※この作品はR-18です。

神室真澄推しの俺がなぜ坂柳有栖の双子の兄に   作:筋骨隆々竹輪マン

13 / 14
少し短いし今回もエッチなのはないです。次の章からフルスロットルでいくのでよろしくお願いします。


13,船上試験の結果と演説

 今日は船上試験の三日目、つまりは船上試験の最終日。その夜であり、試験結果が明るみになる時間まで残り30分を切ったくらいだ。

 

「ふう……何日も船上に滞在していると疲れますね。あまり寝心地がいいとは言えませんし」

「結果を確認せずに寝るか? 俺が確認しておくから構わんぞ」

 

 ベッドに座ったまま有栖は落ち着いた口調でそう言った。疲れが取れないという気持ちはよくわかる。豪華客船とは言え船上には変わらんということかね。

 

「そうですね……久しぶりに、貴方のピアノが聞きたいです。……我儘を言っても、いいですか?」

 

 有栖は俺の肩に寄りかかり、甘えてくる。確か景色のいい一等食堂にグランドピアノがあったか。この時間ならあまり人も居ないだろうし、可愛い妹の我儘を聞いてやるのも兄貴の仕事だろう。

 

「では二人だけのコンサートと行くか。お手をどうぞ、可憐なお嬢様?」

「ふふ、ありがとうございます。素敵な紳士様」

 

 歩いて五分程。食堂の中から見える船の先端側はガラス張りになっており、明るい時間帯には輝かしい海と美しい地平線が一望できるようになっている。思った通りに人は少なく、小腹が空いた生徒や雑談する場所に使っている一部の生徒しかいない。

 少し横長になっているピアノ椅子を有栖と共有して座る。有栖は俺の迷惑にならないよう、凭れかからないように座っている。そんなところも愛おしく思え、サラサラとした髪を一撫でする。

 

「楽しみです。よろしくお願いしますね」

 

 某有名楽器メーカー産のそこまで高級ではないグランドピアノ。値段にして2、300万ほどだろうか。軽く試奏をすれば、力強く応えてくれる。いいピアノだ。

 

 演奏する曲はそうだな……個人的に好みなショパンの「英雄ポロネーズ」で行こう。幾度となく弾き、楽譜は脳内に焼き付いている。

 前奏に入ると有栖は目を瞑り、完全に聞き入ってくれているようだ。

 

 長い前奏の後に輝かしい第1主題…所謂サビと言われるものがやってくる。その様子はまるで猛々しい馬に騎乗した騎士のよう。

 

 序奏は全体的に力強く、熱情的な雰囲気を中心に転調しながら繰り返される。7度の和声で効果的なオクターヴの進行の後主題(サビ)が現れる。

 第2主題は切迫した演出を行うため、第1主題に平行短調を取り入れ、不協和音を有効活用している。そしてその後は変化を加えた第1主題に戻り、中間部(トリオ)へと移行する。

 

 この「英雄ポロネーズ」のように楽曲のつくりがA→B→A+αのような形になっているものを複合三部形式と言い、中間部はこの場合Bを指す。

 

 中間部ではまた転調し、左手でオクターヴを連打し、その上からメロディーを重ねる。「英雄ポロネーズ」の難関部分と言えば真っ先にここが思いつくだろう。幼いながらにこの楽曲を練習した際、手の大きさが足りず、弾くことがかなり難しかったのを未だに覚えている。

 

 そしてさらに転調と曲想の変化を繰り返し、盛り上がったところで第1主題の再現。だが少し変化があり、不完全な再現のままコーダ(終結部)へと向かう。これは戦場で不意に命を落とした英雄の姿を想起させる、ショパンの優しい動線だ。

 

 演奏が終わると、隣からだけでなく、食堂全体から拍手が送られる。どうやら演奏していた6分半の間に、かなりのギャラリーが集まっていたらしい。

 

「お見事です。やはり累栖の英雄ポロネーズは唯一無二ですね」

 

 なんて、上手いおべっかを言う妹に感謝しながら、店員さんにクロスを貰い、鍵盤を綺麗に掃除していく。自分で使ったものは自分で綺麗にしないとな。

 

「いい演奏だったぜ、リーダーさんよ。……だが、そんな余裕こいてられるのも今のうちだけだぜ」

 

 店員さんにクロスを返すと、ギャラリーの中にいたチェリードラg……龍園が話しかけてくる。

 

「龍園、お前のメンタルと切れる頭には敬意を表しよう」

「なんだ、敗北宣言か?」

 

 クッソ、こいつ一々いらん口挟んでくるな。うぜぇ。

 

「……干支の順番と名前の順、だろ。法則に気づいていたのが自分だけだと思い込まないことだな」

「…ッチ、いつから気づいてやがった」

 

 前世からこの答えを知ってました! とは勿論死んでも言えない。言っても信じて貰えないしね。

 

「累栖は試験の説明が終わった後にはもう気づいていましたよね?」

「テメェ……スパイを仕込んでやがるな」

 

 あ、なんかいい感じに勘違いしてくれてる。ごめんねCクラスのみんな。多分あぶり出そうと恐喝されるけどそんな人いないからね。

 

 なんて申し訳なく思っていると11時になったようで、一斉にメールが送信され、通知音が鳴る。その結果は―――。

 

 

 子(鼠)――裏切り者の正解により結果3とする

 丑(牛)――裏切り者の回答ミスにより結果4とする

 寅(虎)――優待者の存在が守り通されたことにより結果2とする

 卯(兎)――裏切り者の回答ミスにより結果4とする

 辰(竜)――裏切り者の正解により結果3とする

 巳(蛇)――優待者の存在が守り通されたため結果2とする

 午(馬)――裏切り者の正解により結果3とする

 未(羊)――優待者の存在が守り通されたため結果2とする

 申(猿)――裏切り者の正解により結果3とする

 酉(鳥)――裏切り者の正解により結果3とする

 戌(犬)――優待者の存在が守り通されたため結果2とする

 亥(猪)――裏切り者の正解により結果3とする

 

 結果、Aクラスは-150CPt、BクラスとDクラスは±0CPt、Cクラスは+150CPtとなった。

 

「……オイ坂柳、テメェ……煽ってんのか」

 

 俺がクラスに出した指示は、各々好きにやれ…という指示だ。勿論自棄になったわけでも放棄したわけでもない。と言うか、この試験において勝ちにいくメリットより、こちらの結果になった際のメリットが上回っていた、ただそれだけのことだ。

 

「なるほど……累栖、これが前に話していた最高の結果というわけですね」

「ああ。俺が考えうる限りAクラスにとって最良の選択をした。……龍園、直接俺と闘い(やり)たいなら好きに場を整えろ。お前の土俵で戦ってやるよ」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 うん、概ね予想通り。というか俺がいた辰グループ以外は全部原作通りだ。これで全クラスのCPtはこんな感じになった。

 

 Aクラス(坂柳クラス)――1458CPt

 Bクラス(一之瀬クラス)――753CPt

 Cクラス(龍園クラス)――642CPt

 Dクラス(堀北クラス)――237CPt

 

 と、Aクラスは依然優勢だ。だが……。

 

「ごめん、坂柳くん…」

「ごめん坂柳! 誤回答した!」

 

 勿論特になにも真意がわかっていないAクラス生徒は意気消沈。

 

「やっぱり葛城さんがリーダーをやるべきだ! 葛城さんならこんな失態はないはずだぞ坂柳!」

 

 そして戸塚。うーん…やはりクラス内投票は彼になりそうかな。その時に葛城を上手く説得しよう。頑張れ未来の俺。

 

「皆、聞いてくれ。今回、俺は皆がそれぞれ自由に策を講じ、各々で解決してくれることを目標として掲げた。その理由は皆も分かる通り、Aクラス全員の戦力向上を目的としている。」

 

 俺がそう話し始めると、俯いていた顔が幾つかこちらを見る。だが表情はまだ暗いままだ。

 

「だが他クラスは全員一丸となって作戦を練ってきた。そして負けたんだ。

 ―――俺たちは最強なんかじゃない。胡坐をかく暇なんかないぞ」

 

 これがこの試験で俺がAクラスに必要だと思ったことだ。傲りやプライド、その他一切の偉そうな感情の全てを捨てさせること。軍隊とかでもたまにあるよね、恫喝的なさ。

 

「必死こいて、みすぼらしく、泥だらけでAクラスに居続けるんだよ」

 

 俺がそうやって強くなったように、お前たちもこうして闘志を燃やせ。

 

「勝つ方法は俺が教えてやる。だから俺を信じて有栖へ従ってくれ」

 

 暗かった表情はいつの間にか消えており、これからの覚悟、傲っていた自身への怒り、勝利への羨望。そんな種が植え付けられているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 そうして長かった夏季特別試験は終わり、次のステージへと駒を進める。各々が今回の結果を踏まえ、決起する者、後悔する者、標的を定める者、未来を見据える者、それぞれへと分岐していく。

 

 

 

 俺はきっとAクラスのみんなに、有栖の友達になってあげて欲しいんだと思う。

 

 駒という意味のトモダチではなく、戦友、盟友のような、失敗を笑い合えるような仲に。

 

 有栖の駒になるのは、俺だけでいい。

 

 俺が有栖の駒となり、盾となり、矛となり、手となり足となる。

 

 だからもし俺がいなくなったとしても―――

 

 

 

「ふふっ♡ クラスの皆さんの心を奮い立たせたあの演説……凄くかっこよかったですよ、累栖♡」

 

 あ、やっぱ俺は有栖の傍にずっと居たい。やっぱさっきのナシね!

 

 




勿論死亡フラグなんてありません。正にフラグキャンセル界隈ですね。

あと累栖が今回弾いていた「英雄ポロネーズ」、凄くカッコいいので是非聞いてみてね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。