女装して入学することになった暗殺者によるIS学園生活 作:灰崎 快人
「というわけでね、いきなり二人辞めちゃったのよ。辞めたっていうか、駆け落ちしたんだねどね。はは……」
「はぁ」
「ふむ」
「なるほど?」
「でもね?今日は重要な日なのよ!本社から視察の人間も来るし、だからお願い!あなたたち三人に今日だけアルバイトをしてほしいの!」
女性のお店というのが、これまた特異な喫茶店だった。
女は使用人の格好、男は執事の格好で接客するという、いわゆるメイド&執事喫茶である。
「それはいいんですが……」
着替え終わったシャルロットはやや控えめに訊く。
「なぜ僕は執事の格好なんでしょうか……?」
「……なんで私はメイドなんだろう」
着替え終わった黒咲が雰囲気を一段下げてやってくる。
「だって、ほら!!!!似合うもの!そこいらの男なんかより、ずっとキレイで格好いいもの!」
「そうですか……」
褒められたというのに、あまり嬉しくなさそうにシャルロットはため息をつく。
「私は……?」
「貴女はあの銀髪の子と相性が良いから、メイド服確定ね」
「……そうですか」
(僕もメイド服がよかったなぁ……そっちを着てるラウラと千春さん、すっごい可愛いし……)
(執事服の方が良かったな、最初は男物着てたはずなのに気がついたらまた女装してるし……)
少し残念な気持ちになりながら、ふたりは自身の着ている服を見下ろす。
(う~、僕ってやっぱりこういう方向性なのかなぁ……)
(なんかもう、本当に手遅れなところまできてしまっているのか?)
やや落ち込み気味のふたりに気づいてか、自分もメイド服に着替えた女店長はがしっとその手を掴んだ。
「大丈夫、二人ともすっごく似合ってるから!!」
「そ、そうですか。あはは……」
「…………」
シャルロットはやや引きつり気味の顔で、黒咲はさらに不満顔になった。それでもどうか社交辞令の笑みを返す。
((それが問題なんだけどね……))
複雑な心情を持て余しながら、シャルロットは改めてメイド服のラウラを眺めた。
細身でありながら強靱さを秘めた体躯に、飾りっ気のないメイド服。それらを統一するようにしゅっと伸びた銀髪。そしてミステリアスな雰囲気を加速させる眼帯。
(全体的に整ってるなぁ……ラウラって何でこんなに可愛いんだろう)
改めて、その魅力を再認識してしまう。
黒咲も同じく飾りっ気のないメイド服を着ているのだが、ラウラとはかなり異なった印象を見受けられる。後ろで結ばれた美しい黒髪は清楚感を醸し出しており、立ち姿にいたってはラウラよりもメイドとしての風格を出していた。
(それより様になってる千春さんはなんなんだろうね……?)
ラウラはきっと男装をしても『格好いい女の子』として人の目に映るんだろう、対してシャルロットは男装すれば『可愛い顔立ちの男の子』なのだから。そう考えると自然とまたため息が漏れた。
黒咲にいたっては女装すれば『可愛らしい女の子』になり、普段着を着ていれば『男物を好んで着ている女の子』になってしまうことに危機感を覚えていた。
「店長~、早くお店手伝って!」
フロアリーダーがヘルプを求めて声をかける。すぐに店長は最後の身だしなみをして、バックヤードの出口へと向かった。
「あ、あの、もう一つだけ」
「ん?」
「このお店、なんていう名前なんですか?」
店長は笑みを浮かべてスカートをつまんであげ、大人びた容姿に似合わない可愛らしいお辞儀をした。
「お客様、
「デュノア君、4番テーブルに紅茶とコーヒーお願い」
「わかりました」
カウンターから飲み物を受け取って、@マークの刻まれたトレーへと乗せる。
そんな単純な動作にさえシャルロットとの気品がにじみ出ていて、臨時の同僚に当たるスタッフたちは、ほうっとため息を漏らした。
初めてのアルバイトだというのに、その立ち振る舞いには物怖じした様子はなく堂々としていて、けれど嫌味ではない。
そんなシャルロットの姿に、女性客のほとんどが見入っていた。
「おまたせいたしました。紅茶のお客様は?」
「は、はい」
自身の方が年上であるにもかかわらず、女性は緊張した面持ちでシャルロットに答える。
紅茶とコーヒーをそれぞれの女性に差し出す前に、シャルロットはお店の『とあるサービス』の要不要を尋ねた。
「お砂糖とミルクはお入れになりますか?よろしければ、こちらで入れさせていただいきます」
「お、お願いします。えっと、砂糖とミルク、たっぷりで」
「わ、私もそれでっ」
実はこの客、常日頃からノンシュガー・ノーミルクなのだが、今日に限ってはあえて、目の前の美形執事に奉仕して貰いたい一心でわざとそう答えたのであった。
その内心を知ってか知らずか、シャルロットは柔らかな笑みを浮かべてうなずく。
「かしこまりました。それでは、失礼いたします」
シャルロットの白く美しい指がスプーンをそっと握り、砂糖とミルクを加えたカップの中を静かにかき混ぜる。
時折僅かに響くかちゃかちゃという音でさえ、女性客は息をのんで聞き入った。
「どうぞ」
「あ、ありがとう」
すっとシャルロットの手元から差し出されたカップを受け取り、女性はドキドキしたようすでそれを口につける。
次に同じようにコーヒーも混ぜてもらった女性客も、緊張からかぎくしゃくした動きでわzかに一口だけ飲んだ。
「それでは、また何かありましたら何なりとお呼び出しください。お嬢様」
そう言って綺麗にお辞儀をするシャルロットはまさしく『貴公子』としかいいようのない雰囲気を放っていて、女性客はぽかんとしたままうなずくのが精一杯だった。
(ふぅ。接客業ってやってみると結構大変なんだね。二人の方は大丈夫かな?)
仕事をこなしつつ、シャルロットは黒咲とラウラの姿を探す。
そして丁度、黒咲が男性客一名と女性客二名のテーブルで注文を取っている所を見つけた。
「ご注文をお伺い致します」
「コーヒーを二つとオレンジジュースを一つ。以上でお願いします」
「コーヒー二つとオレンジジュースをお一つですね」
注文を繰り返し言葉にだし、間違いがないか確認したところで男性が「あっ」と声を漏らす。
「すみません、コーヒーに練乳と砂糖って入れられますか?」
「練乳ですか……?」
一応メニューにはトッピングとして練乳が記載されているが、まさかコーヒーに入れるとは思わず黒咲はきょとんとしてしまった。
コーヒーに練乳など、ゲロ甘なコーヒーになってしまうが大丈夫なのかと心配そうに尋ねる。
「はぁ……比企谷くん。流石にここでは辞めて頂戴、それに本当に糖尿病になっても知らないわよ?」
「そうだよヒッキー、そろそろ練乳は卒業しよう?MAXコーヒーも!」
「はっ、お前らにあの良さは分からないさ。MAXコーヒーは俺のソウルフードだから辞めるつもりはない」
「全く……あなたという人は。すみません練乳大丈夫ですか?」
「はい、問題ありませんよ。メニューにもトッピングとして記入されているので」
「ではお願いします」
変わったお客様を相手している黒咲を見て、苦労してそうだなと思ってしまう。ときにはイレギュラーなお客さんの対応もしなければならないのだと、シャルロットは要注意しながら接客へと専念したのだった。
「ねえ、君可愛いね。名前教えてよ」
「…………」
「あのさ、お店何時に終わるの?一緒に遊びに──」
ダンッ!と、テーブルに垂直に置かれた、というよりは半ば叩きつけられたコップが大きな音と一緒に水滴を散らす。
面食らっている男達を前に、ラウラはぞっとするほど冷たい声で告げた。
「水だ。飲め」
「こ、個性的なんだね。もっと君のこと知りたくなっ──」
台詞の途中で、しかもオーダーをとることなくラウラはテーブルを離れる。
そしてカウンターに着くなり何かを告げ、少しして出されたドリンクを持っていった。
「飲め」
さっきよりは多少優しめにカップをテーブルに置くラウラ。
それでも弾んだカップからは中のコーヒーが遠慮なくこぼれた。
「え、えっと、コーヒーを頼んだ覚えは……」
「なんだ。客でないのならば出て行け」
「そ、そうじゃなくて、他のメニューも見たいわけでさ……」
ラウラに好印象を持たれたいが為か、それとも有無を言わせぬ態度に萎縮しているのか、男は言葉を探りながら会話を続ける。
実際、女性優遇社会でこんな風に初対面の女子に声をかけられるというのは、勇者かどうしようもない馬鹿のどちらかでしかないだろう。そして、男達は確実に後者である。
「た、例えば、コーヒーにしてもモカとかキリマンジャロとか──」
言葉を遮るように、ラウラは全く笑っていない目のまま、その顔に嘲笑を浮かべた。
「貴様ら凡夫に違いが分かるとでも?」
「いや、その……すみません……」
結局、ラウラの絶対零度の視線と許しのない嘲笑に折れて、男達は小さくなりながらコーヒーをすすった。
「飲んだら出て行け。邪魔だ」
「はい……」
ドイツの冷水と呼ばれたラウラの一面は、今でも健在のようだった。
「なにやってんだ葉山のやつ……」
「いいのよ、もう関係ないから」
「うんうん!今日は三人で楽しもう」
次の番外編
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おねショタ(無効票)
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1シャル&ラウラと千春(受け)
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2シャル&ラウラと千春(攻め)
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メス堕ち(無効票)(千春総受け)
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束と千春
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千冬と千春
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シャル&ラウラと千春
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一夏と千春
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オマケ(無効票)
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千春&箒「これは練習だから浮気じゃない」
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千春&セシリア&鈴「IS3分クッキング」