとしよう。
「開いてるよ~」
扉の向こうにいる誰かに声をかける。それを聞いたであろう人物はゆっくりと扉を開けてこちらの方に入ってくる。
「失礼するぞ千春」
「お邪魔します~」
訪問者が一人だと思っていたが実際は二人だったようだ。それにこの声……どうして二人がここに来たんだ?
「千冬に山田先生、どうかしたのか?」
クールビズのスーツに身を包んだ二人は、俺の部屋に入るなりリラックスした様子で予備のイスに腰をかける。
表情からは少し疲れが見て取れたので、なんとなく二人の前に冷えた麦茶の入ったグラスを用意しておいた。
「なに、お前の始末書がどこまで済んだのか、確認しに来ただけだ」
「その割には随分とリラックスしてるな?」
「お前の部屋は本来であれば二人部屋、そこを教員の部屋と同じ一人部屋として改装している。広々と使えて良いだろう?」
確かに一人部屋になったことで気にすることがあまりなくなったのは事実、リラックス出来る空間になっていることは確かだ。
しかしこの部屋の鍵は破壊されているのでそこまで安心できるのかと言われれば、答えはノー。
「そうなんだけどな……ラウラにこの部屋の鍵破壊されているからそこまで安心できないんだよな」
「……なんでもっと早く言ってくれないんですか!?」
「数日内には直すように申請しておく。さてお前のはどこまで進んだ?」
「あと十数枚程度だ。最初は五十枚と聞いて面倒だったが案外楽なものだな」
「そうか。それでお前はそれが終わったら夏休みはどこか出かけるのか?」
出かけるか……考えたことなかったな。正直行きたいところもない。やることがあるとすればISの設定を見直すくらいだろう。あの戦闘後〘デスティニー〙はオーバーヒートを引き起こしてしまい、システムダウンを起こした結果オーバーホールが必須状態になってしまっている。
それにあの時の《ノワール》自体、予備のパーツで組み上げた機体であるため、高速飛行をしながら設定を調整するといった荒技をしていた。
全体的に調整が足りていない状況。またなにかあったら面倒なのでこれだけはなんとかしておきたい。
「ISのメンテナンスかな、あの戦闘でISも〘システム〙もクタクタになってしまったからな。後者に至っては駆動系とか諸々ダメになってるから、最悪破棄も考えられるかな……」
一枚のフロッピーディスクをパソコンに挿入し《銀の福音》と戦闘した際のデータを表示する。
「あの時のISは調整もほとんど済んでなかったしな、それに初稼働ということもあって〘デスティニー〙自体の調整が効かない。ぶっつけ本番で使用しながらコントロール・キーボードを表示して書き換えていたからな」
「随分な荒技だな。まあいい、流石にIS学園に籠もっているのも暇だろう?そこでだ、私から一つ提案をしてやろう」
そういって千冬が取り出したのは三枚のチケットだった。
「……これは?」
「知らないのも無理はない。これは今月出来たばかりのウオーターワールドだ」
「前売り券は今月分が完売していて、当日券も開場二時間待ちになるほどの人気ぶりなんですよ」
「へー」
ウオーターワールド。その言葉を聞いただけでなんとなく嫌な予感がする。
「じゃあ楽しんできな」
「何のために三枚あると思ってるんだ?まったく……」
「黒咲さんも一緒に行きませんか?臨海学校の時とは違って女性用水着を着る必要も無いと思いますし」
山田先生がなんとか俺を説得しようとしてくれている。しかし俺は正直申し訳ない気持ちなのだ。
「山田先生、確かにそれは魅力的な意見なんですけど……」
「けど?」
「俺、男用の水着も持ってなかったんですよ」
「……」
そう俺は男物の水着を一切所持していなかった。施設で水着の貸し出しを行っていれば、ウオーターワールドでありのままの姿で楽しむことが出来るだろう。
しかし、もしそれが無かった場合は大方想像がつく。
「あんまりこの水着、着たくないんですけどね」
そういってクローゼットから一着の水着を取り出す。
千冬との買い物の際に購入した露出の少ない水着、パンツタイプにラッシュガードという俺にはあっているであろう水着だった。
「まあ施設で借りることが出来たらその水着は使わなくて良いだろう、万が一のために持って行け」
「行くことは確定なのか?」
「当たり前だろ、このチケットはその為に取ったと言っても過言ではない」
「普段から苦労されている黒咲さんの事を思って、織斑先生がこっそり前売り券を購入したんですよね~」
そうだったのかと意外な物を見る目で千冬を見ていた。
チケットを取った理由をバラされた千冬は、少し頬を赤く染めて俺から視線を外していた。
「山田くん、余計なことを言うな」
「事実なのは否定しないんだな」
「……そうだな」
「──日時は?」
「っ!明日の土曜でどうだ?」
「それはまた急だな……まあ始末書方は終わるだろうから問題ない。二人は大丈夫なのか?」
「元々明日行こうって話だったので大丈夫です」
「俺が行くか行かないか、その確認だけか。待ち合わせは?流石に学園内だと俺が男である事がバレたり、面倒なのが付いてきたりするだろう」
「そうだな……ゲート前で待ち合わせはどうだ?」
「ゲート前か、待ち合わせ時間はどうする?午前中の方が楽しめる。だろ?」
「そうですね、では十時頃でどうでしょう?」
「始末書の提出は明後日で良いですか?」
「夏休み中に提出して頂ければ構いませんよ。それに他専用機持ち方が量は少ないのにシャルロットさんとラウラさん以外出してくれてませんからね」
「まあ、セシリアは帰省中ですし無理もないかと。一夏と箒、鈴に関してはわからんな」
「千冬達はなにしてたんだ?」
「私達は溜まりに溜まった一学期の総まとめをしてましたね、今年はイレギュラーが多すぎましたら大変でしたよ……」
『ISを扱える男子』に始まり、異常な数の専用機持ち、頻発するなぞの事件、さらには国際IS委員会からの説明要求と織斑一夏の身柄引き渡し命令、《白式》第二形態によるデータ取りなどいろんな事があったようだ。その中には当然千春の事も含まれている。
織斑一夏、篠ノ之箒、黒咲千春。
この三名は『代表候補生ではないのに専用機持ち』といった困った事態。しかも黒咲と織斑はともかく、箒のISに至っては帰属する国家──つまり登録国籍がない。
実は黒咲のISも登録国籍はない、しかし完全偽造された資料やデータによって問題を解消している。
これは実際かなり不味いのだ。
これはつまり『全ての国が自らの専用操縦者として招くことができる上に、ISもオマケでついてくる』ということ。
どの国も第四世代型ISは喉かた手が出るほど欲しい。この世に一機しか存在しないその機体は、国家の軍事力を大きく変えてしまうのだから当然だ。
さらに第四世代型IS《紅椿》は篠ノ之束博士のお手製、それが知られてしまえば力尽くでも手に入れようとする国は山ほどあるだろう。
「《紅椿》か……まぁそんなことでもしようものなら、俺はその国を滅ぼすけどな」
「そんな簡単に言えるのは束くらいだと思っていたんだが……」
「具体的に聞いても良いですか?」
「まず《紅椿》の存在が知られれば、間違いなく力尽くでも手に入れようとする国は必ず現れる。なにせ篠ノ之束博士お手製の第四世代型、狙われない理由がない。その為に俺は箒が《紅椿》を授与される前日に束に一つだけシステムを追加して貰うことにした」
「システムですか?」
「〘Extinction Destruction〙通称〘ED〙。これは篠ノ之箒以外、もしくは許可が下りていない人物がISに搭乗使用とした際に発動するシステム。これが発動したが最後《紅椿》は光の粒子となって消滅する」
その言葉を聞いてとても驚いた。それもそうだろう。
現在世界唯一の第四世代型ISがそのシステムによって消えてしまう可能性を秘めているのだから。
「で、でも機体が消えてしまうだけでデータとかはコアに──」
「このシステムによって《紅椿》は使用しているコアも含めて消滅します。流出なんてさせませんよ」
「……それでお前がその国を滅ぼすと言っていたが、実際にはどうするつもりだ?」
「それについてだが、今はまだ試作段階の機能を追加しようとしている。システム名は〘EXAM〙、まだ試験段階という意味合いも込めた名前だ。それにまだOSも未完成、完成したとしてもそこからリミッターや発動条件とか設定しないといけないしな。またオーバーヒートしてしまっては面倒だからな」
「そのシステムが使用されないことを祈るとしよう」
「まあ俺個人の意見だが《紅椿》は消滅しても良いんだよ」
「ど、どうしてです?」
「そもそもあのISは《白式》とのコンビ運用を前提として開発された機体、エネルギーを消滅させる《白式》に増大させる《紅椿》。お互いを停止させる抑止力としての意味合いもある。《紅椿》が消滅したら別の機体を用意すれば良い。それは《白式》にも言えたことなんだけどな。操縦者と機体データはあるし」
そう言って千春は二枚のフロッピーディスクを取り出す。ラベルにはそれぞれ《白式》《紅椿》と書かれている。正直言ってこの二機が強奪、消滅しても良いように別の機体を密かに計画しているしな。
「それが盗まれるとは考えないのか?」
「逆に盗んでみろだな。そんな事をしてしまえばこのフロッピーディスクは爆散、半径15㎞²を破壊する。自らの愚かな行為によって……な」
「お、恐ろしい代物なんですね」
「パソコンに入れてパスワードを解除する。それ以外の方法でこいつのデータを見なければ良いだけですよ」
淡々とそう言う千春に対して、私と真耶は冷や汗が止まらなかった。
パソコンには途中まで書かれている始末書、そしてその隅の方では小さい文字でこう書かれていた。
〘W,UC、B,Z、開発計画〙
〘データ採取の為の《ノワール》後継機開発計画〙
「ん?ナターシャに渡した際にパスワードは教えたのか?」
「裏面に暗号形式で記入しておいたよ、馬鹿じゃなきゃ解けるだろ」
「ちなみになんてパスワードなんですか?」
「《銀の福音》」
「「そのまま……」」
次の番外編
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おねショタ(無効票)
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1シャル&ラウラと千春(受け)
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2シャル&ラウラと千春(攻め)
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メス堕ち(無効票)(千春総受け)
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束と千春
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千冬と千春
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シャル&ラウラと千春
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一夏と千春
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オマケ(無効票)
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千春&箒「これは練習だから浮気じゃない」
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千春&セシリア&鈴「IS3分クッキング」