女装して入学することになった暗殺者によるIS学園生活 作:灰崎 快人
「随分と良い天気になったな」
朝十時、ウォーターワールドのゲート前にて千冬と真耶の姿を待つ千春がいた。
普段の服装とは異なり、しっかりと男物の服を着込み前髪を上げ後ろ髪を結んでいる。学園の生徒であっても今の千春には気がつけないだろう。
「千春さん~お待たせしました」
「山田先……山田さん、おはようございます」
いつものクセで山田先生と呼んでしまいそうになるのをぐっと堪え、上の名前である「山田さん」と呼ぶことにした。こうでもしなければバレてしまうからな。
「早かったな千春」
「二人もだろ?そんなに楽しみだったのかよ?」
真耶の後ろではサングラスをかけた千冬が立っていた。流石に織斑千冬ともなればプライベートも自由に過ごすことが出来ないのだろう。
しかしサングラスだけで変装したとは言えないのでは……?
「行くぞ」
「はいよ」
「楽しみですね~」
ウォーターワールドのチケットを受付に渡し、施設へと入場していく。その際に水着の貸し出しは可能なのか聞いたが、どうやらそのサービスはやっていなかったらしく、千春は再び女性用水着を着用することになった。
「凄い人の数だな」
「今月出来たばかりの新施設、人気が無い方がおかしいからな」
「水着の貸し出しがなかったのは残念でしたね」
ウォーターワールド内の施設を一望できる席に座りながら、どれから楽しんだものだろうかと三人で軽く話をしはじめる。正直言って楽しめそうなアトラクションは数多く、中にはジェットコースターや休憩地点である喫茶店などがあり、この施設内にいれば暇を持て余すと言ったことは無いだろう。
「とりあえず流れるプールから行ってみるか?」
「比較的のんびり出来るやつから、攻めていった方が良いかもしれませんね~」
「そうだな、いきなり激しいのは身体に辛いからな」
浮き輪を持って流れるプールの方へ向かう千春の後ろ姿は、普段の学生達となんら変わりなく自然と溶け込んでいた。
「本当に、女の子みたい……」
「そこが可愛らしいだろ?」
「そうですね」
「プールも案外悪くないものだな」
「楽しめているようでなによりです」
「誘って良かった」
千春は浮き輪の上に乗りながら、プールの流れに身を任せる。千冬と真耶はその浮き輪に片手を添えながら、同じように流れに身を任せていた。
ゆったりとした流れのプールの上で冷たい水を感じながら、完全に力の抜けている状態を見て千冬は少し微笑んだ。
「それにしても……IS学園生が多く感じるのは気のせいか?」
「夏休みですから、仕方ないですよね」
「そのおかげで千春は演じ分けをしないといけなくなったがな……それでも楽しめているのならよかった」
「千冬が誘ってくれたんだ、楽しまないわけには──「あ~黒咲さんだ~」のほほんさん」
バナナボートに乗った布仏、鷹月、相川、谷本がこちらにゆっくり向かってきていた。やっぱりこの施設内でIS学園生はよく見るな。
「お~い」
「織斑先生に山田先生も一緒だ!」
「二人とも綺麗な水着姿だ~」
「皆も楽しんでますか~?」
「「「「はーい」」」」
IS学園生でも問題無く楽しめる……千春とは違いしっかりとした十代女子であるわけで楽しめないわけがなかった。
ビィーッビィーッ!
「……なに?」
ガチャン!その音と共に多くの水が一気に放出される。
「ちょ、ちょっとまて!?まだ心の準備が──!!!」
「うわ──!?」
波に飲み込まれ千春が乗っていた浮き輪はひっくり返り、そのまま流されていく。
流されていく千春を必死に追いかける千冬は、波に飲み込まれた山田先生よりも千春の事を優先して救出を試みる。
しかし、あまりにも波の衝撃が大きく、三人まとめて流されるハメになってしまった。
「またね~」
「……」
波にもまれ、砂浜を模した地面に打ち上げられる。その様子は何処かで見たことある。
そうだなこの状況で曲を付けるのであれば「フリージア」などが最適だろう。
「ぶ、無事か!?」
「なんとか生きてる……山田先生は?」
「こっちも無事です。まさかあんなに波が強くなるとは思いもしませんでした」
三人とも髪は乱れ、千春は後ろ髪を結んでいた紐が失われていた。軽く水を飲んでしまったのか少し苦しそうにしていた。
「少し休憩するか?」
「い、いや気にするな。問題無い」
「この近くのアトラクションは……あのペア滑りコースですかね?」
周囲を見回し1番近くにあるアトラクションを探す真耶。ペア滑りコースがあると言われたが──
「いやこれ、一人用もあるぞ?」
「せっかくですし、ペアでどうですか?千冬さんと千春さんで」
「えぇ!?」
悪魔みたいな提案をしてくる真耶に少し引いてしまう、その反応に千冬が少し不貞腐れたような表情を後ろで作っていた。
「そうか、私ではなく山田くんと一緒が良いと、そういうことだな?」
「い、いやそうじゃないけど……」
「じゃあ決まりですね!」
どっちに転んでも結局やることには変わりない、大人しく二人でペア滑りコースに向かうのだった。
「それではペア滑りのご説明をいたします。まず後ろになる人はここに座ってください」
「私だな」
「そして前の方は足の間に座ってですね」
「は、はい」
千冬の足の間にゆっくりと腰を下ろす黒咲。
「こ、これでいいですか?」
「そうしたら、後ろの方は前の方の身体をぎゅっとするんです」
「こうか?」
「危ないのでしっかり抱きしめてあげてくださいね」
少し抱きしめる力が強くなった。こうしてみると本当に同年齢なのかと疑いたくなってしまう。背中に柔らかい感触を感じた黒咲は、少し頬を赤く染めてしまう。
「はい、いってらっしゃい~」
その言葉と共に、千冬は背中を押されゆっくりとウォータースライダーへと進んでいく。
「うわぁぁぁ!?!?」
「お、思っていたよりも速いな!?」
「ひゃぁ!?変なところ触るな!」
「こ、故意ではない!」
ドッバーン!!と大きな水しぶきを上げ二人がプールへと落ちる。
「……凄かったな」
「いろんな意味でハラハラした」
「よし今度は山田くんとやってこい」
「嘘でしょ……」
結局どちらが最初でも変わらなかったのかとうなだれながら、真耶が待つペア滑りコースに再び向かうのだった。
「それではペア滑りのご説明を致します。まず後ろの方が座ったあと、前の方は足の間に座ってください。そして後ろの方は前の方の身体をぎゅっと抱きしめてあげてください」
「うぅ、やっぱりなれない……」
「もう少し強く抱きしめると安全ですよ~」
「こうですね」
「うぁ……」
千冬よりも多く密着する真耶の胸の感触に、千春はさらに顔を真っ赤にさせる。
「いってらっしゃい~」
「「うわぁぁぁ!?!?」」
ドッボーン!!!再び水しぶきを上げる。水面から上がった真耶はウォータースライダーのスリリングを堪能していたのかとても和やかに、千春は色々と複雑そうな表情を浮かべていた。
「休憩させてくれ……」
「そろそろお昼ですしね、今日はゆったりしましょう」
「金は心配するな、今回は私のおごりだからな」
「……ごちそうさま」
プールから上がり、喫茶店の方へと向かう。道中、IS学園生から「織斑くん達も来てるよ~」と情報を仕入れた。
「あいつらも来てるのか……というか皆戻ってきていたのか」
「今頃一夏はハーレムだな」
「……それは千春さんも同じな気がしますけどね」
「俺はハーレムじゃないでしょ、というか教師と一緒なのにハーレムとか」
「年齢的には同じだがな?」
千冬の正論に何も答えることが出来なかった。
「……とりあえず織斑達と遭遇しないように堪能するとしよう」
「……そうだな、せっかくのオフが台無しになってしまえば困るからな」
「ふふっ」
「黒咲」さん~」
「こっちですよ」
時間もあっという間に夕方。ウォーターワールドにて縁日の祭りがあると言うことで、三人とも浴衣をレンタルして祭りを楽しむことにした。
千春は男だと言うことがバレないように気をつけながら、黒い浴衣に身を包んで屋台を見回っていた。
「まさか縁日だとは思わなかったですね、それにこの規模の祭りともなれば織斑くん達と遭遇しそうなものですね」
「だろうな、だが正直言って私は遭遇したくないな。こうしてアイツの浴衣姿を皆の前に晒したくないからな」
「……織斑先生って独占欲強いって言われません?」
「少なくとも言われたことは今のところ無いな」
そうですか……?と真耶が首をかしげながら千春の後をついて行く。
既に祭りを堪能しており、リンゴ飴片手にわたあめやベビーカステラを楽しんでいた。
さらに頭には黒い狐を模したお面が付けられている。
誰がどう見てもこの中で1番祭りを楽しんでいるのは千春だろう。
「リンゴ飴、悪くないな」
「なんやかんや楽しんでいるみたいだな?」
「久々の祭り、楽しまない理由がない」
「千春さんは日本のお祭りが久しぶりなんですか?」
「この学園に来る前に海外の方で生活してたので、日本の祭りは久しぶりなんです」
海外のお祭りもありましたけど……と苦笑いで話していることから、千春が海外でどんな生活をしていたのか容易に想像することが出来る。
きっと休みもろくにない仕事をしていたのだろう。IS学園での生活は黒咲にとって比較的楽なのか、それとも海外での生活よりも酷なものだろうか?
それは千春次第だろう。
「んっ、リンゴ飴食べる?」
少しかじったリンゴ飴を千冬に向ける。いいのか?と千冬が聞くと、こくりと頷きそのままリンゴ飴を千冬の口元へと近づける。
「はむっ……うむ、悪くないな」
「私もいただいても良いですか~?」
「どうぞ」
千冬に続いて真耶の方にもリンゴ飴を差し出す。
先ほどとは違い千冬がかじった跡がリンゴ飴に付けられていた。
「あ~ん、うん!美味しいですね~ありがとうございます」
「うん、あむっ」
真耶の口元から離れたリンゴ飴は、再び千春の口元へと戻った。
二人がかじったのを気にせず、その上からリンゴ飴をなめて堪能していた。千冬と真耶がそれに気づいているのにもかかわらず、それに全く気がつかない千春はそのまま二人の噛み後を上書きしていった。
「「「「「一夏~!」」」」」
「お、おう……」
遠くの方で織斑達の声が聞こえる、案外近くにいるんだな。
「合流しないように避けていきます?」
「そうしよう。山田くん仮に見つかったとしたら、私達は容赦なく山田くんを見捨てるからな。よろしく頼むぞ」
「た、頼まれても困りますよ~!」
ひえぇぇ~と声を上げながら、千春と千冬の後をついていった。
「綺麗……これなあに?」
「初めて見るのか?」
「これは金魚すくいって言うんだ」
「道具を使って金魚をすくうのよ」
そういって鈴はセシリアとシャルロットに金魚をすくう道具であるポイと金魚を入れるための容器を渡す。海外には金魚すくいといった文化はあまりないらしい。それはシャルロットが知らなくても無理ないだろう。
「面白そう!一夏僕に教えて!」
「わたくしにも!」
「わかったわかった、順番にな」
そう言って一夏が金魚が泳いでいる桶へと前のめりになりながら、実演を兼ねて説明を始める。
「こうやって──あっ……」
金魚を捕らえた一夏のポイだったが、その上で跳ねる金魚に耐えられず真ん中から大きく破れてしまった。
「……こうなったらゲームオーバーな」
「そ、そうなんですの」
「よ、よくわかった」
その後、シャルロット達は各個人で二匹の金魚を捕らえ手に入れることが出来た。
そんな中、金魚すくいをやらずただ金魚を眺めるラウラの姿がそこにはあった。
「可憐だ……」
その後も色々な屋台を見回り、祭りを楽しんでいく。
「オ、オクトパスを食べますの?」
「日本の伝統料理だぞ?」
「デビルフィッシュはちょっと……」
「美味しいわよ?ほら、ラウラ」
「ふむ……こはなかなか」
たこ焼きは流石に抵抗があったみたいだが、その後の綿あめやかき氷は比較的楽しんでいたので良かった。やっぱりタコはダメだな。
そうして気がつけば射的屋の前に立っていた。
「狙撃はわたくしの独壇場ですわ」
「それオモチャの銃なんだが──」
パンッ。コルク銃から発射された弾はペンギンを模した人形に当たり後ろへと墜とした。
「流石だなっ!」
「僕これ得意かも」
「まあ、私も軍で一通り射撃訓練受けてるしね」
パンッ。パンッ。二人のコルク銃からも弾が発射され標的に直撃する、ふらふらと揺れた標的はゆっくりと後ろの方へ倒れていく。
シャルロットは犬を模した人形、鈴はクマを模した人形を手にセシリアと取れた喜びを分かち合っていた。
「……」
「箒、射撃上手くなったか?」
「お前はどうなのだ?」
「俺は近接格闘型だし……」
「私もだ」
「だから射撃は下手でいい」
「……そうだな!」
パンッ。
「クソッ!」
「あ~……あれは無理だろ」
ラウラも射撃に挑戦していたが他三名とは異なりかなりの大物を狙っていた。巨大な招き猫のぬいぐるみ、それはラウラから放たれたコルク弾を受けてもビクともしなかった。
「落とす!」
パンッ。ペチン。勢いよく放たれたコルク弾は招き猫に通じず、無慈悲にもコルク弾ははじき返されてしまった。
「くぅ~~~っ!」
「援護するよ」
「今回だけね」
「仕方ありませんわね」
「うん!」
「なら私も!」
そう言って箒まで射的をやり始める。まさか五人同時射撃を行うつもりなのか?と思いながらただ黙って見守る。
「整列!一斉射撃──てえええい!」
パンパンスパパン!五人のコルク銃から一斉に放たれた弾丸は、大きなぬいぐるみに全て直撃し、ゆっくりとその標的を後ろへと押し倒す力を持っていた。
「「「「「やった~~!!」」」」」
「ふふっ微笑ましいですね」
「ISがなければ普通の高校生ですから」
「そうだな」
少し離れたところで織斑達を見守る俺と千冬そして真耶。
彼女らの手元には屋台で売られていた焼きそばや、たこ焼きがあった。
それに俺と同じように千冬も真耶もお面を被っている。
千冬は俺とは対になる白い狐のお面、真耶は白い猫のお面だった。
「そろそろ帰るか?」
「んっ、最後に花火が上がるらしい」
「ならそれを最後に見て帰りましょうか~」
そうして花火が1番綺麗に見えるであろう場所まで移動しようとすると──
「あっ!山田先生!」
「織斑先生に黒咲さんもいる!」
「一緒に花火見ませんか~!」
織斑達とは違う別のグループに見つかってしまった、その声を聞いたであろう織斑達が少し遠くの方で声を上げているのが聞こえる。
「えっ!?黒咲に千冬姉!?」
「山田先生も一緒だって!」
「千春さんが居なかったのってそういうことだったんだね!」
「見つけるぞ!」
「声の方へ行けば見つかりますわね!」
……まずい状況になったか?
「山田くん、すまないが置いていく!」
「んぐっ!?」
「えっ!?ちょっ!織斑先生!!!」
千冬は俺を抱えてその場から一目散に逃げ出す。その後ろでは置いて行かれた真耶が泣き言を言っているが、そんなこといざ知らず千冬は人混みの中へと消えていった。
「うぅ~本当に置いて行かれた……」
「あ、あれ?山田先生だけ?」
「二人に置いて行かれたみたいだね」
「どうする?花火の時間まであと僅かだぞ?」
「諦めるしかないかな……」
「残念ですわ」
「……まさか?」
箒は何処か思い当たりがあるように、ウオーターワールドのパンフレットを確認する。
「もしかしたら二人はこの竹林に行ったかもしれん」
「えっ?どうして?」
「この竹林はここから少し離れていてそこまで人通りがない、そしてこの位置的に花火も見える」
パンフレット片手に説明する箒。もし仮説があっていたとしても確かめる為には自身達が花火を見れなくなる可能性もある。こんな一大イベントで花火を見逃すわけにはいかないと全員頭を悩ませる。
「あっ、途中に花火が見られる高原があるね!」
「よし、なら行ってみるとするぞ!」
「「「「「おう!」」」」」
「わ、私もですかぁ~!?」
鈴に手を引っ張られあわあわした状態のまま真耶は六人に連れて行かれた。
「……私達空気になっちゃったね」
「……そうだね」
竹林にて。
「……撒いたか」
「千冬、降ろしてくれ」
生徒達の尾行を完全に振り切った千冬、そして千春は月明かりと灯籠が照らす竹林へとやって来ていた。
「おっと、すまないな」
ゆっくりと地面に降ろす。
少し無茶をしてしまった為、千春の身体になにか問題が無いか不安そうに見つめる。
「大丈夫だよ、心配するな」
「なら良かった……なあ千春」
「なに?」
「今日は楽しかったか?」
「──楽しかったよ。昔を思い出すくらいね」
にこっと笑顔を見せる千春。その表情は表だけの物ではなく、心から楽しいと思って居るのを感じさせる笑顔だった。
それに答えるように千冬も同じように心からの笑顔を見せる。
「……その笑顔はズルイ」
「お前も同じだろうに」
「そ、そうか?」
「ふふっ、自分でも気がつかないうちに出していたか」
「みんな、あそこ……」
「あっ、織斑先生に黒咲さんですね」
「よし。行──」
「「「「「待て」」」」
「えっ?」
全員で二人の元へ向かおうとすると、それに対して待ったをかける五人。なにか問題でもあったのか?
「様子がおかしい」
「というか二人とも見たことない笑顔」
「それになんというか……」
「「良いムード」」
そう言う箒達は影からこっそりと黒咲と千冬を見守る。織斑も真耶も同じように影から二人を見守り、耳を澄ませて話を盗み聞きすることにした。
「そろそろ約束を果たしてくれると、私はありがたいのだがな」
「……ダメだ」
「まだ我慢させるつもりか?」
「俺にはその自信がない、俺には……選ぶ事なんて……」
「別に構わんさ、私はお前と一緒に居られればそれでいい、それにきっと束も望んでいることだ」
なんなんだ、この会話は?今の会話を聞いて千冬姉と黒咲を見るとなんとも言えない感情がその場を見ていた全員に襲いかかる。そんな時間を固唾をのんで見守っている。
「千冬……」
「だから必ず答えを出してくれ、今でなくてもいい。時間は沢山あるのだから」
「……」
少しの沈黙。施設のアナウンスからもうまもなく花火が打ち上げられる時間になる。
「少しだけ下を向いてくれ」
「……?こうか」
「そのまま、少しだけ目を閉じていて欲しい」
「わかった」
千春からの提案の通り、千冬は目を閉じる。
周囲を少しだけ気にした後、千春は千冬の被っている狐のお面と自身のお面で顔を隠すようにした。
二つのお面が軽く重なり、かつんと音を立てる。
「こ、こんなタイミングで……!」
「これじゃあ見えないっ」
「ふ、二人はなにを──」
黒咲の正体を知っている箒、シャルロット、ラウラが慌て始める。肝心なタイミングでこちら側を隠すように二つの狐面が向いている。
(……覚悟決めるんですね、黒咲さん)
真耶はただじっと二人の姿をその眼に収めていた。
「んっ……」
ちゅっ。柔らかい感触が私の唇を襲った。少し驚き目を開ける。
目の前の千春は目を閉じ千冬へ優しい口づけをしていた。私からのキスは多かったが、彼からのキスは滅多になかった。
私からして欲しいと言ったことは何度かあったが今回はそれがない、つまりこのキスは黒咲千春──黒薔千春による意志のキスだった。
「っ……」
それだけでは飽き足らず、千春はゆっくりと私を求めるように舌を入れてくる。
少し驚きながらも、それに答えるように舌を合わせ受け入れる。
いつものような激しいキスとは違い、ゆっくりとお互いに相手のことを優しく味わうキスだった。
お互いを優しく抱きしめ、舌を混ざり合うその時間は千春と私そして周囲からこっそり覗いていた真耶達にとって、とても長く貴重な時間になったのは間違いないだろう。
(もう少し、もう少しだけ……)
舌が離れようとすると私の方から絡ませる。千春はそれを否定すること無く寧ろ積極的に舌を合わせてくれた。
そしてゆっくりと顔が離れ、一本の糸が光に照らされた。
「ちゃんと答えは出す。だから、そのっ、えっと……」
「ふふっ。わかっているさ、私は何時までも待つさ束もな。お前からあの言葉が聞けるまで、な」
「ありがとう」
ドカーンッ!二人を照らすように花火が打ち上がる。
花火の光に照らされた二人の姿は、強い絆で結ばれているようにも見えた。
私達の夏の思い出は、色あせてしまった思い出を塗り替えるように、鮮やかな花火に、隣で微笑む千春の笑顔に彩られて過ぎていく──。
「……よし、行こうか」
「「「うん」」」
「えっ?えぇ???」
何が何だかよく分からない織斑を引きつれ、箒達専用機持ちがこちらに近づいてくる。
「織斑先生!」
「千春さん~!」
いかにも「今見つけました」といった反応で上手く誤魔化した後、打ち上げられた花火を静かな竹林で眺めるのだった。
次の番外編
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おねショタ(無効票)
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1シャル&ラウラと千春(受け)
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2シャル&ラウラと千春(攻め)
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メス堕ち(無効票)(千春総受け)
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束と千春
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千冬と千春
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シャル&ラウラと千春
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一夏と千春
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オマケ(無効票)
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千春&箒「これは練習だから浮気じゃない」
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千春&セシリア&鈴「IS3分クッキング」