※この作品はR-18です。

女装して入学することになった暗殺者によるIS学園生活   作:灰崎 快人

97 / 106
六章
第80話「平和な時間・上」


「えっ?一夏の誕生日って今月なの?」

「お、おう」

寮での夕食、いつもの面々で食事を取りながらの談笑をしていると、突然シャルロットが大声をあげた。

そんなに驚くようなことだったんだろうか?シャルロットにしては珍しく立ちあがってまでいる。

「い、いつ!?」

「九月の二七日だよ。少し落ち着けって」

「う、うん」

そういって椅子にかけ直すシャルロット。

「日曜日だよね?」

今度は立ちはしなかったものの、身を乗り出してくる。……一体どうしたんだシャルロットは。

「日曜だな」

「そっか、そうだよね。うん!」

呟きながら頷くシャルロットを不思議に思いながら眺めていると、隣でビーフシチューを食べていたセシリアが、パンを置いて話しかけてきた。

「一夏さん、そういう大事なことはもっと早く教えてくださらないと困りますわ」

「え?お、おう。すまん」

よくわからんが謝っておこう。

「とにかく、二七日の日曜日ですわね」

セシリアは純白の革手帳を取り出すと、二七日の欄にぐりぐりと二重丸を描く。そんなに重要なことなんだろうか?

「お前はどうしてそんなことを黙っているのだ」

シャルロットの隣、俺から見て斜め右前のラウラが少し呆れた口調で告げる。

「え?いや、別に大したことじゃないかなーって」

「なるほどな。しかし、知っていて黙っていたやつもいることだしな」

「「うっ!」」

ラウラに一瞥されて、ダブル幼馴染みが固まっている。それを見てふふっと微笑む黒咲は相変わらずだと思った。

ちなみにメニューはというと、ラウラが季節のサラダパスタ、箒がサンマ定食、鈴が麻婆定食、黒咲はコーヒー……パソコンを弄っているが、食べなくて良いのか?

そして俺はだし巻き卵定食。なんと言ってもダシが絶品で、お気に入りの一品だ。

「べ、別に隠していたわけではない!聞かれなかっただけだ」

「そ、そうよ!聞かれもしないのに喋るとKYになるじゃない!」

箒と鈴はそんなことを言いながらご飯を口の中へと放り込んだ。

なんだろう、すごく言い訳じみている……

「とにかく!九月二七日!一夏さん、予定は空けておいてくださいな!」

「あ、ああ。一応、中学の時の友達が祝ってくれるから俺の家に集まる予定なんだが、皆も来るか?」

「もちろん!何時から?」

「えっと……たしか四時くらいかな。ほら、当日ってあれがあるだろ?」

俺がそう言うと、全員が「そういえば」という顔をする。

ISの高速バトルレース『キャノンボール・ファスト』。本来なら国際大会として行われるわけだが、IS学園があるここでは少し状況が違う。

市の特別イベントとして催されるそれに、学園の生徒は参加することになる。

といっても専用機持ちが圧倒的に有利なため、一般生徒が参加する訓練部門と専用機持ち限定の専用機部門に分かれているのだが。

学園外でのIS実習となるこのイベントでは、市のISアリーナを使用する。臨海地区に作られたそれはとてつもなくでかく、二万人以上を収容できるらしい。

前に何処かのアイドルがコンサートを開いたが満員にすることは出来ず、それ以降ライブなどの使用申し込みはないとのこと。

まぁ、元々ISのためだけのアリーナだしなぁ。

「ん?そういえば明日からキャノンボール・ファストのための高速機動調整を始めるんだよな?あれって具体的には何をするんだ?」

「基本駅には高機動パッケージのインストール、だけど織斑くんの《白式》には無いよね」

黒咲がコーヒーに舌つづみしながらパソコンから目を離さず告げる。

「その場合は駆動エネルギーの分配調整とか、各スラスターの出力調整とかかなぁ」

白身フライを箸で挟み、あーんと黒咲の口元に近づけるシャルロットが、言葉を続けた。

黒咲はやんわりと断っていた。

「ふぅん。たしか高機動パッケージっていうと、セシリアの《ブルー・ティアーズ》と黒咲の《ノワール》があるんだよな?」

「ええ!わたくし、セシリア・オルコットの駆る《ブルー・ティアーズ》には、主に高機動戦闘を主眼に捉えたパッケージ『ストライク・ガンナー』が搭載されてますわ!」

ふふんと誇らしげにその腕で胸を押さえるセシリア。腰に当てた手もばっちり決まっていて、相変わらずモデルのようだ。

(最近元気なさそうだったけど、問題は解決したんだろうな)

最近のセシリアはというと、放課後黒咲と一緒に訓練を続けている。

詳しくは聞いていないが、どうやら学園祭が原因らしい。そのあたりは黒咲に聞いても教えてくれず、千冬姉からは原則質問禁止を言い渡された。

どうも、先日の一件は俺が思うよりも遙かに大事らしかった。

『亡国機業』──『ファントム・タスク』と呼ばれるその一団は、古くは五十年以上前から活動しているらしい。不確かな電脳世界の噂によると、第二次世界大戦中に生まれた組織だとかなんとか。

国家に寄らず、思想を持たず、信仰は無く、民族にも還らない。

ゆえに目的は不明。存在理由は不確かで、その規模もわからない。

まさに亡霊──と、そんな組織らしい。ラウラと黒咲が教えてくれた。

わかっているのは、組織は大きく分けて運営方針を決める幹部会と、スペシャリスト揃いの実働部隊の二つと言うこと。

そして近年、その主な標的はISであること。

(しかし、なんなんだ一体……)

あの一件で使用された《リムーバー》は『存在しない兵器』──つまり国家最重要機密の一つだと聞いた。『何処か』で開発されたそれを奪い、使用する謎の組織。

そして俺が誘拐されたとき、千春さんが実働部隊を壊滅状態まで陥れた。そして黒咲はオータムと呼ばれた女の腕を切り落とし、コアを奪った……

(あれ、もしかして黒咲って……千春さんの?)

考えていても仕方ないか。少なくとも、今はまだ。

そう思った俺は、話題のキャノンボール・ファストに意識を戻す。

「私の《ノワール》も高機動戦闘に備えたシステム『デスティニー』があるね。だけど通常時でも上手く調整すれば、システムを使わなくても良いかもしれない」

「確かに黒咲の機体は小型化されてるから、空気抵抗もないし素早そうだよな。そうなるとセシリアと黒咲が有利だよなぁ。今度超音速機動について教えてくれよ」

「…………申し訳ありません。それはまた今度。ラウラさんにお願いしてくださいな」

にこっと微笑むセシリアだったが、その顔が一瞬曇ったのを俺は見てしまった。

今は自分の訓練に時間を使わなくてはいけない。──そう、物語っている顔だった。

「そっか。わかった。じゃあラウラ、教えてくれ」

「いいだろう。最近は生徒会長にばかりかまけているお前を、私が教育してやろう」

先日、やっと俺の部屋から退去していった楯無先輩は、それでも相変わらずハードな放課後訓練を俺に叩き込んでくれている。

おかけで少しはまともになったんだが、ラウラから言わせれば『安全装置を外せるようになった新兵』程度らしい。

そういえば黒咲と模擬戦をしているときに「安全装置(セーフティー)が掛かっているよ新兵(ルーキー)」と言われ、確認している隙にコテンパンにやれてた事があったな。

さすがは千冬姉のお気に入りと教え子、言うことが辛辣だ。

「つうか、有利だって言うんならアンタも同じでしょうが。《白式》のスペック、機動性だけなら高機動型に引け取らないわよ」

ま、それを言ったら《紅椿》もなんだけどね、と付け加える鈴。

相変わらずISの事に関しては詳しい。中学の時にはそんなところを一切見なかったので、多分帰国してからの猛勉強によるものだろう。

うーん。凄いな、鈴。

「はぁ……うちの国は何やってんだか。結局《甲龍》用高機動パッケージ間に合わないし。シャルロットの所は?」

「『リヴァイヴ』は第二世代で元々これ以上の開発はないから、増設ブースターで対応するよ。まあ、元々速度関係は増設しやすいようになってるしね。『疾風(ラファール)』の名前は伊達じゃない!って感じかな」

シャルロットの愛機、リヴァイヴの正式名称は《疾風の再誕(ラファール・リヴァイヴ)》

──なるほど、納得だ。

「ふーん。ラウラのとこはどうすんの?そっちも第三世代でしょ?」

「姉妹機である《シュヴァルツェア・ツヴァイク》の高機動パッケージを調節して使うことになるだろうな。装備自体はあっちの方が本国にいる分、開発も進んでいるからな」

ISの専門的な会話になると、流石にみんな真剣な顔をしている。

「《シュヴァルツェア・レーゲン》の姉妹機かあ。どんな武装を積んでるんだ?」

「流石にそれは教えて貰えないよ。そういったことは国家重要機密だからね」

ツヴァイク。ドイツ語で『枝』の意味を指す。ラウラの『雨(レーゲン)』と対を成す存在というから、おそらくAICが積まれた全距離対応型のISなんだろう。

「いい顔をするようになったな、新兵」

にやり、俺の顔を眺めてラウラが口端をつり上げる。

「お褒めにあずかり恐悦至極であります、少佐殿」

ちょっとしたジョークを言い合えるくらいにはラウラの背角がわかってきた俺は、そんな冗談じみた言葉を返す。

ドイツの冷氷、ラウラ・ボーデヴィッヒ。涼しげな瞳はつららのように鋭く、だから綺麗に澄んでいる。だからこそ笑ったときが一番綺麗だ。

「そういえば黒咲はさっきから何をしているんだ?ずっとタイピング音が鳴り止まないんだが……」

確かに。黒咲は食事も取らずにずっとパソコンと睨み合っている。一体何をしているんだ?

「ん?これ?新しいシステムをつくってるんだよ。ちょっと事情があってこっちで完成させないといけなくなってね……」

「どんなのか……聞いたらダメか」

「うん。機体データの事もあるしどんな武装を追加するのか見られたら困るしね~」

「さっきも言ったでしょ?国家重要機密だって」

「一夏……」

周りから呆れられる視線を感じる。こればかりは本当に自分は馬鹿だと言わざるおえない。

黒咲は苦笑いして申し訳なさそうな表情をしている最中も、タイピング音は鳴り止まない。専用持ちも大変なんだな……

次の番外編

  • おねショタ(無効票)
  • 1シャル&ラウラと千春(受け)
  • 2シャル&ラウラと千春(攻め)
  • メス堕ち(無効票)(千春総受け)
  • 束と千春
  • 千冬と千春
  • シャル&ラウラと千春
  • 一夏と千春
  • オマケ(無効票)
  • 千春&箒「これは練習だから浮気じゃない」
  • 千春&セシリア&鈴「IS3分クッキング」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。