神室真澄推しの俺がなぜ坂柳有栖の双子の兄に 作:筋骨隆々竹輪マン
1,転生と入学初日
「は?」
今日は2023年10月25日。
待ちに待ったよう実2年生編10巻の発売日だ。俺は行きつけの本屋に直行し、無事に買い終わり、家で読んでいるところだ。
そしてその巻で俺の推しこと神室真澄が退学した。
――――は?
正直涙がとまらない。小説、漫画、アニメ。いろんな作品に手を出してきた俺だったがキャラが退場するのにこれほど堪えたことはなかった。
なんでだ、なんでなんだよ。
そう思いながらも、俺は高校生で明日も学校があるため、日付が変わる前には就寝した。
――次に目を覚ますと、そこは知らない天井だった。天井というか…なにこれ、真っ白な空間?
「おお、起きたか」
杖をもった神々しい老人が俺に話しかけてくる。もしやこれは最近流行りの転生という奴なのだろうか。
「この状況から察するに、あなたは神様かなにかですか?」
もし間違えたならとんだ恥晒しだが、こんな変な空間が現代科学で再現できるかと聞かれたら、俺はNOと答えるだろう。
「そうじゃ、最近の若者は話が早くて助かるのぉ」
最近の若者って。あんたからしたらだれでも若者だろ。
「お主こと西島颯太は推しが退学したことでの泣きすぎで脱水症状になり死んだのじゃ」
え、俺惨めすぎないか?――いや、推しがいない世界なんて生きる価値はないな。
「俺はこれからどうなるんですか」
「うむ、それなんじゃが。お主を異世界に転生させてやろう! ドラゴンク〇スト風に言うならば、『おお、しんでしまうとは なにごとだ! おまえに もう いちど きかいを あたえよう!』ってやつじゃな」
なんだこのサブカルジジイ。
「それで転生するにあたって、特典を一つ与える決まりがあるのじゃ」
「特典? それってどんなのがあるんですか?」
俺が前世でみた漫画や小説だとチートみたいなやつとかか?
「なんでもあるぞ、魔力∞、経験値100倍、イケメン確定、ドラゴン確定とかな」
へぇ、立場まで決めれるのか。
待てよ? それじゃあ転生できる世界も選べるのか?
「神様! それって転生できる世界を選べる特典とかもあるのか?」
「ああ、あるぞ」
「じゃあそれにしてくれ」
「わかった。どの世界にする?」
そんなの決まっているだろう。
――――『ようこそ実力至上主義の教室へ』の世界だ。
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転生してから結構な年数が経過した。
まず俺は生まれて1年で、あることに気づいた。
―――なんで俺、坂柳家に生まれてるんだ? と。
妹の有栖は銀髪紫目で先天性疾患を患っている。つまり俺は、坂柳有栖の兄になってしまっている。
俺の今世での名前は坂柳
俺は3歳ころまで俺の推しである神室真澄を実質的に退学させた有栖を逆恨みしていた。今思えばほんとうにくだらない。有栖は神室真澄が退学した後、後悔していたのを知っていたのに。
これが前世を含めた精神年齢19歳のすることかよ、と自分を恥じ、戒めとしてこれからは有栖を大事な家族として接すると心に誓った。その日から有栖の身の回りの世話をしたり、遊び相手になったりと忙しい日が続いた。
そして気が付けばもう中学を卒業し、高度育成高等学校に入る時がきた。俺は超天才の有栖についていくため、必死に身体を鍛え、勉強し、自己研鑽に励んできた。
そのおかげもあってか、頭では有栖に敵わないものの、入試では2位を取り、運動面では1位を取ることができた。
さすがにここまでやればAクラスだろうと自分でも思っている。逆にAクラスじゃないと困るのだ。Aクラスには俺の推しこと神室真澄がいて、そして我がつよつよ妹有栖大魔王もいる。
「累栖、今なにか失礼なことを想像しませんでしたか?」
やばいバレた。
「い、いや? 別に有栖のことを大魔王だなんて思ってないが」
「あら、そんなことを思っていらしたんですね」
有栖はそう言って杖で俺の弁慶を攻撃してくる。
「お、有栖。もうすぐ着くぞ、学校が見えてきた」
「楽しみですね、累栖。ここで私は彼を潰すのですから」
有栖の言う彼とは、よう実の黒幕系主人公の創られた天才、綾小路清隆のことである。原作通り綾小路と戦いたいのは変わらないらしい。まぁ変わってしまったら高度育成高等学校に行かない可能性が出てくるから困るのだが。
そんなことを思っていると、バスが止まった。どうやら学校に着いたみたいだ。
「行くか、有栖」
「ええ、行きましょう」
俺は先に立ち、有栖に手を差し伸べエスコートする。もうこれにも慣れたものだ。さすがに3歳から続けて今年で13年目だからな。
バスを降り、歩いているとかなりの人がこちらを見ている。有栖かわいいもんな、わかるぞ。
「みんな有栖がかわいいから注目してるぞ」
「また貴方はそんなことを言っているんですか。…いいですか? 貴方は高身長で高スペックなイケメンなのですから、もっと自覚すべきです!」
ベタ褒めされた。少し照れてしまうな。
「はは、そうか。ありがとな有栖」
そう言って俺は有栖の頭を撫でる。すると周りの女子たちが黄色い悲鳴を上げる。
「も、もう! さっさと行きますよ///」
有栖もまだまだ思春期なんだな。かわいいぞ。
なんて思っているとクラス表が張り出されている場所まで来た。
「…ありましたよ。同じAクラスですね」
いよっしゃぁぁ!!
俺は心の中で叫びながらガッツポーズをした。これまで頑張って来た甲斐があったからだ。
だがこれからが問題だ。俺が退学してはいけないのは勿論、有栖と神室真澄の2人は俺の命より大事だ。この2人は死んでも退学させない。
「…いす……累栖! なに考え耽っているのですか。さっさと教室に行きますよ」
おっといけない。俺の悪い癖だ。
有栖をエスコートしながら、教室に入る。するとクラス中の視線が一気にこちらにくる。
「うわすっげぇイケメンと美少女だ…」
なんて声も聞こえる。どうだ俺の妹は! かわいいだろう!
「私の席は…どうやら累栖の前のようですね」
足が不自由な有栖に気を遣ってくれているのか、ドアが近い席で、尚且つ俺を有栖の後ろにしていた。この学校そんな配慮できたのか。
「なぁそこのイケメンさんよ、名前はなんて言うんだ?」
俺は声をかけられそっちを見ると、後に坂柳派の側近となる橋本がいた。
「ん、俺の名前は坂柳累栖。気軽に累栖と呼んでくれ」
「しっかしお前さん、ほんと男前だなぁ。あ、俺の名前は橋本正義。好きに呼んでくれ」
うん、こいつは原作通りのチャラさだな。
「ああ、これからよろしくな正義」
「おう! っていうかさっきから気になってたんだが、一緒に教室に入ってきたお嬢さんは累栖の彼女か?」
「いや、有栖は俺の妹だ。もしよかったら
まぁ有栖の才能にさっさと気づけってことだ。
「へぇ、妹なのか。じゃあ俺がもらってもいいか?」
こんなことを言っているが、こいつは多分俺のことを見定めているんだろう。
「それを決めるのは俺じゃない。有栖が決めることだ。それに正義、俺のことは見定めなくとも俺の妹の方が優秀だぞ」
そう言うと正義はとても驚いた表情をしている。
まぁ、そりゃあ驚くよな。原作知識っていうズルをしてるんだから。
「有栖、ちょっといいか?」
「累栖ですか、なにかありましたか?」
「いや、こいつがお前のことを狙っているらしくてな。よかったら
「なるほど、そういうことですか。私は坂柳有栖といいます。以後お見知りおきを」
有栖が不敵な笑みを浮かべ、正義が何かを察している。そんな時。
――ガラガラッ
今日何度も聞いたドアの開閉音。そっちに目をやるとそこには――
―――俺の推し、神室真澄がいた。
生きててよかった。神様転生させてくれてありがとう。
思わず涙がでそうになるがそれを堪え、今は話しかけない方がいいだろうと自制する。ガツガツ行き過ぎると嫌われかねないからな。どこかの正義のように。
確か原作では入学から1週間程で有栖に万引きを見つけられるはずだ。推しに嫌われるなんて死んだ方がまし、そう思うと1週間の我慢なんて余裕だな。
「全員、揃っているな」
お、真嶋先生だ。1年の担任の先生で唯一と言っていいほど真面目でいい先生だ。他の先生はなにかと問題あるんだよなぁ。
茶柱先生は1年生の3学期位からは協力的になったけどいろいろめんどうな人だし。星之宮先生は言わずもがなって感じだし。坂上先生に関しては性格悪そうなんだよな。須藤の暴力事件の時の審議で佐倉にいろいろ言ってたのずっと根に持ってるからな。俺は。
――っと俺の感想はどうでもいいんだ。とにかく、真嶋先生はどの先生よりもいいといえるだろう。
「入学生諸君、入学おめでとう。私は真嶋智也、Aクラスを担当することになった。この学校ではクラス替えが存在しないため、3年間私が諸君の担当となる。この後に入学式があるが、一先ず先に本校の説明をしたいと思う。今から配る資料に目を通してくれ」
そして配られるのは一部を除いた情報が書かれてある資料。原作知識のある俺からしたら本当にどうでもいい情報なのだが、せっかく転生したんだ。こういうのを楽しむのも趣がある。
まぁこの後は予想通りの説明しかされなかった。
・Sシステムというのがあり、PPtでなんでも買えること。
・この学校から出られないが、ここで全てが揃うこと。
・PPtが毎月1日に支払われ、最初は10万PPt貰えること。
まぁこんな感じの説明だった。
それよりも俺が気になるのは、有栖がこの時点でどれだけのことに気づいているのか、ということ。後で2人になれる場所で聞いておこう。
なんて考えていると、入学式の時間になったので有栖をエスコートしながら向かう。
「有栖、手駒にしたい奴はいたか?」
「さっき累栖が紹介してくださった橋本君はいい駒になりそうですね」
「そうだな、あれは常に強者側にいるタイプの人間だ。扱いやすいが裏切ることも視野に入れろよ」
「ええ、わかっていますよ。あとは体格のいい独特な顔つきの男子生徒と、存在感の薄い女子生徒の2人ですかね」
恐らく前者が鬼頭で後者が山村だろう。
「有栖はこの学校でどう動く?」
「そうですね……一先ずは側近を増やしながらクラスのリーダーになろうかと」
『目指す』じゃなく『なる』か。有栖らしいな。
「助けはいるか?」
「いいえ、大丈夫です」
入学式を恙無く終え、真嶋先生から施設等の軽い説明がなされている。
「寮の部屋に関してだが、なにか質問はあるか?」
そこで有栖が手を挙げる。
「なんだ、坂柳」
そう言われるとちょっと俺も反応しそうになる。こういう瞬間があると俺も坂柳なんだな…と感慨深いものがある。
「私は累栖と同じ部屋でかまいませんので部屋は必要ないのですが...」
おっとこれはかなりの爆弾発言だ。これにはクラス中が絶句or黄色い悲鳴をあげている。
「お、おい累栖まじかよ?」
正義も驚いているようだった。
「マジではあるが有栖、お前の部屋の方がバリアフリー等が備わってるんじゃないか?」
「そうですね…。真嶋先生、私の足のこともあるので、累栖を特例で夜間も私の部屋に居させてもよろしいでしょうか」
「…そうだな、それについては職員会議で提出させてもらう。明日には結果が出るはずだ」
そして他に質問者はおらず、その日は解散となった。その後約束通り、日用品を色々買い漁り有栖の部屋に来た。
「…普通ですね」
「…普通だな」
まぁ手すりがあったりなど、バリアフリーの面以外はなんの変哲もない部屋だった。だが有栖のお世話等で見慣れたため、本当になんの変哲もない部屋だと感じる。
俺は日用品のついでに寄ったスーパーで食材も買っておいたので、数日分の食事を先に作っておく。有栖は俺のご飯が食べられない状況が3日ほど続くと、拗ねて泣き出してしまうことがあったためご飯は最優先でつくる必要がある。
和食、洋食、中華料理を3食ずつと軽く摘まめる物を幾つか作って冷蔵庫に入れておいた。
「──────―って感じだな。気が向いたら食べてくれ」
「ありがとうございます。美味しく頂きますね。」
一通り説明した時に微笑む有栖はとても愛らしい。食べてるときの幸せそうな顔を見れないのは悔やまれるが、有栖が食べてくれるならそれだけで十分だ。すると時計の針ははもうすぐ20時を指そうとしている。
「じゃあまた明日、7時くらいに起こしにくるからな。」
「ええ、おやすみなさい。」
こうして俺の長かった一日が終わる。
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坂柳累栖
学力 A
知性 A+
判断力 A+
身体能力 A+
協調性 A-
坂柳有栖の双子の兄であり、理事長である坂柳成森の跡継ぎ。身体が弱い妹の事を懸念して学力面では少し手を抜くところも見られるが、それを差し引いても優秀な学力、身体能力、強いリーダーシップを有しているためAクラスとする。
自己満足の駄文をご高覧いただきありがとうございます。これからも定期的に更新していくので評価や感想等頂けるとかなり励みになります。