※この作品はR-18です。

アークナイツ二次創作 廻り廻る血   作:よるめく

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ダーティマネーがだいぶ胸糞悪いストーリーのイベントだったのでむしゃくしゃしてやりました。
続くかは不明!


RB-ST-1 指の骨

「血液から健康に! 中からキレイになりませんか? レム・ビリトン直送の新鮮ニンジン缶! 50個入りのお得なセットです!」

 

 通販番組を眺めながら、若い礼服の男は骨付き肉を食い千切った。

 

 油を惜しみなく使って皮ごと食べられるようにしたものだ。それは人間の右腕だった。

 

「中からキレイに……実に素晴らしいことだ。思えば、ここの富裕層の人々は皆、健康的で肉質も申し分ない。もしかして、君もあのニンジン缶を愛用しているのかね? であれば、この腕のサラリとした脂、肥えつつも弾力のある肉、喉越しのいい血液にも説明がつくというものだ」

 

 若い男は少し前のめりになりながら質問をする。その相手は彼の尻の下。肥え太った身なりのいい男が椅子代わりにされているのだ。

 

 椅子にされた男はヒィヒィと息を吐き、顔を涙とよだれ、鼻水でぐちゃぐちゃにしている。拭うことはもうできない。彼の両腕は二の腕の、足は腿の半ばから切り落とされているからである。

 

 そして彼の右腕は、今まさに食卓の上にあった。

 

 礼服の男は二の腕を丁寧に食べながら、ふと呟く。

 

「……しまった。君、もしニンジン缶が残っているなら分けてもらえないだろうか? 君の足を食べる時、付け合わせにしようと思うんだが……」

「も、もう許してくれ……何が望みだ!? 金か? 金ならいくらでもある!」

 

 椅子にされたペッローの中年は、息も絶え絶えになりながら懇願した。

 

「金か。金はいいものだ。いくらあってもなお足りない」

「な、なら……! あ、ああそうだ、書斎に金庫がある! それに財布にはカードもあるし、口座の金も持って行っていい! 番号も教える! だから……い、命だけは! どうか命だけはぁぁぁッ!」

 

 ペッローの中年男は必死になって捲し立て、滂沱の涙を流しながらもつれそうになる舌を動かす。

 

 しかし人肉を貪り食う若い男は、興味など無さそうにテレビを眺めていた。

 

「金か。私の同胞にも、それを欲しさに命を売る者はとても多い。この都市の民もそうだろう。金のために働き、金のために時間を使う。そして彼らは、君たちの養分になるわけだ」

「ち、違……っ!」

「取り繕わなくてもいい」

 

 若い男はそう言って、テーブルに並んだ食事を眺める。

 口にするのも憚られるような、悍ましい晩餐を。人間を材料にした料理の数々を。

 

 その脇に置かれているのは、大量の書類である。男はそれを手に取り、パラパラとめくった。

 

「これを見ると、君はこの都市の人々に多額の融資を提案し、そして厳しい取り立てを行っているようじゃないか?

 それにこっちはクルビア政府からの文書かね。随分回りくどいが……要するに、住民たちが借金をするように仕向けて財産を搾り取り、開拓地に追いやれと」

「ち、違うんです! それは政府からの支持で……! 我々は仕事を全うしただけなんです! 信じてください!」

「信じているとも」

 

 若い男は唇を舐めると、二の腕にかじりついた。

 

 食い千切られた筋繊維の隙間から湯気が立ち上り、香ばしい匂いが鼻孔をくすぐる。

 

 肉を咀嚼し、ワイングラスに揺蕩い赤い液体を呷る。

 

 食事を胃袋に流し込んだ男の顔は、満足そうな笑みに彩られていた。

 

「何故なら、君たちはこんなにも味わい深い。他者を食い物にして恥じない、悪党の味。私が最も好む美味! 私の味覚に間違いはない。君たちは最高の食材だ!」

「ど、どうか……! お願いします、食べないで……!」

「できない相談だ!」

 

 若い男は興奮し、さらにがっついた。

 

 移動都市の夜景を一望できる執務室は、既に地獄絵図と化している。

 天井から吊るされた死体の数々。床には保存瓶に詰められた眼球、心臓、指。この銀行を守る警備員のものもあれば、役員のものも、秘書のもの。それらの家族のものさえ混じっている。

 

 この若い男がひとりで殺し尽くした。そして何人か解体したのち、余った部分で食事をしている。

 

 執務室の主、銀行の頭取であった中年男の視線が、意図せず自分を見つめる保存瓶の眼球とかち合った。瞳の色で、彼の妻のものだとわかった。

 

 絶望の閾値が振り切れる。男は悲惨な顔で笑い始めた。

 

「ヒッ、ヒッ……。あ、アハハハハハハ! アーッハッハッハッハッハッハ!」

「おっと、戯れが過ぎたか。ストレスを与えすぎるのは良くないな」

「アハハハハハハハハハ! アーッハハハハハハハハハハハハハハ! ハッ……」

 

 中年男の背中に、真っ白いナイフが突き立てられた。

 

 人食いの男は淀みない動きで背中を引き裂き、心臓を引きずり出す。

 

 脈動するそれを口元に近づけて息を吸う。誰もが目を背けるような光景も、彼にとっては甘美なものだ。

 

 肉は至上の食材であり、血液は極上の酒。男は心臓に繋がったままの血管を一本切り裂き、切断面を口に咥えた。

 

 まだ生きている心臓は、男の口に血を送り込む。

 

 男は心臓を掲げるようにして、流れてくる血を飲み干していく。

 

 ひとしきり喉を鳴らしたのち、若い男は血管から口を離した。

 

「ふう、やはり良い血だ。さて」

 

 片手間で心臓に繋がる残りの血管を切りながら、執務室をぐるりと見回す。

 

 保存液に漬けられた臓器の数々。丁寧に解体された肉と骨。干したり冷凍したりと様々な保存が為されているが、流石に一人で食べきるには多すぎる。調子に乗って、羽目を外し過ぎたようだ。

 

「まあ、素材は大いに越したことはないのだが。こと、実験をするともなれば」

 

 若い男はハンカチーフで口元を拭うと、血染めのナイフを閃かせる。

 

 椅子にされていた中年は卓越した剣技によってバラバラにされ、個別の部品に早変わりした。

 

「……では、そろそろ始めるとしよう。我が友人たちも待ちわびている頃だからな」

 

 かき集められた人体部品は、別々の保存容器に入れられる。

 

 その非道を咎める者、目の当たりにできる者は、もはやこのビルの中には存在しない。

 

 終業時刻はとうに過ぎ、窓から見えるビルの群れは闇を抱いて沈黙していた。

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