女装して入学することになった暗殺者によるIS学園生活 作:灰崎 快人
「全く、面倒な事をやってくれる」
薄暗い部屋。不快な温度が、ここが地下である事を物語っている。
ここは──どこだ?軍隊の訓練では『尋問に対する耐性訓練』を行っていた場所ではない。軍で使用していた尋問、いや拷問場所の床や壁には黒い染みがあったはずだ。それなのに対して、ここはただ薄暗い部屋だった。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ。階級は少尉。現在はISの訓練操縦士か」
目の前には誰かがいるのか声が聞こえる。この部屋の主であろう男性は、しかし顔が見えない。男は逆光になる位置で立っており、手にある資料を読んでいた。その資料には間違いなく私の情報が刻まれているのだろう。
「気分はいかがかな?どうした?顔色がすぐれないようだが……」
その声は聞いたことが無く、この部屋の温度もあいまって特別綺麗に木霊していた。
「さて、三日間の不眠と断食、そして身動きが出来ない故の粗相の数々。いかがだったかな、ラウラ・ボーデヴィッヒ。ん?」
答えるのも嫌だ。体力を使う。そのくらい今の私は疲弊していた。
「典型的な尋問を今回は取らせて貰ったよ。大昔から使われている手法だ。時間の概念が停止するこの部屋で眠らせず、食べさせず、そして羞恥心をえぐるように粗相を見られている。君にとっては屈辱的かな?」
こんこんと、革靴を鳴らして男が数歩、進む。
「かけさせてもらうよ?」
勝手にしろ。そう心の中で呟くのがやっとだった。
男は椅子にかけると左右に首を鳴らし、ゆっくりと脚を組んだ。
わずかに光の網から抜けた脚は、驚くことに軍服などではなく黒いスーツだった。
軍服などではない……?誰だ、こいつは……。
部屋の主なのかと疑い始める。もしやここは廃墟の一室であり、私はそこに閉じ込められてしまったのでは?とまで思い込むようになってしまう。
危機感を持った私の脳は、腐りかけていた思考回路を蘇らせる。自然と活気がわき起こり、次の瞬間にはどうやって制圧するのかを思案する。
(そうだな──)
「まずは、椅子を倒し、そのまま首を取る。というのはオススメしないな。リスクが大きい」
(!?な、なぜ──)
「なぜ考えていることがわかったか、かな?それはねぇ」
男の顔がゆっくりと光の網から出てくる。
それは黒咲と瓜二つであった。
何故こんなことになっているのだろうと、必死に思考回路を巡らせる。
「お前が産んだ幻だからだよ」
それは、不思議なことに聞こえなかった。
しかし読唇術を習得しているラウラにとって、例え無音であったとしても言葉を理解するのはたやすかった。
しかし、その言葉を語源化することができなかった。
だが、それなのに──
(なるほどな……)
酷く納得が出来てしまった。
それならば仕方がないと思ってしまう。その『なにか』が、その言葉にはあった。
「さて、それじゃあ尋問を続けさせて貰うとしよう。ラウラ、君に愛国心はあるかな?」
「ああ」
「へぇ、簡単に嘘をつくんだね、君は。愛国心なんてあの事件以来、かけらも持ち合わせていないだろう?」
「そんなことはない」
「そうかい、まあいいや。仲間はどこにいる?規模は?装備のレベル、それにバックアップは?」
「言うはずないだろう」
「そうだね。では、こういうのはどうだろう?」
にやりと黒咲を模した男が近づいてくる。ろくでもないことをするのだろうと、ラウラはそんなことどうでも良いように、次にどうやって目の前の相手を制圧するのかを考え始める。
「よいしょ」
「……は?」
男はラウラをお姫様抱っこする。その状況が良く理解出来ないラウラの思考は、完全に停止してしまった。
男は抱えたラウラを先ほどまで座っていた椅子へと移動させる。ただし抵抗が出来ないように腕は後ろに回され手錠で固定され、左右の脚は股を開くように固定されている。
「良い姿んんっ!──良い姿だね?ラウラ」
「んなっ!?」
男の声が変わる、先ほどまでは黒咲に似ても似つかない声であったのにもかかわらず、今目の前の男から発せられる声色は完全に黒咲と一致していた。
「この資料によるとラウラはまだ処女……流石に初めては好きな人に捧げたいと考えて居るみたいだね?」
「う、うるさい!」
「あはは!その姿で吠えてもなにも怖くないね……じゃあ始めようか」
そう言って目の前の黒咲は徐にズボンのチャックを下にさげはじめる。
「い、嫌だ!それだけは嫌だ!」
「ふふっ、もう抵抗しても無駄だよ?ラウラ」
「あっ……あぁ……」
「残念だったね?口を割ればこんなことにはならなかっただろうに!」
グチャッと黒咲のが入っていく。いやこの男は黒咲ではない、こんな男に、私のは……
「殺すっ!殺してやるっ!」
疲労も脱力も吹き飛ばして、ラウラは勢いよく手錠を破壊し黒咲を蹴り飛ばすのと同時に立ちあがる。
そして──
「あ、あのー……ラウラ?」
「うぅ……?」
ラウラが押し倒し、その首筋にナイフを当てているのはルームメイトのシャルロットだった。
場所はIS学園1年生寮の自室。時刻はどうも早朝らしく、窓の外ではスズメがのんきに鳴いている。
「えっと、あのね?ラウラがうなされていたから声かけようかなーって思ったんだけどね?」
「そ、そう……か」
言われてみて気がついたが、ラウラは寝汗をぐっしょりとかいていた。肌にまとわりつく髪が、うっとおしくてたまらない。
「……で、いつまでこのままなのかな?」
「そ、そうだな。……すまない」
頸動脈に当てていたナイフをどけ、そのままシャルロットの上からも離れる。
どうも夢の内容はよく覚えていたが、それをシャルロットに話すことは流石に気が引ける。自分の乱れた脈拍が、あの夢は悪夢だったとそう告げていた。
「別にいいよ。気にしてないからね」
「そうか。助かる」
この部屋割りには最初こそ嫌だったものの、ルームメイトのシャルロットが常に気の利く存在であったため、むしろ今ではこの編成に感謝している。
対決の後も別段気にしていた様子はなく、寧ろ心配してくれていた。改めてルームメイトとして、そして友人としての付き合いをしてくれていた。
(そんなシャルロットに刃物を向けるなど……どうにかしていたな)
ふぅ、とため息を漏らしてベッドから降りる。シャルロットもそれに続いた。
「ところでなんだけど、ラウラ?」
「なんだ?」
「やっぱり寝るときに服は着ないのかな?」
改めて、シャルロットは指摘する。というのも、このラウラ、寝るときはほとんど全裸なのだ。その理由が──
「寝るときの服がない」
「いや、そうかもしれないけど……せめて下着はつけよう?」
常にサイドテーブルに備えてあるバスタオルはこのためのものだ。いつものように、シャルロットはラウラの体にタオルをかける。
「すまないな。ところで私はシャワーを浴びてくるが、お前はどうする?」
「うん、僕も浴びようかな。冷や汗かいちゃったし」
「一緒にか?」
「ち、違うよ!もう!ラウラの後!」
「冗談だ」
いつも通り冷淡な調子でそう言われ、シャルロットは一瞬ぽかんとしてしまう。
その間にラウラはシャワールームへと行ってしまって、バタンとドアを閉じる音が聞こえる。
(前は冗談なんて言わなかったのに……どうしたんだろう?)
心境の変化でもあったのだろうか。友人としては気になるところである。
(それはそれとして、やっぱりパジャマを……って黒咲さんとの買い物で買ってた気がしたんだけどな~?)
うーん、と朝からうなるシャルロットだった。
「それでまた買い物ってわけか」
「うん、一緒に行きませんか?」
寮の食堂。そこで早めの朝食をとりながらラウラとシャルロットそして黒咲が話していた。
三人の他には朝練をしている部活動の面々がちらほらいる程度で、全く混んではいない。
シャルロットのメニューはといえば、マカロニサラダにトースト、そしてヨーグルトである。ラウラはそれにもう一品だけ多い。
「朝からステーキって……胃は大丈夫なの?」
「何を言う。朝に1番食べる方が体の稼働効率はいいのだぞ?科学的にも証明されている。そもそもだな、後は寝るだけの状態──つまりは夕食、そこで1番食べるというのがおかしいのだ。消化されないエネルギーは全て脂肪になるんだぞ?太りたいのなら止めはしないが……」
「……ラウラ、ちなみにそれ誰から?」
「一夏からだ」
「なるほどね、まあラウラっぽくない喋り方だったしな」
感化されやすい性格なのかも知れないな。なんてことを考えながら、黒咲は自身の朝食を口にする。
「それに黒咲も珍しく朝から沢山食べているではないか」
黒咲のメニューは麦ご飯にあさりの味噌汁、鰯のハンバーグそしてナチュラルチーズ。ラウラと比べば少ない方ではあるが、普段の黒咲の朝食メニューと比べれば多い方である事には変わりないだろう。
「そういえば一昨夜部屋にお邪魔したが……留守だったな。なにか用事でもあったのか?」
さらっと部屋に侵入していることを告げられている黒咲だったが、そんなことよりも『一昨夜』の出来事を思いだせないのか頭を傾げていた。
「実は一昨日の夜何をしていたのか分からないんだよね」
「分からない……のか?」
「うん、わからないの。千冬に呼ばれてどこかに行ったのは覚えてるんだけど、気がついたら自室で寝てたしね」
本当になんだったんだろう?と不思議そうに頭を傾げる黒咲を見て、シャルロットとラウラはろくでもないことに巻き込まれた可能性があると思い、それ以上の詮索をすることはなかった。
「……それで、買い物は何時に?」
「あ、うん。十時くらいには出ようかなって思うんだけど、どうかな?一時間くらい街を見て、そこか良さそうなお店でランチにしようよ」
「わかった。十時だな」
「よし、私も準備はしておくとしよう」
「……ラウラ、軍服と制服以外の服あるよな?それをちゃんと着てくるんだぞ?」
「分かっている」
「……寝間着も着てないくせに」
「ラウラ、ちょっとお話ししようか?」
「そういえば、なんで部屋入って早々に抱きついてきたの?」
「怖い夢見たみたいで、寝汗が凄かったんだよね」
「恐ろしい夢だった……」
「だからと言って鍵穴を破壊して良い理由にはならないんだよね?」
次の番外編
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おねショタ(無効票)
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1シャル&ラウラと千春(受け)
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2シャル&ラウラと千春(攻め)
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メス堕ち(無効票)(千春総受け)
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束と千春
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千冬と千春
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シャル&ラウラと千春
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一夏と千春
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オマケ(無効票)
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千春&箒「これは練習だから浮気じゃない」
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千春&セシリア&鈴「IS3分クッキング」