クフーン&ウル ~二人の百合の冒険譚~ 作:ヨイヤサ・リングマスター
男の冒険者をメインに三人称で書いてみましたが、百合小説に必要なのかどうかはさておき、これはこれで男主人公という、面白懐かしい感覚になったので書きあげております。
まぁ、オマケなのでこういうのも良いでしょう。まさか私もこの作品を『ハーメルン』に掲載する日が来ようとは……。
三人称side
世界は広く、人間が把握しているのは、ほんの一部に過ぎないと言われている。
そのほんの一部でありながら、人間にとっては最大の街――別名“百合の街”と呼ばれるその街には多くの高名な冒険者がいる。
もちろん、百合の街である以上、その高名な冒険者は百合の女性ばかりなのだが、百合ではない冒険者もいないわけではない。
「ったく、あんのバカたれが休暇を気まぐれでとるからこっちにお鉢が回ってきたじゃねぇか」
人口の九割九分九厘が女性のこの街では珍しい、男が一人歩いていた。
だがそれは所詮、黄身が二つ入った卵のようなもので、珍しくはあっても別段この街の女性たちの興味を引くようなものではない。
街中ですれ違う女性たちは、まるで男が居ないかのように視線すら向けないが、そんなことはどこ吹く風。
男にとっては慣れたものだからだ。
年の頃はもうじき四十に届くと言ったところだろうか。
ドキッ! 女だらけの百合の街にの華やかさとは無縁の男である。
薄汚れた格好に無精髭。幾ら野山を駆け回る体力仕事の冒険者と言っても、華やかさの欠片もない男はそのまま冒険者ギルドへと向かう。
「おぉ~い、依頼終えたぞ。
さっさと完了手続きを済ませてくれ」
顔馴染みの受付嬢が、余所の街から移って来たのだろう女の子との談笑を中断して男に視線を向ける。
その所要時間およそ15分。本当に男というのは扱いが酷いところである。
「あら、帰ってきたのね。ミカちゃん♪」
「その呼び方はやめろレシィ。
僕の名はゲミカルだ」
これまでに何度となく繰り返されたやり取りだけあって男、ゲミカルには本気で訂正する意志はないように思える。
そしてこの街の看板受付嬢のレシィは、からかうことをやめない。ゲミカルが男だから。
「どうせ、あなたは受付の仕事も覚えてるんだから自分で書類処理してくれてもいいのに」
「僕の仕事は冒険者だからな。
何処かの誰かさんのせいで、S級依頼を片付けられるのが僕しかいないから依頼に出っぱなしで疲れてんだよ。
自分の仕事くらい自分で処理しろよ。駄目受付嬢」
「私の仕事は街の女の子たちと仲良くすることよ(キリッ)」
「それが仕事としてまかり通っちまうって、この街はどうなってんのかねぇ~」
この世界では男はすでに希少生物と言っても過言ではない。
魔法の発達により、女性同士でも子どもが出来るようになってからは同性婚も爆発的に増えているのだ。
百合が盛んなことも相まって、男は絶滅しかねない種族とさえ言えるのだ。
……まぁ、この世界のどこかには男だけが住み、同性同士でも子づくりが出来る魔法を使った男だらけの街もあるそうだが。
「え~っと、今回の依頼は北に行ったついでに南と東と西のドラゴン退治、さらに希少植物の採取依頼だったわね」
「北への依頼のついでがなんで他の三方への依頼も兼ねることになるのやら」
「文句があるならクフーンに言いなさいよね。
彼女は新人冒険者の育成で忙しいから、ギルド上層部公認で休みを取りまくってるけど」
「言って聞く奴なら言ってるさ。
聞かない奴だから僕が奴に回ってる依頼の大半を処理してるんだからな」
「さっすがこの街一番の依頼処理能力の高さに定評のあるミカちゃんね♪
特S級冒険者でも数少ない男なだけあって、多少乱暴に扱っても壊れないタフネスを持ってるわ」
「今の時代、男よりも女の方が丈夫だと思うのは僕の気のせいなのかねぇ~。
あと僕の名はゲミカルだ」
「気のせいよ!(キッパリ)」
「そうか……(こいつも言って聞く奴じゃないよな)」
レシィはゲミカルの依頼達成報告書を仕上げるとすぐに他の女性冒険者たちとの談笑に戻る。
ミカルゲは一人寂しくギルドで一番安い飯を注文して食べるのだが、それが実は寂しいものではなかったりする。
「一番安い飯を頼む」
そう注文したゲミカルの前に出てきたのは蒸し鮭定食。
このギルドの食堂で一番安い飯は麦飯のはずだが、ゲミカルが一番安い飯を頼むとこれが出てくる。
そしてギルド職員は全員女性である。
と言う事は、そういうことだ。
「(ふふふ、僕の魅力が分かる女性もこの街にはいるのさ)」
厨房の奥に視線を向けると、鍋を振っていた料理長の女性と目が合う。
向こうはすぐに頬を赤らめてそっぽを向いてしまう。この反応がゲミカルにとって百合の街で冒険者を続けている理由だったりする。
が、それすらもギルドの策略で、他の高ランクの女性冒険者が百合で忙しくて受けれない依頼を処理するためにゲミカルのような男の特S級冒険者を引きとめる役をしてもらっているだけだったりする。
「(僕は彼女のためだったらレシィやクフーンなど気にせず依頼をこなしまくってやる!)」
利用されていることを本人が知らないのは幸せかもしれない。
今日も男性冒険者ゲミカルは蒸し鮭定食を美味しそうにパクつくのであった。
~特S級男性冒険者ゲミカル~
弱点らしい弱点のないタフで優秀な冒険者。冒険者ランクは数少ない特S級。
戦闘スタイルは、転位魔法による罠の瞬間作成。
自分の家の庭に罠を前もって作り、それを狩り場に転移させることで魔物を仕留める準備に力を入れる冒険者。
体力や筋力にも優れているので採取依頼ではロープ一本で断崖絶壁を登ることも可能。転位魔法があるのでしませんが。
つるはしがあれば一時間ほどでで3000メートル級の山にトンネルを開通できる。
戦闘での切り札として、亡霊や亡者などのアンデッド系モンスターに好かれ易い非人間的な魅力なために、墓場や地獄など、曰く付きの場所では圧倒的な数の暴力を発揮する。
もうじき四十に届きそうなのだが、クフーンをはじめとした他の高ランクの女性冒険者が百合で忙しいために依頼処理のためにあちこちに奔走するため引退は当分先だと思います。
クフーンが何気に28歳なので、彼女よりももう少し大人にするためにゲミカルは少し年長者ですね。
身長185センチ 体重85キロ
冒険者ギルドの食堂で働く料理長に、ほの字。はてさて、恋は成就するのか……。
ロリコン設定は考えていませんが、アイデア元をリスペクトするなら、そこもリスペクトするべきかもしれませんね。
名前の元ネタもゴーストタイプからですし。
今は名を変えた朋友Amber birdさんによるアイデア提供への感謝を。『ノクターン』に場所を変えても繋がりは忘れず。