※この作品はR-18です。

女装して入学することになった暗殺者によるIS学園生活   作:灰崎 快人

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第57.5話「ベリーと3匹の猫」

「あっという間に夕方か」

強盗事件から二時間後、三人は残っていた買い物を済ませて駅前のデパートから出ると外はもうオレンジの光景に変わっていた。

「買い物はもう全部か?」

「うん。っていうかラウラも千春さんも、自分のものなのに後半は『任せる』とか『好きにしろ』とかばっかりだったでしょ?ダメだよ、女の子なんだから」

「いや俺男……」

「あんまり小言ばかり言うな。服のセンスでディスられるぞ」

「ディスられないよっ!!少なくとも今日買った服はファッション雑誌にも載ってたやつだよ!?」

私服をディスられたことがあるのか、シャルロットは強くラウラの言葉に反撃していた。

それに引き換え女の子の枠内に自然と入れられていた黒咲はしょんぼりとしている。「俺は男」と言われても、今の黒咲がいったとしても誰も信じないのは明白だろう。

「あ、そうだ。向こうの公園に行ってみようよ」

「公園……あぁ、城址公園か。元は城だったかな」

「ほう。それは興味深いな。日本の城は守りやすく攻め難いと聞く。城跡とは言え一見の価値はありそうだ」

相変わらずどこまでもミリタリーな着眼点だが、それについてはシャルロットは口を挟まなかった。個人の感覚は、観察し合い、認識し合うものであって押しつけるものではない。

「それにしても、結構買っちゃったね。店長がこっそりお給料入れてくれたから、予定よりも多く買えて助かったね」

「金か?それなら口座に二千万ユーロほどあるはずだが……」

二千万ユーロ、日本円にすると現在三十億程度だろうか?そんな大金をさらっと言ってみせるラウラに、シャルロットはとても驚いていた様子だった。

「そんなに持ってるの!?」

「まあ、私は生まれた時から軍所属だしな。それにISの国家代表候補生なってからは、その分も上乗せされている」

(僕もそれなりに貰ってるけど、流石にそこまでは……)

「しかし、引き出し方を知らん。一度も使ったことないからな」

「あーうん。そっか……。とりあえずラウラ、貯金するのは良い事だと思うから、あとはお金の使い方も覚えていこうか」

「うむ。よろしく頼む。しかし、今までは個人で金銭を持つ必要がなかったからな。軍から受け取る支給品で事足りていたし、潜入探査の時も補佐エージェント以外からは物品を受け取らないようにしていたぞ。でなければ容易に足がつく」

「そういうのは良いんだよ。とりあえず、公園についたらクレープ屋さん探そうよ。」

「クレープ屋?なぜ……」

「えっと、休憩時間にお店の人に聞いたんだけど、ここの公園のクレープ屋さんでミックスベリーを食べると幸せになれるおまじないがあるんだって」

「『おまじない』というのは日本のオカルトか?」

「ジンクスといえばわかるかな?」

なるほど験担ぎか、とうなずくラウラに対して、シャルロットは少し困ったような顔をする。

(間違ってないんだけど、もうちょっと女の子っぽい響きがおまじないなんだけどな……)

ともあれ、今は付合って貰っているのだからとシャルロットは早速お店を探す。

しかし、探すまでもなくすぐに見つかった。

おそらくは部活の帰りやお出かけの寄り道なのだろう、女子高生が局所的に多く居るその一角にそのお店はあった。

「じゃ、早速頼んでみようよ」

ラウラと黒咲の手を引いて、シャルロットはバン車を改造した移動型店舗であるクレープ屋にはいる。

「すみませーん、クレープ三つください。ミックスベリーで」

そう言うと、お店の主であろう二十代後半の男性が、無精ヒゲにバンダナという風体でありながら人懐っこい顔で頭を下げる。

「あぁー、ごめんなさい。今日、ミックスベリーは終わっちゃったんですよ」

「あ、そうだんですか……残念。ラウラどうする?」

「そうだな……ではイチゴをくれ」

二つだ、と指を二本立てて付け加え、ついでに料金も全額払ってしまう。

「ラウラ、いいよ。ここは僕が出すってば。付合ってもらってるんだから」

「そんなことか。気にするな。それより早速給金の使い方を試してみたぞ。何点だ?」

口調こそカケラも十代女子っぽくないラウラだったが、そんな風に真っ直ぐ言われてしまうとシャルロットとしては白旗を振るしかない。

「百点だよ」

「そうだろうそうだろう」

機嫌が良さそうにそう言って、ラウラは出来たてのクレープを受け取る。

「あそこのベンチで食べるとしよう」

「そうだね」

二人は少しお店から離れたベンチに並んでかけると、クレープをはむっとかじっていた。

「お客さんは?」

「それじゃあブルーベリーを」

それを聞くと、店主は少し驚いた後すぐに元の笑顔に戻った。

「はい、ありがとうございます」


「んむ、んっ。これ、美味しいね!」

「そうだな。クレープの実物を食べるのは初めてだが、旨いと思うぞ」

噂のミックスベリーを食べることはできなかったことに最初は少し沈んでいたシャルロットだったが、出来たての柔らかさもあってその味についつい声が弾んでいた。

「おいしー。せっかくだからまた来ようよ。次は皆も誘ってさ」

「そうか。では私は千春と二人っきりで来るとしよう」

「そ、それはダメ!もうっ」

しかし、ここまで素直に自分の気持ちを打ち明けられるラウラが正直羨ましくある。

(そりゃ、僕だって千春さんと二人っきりで来られたら嬉しいけどさ……)

そう思いながら彼の方を見ようとしたシャルロット、だが隣に千春の姿はなかった。

「あれ?千春さんは?」

「む?先ほどまで一緒にいたはずだが……」

周囲を見ると、クレープを持ってこちらに向かってくる黒咲の姿が見えた。たしかに二人がクレープを注文した際には側にいたので、自身のクレープを待っていたということなのだろう。

「どうした?そんなに慌てた様子で」

「千春さんの姿が見えなかったからさ」

「あー、なるほどね。シャルロット達の後にクレープ頼んでたからな」

はむっとクレープをかじりながら黒咲はシャルロット達が座っているベンチへ腰を下ろした。二人のクレープとは違う味を頼んだようで、黒咲の口には紫色のソースがついていた。

「千春さんはなにを頼んだの?」

「んっ、ブルーベリーだよ。食べてみる?」

そう言いながら黒咲はシャルロットの前にブルーベリーのクレープを差し出す。

「いいの?」

「イチゴ味も食べてみたいしね」

「ありがとう千春さん」

「わ、私も良いだろうか?」

「もちろん、いいよラウラ」

二人は差し出されたクレープを一口食べる。

「あ、そういえばあのクレープ屋だけど、ミックスベリーはそもそもメニューになかったよ」

「え?そうなの?よく見てるんだね」

「まあね、だけどご所望のミックスベリーは食べられただろ?」

「「?」」

「このクレープの味は?」

「ブルーベリーだな」

ほんの少し、黒咲がニヤッと笑ったのを見て、シャルロットはピキーンとひらめいた。

「ああっ!ストロベリーとブルーベリー!?」

「ご名答」

楽しげに黒咲はシャルロットのクレープを一口かじる。

「そっかぁ……『いつも売り切れのミックスベリー』ってそういうおまじないだったんだ」

なるほどなぁと頷きつつ、さっきまでラウラに『女の子的な感性が足りない』と思っていた自分が途端に恥ずかしくなってくる。

見えているつもりでも見えていないときのかっこ悪さというのを味わって、シャルロットはさっきまでと違う赤みで頬を染めていた。

(そっか。つまり、そういうことかぁ……それは確かに、彼氏とミックスベリーを食べたら、幸せだよね)

そんなことを思いながらもシャルロットは黒咲を見つめる。美味しそうにブルーベリーのクレープを楽しんでいる様子の黒咲の頬には、ちょこっとだけソースが付いていた。

「千春さん」

「ん?なに、シャル──」

ぺろっ。──と、シャルロットは黒咲の頬を舐めた。

「なっ、なにを……」

「ソースがついてたから」

「だからって……」

「両手が塞がってたしね?」

「……全く、今度はちゃんと言ってくれよ?」

やれやれといった表情でクレープを食べ進める黒咲。その頬は微かに赤色に変わっていた。

(これだから女の子は少し苦手だ。こっちが予期しない事を平然とやってのける)

それが羨ましいとは思いながらも、自分には到底出来ない事なのだと思い悩む。今年は黒咲の人生にとって大きく変化をもたらす良いきっかけになっていた。

(一生縁がないと思っていた生活、再び笑い合って話せるようになった幼馴染みとの関係……悪くないな)

きっとこの時は黒咲にとって生涯忘れることはないだろう。

偽りの十五歳として、再び青春を謳歌しているこの時を──。

「それにしても、夏ももう終わりかな……」

「そうだな」

お互いに言わずともわかっている。今年の夏は──いや夏に限らず、今年というのは大きな節目になった事。青春のではなく、人生の節目だと、今は思いたい。

きっとふたりとも生涯忘れることはないだろう。

初恋と出会った、15歳という時間を──。


「こ、これは、いったいなんだ……?」

「やられた……」

「ん~♪かわいいーっ。ラウラも千春さんもすっごく似合うよ!」

「だ、抱きつくなっ。う、動きにくいだろう……」

「あの時疎かな生返事をしていなければ、こんな……」

「ふっふー、ダ~メ。猫っていうのは、膝の上で大人しくしてないとね?ほら千春さんは大人しく出来てるよ?」

「お、お前も猫だろうが……千春はどちらかというと後悔してるぞ」

そんな楽しげな声が聞こえるのは黒咲の寮室である。

夕飯を済ませて特にすることもなくゴロゴロしていた黒咲は、シャルロットの提案で早速今日買ったばかりのパジャマを着てみよう!ということになったのだった。

「これは……本当にパジャマなのか?」

「うん、そうだよ。寝やすいでしょ?」

「ね、寝てないからわかるはずないだろう」

ラウラが疑うのも無理はない。それは確かにパジャマではあるのだが、一般的には余り見ないタイプのパジャマである。

袋状になっている衣服にすっぽりと体を入れ、出ているのは顔だけ。しかもフードにはネコミミが付いており、手先足先にはこれまた肉球が付いている。

簡単に言ってしまえば猫の着ぐるみパジャマだった。

「この歳でこれを着ることになるなんて……思わなかったな」

「千春さんのは大きいサイズだから暖かそうだね」

「……」

三人の今の格好はというと、ラウラが黒猫パジャマ、シャルロットが白猫パジャマで黒咲が三毛猫パジャマである。特に、シャルロットはこれを三人で着てから、ずっと黒咲とラウラを後ろから抱きしめている状態だった。相当気に入ってるらしい。

「ほら、ラウラ。せっかくだから、にゃーんって言ってみて」

「こ、断るっ!な、なぜそんなことをしなければならない!」

「えー、だって可愛いよ~・可愛いのはなにより優先されることだよ~」

今にもポワポワと音が聞こえてきそうなハッピースマイルッ!のシャルロットはラウラに取っていつも以上の強敵とかしていた。

とにかく『可愛いからいい』『これを着ていないなんてとんでもない』『残念ですが要求は却下されました』『そんな…私は…企業だぞ…』『殺してやるぞ、天の助』『またしても何も知らない大泉洋さん(23)』という、いつもとは百八十度違う理屈なし根拠なし交渉なしの強引なやりとりで、気がつけばシャルロットの手のひらで踊らされていた。

ラウラは抵抗の意思を見せていたが、黒咲に関しては逃げ場などどこにもないため既に諦めがついていた。

「ほらほら、言ってみようよ~。にゃーん♪」

「にゃ、にゃ~ん……」

照れくさそうに猫の手振りまでつける眼帯黒猫ラウラに、シャルロットはますます幸せのパーセンテージを上げる。

「ラウラ可愛い~っ。写真撮ろう?ね?ね!?」

「こ、これを記録に残すだと!?断固拒否する!」

「そんなこと言わずにさ~」

やんややんやと賑わっている中、黒咲は何時になればこの空間から解放されるのだろうと、一人黄昏れていたのだった。

「というか千春もにゃーんさせるべきだろ!何故私だけが!」

「あ、そうだね。せっかくだし千春さんにもにゃーんってしてもらおっか」

「──へ?」

自分に矛先が向いてくるとは思わなかったのか、実に間抜けな声を発する黒咲。それに対してじわじわと距離を詰めていく二人に、黒咲は嫌な汗をかきながら後ろへと後退していく。しかしここは寮の自室、逃げ場は一つしかないのはこの場にいる全員が知っていたことだった。

「お、俺はやらないからな!?」

「ダメだよ~猫は膝の上で大人しくしないとね?」

「そうだぞ千春。お前も今は猫だ、にゃ~んと返事をしないとダメだろ?」

前門の黒猫に後門の白猫。その間に挟まれた三毛猫は為す術なく大人しく膝の上で撫でられているのだった。




「ほらほら。にゃ~ん♪」
「にゃ~ん。だぞ千春」
まるでお手本のように猫の仕草をするシャルロットにラウラ。黒咲の健闘もむなしく、シャルロットに後ろから抱きしめられ身動きなど取れない状態になってしまっていた。
「はあ……に、にゃ~ん?」
少し困惑しながらもこれで良いのか?といった感じで猫の鳴き真似をする黒咲。少し恥じらいが感じられ、頬を少し赤く染めて上目遣いをしていた。
「「…………」」
少しの間、沈黙が訪れる。
「な、なんだよ?ちゃんとやったぞ?」
おどおどしながらも黒咲はもういいだろう?と言わんばかりの態度を取っていると──
「えい」
「おわぁぁ!?!?」
突然ラウラが黒咲のパジャマに手をかけ、ジッパーを一気に下げる。そしてそのまま自身の着ていたパジャマを脱いで、黒咲の中へと無理矢理侵入してくる。
「ちょっとラウラ!?」
「確かに暖かいな。こうして密着していると特にな」
「なななななっ!?!?」
黒咲はなるべくラウラの事を意識しないように目を閉じる。この機会を逃すものかとラウラは着ぐるみの中で黒咲の身体を優しく抱きしめ密着していた。
「ラ、ラウラ中着てなかったな!?」
「パジャマを着るのに下着は要らないのだろ?」
「「そんな訳あるかぁぁぁぁ!!!!」」
急いで自身の中からラウラを取り出そうとしたその時───
「ひゃんっ!?」
と、千春が男らしからぬ声を漏らした。
その声色に驚くシャルロットと、なにやら服の中でもぞもぞしているラウラ。
千春は二度とその声を出さないように口を押さえながら必死にラウラを抑えつける。
「な、なにしてるのラウラ?」
困惑したシャルロットはそっとラウラの顔があるであろう位置に耳をすませる。
れろっ……ちゅっ……
そんな音が中から聞こえてくる。
「ら、ラウラ?ラウラ!?」
これには流石のシャルロットも千春に加勢し、服の中からラウラを取り出した。
「むぅ、良いところだったのだが」
「良くないから!千春さん凄い顔してるからね!?」
そう言ってシャルロットは千春の方へと視線を移す、それが不味かった。
今の千春の姿は下着がめくれて胸が露出しており、ラウラによって刺激を受けた為小さな突起が出来てしまっていた。
さらにこの時の千春の表情も不味かった。顔を赤く染めて口元を隠し、少し涙目になってしまっていたのが、シャルロットの心を刺激してしまっていた。
そうして気がつけば彼女は先ほどまでラウラが居た中に潜り込むのだった。
「はむっ……ちゅっ、れろれろっ」
「んんっ、やめて……」
「な、なにをしている!止めたと思えば今度は貴様が取り込まれて居るではないか!」
激高したラウラは必死にシャルロットを剥がそうとするが、体格差のせいなのかそれともシャルロットの抱く力が強いのか分からないが、しばらく離れることはなかったそうだ。

次の番外編

  • おねショタ(無効票)
  • 1シャル&ラウラと千春(受け)
  • 2シャル&ラウラと千春(攻め)
  • メス堕ち(無効票)(千春総受け)
  • 束と千春
  • 千冬と千春
  • シャル&ラウラと千春
  • 一夏と千春
  • オマケ(無効票)
  • 千春&箒「これは練習だから浮気じゃない」
  • 千春&セシリア&鈴「IS3分クッキング」
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