クフーン&ウル ~二人の百合の冒険譚~ 作:ヨイヤサ・リングマスター
ウルside
今日の天気はあいにくの雨模様。そんな日でも雲の上には日が昇り、毎日しっかり朝は来るものです。
別に、普段の私は雲に隠れた太陽光を感知できるほど鋭敏ではありませんが、正確無比の体内時計のおかげで基本的には毎朝6時に目を覚ますんですよね。
今朝の朝食当番は私なのもありますが、それでも美味しいものが食べたいですし、食べてもらいたいのが人の性。
さっそく準備に取り掛かろうと思いましたが、その前にまずは新聞です。
一日の始まりは新聞から。
この近辺――特に百合の街で人気のある新聞は、四コマ漫画ではなく四十ページ漫画が毎日載っているので続き物。
昨日の話では、ヒロインが悪の組織に掴まって触手責めを受けそうになったところで終わっていたので続きがとても気になりますし。
当然、登場人物はみんな女性だけの百合漫画です♪
「天気は雨でも~♪ 新聞の漫画が楽しみで~♪ 気分は晴れやか~~~♪」
早い話が浮かれている私は誰にも止められません! ってところですね。雨ですが。
適当な歌を即興で口ずさみながらノリノリで玄関へと向かいましたが、新聞などどうでもよくなる出来事が私を待っていました。
「……へ?」
なんか、玄関に血まみれで倒れているヘルーガさんがいますね。
なんですか? この突然過ぎる展開は。 ツッコミ待ち?
「ちょっと、ちょっと! 大丈夫ですかヘルーガさん!?
かなり強いヘルーガさんがそこまでボロボロになるだなんて自然災害とかですか!?」
「……ウル様、ケガは見た目ほどではありません。
それよりも、敵襲です」
傷だらけのヘルーガさん。応急処置は済ませているようですが、本人の言うようにそこまで深くはないようですね。
そして玄関扉は粉砕されていました。開放感があります。
「ヘルーガさん。私たちが暮らすこの家ってクフーンさんの家ですよね?
敵襲って、この家にですか?
この世界に“私たち”を敵に回そうだなんて人がいるんですかね?」
「ウル様、疑問はもっともですが、事は急を要するのです」
出血は多いようですが、その身に流れる百合力を治癒力に変換したヘルーガさんはすぐに傷を癒します。
傷に関しては心配なさそうですね。
「それにしてもヘルーガさんを倒せる人がいるなんて思いませんでしたよ。
何だかんだで20年以上クフーンさんの側にいた上に、種族的な優位性で、人間よりもずっと頑丈・強靭・魔力百合力絶大なヘルーガさんが負けるだなんて」
「ノンッ! 私も妖怪ですし、並みの人間が相手なら負けることはありませんですよ。
ですが相性が悪かったみたいです」
「相性が悪いにしても、負けるところが想像できないのですが?」
しっかりとクフーンさんのメイドらしく、決めポーズをとって説明に入るヘルーガさん。
本当にこの人は忠誠心とかだけでなく、単純にクフーンさんに似ていますね。性格とかではなく、その本質的な部分が。
「いいでしょう、ウル様!
ならば久し振りに私が語り部役として先ほど私の身に起こった出来事を語って見せますですよ♪」
あれ? 何だか話が脱線している気がしますけど、ヘルーガさん楽しそうですね。もしもーし。
「負けたこと自体は悔しいですが、これだけ酷い怪我を負ったのですから、マスターに治癒を目的とした寵愛を受けるチャンスだと思いまして利用しただけです♪
敵襲というのも、すでにマスターが出張ったので問題はないでしょう」
「あ~、なるほどね~。
私よりも早くにクフーンさんに発見されて助けられて愛された、と」
ようするにクフーンさんに甘えるきっかけが出来た、と。
「では、この最強従者ヘルーガの戦闘シーンをどうぞです!」
あらら、私の語り部としての役割はここで交代のようです。
◆ ◆ ◆
ヘルーガside(少し前)
つい先ほどのことです。
今朝の朝食当番はウル様と決まっていますが、その朝食に付け合わせのサラダを用意するくらい自分がしよう。
そんな思いで裏庭の野菜たちに食べ頃かどうか、畑と相談を行っていた私を悲劇が襲いましたですよ。
それはさておき「畑と相談」とは良い言葉ですよね。
魔法で自我を植え付けたおかげで野菜たちは、薬を使わなくても鳥や虫を自分達で追い払ってくれますし、水が欲しければ自分で飲んでれますから。
……脱線するのも何なんで、話を進めましょう。
畑の世話をしていた私に声をかけてきた敵がいたのですよ。
「あんた……“冒険者クフーンの従者”ヘルーガね?」
謎の声。不法侵入。マスターへの敵。
突然の侵入者に、幾つもの考えが私の頭を巡り、攻撃開始の合図となりました。
敷地内への不法侵入。それだけで私のマスターへの忠誠心を侵入者に暴力という形で振るうには十分な理由でしょう。
当然、私は是非もなく飛びかかりましたですよ。
「おっと……。
あんた、聞いた話ではショットガンの九十九神のようだけど肉弾戦も出来るの?」
初弾は避けられてしまいます。敵ながら妖怪に速さで優るとはなかなかにやるですよ。
「マスター・クフーンの従者として、これ位の事が出来ないでどうしますか」
と言いつつも、不意打ちに近い初手を外してしまっては格好がつきませんですね。
相手の実力――魔法に関しては分かりませんが、体術の心得があるようですし、私程度の武では勝てないでしょう。
肉弾戦で勝つことは諦めますです。
「確かにあなたは強いようですね。
私も本来の戦法を主軸にお相手させてもらいます」
「それは楽しみね」
私の本来の戦法――全身から銃口を作り、標準を合わせる。
一斉射撃で銃の体を利用した戦法こそが私の十八番。ヘルーガタッチ。
不意の一発が外れたのなら数の暴力。
一で駄目なら百。百で駄目なら万。
全身の銃口から人間には反応すら出来ない速度で億を兆を超える散弾は発射され、標的を貫くものだと思っていました。
ですが、そうは問屋が卸さない。
「う、撃てない!?」
私の銃口から弾は発射されることなく、言葉のみが寒々しく辺りに響きました。
魔法封じの結界にでも閉じ込められたかとも思いましたが、私の銃撃は魔法ではなく妖怪らしく妖術によるもの。それが使えないだなんてありえない!
そしてありえないことに、その時私は思考を止め、さらに怒りを燃やすことになりました。
侵入者を即殺出来ない自分。
こちらの隙に攻撃をしてこない侵入者。
私の銃として、メイドとしてのアイデンティティを打ち砕くに十分な衝撃でした。
「んっふっふ~♪ 分からない? 分からないよねぇ~?
これは僕の魔法なんだけどね。
火属性魔法を無効化しようと思って会得したんだけど、追加要素で火器や銃器も全く効かなくなっちゃうんだよね♪」
ケラケラと笑う声。その姿は全身をローブに包んでいるためによく分かりませんが、どうやら少女のようですね。
「……なるほど、私の主もそうですが、魔法使いというのは反則じみた能力をお持ちのようですね」
精一杯の強がりを言ってみましたが、その程度で支えられるほど私の心は強くない。
一点特化の火力のある銃の妖怪という、人間以上の肉体的スペックはあっても勝てない。
それがどれほど屈辱なことですか!
「それじゃ、僕に勝つことは諦めた?
僕はあんたなんかに興味はないけど、クフーンの従者なら倒しておきたいし。
憎しみの連鎖ってやつ? とりあえずあんたで憂さを晴らさせてもらうわ」
「マスターへの文句は私が引き受けましょう。
女には、負けると分かっていても引けない戦いがあるのですよ」
「ふふん、奴の従者なだけはあるわね。
僕も手に入れたばかりの力の練習がてら、ぶっ飛ばしてあげる♪」
そう言って侵入者は自身の魔力を大気中に撒き、地を揺らしてこちらに突き進む。
そうして湿り気を帯びた魔力が私の負けを悟らせるだけの攻撃だったと気づいた時には気を失っていたと言うわけです……。
◆ ◆ ◆
再びのウルside
「とまぁ、こんな熱いバトルがありましてね。
結局のところ、私は負けてしまったのですよ。HAHAHA♪」
「いや、ヘルーガさん。
笑い事ですか? あなたが負けるような敵が来たってことは、それなりに厄介なことになるんじゃないですか?」
「ええ、確かに厄介極まりないですね。
ですが、そのおかげでマスターに介護してもらうという、ご褒美がもらえたのです♪
熱い口づけで百合力を胃に送られて治癒力を増幅し、マスターの手を敏感な部分で感じながら渡された百合力……あぁ、マスター♪ 愛しいお方♪」
あーあー、なんかトリップしちゃいましたよ。ヘルーガさんも結構こういうところありますからね。
その後もヘルーガさんはクフーンさんへの愛情と、どういった行為で愛されたのかを深く語ってくれました。
おめこに挿入された指先から細く伸ばした触手で子宮を好き放題に弄られ、卵巣に直接、媚薬を注入されたこと。
気持ちよすぎて立っていられなくなったら自分の体重を両穴に挿入されたクフーンさんの触手で支えることとなり、それだけで激しく絶頂したこと。
血管にも媚薬を流し込まれ、治療と称した百合行為の数々。むしろ戦闘よりも疲弊しきっているのはクフーンさんの激しい性欲と愛情を全身で受け止めたからのようです。
クフーンさんって、キスも上手いから、あの人の舌で舐められると自分の口が自分のものとは思えなくなってしまうんですよね。心から隷属したくなっちゃうほどに深い愛情♪
私も経験したからこそ分かります♪
「クフーンさんのキスって、なんであんなに気持ちいいんでしょうね?」
「それは、私たちがマスター・クフーンの技術は勿論のこと、心から愛しているから愛情が上乗せされているのですよ。
マスターのキスから流れ込んでくる百合力と、飲まされる唾液の感触はもう、極楽そのものです♪」
キスだけで潮吹きさせられるほど、というのはクフーンさんに抱かれたことがない人でも、一目見れば魂レベルで理解できるほどですからね。
流石は私の師匠にして恋人のクフーンさんです♪
「で、クフーンさんはヘルーガさんを治癒したあと、ねっぷりとエッチをして、その後、そのまま謎の敵を追いかけた、と?」
「そう言うことです。ウル様。
マスターは『敵討ちって最高に燃えるぜ♪』と言い残して侵入者を追って、ノリノリで駆けていきました♪」
見ればヘルーガさんの傷の治癒に使われた百合力には、クフーンさんの『愛情』と言う名の魔法が掛っていますね。傷口の光沢が粘性を持っているのはそのためでしたか。
クフーンさんの唾液って、粘度があって媚薬効果もあるから治癒力と快楽がすごいんですよね♪
ヘルーガさんの首筋のキスマークの濃さからいっても相当激しい治癒行為(ただし性的な)が行われたのでしょう。
「さぁ、ウル様。
確かに侵入者は高レベルの強敵ですが、マスターに勝てるほどではありませんでした。
私たちも早いところ街に繰り出さなければマスターの勇姿を見逃してしまうかもしれませんよ!」
「確かにそうですね!
すでに私達がこうして話し合っているうちに解決していそうですが、是非とも見に行きましょうか♪」
クフーンさんのガチバトルだなんて滅多に見られないですし、何だか危機感よりもワクワクしますよ♪
やっぱり、ヘルーガさんの突っ走る性格って、クフーンさんに似たんですね。
開き直りの良さや、損得勘定でプラスになっていれば屈辱さえも笑い飛ばせるところなんてそっくりです♪
最終話は明後日に投稿予定です。読者の皆様の予想とは違う最終回になっていればよいのですが。
最後まで楽しんでもらえるように頑張ります♪