※この作品はR-18です。

女装して入学することになった暗殺者によるIS学園生活   作:灰崎 快人

66 / 106
第54話「俺は男」

「今回は男物の服を着てるんだね」

バス停にたどり着き駅前行きのバスを待っていると、おもむろにシャルロットがそう聞いてくる。

確かに今回、黒咲の服装はスカートなどではなく、Tシャツに淡色のデニムといったシンプルな服装。そして髪はかき上げており、普段の黒咲からは感じられない雰囲気を醸し出していた。

「流石に女装を続けていると、普段の服装が女物だと思われるからな。それだけは避けておきたい」

「もう既に手遅れだと思うが……」

「そんなこと言わないでくれ……」

バス停でそんな会話をしているとちょうどバスが走ってきて、三人はそのまま乗り込む。夏休み、それももう十時過ぎということもあり、車内はかなり空いていた。

「千春さん、僕たちの私服どうかな?」

シャルロットの私服は、夏らしい白を基調としたYシャツとショートパンツ。それに自身のイメージカラーであるオレンジのノースリーブパーカーを合わせており、首には待機状態のIS。全体的にまとまっており元気系女の子といったイメージを醸し出していた。

ラウラの私服はシャルロットと対の黒のワンピース。黒咲が似合っていると言ったあのワンピースだった。それに追加で買った紫のベルトを腰に巻いており、素肌の見える脚には待機状態のISが付けられていた。シャルロットとは異なるベクトルの可愛いというものだろう。ちょっと脚を上げすぎると見えそうで心配だった。

「似合ってるよ。それにラウラはその服気に入ってくれたんだね」

「ち、千春が選んでくれたものだからな。当たり前だ」

「そっか……それは良かったよ」

都市部のバスにしては珍しく、車内は冷房ではなく窓からの風で涼しさを得ている。

(街の方にこうして来るのは今回で3回目かな?今日は色々と見に行こうっと)

窓から見える景色を眺めるシャルロットを、風がゆっくりと撫でていく。微かに揺れた髪は夏の陽光を受け止めて金色に輝いていた。

その隣、ラウラは黒咲の肩を借りて寄りかかっていた。それに黒咲はどうしたらいいものなのだろうか?と思いながらも何もすることなく、バスの揺れに身を任せていた。

ラウラの銀色の髪と黒咲の黒髪は日光に照らされて鮮やかに輝いていた。


「ね、ね、あそこ見てよ。あの二人」

「すっごいキレ~」

「隣の子も滅茶苦茶可愛いわよね。モデルかしら?」

「真ん中の子はなんなんだろう?」

「もしかして彼氏?身長小さいけど」

「そんなわけないじゃん~女の子達と同じくらいの男子なんて~」

「人権ないもんね~」


シャルロットとラウラに注目している女子高生のグループが、声のボリュームを抑えることなく騒いでいる。

そんな風に盛り上がっている会話は、当然バスという狭い空間では三人の耳元にも届いていた。

「……結局世の中、身長なのかな」

悪い意味で話の話題になっている黒咲がポツリと言葉を漏らす。なんでも最近のSNSのトレンドに『170㎝ない男性は人権ない』というものがあったらしい、何故そんな言葉が出てきたのかは不明だが……この言葉を発した人物は本当にそう思って、この言葉を発したのだろうか?

ネットやSNSというのは拡散力などが優れているため、有名人が意図しない発言を曲解して報道するということがしばし起きている。

そのため、最近では発言や行動にも配慮が求められるようになり、一昔前の様な荒々しいテレビ番組も消えてしまった。

「大丈夫だよ千春さん、身長が小さくても人権はあるから!」

「そうだな、それにそんなことを気にするようでは男の一つも出来やしないだろう」

「……慰めありがとうね」

なんとも言えない雰囲気になってしまったところでバスは駅前へと到着する。

三人は他数名の乗客と一緒にバスを降りると、そのまま駅のデパートへ入る。

シャルロットはバックからなにやら雑誌を取り出して、それを案内図と交互して見てはなにかを確認していた。

「よし、この順番で回れば無駄がないかな」

「ふむ」

(身長伸ばしたいな……)

「最初は服から見ていって、途中でランチ。そのあと、生活雑貨とか小物とか見に行こうと思うんだけど、黒咲さんもラウラもそれでいい?」

「任せる」

「身長伸ばしたいな……」

相変わらず、一般的な十代女子のことには疎いラウラだった。十代女子というのは紛れもなくシャルロットも含まれるのだが、とにかくわからないのだか仕方ない。

そして黒咲に関しては身長の事を引きずっていたようで、ぽつりとそんな言葉を漏らしていた。

「千春さん聞いてます?」

「ん?ああ、シャルロットに任せるよ。今回俺は特に買い物もしない……と思うから」

黒咲の目に光がないのが痛々しすぎて、シャルロットはそれ以上聞くことは無かった。

「とりあえず七階のフロアに向かうよ。その下、六階と五階もレディースだから、順番に見てこ」

「そういえばなんだが、俺はなんで呼ばれたんだ?」

「ラウラは基本的に千春さんが選んだ服しか着ないし……あとは秋服もそろそろ欲しいからね」

「待て、千春の件については確かにそうだが。秋の服はいらないぞ?」

「え?いらないって……なんで?」

「今は夏だからだ」

なんでもないように言うラウラだったが、シャルロットは唖然としてしまった。

「ラウラ、日本の夏は長いようで短い。だから季節の服は少し早めに用意した方がいい」

「そうなのか。ふむ、備えあれば憂いなしというやつか?」

「そういうこと。とにかく順番に見ていこうよ。わからないことがあったら何でも訊いてね」

「そうだな、二人が一緒なら心強い」

三人はエレベーターに乗って一気に七階まで進む。冷房のよく効いた館内は、夏休みということもあって十代の女子男子で溢れかえっていた。

「はぐれると不味いね。二人とも手を繋いでいこう」

「では千春は真ん中だな」

「そ、そうなのか」

さらりと言うラウラに対して、少し戸惑いながら黒咲がうなずく。何故と思いながらも素直に従うのだった。

「まずはここからね」

「『– Kana Hanazawa –』……変わった名前だな」

「結構、人気のあるお店みたいだよ。ほら、女の子もいっぱいいるし」

そう言われてラウラが見た店内は、確かに女子高生、女子中学生が多くいた。

セール中ということもあって、店愛は騒々しい。そのため、接客がおざなりになるのが当たり前だ。しかし──

「…………」

ぱさり、客に手放すはずの紙袋が店長の手からすり抜けて落ちる。

「金髪(ブロンド)に銀髪(プラチナ)、黒髪(漆黒)……?」

店長の異変に気づいた他の店員もその視線を追う。

そしてそのまま、魅了された様に呟いた。

「何かの撮影……?」

「お人形さんみたい……」

「……チワ、お客さんお願い……」

店長は三人の方に視線を向けたまま、ふらふらと歩み寄っていく。それはまるで魅了されたかのように、あるいは熱に当てられたように。

「えっ、ちょ、あ、私は?ていうか、服……落ちたままだし……」

文句を言おうとした女性客もまた、シャルロットとラウラ、黒咲の姿に見とれて言葉を失う。

まるで絵本の中のような三人の美少女(・・・)、そのうえしっかりと繋いだ手が何より人を魅了していた。

しっかりと繋がれた手、けして軽くない繋がり。

それが三人の雰囲気をさらに不思議なエッセンスを加えていた。

「ど、どっ、どんな服をお探しで?」

うわずいた声を上げる店長は見るからに緊張していて、サマースーツを着こなしている大人の女性とは思えない様子だった。

それがなんだかおかしくて、黒咲は注目を浴びたことで店を出ようかと考えた事を思い出す。

「えっと、とりあえずこの子に似合う服を探してるんですが、いいのありませんか?」

「こ、こちらの黒髪の方ですね!いますぐ見立てましょう!はい!」

その言葉にぽかんとしてしまっている黒咲の代わりに、シャルロットが店長へ訂正を行う。

「あ、こっちじゃなくて銀髪の子のをお願いします」

「し、失礼しました。銀髪の方ですね!」

自分の間違いに気づいた店長は、言うなり展示品のマネキンからセールス対象外の服を脱がせる。

──ちなみに夏物であってもやがて売れるであろう商品は、こうして店頭に置いて客寄せに使う。もちろん、売るつもりではいるがそれはあくまでも『とっておきのお客様』といわれるものであって、初めて来店したお客様のためにわざわざ脱がすというのは普通ならばないはず。

普通であれば。

「ど、どうでしょう?お客様の綺麗な銀髪に合わせて、白のサマーシャツは」

「薄手でインナーが透けて見えるんですね……ラウラはどう?」

「わから──」

「わからない、はナシで」

「うぅ……」

言葉を先回りされて、ラウラはどうしたものかと言葉を漏らし黒咲に助けを求める。

ひどく子供っぽいその様子に、初見で銀髪の子が落ち着いていると思っていた店長は驚いたかのようにパチパチとまばたきをした。

「白か。悪くはないが……黒の方が似合うのだろう?」

「……私がそう思っただけだから、色はラウラの好みで選んでいいんだよ?」

「ふむ」

店長は黒髪の方が落ち着いていて、ラウラの保護者のような立ち位置であると知ると再びパチパチとまばたきをした。店長の予想ではここが真逆だったのだろう。

「着心地とかの関係もあるから、せっかくだし試着してみたら?」

「いや、面倒──」

「面倒くさい、はナシで」

「「……」」

またしても台詞を先回りされて、ラウラはそのまま黙ってしまう。

黒咲ににいたっては、笑顔でラウラの台詞を先回りするシャルロットに対して謎の恐怖感を味わっていた。

そうこうしている間に店長とシャルロットはシャツに合うインナーとボトムスを選んでいった。

「ストレッチデニムのハーフパンツに、インナーは……」

「Vネックのコットンシャツなんてどうでしょうか?」

「あ、いいですね、それ。色は同系色か、はたまた対照色か……うーん」

あれやこれやとふたりは楽しそうにラウラの服を選んでいく。

どう抵抗しても無駄だと判断した黒咲は、少し離れたところでラウラと共にふたりの様子を眺めていた。

「ラウラ、ここまで来たら手遅れだから……覚悟を決めようね」

「……そうだな。黒咲は何故声を女に?」

「……多分だけど、俺女の子だと思われてる」

悲しそうにそう呟く黒咲に対して、ご愁傷様ですと心の中で思うラウラであった。

次の番外編

  • おねショタ(無効票)
  • 1シャル&ラウラと千春(受け)
  • 2シャル&ラウラと千春(攻め)
  • メス堕ち(無効票)(千春総受け)
  • 束と千春
  • 千冬と千春
  • シャル&ラウラと千春
  • 一夏と千春
  • オマケ(無効票)
  • 千春&箒「これは練習だから浮気じゃない」
  • 千春&セシリア&鈴「IS3分クッキング」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。