女装して入学することになった暗殺者によるIS学園生活 作:灰崎 快人
「……流石に人が減ると広く感じるな」
静かになったロッカールームで、黒咲は《ノワール》のコンソールを呼び出して調整を始めていた。
(BT兵器パック〘S〙に〘マルチロックオンシステム〙の調整、初期段階ではあるものの俺に適性があるのは確認済み。あとは本番でどこまで動かせるかだな……)
そんなことを考えていると、突然目の前が真っ暗になった。比喩ではなく本当に。
「っ!?」
「だーれだ?」
…………誰だ?
背中から聞こえた声はクラスメイト達よりも少し大人びている。そのくせ、楽しさがにじみ出ているような笑みを言葉に含んでいて、イタズラを楽しむ子供のように聞こえる。いや子供か……
目を塞いでいるのは指のようで、妙に冷たかった。
「ロッカールームにいるのは私が最後だからクラスメイトじゃない、そして大人びている声からして1年生でもない。かと言ってそこまで大人びている訳ではなく背伸びをしているような声……と言うことは二年生。だけど二年生とはそこまで縁もない。つまり答えられないのが答え」
「よく声だけで二年生って分かったわね」
そう言って解放してくれる手の持ち主を確認しようと振り返ると──
「本当に誰?」
本当に知らない女子だった。しかし彼女からの発言で二年生である事は分かっている、その証拠にリボンの色は二年生の色である。もしかしたら不審者がこの学園に侵入してきた可能性を考え、黒咲は一旦距離を取って警戒態勢を取っていた。
「そこまで警戒しなくてもいいじゃない」
目の前の女子はどこから取り出したのか、ひとつの扇子を口元へと持って行く。
改めて見てみると、目の前の二年生は不思議な人だった。
全体的に余裕を感じさせる態度。しかし嫌味ではなくどこか落ち着かせるような雰囲気がある。けれどそれとは逆に浮かべた笑みはイタズラっぽく、違う意味で黒咲を落ち着かせなくさせる。そして一番は……この女は何かを隠していると言うことだった。
「あの、貴女は……」
「あっ」
黒咲の後ろに視線をずらす二年生。なにかを誘導したいのだろうがそんなもの黒咲には効かなかった。黒咲は背後に気配を感じていないので決して振り返ることはしなかった。
「引っかからないか」
「答えてください。貴女は一体……まさか不審者!」
「ふふっ、人を疑うのも良いけど急がないと織斑先生に怒られるよ」
「……?」
時間を確認するために壁の時計を見る。まだ授業開始の2分前であった。
「まだ時間は……もういない、か。」
もう一度謎の二年生を見ると、もうそこには誰も居なかった。
「だけどツメは甘かったな……
「ですからっ!実弾装備を送ってください!」
『その要求には応えられません。セシリア・オルコット。あなたのブルー・ティアーズはBT兵器の実働データをサンプリングすることです。実弾装備のデータは対象外です』
「わかっています!わかっていますとも!……ああもうっ!融通の利かないっ!」
六限目の実習授業が終わり、二クラス分の女子を詰め込んだロッカールームは熱気とおしゃべりの声で賑わっている。
集団から少し離れた角で、セシリアは携帯端末を片手に本国イギリスのIS整備部担当者に国際回線でしつこく交渉しているのだった。
『そもそも、どうして急に実弾装備が必要なのですか?』
「うっ……!」
理由は単純にして明確であったが、それを口に出すのははばかられた。
BT兵器しか積んでいないISでは織斑一夏の《白式》には勝てないから、である。
(エネルギーを無効化する盾を貫通出来ないから、どうあがいても私が負けますわ)
午後の実習で軽く空中制動訓練と併せて対戦を行ったが、セシリアだけは織斑に負けてしまった。
あの燃費の悪い《白式》第二形態に負けたとあって、セシリアのプライドはかなり悲惨な状態になっている。
(わ、私だけが……私だけがっ!)
苦虫を噛み潰した様な表情で押し黙っていると、隣で話を聞いていた黒咲がそっと肩に手を寄せていた。
「黒咲さん……?」
「ちょっと電話替わって貰える?」
「えっ?ま、まあ問題無いと思いますけれど……」
そういってセシリアは黒咲に携帯端末を明け渡し、受け取った黒咲はゆっくりと電話相手の担当官と話をし始める。
「失礼します。私セシリア・オルコットさんの友人である黒咲千春と申します」
『黒咲千春さんですか、何故電話を替わられたのですか?』
「セシリアに変わって頭の硬いバ鹿野郎をどうにかしようと思ったので。セシリアさんが要求している実弾装備ですが、はっきり言ってしまえば必要ですよ。エネルギーを無効化されてしまう装備が出てきてしまえば《ブルー・ティアーズ》で通用する装備はミサイルとインターセプターだけ。はっきり言って良い的ですね。まあそこまでの事を考えられないお馬鹿さんだとは思いませんでしたが」
『……まるでエネルギーを無効化する装備があるとでも言いたげですね』
「実際にありますよ?織斑一夏の専用機《白式》にね……」
実在することを知るやいなや、電話先の相手は無言になってしまった。
『しかし実弾装備を送ることは出来ません。それに先々月の新装備大破についてはこちらでも非常に困っているのですが?』
「それはアメリカとイスラエルに文句を言ってください。それにBT兵器をスラスターに代用するというなんともお粗末な装備でしたね」
『…………』
「少しはまともな装備も送ってあげてください」
『……わかりました、考えておきましょう』
どうやら折れてくれたのか《ブルー・ティアーズ》の実弾装備を送ってくれるようだ。セシリアに対してOKマークを作ると、瞳を光らせながら頭を下げられた。とりあえずこれでセシリアの件は解決した。あとは個人的な事を言っておこう。
「ありがとうございます。それからもう一つだけ」
『……何でしょう?』
「イギリスの第3世代型IS《サイレント・ゼフィルス》……簡単に強奪されてしまうほどイギリスの防衛は薄いんですか?それともまともな装備を作っていないから対抗手段もありませんでしたか?」
《サイレント・ゼフィルス》。その機体名を聞いたタイミングで電話相手の担当官が驚いた様に声を荒げていた。
『貴様!それを何処で聞いた!』
「さぁ?少なくとも一般学生にも知られるくらい世界で噂なんじゃないですか?それでは失礼します」
『待てっ!話は────』
ブツッ。電話が切れて、トーン音だけが響く。
「はい、お話終わったから返すね」
「……最後何か大声を出されていましたが大丈夫でしょうか?」
「大丈夫大丈夫。そこまで気にしなくて良いよ」
(《白式》が第二形態になって一番影響が無かったのは、シャルロットさんと黒咲さんでしたわね……)
それは装備のほぼ全てが実弾兵器であるためだったが、それを差し引いてもシャルロットと黒咲は強い。
(現在の成績では順に黒咲さん、ラウラさん、シャルロットさん、鈴さん、そして箒さんに織斑さんにわたくし……)
また深いため息が漏れている。何気なく呼び出したISのデータを見て、BT兵器稼働率三十七%の数字に言いようのない暗雲が立ちこめていた。
(最大稼働時はビーム自体も自在に操れると聞いていますけど……)
本当なのだろうか、と思わずにはいられない。
(過去に一度もその制御に成功していませんし……机上の空論ですわね……)
そもそもBT適正Aという存在が国家代表候補生の中でセシリアしかいない。
無論、だからこそのIS学園入学に専用機持ちという待遇だったが、思うようにデータが取れないのではいつまで続くかわからない。
「はぁ……」
「セシリアさん、この後学食カフェ行こっか。気持ちが沈んだままだと嫌でしょ?」
「そうですわね……」
それでもまだ元気が戻らないセシリアを心配して、話を聞いていたシャルロットが提案してくる。
「そうだ。せっかくだから専用機持ち全員で行こうよ。大勢だと楽しいし」
「いや、織斑くんを呼ぶのは辞めておこう」
「どうして?」
「……少し察してくれると嬉しいな」
「ふぅ……黒咲さんのお気遣い、ありがたく頂戴致しますわ」
気持ちを切り替えて顔を上げると、セシリアは自分のロッカーへと向かう。
その足取りはもう普段通りの自信満々なもので、それがなにより彼女に似合っていた。
次の番外編
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おねショタ(無効票)
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1シャル&ラウラと千春(受け)
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2シャル&ラウラと千春(攻め)
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メス堕ち(無効票)(千春総受け)
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束と千春
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千冬と千春
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シャル&ラウラと千春
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一夏と千春
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オマケ(無効票)
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千春&箒「これは練習だから浮気じゃない」
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千春&セシリア&鈴「IS3分クッキング」