女装して入学することになった暗殺者によるIS学園生活 作:灰崎 快人
「千春、今日の夜空いているか?」
「ん?今日は……空いてるな」
夏休み中盤。〘システム〙のオーバーホールを行っているところに千冬がやってきた。
突然の誘いに困惑していると、千冬から衝撃的な言葉が発せられた。
「一夏以外の専用機持ちにお前の正体がバレた可能性がある」
「……へ?」
織斑以外の専用機持ちに俺の正体がバレた。
そんな事を深刻そうに呟く千冬に、俺はさらに頭を悩ませていた。
実際専用機持ちである箒、シャルロット、ラウラにはいろんな事情が重なったことで正体をバラした。
しかし織斑、鈴、セシリアには今だ正体を隠したまま、IS学園での生活を続けていた。
そんな中織斑以外の専用機持ちに俺の正体がバレた、そうなれば千冬が焦るのも無理はないだろう。
(あっ……俺が千冬に何も報告してないからか!)
実は前者三名に正体をバラしたこと、バレてしまったことは一切千冬に報告を入れていない。報告を入れるタイミングはいつでもあったはず、しかしそれを一切しなかったことに対して俺は冷や汗を背中にかいていた。
「そ、そうなのか……?でも一体どのタイミングで?」
「うむ……ウオーターワールドに行ったときの事を覚えているか?」
「ああ。俺から、したところだろ?」
「そうだ。その時に実は見られていたらしい。全く、油断も隙もないな」
「……でもそれどうやって知ったんだ?」
「山田くんと昼食を取っているときにポロッと……な」
真耶もセシリア達の中に混ざってあの光景を見ていたと言うことか?確かに見捨てる形で置いて行ってしまったが、そこまで恨まれてるとは思いもしなかった。
「でもお面で隠してたから……大丈夫だと思うんだが」
「山田くんはあの夜、私とお前がキスをしたと言っていた。そして、少し前にお前から恋愛相談をされたとな……」
「……」
さらに冷や汗が吹き出てくる。夏のはずなのに背筋はひんやりとしており、周囲一帯の気温がどんどん下がっているようにも感じる。
目の前には少し怖い千冬、後ろにはISをメンテナンスするための倉庫の壁。逃げられる訳がなかった。
「どういうことか、説明を貰いたいからな!」
「あっ、あはは……」
「なあ千春?私は何か問題があったら報告しろと、あれほど言ったはずだが?」
「いや、あの──」
「どうやら身体に教え込む必要があるみたいだな?」
久しぶりに……いや、臨海学校以来の般若の形相を拝むことになった。完全に非はこちらにあるため何も言い返すことは出来なかった。
「お待たせしましたっ」
駅から少し行った所にある商店街の、その地下にあるバーに息を切らしてやってきたのは山田先生こと山田真耶だった。
夕方の四時から翌朝の八時まで開いているこのお店の名は『BAR義孝』。フランス製の調度品で統一した大人の社交場であり、千冬行きつけの場所である。
「すまないな、急に時間を割いて貰って」
「いえいえ。どうせ部屋で通販のカタログを眺めたりしてるだけですから」
真耶がカウンター席に駆けると、すぐに千冬がノーマル&ブラック・ミックスのグラスビールをマスターに注文する。もちろん、これは真耶の分だ。
「千冬さんも新しいのをお出ししましょうか?」
「そうですね、頼みます」
「かしこまりました」
初老のマスターが一人で切り盛りしているこのお店は、その白髪の混じったオールバックに元インテリ系という容貌もあって女性ファンが多い。
千冬にとってはその外見が特別好みというわけではないが、マスター・嶺の落ち着いた声のトーンはお気に入りである。
「どうぞ」
真耶のビールと、それに千冬の黒ビール、それからサービスのキューブチーズを出して、マスターは二人から距離を置く。間近に他人がいてしまっては落ち着いて話をすることが出来ないのが人間なので、それをよく知っている長年の経験からなる気配りだった。
「乾杯」
グラスを鳴らし、真耶はチピチピチャパチャパと、千冬はゆっくりだが長くグラスを傾ける。
大体グラスの半分程までなくなったところで、真耶は質問を切り出した。
「今日は例の件についてですよね。でもその張本人がいらっしゃらないみたいですけど」
「ああ。その件に関して色々と問い詰める予定だ、オシオキもかねてな」
「お仕置きですか?」
「そうだ。千春が1番恥ずかしがるお仕置きだ」
「……女装ですか?」
「女装でもとびきり恥ずかしいヤツだ」
「はあ……?」
あまり理解が出来ていないようで真耶ははにゃ?と首をかしげる。しばらくしてBARの扉がカランカランという音と共に開かれる。
「いらっしゃいませ」
「あ、あの……織斑千冬さんと山田真耶さん来てませんか?」
「……こちらへどうぞ」
「あっ、ありがとうございます……」
マスターに誘導されるようにやってきたのは一人の少女だった。彼女は黒と白のツートンカラーのゴスロリ衣装を身に纏い、少し背が伸びる厚底のヒールを履いていた。髪にはリボンなどが彩られていた。
BARに見合わないその服装をした少女は、ゆっくりと千冬と真耶のもとへと歩いてくる。
「えっと……どちら様ですか?」
「……黒薔千春です」
「えっ?」
「黒薔……千春、です」
目の前の少女は「黒薔千春」と名乗った。そうこの少女こそ千春本人であり、千冬によってオシオキされた後であった。
「ち、千春さんなんですか!?」
思わず席を立ち、グラス片手に詰め寄ってしまう真耶。
「……ハイ」
「くくくっ。よく似合っているぞ」
顔を真っ赤にしてしまっている千春に対して愉快愉快とまでに笑顔を見せる千冬。千春は思うことがあり強く千冬に食ってかかることができず、悔しそうにスカートの端を握りしめて千冬を睨み付けていた。
「よ、よくもこんなものを……」
「お前が報連相出来ていなかったのが悪い。違うか?」
「うぅ……」
「反論できないんですね」
あははと苦笑いを浮かべる真耶に対して、千春は無言でうなずくのみだった。
こちらへどうぞと先ほどまで自分が座っていた席へと案内する、千冬と真耶に挟まれる形で席へと着席する。
マスターが「年齢がご確認できるものはありますか?」と聞かれ、無言で免許証を提示する千春。
少しの間千春と免許証を交互に見たあと、年齢確認が出来たところで何か飲むかと聞かれる。
黒咲は「なるべく度の強いものを……」と沈んだ声で呟いていた。
「……アン・プルミエール・エトワール・ブリュットです。どうぞ」
「ありがとうございます」
気の毒に思ったのであろうマスターがサービスにチョコレートを提供してくれた。
「千春さんってお酒いけましたっけ?」
「……強いの飲んで記憶消したいだけです」
「そ、そうですか」
グラスを手に持ち少しグラスを傾ける。ほんのりと減ったところで本題に入る。
「……専用機持ちに俺の正体がバレたってのは、本当なのか?」
「ああ。一夏を除いた専用機持ち全員がな、山田くんがそれを教えてくれた」
「実はあの夜、織斑先生と千春さんがキスしているのを見ていたんです。専用機持ちの子達と」
「……そうですか。でもそれで俺が男であると言うことは、わからないと思いますが?」
「箒さんにシャルロットさん、ラウラさんが二人の後ろ姿を羨ましそうに見ていたんです。シャルロットさんは「羨ましい……」ラウラさんは「だから教官と千春は親しそうに……」箒さんは「私もいつかあんな風に」とそれぞれ呟いていましたね」
「えっと……その三人について、色々と説明しないといけないことがありますね」
「説明願えるか?」
そこからの話はかなり進みが悪かった。まずシャルロットの正体を見破ったきっかけから質問攻めが始まり、シャルロットとラウラに同じ手口で正体がバレてしまったことを話した際には、千冬と真耶から色々とツッコミを貰った。
女子二名同時にシャワー中の所を見られ、そのまま隣で眠るなどと普通なら考えられないだろう。その中で幸いだったことは翌日には部屋の移動が決まっていたことだろうと話すと、それ以前にバレないことが1番良かっただろうと鉄拳と共にツッコミをいただいた。
箒に関しては自分の方から正体をばらしたことに関しては、千冬と真耶から何故?と疑問の声が上がった。
「お前から正体をバラすメリットでもあったのか?」
「あったにはあった。あの時ポッキリと折れてしまった箒を再び立ちあがらせるには、正直足りないと思っていたが十分だったらしい」
「発破をかけて箒を立ち直らせるためとはいえ、お前が正体晒してどうする?私達との約束を忘れた訳ではあるまい?」
「約束?」
「忘れたわけじゃない、ただ本件については何も言っていない。だから特に問題無いだろう?」
ワインを飲みながらチョコレートを頬張る。酔いが回っているのか、俺の頬は少し赤く染まっていた。
千冬、真耶はそこでビールが底を突いて、マスターにおかわりを頼んでいる。
七杯目になるビールを一口ゴクリと飲んでから、話を続けた。
「それで俺がバラした三人以外にもバレたって話だったが、それが実際どうなのか不明。俺からぐいぐいと行くことはしないさ」
「そうか」
おかわりお願いしますと、マスターに話しかける。
マスターからお出しされたのはワインではなく、ティファナコーヒーだった。普通はカルーアミルクとして提供するところが多いが、このBARではカルーアとホットコーヒーそしてホイップクリームを合わせたものが提供されるらしい。
シナモンが僅かにかけられており、スターボックスを思わせるような雰囲気を見せていた。
「……これ頼んでない」
「私のおごりだ、お前にワインは速いからな」
「失礼な……これでもお前と同年齢だぞ?」
不満を口に出しながらも満更ではないようにティファナコーヒーを口にする。その様子はまるで子供が拗ねているかのようで、少し微笑ましい空間へと変わっていた。
「んっ、悪くない……」
「それは良かった」
「マスターの名はなんて言うんだ?」
「私ですか?私は
「……また利用させて貰う」
「その時は多いにもてなしますよ」
ふふふと笑うマスターと黒咲を見ながら、話は終わっていないのだがと頬を膨らませる千冬と真耶。
そんな四人を空になったグラスの中の氷が、からんと音色を奏でて眺めていた。
そんなことがあった帰り道、千冬と千春は千鳥足になりながらなんとか前へと歩いていた。
「うぅ~」
「ん~」
「お二人とも飲み過ぎですよ……」
そんな二人を必死に介護してなんとか前へ前へと歩かせる真耶。正直言って一人では限界がある。いっその事何処かに泊まって朝を迎える方が良いとまで考える。
何処かにホテルなどの施設がないだろうかと辺りを見回す真耶。しばらくして彼女が見つけたのは《ホテルBB》というなのホテルだった。
そこに入った真耶は料金を支払った後、二人を抱えて部屋の方へと向かっていく。料金が時間制だったのが少し気になっていたが、そんなこと気にもとめずすぐに二人をベッドで横にさせた。
「えっと、このホテルは──ラブホ!?な、なんと言うことを……」
自身が急いで入ったホテルはラブホテルであり、男女の性交渉の場であったことを理解した真耶はどうしたものかと頭を悩ませる。既に料金は支払っており、なんとか歩いて帰るとしても一人では限界がある。すやすやと眠っている二人を無理に起こすわけにも行かなかった。
部屋には備え付けの冷蔵庫や自販機そしてテレビなど、学園の寮とそこまで変わらない内装だった。自販機内には性行為に使われるであろうアメニティが売られており、特にお安いのはコンドームが一箱100円だった。
テレビを付けてみれば、容赦なくAVが流れるという罠が張られていた。
真耶は自分のしてしまったことに後悔しながらも、真耶は部屋に付けられている浴室と向かうのだった。
「広いんですね……それにお風呂も四人以上は入れそうなくらい大きい」
真耶自体、ラブホテルを利用するのが初めてだったのかほぇ~と声を漏らしていた。
「広い空間のお風呂は、温泉と大浴場以外で初めてですね~」
そう思いながらもラブホテルのシャワーを堪能していると、ガチャガチャと背後から扉が開く音が聞こえてくる。
「山田くんいるのか?」
「織斑先生ですか?」
「すまない、こんなところで酔い潰れるとは……」
「大丈夫ですよ。ただここはちょっと訳ありなんですけど……」
ここがラブホテルである事を知らせると真耶と同じように苦笑いを浮かべていた。千春が未だに眠ったままである事が幸いしていると、少し安堵しているようすの二人はそのままシャワーを浴びている。
「千春さんの事がいつか学園内全体でバレたらどうします?」
「そうだな。大混乱を招くことは間違いないだろう。そしてそれはいずれ世界中に知れ渡るだろう」
「そんなことになってしまえば……」
「無事ではすまないだろうな、それまでになんとかして私の物に出来ればいいのだが……」
ただでさえ一夏に紅椿という巨大な爆弾があるのにもかかわらず、そこに黒薔千春という遅延爆弾が出てくるのだ。
教員としては面倒なことこのうえないだろう。
「あいつも覚悟を決めて私と結ばれる、なんて言ってくれれば比較的楽なのだがな」
「ブリュンヒルデの夫ですか、世界が荒れそうな内容ですね」
「それでも今の状態よりはマシだと思うがな?私の夫になれば後ろ盾が出来るわけだし。まあ色々とよからぬ噂はありそうだがな……」
そんな話をしていると──ガチャ。
二人の後ろで扉から音がした。
恐る恐る振り返ると、酔い潰れていたはずの黒咲が脱衣所で何やらゴソゴソと動いていた。ぼふっという音と共に、千春であろうシルエットから服が外れていく。そこからは想像に難くないだろう。
ガチャッ。浴室の扉がゆっくりと開かれた。
次の番外編
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おねショタ(無効票)
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1シャル&ラウラと千春(受け)
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2シャル&ラウラと千春(攻め)
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メス堕ち(無効票)(千春総受け)
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束と千春
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千冬と千春
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シャル&ラウラと千春
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一夏と千春
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オマケ(無効票)
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千春&箒「これは練習だから浮気じゃない」
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千春&セシリア&鈴「IS3分クッキング」