女装して入学することになった暗殺者によるIS学園生活 作:灰崎 快人
「ひ、酷い目にあった……」
四人からの詰問地獄からやっと解放された俺は、這々の体で自室に帰還した。
四人からって言ってもほぼ鈴とセシリアだったな。
「おかえりなさーい。お邪魔してるわよ」
「楯無先輩……」
がくっとうなだれる俺。
更識楯無。IS学園生徒会長。最強の称号を持つ女性。俺より一つ上。
性格は奔放というか、自由というか、猫みたいな人だ。
どうも俺の部屋の鍵の開け方にはもう慣れたのだろう、楯無先輩はベッドに寝転がってファッション雑誌を読んでいた。
「…………」
「どうしたの?あ、もしかしてパンツ覗こうとしてる?」
「あのですね!スカートで足ぱたぱたしないでくださいよ!イヤでも見えちゃうじゃないですか!」
「ふーん。みたんだ?」
「うっ!」
「問題です。楯無おねーさんの下着の色は?」
「…………ピンク色」
「あは。えっちぃ」
ああ、もうこの人は……
何が何でも俺をからかいたいらしい。部屋に来るたび、こんな調子だ。
「さて、今日はちょっとお話があってきたのよ」
「なんですか……」
「そんな警戒しないの。ちょっと真面目なお話。例の組織についてね」
例の組織、そうなると相手は一つしかいない。亡国機業の事だろう。
俺は、さっきまでとは打って変わって気を引き締める。
「非公式な情報なんだけど、先刻アメリカのIS保有基地が襲撃されたらしいわ。狙いはIS本体でしょうね。一夏くんも、自分のISを奪われないように気をつけてね」
「はい。同じ手を二回もくらいませんよ」
「よろしい。男の子はそうでなくっちゃね」
私が惚れるくらいいい男になってね、と付け加える楯無先輩。
また難易度の高いことを……。
っていうか、楯無先輩の理想って凄い高そうだよな。
実家もかなりの名家みたいだし。
っていうか、楯無先輩に似合いそうな男ってイメージが全然分からない。
どんな相手だと釣り合いがとれるんだろうか?
「あら、おねーさんの心配?大丈夫よ。私だってただの女なんだから、収まるところに収まるものよ」
「はぁ」
「案外、近くの人を好きになったりしてね」
「ははは」
近くの人って誰だろう……俺じゃないよな。
「なによその反応。傷つくわねぇ」
「いや、だって、ねぇ?」
「そういうこという子は、またくすぐり地獄が必要かしらねー」
「や、やめてくださいよ。本当にあれつらいんですから」
それに、くすぐられている間、楯無先輩の豊満な胸と柔らかな太ももとかが触れまくって男的にもとても危険だ。そう、あれは危ない。いろんな意味で。
「さーて、一夏くんの体を堪能しようかしら~?」
ワキワキと動かした手を俺に向ける楯無先輩。
いかん!まずい!逃げ出さなくては!
コンコン。
「い、一夏、少し良いか?」
突然のノックと共に聞こえてきたのは、箒の声だった。……た、助かった!
「お、おう!鍵は開いているから入ってきてくれ」
これで楯無先輩のくすぐり地獄から逃れられる!と思った俺は心の中でガッツポーズをした。
「し、失礼するぞ」
「いらっしゃい」
「え……」
微笑を浮かべる楯無先輩を見て、箒が固まる。
きょとんとした顔は見る間に表情を失っていき、なんだか恐ろしい無表情へと変わっていった。
「一夏、なにをしていた?」
「え?いや、何って、雑談くらいだけど」
「そうか……では私に入って良いと言ったのは何故だ?」
「何故って……え?箒、もしかしてなんか怒ってるのか?」
「何故そんなことを聞く?そんなことはない、私は怒ってなどいない」
ああっ!怒りの血管マーク&背後に修羅が見える!何故だ!何故なんだ箒!?
「じゃあ私はそろそろ帰るわね。箒ちゃん、ごゆっくり」
「はい」
ええ!?事態をややこしくするだけして離脱とか……どこの遊撃隊ですか、あなたは!
しかし世は無情。元凶の楯無先輩はさっさと部屋を出てしまった。
「えっと……」
「一夏、少し話をするとしょう」
顔色は変わらずゆっくりと箒がこちらに向かってくる。ドスン、ドスンとこちらに向かってくる箒を見た俺は、この時ばかりは死を覚悟した。
「ふぅ……」
少しばかり箒と織斑について話をし、買い物という名のデートにでも誘ってみたらどうかと提案した結果、すぐに行動に移した箒とその場でわかれた俺は自室のドアの前まで戻っていた。
セシリアや亡国機業の事を考えるとため息しか出てこなかった俺は、ゆっくりとドアを開けた。
「ちゃお♪」
「千春さん、今すぐこいつを追い出してくれ」
うわぁ……
そんな言葉をグッと飲み込む。
部屋には犬猿の仲(ただしラウラが一方的に苦手)のふたり、更識とラウラという組み合わせに俺のベッドで横になっているシャルロットがいた。
ラウラがもし猫だったら、総毛立ち&尻尾威嚇の状態さながらである。いつもより六割増して目をつり上げている。
「ため息なんてついたら幸せが逃げますよ?」
「今逃げてんだよな……」
「千春!早く追い出す方法を教えてくれ!」
「そんなこと言われてもな……」
「そんなに嫌わないでよ、ラウラちゃん。仲良くしましょう?」
「ちゃん付けするな!お前と仲良くする必要はない!」
ラウラと更識が言い合いをしているのを余所に、俺はパソコンを机の上に置き汗を流すために着替えを取り出す。
「シャルロット、いつからこんな感じなんだ?」
「10分前からかな。僕とラウラがこの部屋で待ってたんだけど、そこに楯無先輩がやってきてこの有様」
「はぁ……」
「今日は戻ってくるの遅かったね、誰かと話してたの?」
「ああ、箒とな。一夏の幼馴染みってのもあるし神社の件もあるから少しだけ話をな」
「……もしかして千春さんは一夏と箒が夏休み何してたか知ってたの?」
「知ってたもなにも、俺はその場にいたし。そもそも一夏が夏に神社に行ったのは俺が教えたからだ。箒は夏に篠ノ之神社でお手伝いをしているからな、二人っきりにさせるのには丁度良い。それに俺も少し外の空気を吸いたかったんだ。ここじゃ基本的に女子になりきらなくちゃいけないからな……」
「……大変だよね」
シャルロットも男装時代の苦労が分かるのか深く頷いていた。まだ彼女は短期間だったからいいものの、俺は既に5ヶ月以上もこの生活をしている。もう慣れていると言えば慣れているが、バレないように細心の注意を払わなくてはいけないので大変だ。
五ヶ月で五人にバレてる……一ヶ月に一人のペースか。もう少し注意を払わないとな。
「あら~そんなこと言ってると……」
「なっ!?ま、まさか、またアレをする気か!」
振り返ると怯えた顔をするラウラ。
なんのことだと思っていると、更識がワキワキと指を動かしながら手を広げる動作をする。
(ラウラ、くすぐり苦手なんだな)
くすぐり。それは強制的に相手を笑顔にさっせる更識の処世術──もとい、趣味だった。
「や、や、やめろ。バカ!ほ、本気で抵抗するぞ!」
「んっふっふっふー。さ~て、その強がりはどこまで続くかしら?」
俺の部屋で争わないで欲しいんだが、そんなことを言って引くような子達ではない。
さて、どうするか……あ、良い事思いついた。
「ラウラ、更識」
「なんだ?」「なに?」
「今すぐ部屋を出禁になるか、俺がシャワーから出るまで大人しくしているか……選べ」
「「っ!」」
声を低くし少しだけ殺気を出してみる。すると二人とも怯えはじめてしまった、このくらいでダメか……
「どうする?」
「「お、大人しくしてます……」」
「うん。素直な子は好きだよ」
俺は二人の頭を撫でた後シャワールームへと向かい汗を洗い流すのだった。
「まったく、人の部屋で暴れないでくれよ?問題を起こして報告しないと行けないのは俺なんだからな?」
シャワーを浴びて戻ってきた俺は、ラウラと更識を正座させて少々の説教をする。
個人的に安らげる場所で暴れられたら、俺の心のよりどころがなくなってしまう。それだけはなんとしても避けたかったのもある、あとは彼女達の事をあまり怒りたくない。
「うぅ……」「ごめんなさい」
反省している様子なのでこれ以上は何も言わない。二人に正座を解いてもいいと言いながら、俺はシャルロットの入れたココアに舌つづみをする。
「そういえばシャルロット、俺の部屋のシャンプー勝手に変えた?」
ずずずっと一度大きくココアを飲んでから、シャルロットに確認する。
「う、うん。どうだった?嫌な匂いじゃなかった?」
「ラベンダーの匂いだったな──ってそうじゃなくて。あまり勝手に変えないでくれると助かるんだが、予備のシャンプーも棚の中にあるからな」
シャルロットに髪を櫛で梳かれながら少しだけ注意をする。しかしそんな様子も慣れっこなのか、うんと返事をしながら俺の髪に櫛を入れていた。
「ふぁぁ……‥」
ちいさなあくびを漏らしながら、俺はココアをぺろぺろと舌で舐め飲む。
本当はもう少し起きて色々とやらなければならない事があるのだが、どうしても眠気には勝てないものだ。
(ブルー・ティアーズの実弾パッケージ、ノワールの〘EXAMシステム〙……前者はほぼ完成してあとは到着待ち、後者は試験運用しなければ効力がどうなのかわからない)
イギリスからブルー・ティアーズ用の実弾装備が送られてきたと、セシリアから聞いてすぐに試験運用をした結果、BT兵器を外してウェポンラックを取り付けるというお粗末なパッケージだった。
BT兵器の試験機なのにもかかわらず、肝心のBT兵器を外さなければいけないのはもはや設計ミスだろう。こればかりは俺とセシリアもため息しか出なかった。
その結果、BT兵器を外さずに肩や足などに実弾装備を取り付けられるようにブルー・ティアーズの改修&パッケージの再開発をし始めた。
イギリスには悪いがBT二号機であるサイレント・ゼフィルスが奪取された今、一号機であるブルー・ティアーズに改修を施しアップデートをしていくしかない。三号機が開発される可能性もあるが、多分また奪取されるだろうな。
〘EXAM〙に関しては完全に難航している。試作が出来たには出来たがテストを一度もしていない状態だ。基本的にこのシステムはノワールに組み込み、他のシステムと併用できるようにしている。システムはISのスペックを限界まで引き出させる仕組みになっている。〘デスティニー〙の最大稼働状態〘P.A.M.D〙と同時使用すれば間違いなく最速のISとなるだろう。ただし操縦者の事を考えなければ。
(やらないといけないことが沢山あるのに……)
「千春さん、今日はもう寝ちゃう?」
「それなら私はおいとまするわね」
そういって更識は部屋を出て行った。そういえば居たな……すっかり忘れてた。
「うーん……まだちょっとだけ起きる」
「あまり無理はするなよ。最近は夜遅くまで起きているだろう?教官が知れば怒られるぞ」
「はいはい」
ぼーっとした口調でまたココアをちびちび飲みながら、パソコンを手にする。
パソコンの画面を開き一件のメールを書き始める。正直彼には貸しがある、それをこれで返して貰えないかとメールを送ることにした。
(それにあっちの現状も知っておきたいからな……)
メールを書き終えて送信するのと共に、パソコンを閉じて机の上に戻す。
もうすでに意識が朦朧としているのか、シャルロットに寄りかかってしまう。
「ちゃんと歯磨きしないとダメですよ」
「ん……」
既に夢半分の俺はぐいっとココアを飲み干して、洗面台に向かう。
三分ほどしっかり歯磨きをして戻って来た俺は、そのままベッドに寝転がり、もぞもぞと布団の中に潜り込む。
「ラウラ、電気消して」
「うむ」
部屋の明かりが消え、カーテンから漏れた月の光だけになる。
「おやすみ千春さん」
「おやすみ千春」
「……おやすみ」
ほどなくして俺は意識を手放し眠りについた。
次回、千春が眠っている間に2人が何をしているのか分かります。
次の番外編
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おねショタ(無効票)
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1シャル&ラウラと千春(受け)
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2シャル&ラウラと千春(攻め)
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メス堕ち(無効票)(千春総受け)
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束と千春
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千冬と千春
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シャル&ラウラと千春
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一夏と千春
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オマケ(無効票)
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千春&箒「これは練習だから浮気じゃない」
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千春&セシリア&鈴「IS3分クッキング」