※この作品はR-18です。

マイナーキャラ妄想短編集   作:ニンニク嫌い

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 もしハーマイオニーが逃亡中に闇の魔法使いたちに捕まって、ヴォルデモートの下へと連れていかれてしまったら?




ハリー・ポッター(ハーマイオニー)前編

 

 

「ちょっと待ってだって!? そんな悠長なこと言ってる場合じゃないって、ハーマイオニーもわかってるだろ!?」

 

 そう言って興奮して詰め寄って来るハリーの質問の内容が、先ほどのラジオの内容であることはすぐに分かった。そして、その言葉が私たちへの確認ではなく、興奮する自分を抑えるための言葉だと言うのも一目でわかった。

 

「あいつは海外に居るんだ! やっぱり、あいつはまだ杖を探してる!」

「ハリー……」

「ハーマイオニー、どうして認めないんだ!? あいつは、ヴォル「止めて!!」はニワトコの杖を狙ってるんだ!!」

「その名前はタブーなのよ! 軽々しく口にしてはいけないの、分かってるの!?」

 

 例のあの人の名前を口に出すのは危険だ。闇の帝王と呼ばれるほどの魔法使いなのよ。自身の名前に何か仕掛けをしていてもおかしくないはず。

 

 でも今のハリーは焦りでそんな簡単なこともわからないほどに焦燥している。私がなんとかしなくちゃ、こんな時ほど冷静にならなきゃいけないのに……!

 

「言ったでしょうハリー、その名前を口にするのは危険なの。今はとにかく安全な所に、騎士団の皆が居る所に行くべきよ。そうしないと、いつまた奴らに見つかるか―――」

 

 視界の端で閃光が映った。テーブルの上に置かれた警報用の魔術道具であるスニークスコープが激しい点滅と共に回転している。それはつまり、この近くに例のあの人の部下が接近していることを意味する物で--

 

 ハリーも事態の異変に気付いて、慌てて杖を振るい部屋の電気を消したけど、どうやら遅かったみたい。避難所として使っていたテントの外から声が響いて来て、それが真っすぐこちらへと近づいて来る。

 タイミングがあまりにも良すぎる事から考えても、やはり例のあの人の名前にはその名を呼んだ人の居場所を、隠蔽呪文をも無効にして術者に知らせる強力な呪文が掛けられているのだろう。

 

「ハリー……!」

 

 小声で呼びかけると、向こうも意図を汲んでくれて杖を抜いたまま背を低くして息を潜めてくれる。だけど、正直正面戦闘をすることになったとしたら厳しいことになると思っていた。

 このテントは持ち運び可能で隠密性にも優れているけど、発見された時の襲撃の対応には適していない。隠れられる物陰も、敵を撃退する防衛魔法も備わっていない。

 

 突破口があるとすれば奇襲しかない。敵がこちらの所在を確かめようと明かりを点けた瞬間に、向こうからすればまだこのテントが魔法使いの物かマグルの物なのかさえ分からないはず。それを確認するための一瞬の隙を突いて、明かりが灯った場所に魔法を打ち込んで逃走する。

 

 

 十分に勝算のある賭けだと思っていた。

 でも、この時の私はやっぱりどこかでまだ闇の魔法使いたちの事を侮っていたのだろう。

 闇の魔法使いとは、マグルだろうと見境なく、むしろマグルだからこそ喜々として殺そうとする異常者の集団だという事を。

 

 

 衝撃は一瞬だった。

 テントのネットに向かって大量の光が降り注いだと思った時には、私の体は吹き飛んでいた。テントの床へと激しく叩きつけられた衝撃で朦朧とする意識の中、ハリーが自分を呼ぶ声がどこか遠くに聞こえた。

 

 おそらく、ステューピファイ<麻痺せよ>の呪文を受けたのだろう。一瞬で意識を失わなかったのは、テントのネット越しだった為に直撃を避けることが出来たことによる不幸中の幸いだった。

 それでも状況が絶体絶命であることに変わりはなかった。足に力が入らない。直撃ではなくても、呪文の効果は少しずつ私の体を失神へと導こうとしているのが感じられる。このままでは、私はもちろんハリーまで捕まってしまう。

 

 それだけは、ダメだった。

 ハリーを失えば、魔法界の敗北は確実な物になってしまう。

 何よりも、これ以上私の目の前で大切な友人を見す見す死なすような真似を許すわけにないかない。

 

 気を抜けば意識を失いそうになる体に活を入れる。先ほどまで指一本どころか、口を動かすことさえ出来なかった体が、私の意志に応えるように僅かに力を取り戻す。

 手に持ったままの杖をしっかりとその存在を確かめるように握りしめる。そしてその先端をこちらへと駆けて来るハリーへと向ける。

 

 ごめんなさい、ハリー。今まで楽しかった。ロンにも、もう一度会いたかったな。ごめん、パパ、ママ、二人よりも早く死んじゃう私を許してね。きっとこれが、私の最後の呪文。

 

 

 

「――――――デパルソ<退け>」

 

 

 言葉と共に杖から射出された光がハリーを包み、その身を文字通り遠くへと退かせる。こちらへと最後まで手を伸ばし続けたハリーの悲痛な表情に、胸が裂けそうなほどに苦しくなる。

 

 今ので残っていた全ての精神力を使ったのだろう、体が唐突に重さを増し、瞳が下がっていくのを感じる。

 それでも、魔法使いとして、グレンジャー家の娘として、最後まで杖を握りしめる。

 

 倒れた体から見える視界の端に、杖を構えた男たちが壊れてボロボロになったテントの中へと入って来るのが見えて、その内の一人の杖から赤い光が私へ向かって飛んできたのを最後に、私の意識は暗い闇に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識を取り戻すことが出来るとは、思わなかった。

 最初は、ここがあの世であると思った。死んでしまった人が行く場所。天国へと向かうための通り道なのだと。

 だが気だるさと共に目を開いて見えた苔や黒い染みの付いた石壁が、その考えを否定した。

 

 見たことがない景色。それだけなら、まだ自分が助けられたという可能性も考慮に入れることが出来た。だが、今の自分の姿が、自身が死ぬよりも最悪な状況下に居る事を示唆していた。

 

 首に感じる違和感。何か重い物を嵌められている感覚。触れてみてすぐに分かった。

 首輪だ。重い鉄製の首輪が、まるで犬猫のように私の首に嵌められていた。首輪に溝や繋ぎ目といった部分は感じられず、これが魔法道具の類であり、杖がなければ外すことが出来ない物である事が触ってみて分かった。

 

 私が居る部屋も扉の外から僅かに漏れる光以外明かりと言った物が存在せず、ベッドはおろか一切の家具と言える物が存在しなかった。私はどうやら石畳に引かれた布切れの上に雑に寝かされていたのだろう。これだけで、ここがどこかの独房であり、私が囚人、捕囚の身であることが理解できた。

 

 だが何よりも、明確に私の危機感を刺激したのが、私が何も身に着けていない全裸の状態にされているという事。

 気絶する前に来ていたマグルの服は全て剝ぎ取られ、私の……この一年の戦いですっかりスポーツマンシップな体付きになった腕や脚、引き締まった腹筋に少しだけコンプレックスのある小さな胸の全てが空気に晒されていた。

 

「……最低ね、闇の魔法使いって」

 

 羞恥心と肌寒さから先ほどまで自身が寝ていた布切れを体に巻き付ける。布切れ自体は中々の大きさがあり、私の体をすっぽりと覆えるぐらいには十分だったが、それでも牢屋の中の肌寒さを完全に防ぐには不十分だった。

 

 本来の体感温度以上に、今私の置かれた現状に対する恐怖、仲間が誰もいない心細さが、心と体を震えさせる。

 

 布切れに包まりながら、恐怖を感じながらも自身の性器へと確認のために手を伸ばす。

もし、私が気絶している間に、体を嬲られていたら? 知らない間に、今まで大切にしてきた純潔を誰とも知らない犯罪者に奪われていたら?もしそうなら、私は、私は―――――――

 

 見たい、見たくない、確認しなきゃ、知りたくない、どうして私がこんな目に、自分で決めたことじゃない、怖いよパパ、ママ、グリフィンドールの魔女としてしっかりしなきゃ―――

 

 心がごちゃ混ぜになる。勇気と絶望が膨らんでは萎んでを繰り返す。震える指先で自身の割れ目を広げて、涙で潤む目を見開いて確認する。果たして処女膜は―――

 

「…………!!」

 

 

 

――――――あった。

 

「あっ……。…………っ! う、うぅ……!!」

 

 良かった。状況は依然最悪だけど、女としての最大の懸念事項が無事だったことが嬉しくてたまらない。体を丸めたまましばらく私は泣いていた。それが何の涙なのか私にもわからなかったけど、溢れた感情は抑えられなかった。

 

 彼女が来るまでは……

 

「おーやぁ、まさか牢屋の中で盛ってるとわねぇ。さすがは穢れた血、犬畜生と同列の知能をしてるだけはある」

 

 響いた声は何度か聞いた事があるものだった。

 いつの間に開いていたのだろう、牢屋の扉の先から一人の見覚えのある女が姿を見せていた。

 その女の名は―――

 

 

「ベラトリックス・レストレンジ……!」

 

 

 かつて神秘部で戦い、ハリーの叔父であるシリウス・ブラックを殺した張本人である連続殺人鬼の魔女。

 ボサボサで無造作に伸びた髪に、血色の悪い顔色。闇の魔法使いらしい真っ黒のドレスを身に纏ったその姿が、今の状況も合わさってまるで昔見たホラー映画に出てくる悪魔に憑りつかれた人間のように見えた。

 

 突然の事に硬直してしまった私を余所に、ベラトリックスはニヤニヤした気味の悪い笑みを浮かべながら、その手に持つ杖をこちらに向けて来た。

 

 ビクッと思わず体が恐怖で震えてしまう。

 捕まえられたという事は、殺される心配はないはずだと思うけど、相手は殺人鬼。何をするか分からない。気丈に振舞う為に体を包む布切れを強く握りしめる。だが次の瞬間、彼女が放った呪文はある意味私にとって最悪なものだった。

 

「―――なっ!?」

 

 杖が振るわれた瞬間、私が強く握りしめていたはずの布はするりと私の手を離れ、ベラトリックスの杖を持っていない方の手へと綺麗に折りたたまれてぴったりと収まった。

 それはつまり、私の体を隠す物が再び無くなったという事で、慌てて秘部や胸を両手で隠す。たとえ相手が女性だとしても、犯罪者に裸体を見られているという事実がどうしようもないほど恥ずかしい。

 

「来な、雌犬」

 

 「ふざけないで!」そう叫ぼうとした私の口は、頭が前へと強く引っ張られたことで閉ざされた。それどころか、倒れそうになる体を支えよう地面に両手を着いたことで、全裸で四つん這いと言う人の尊厳を根本から踏みにじるような状態にさせられる。

 そして同時に私は何によって引っ張られたのかを理解した。

 

 それは鎖だ。ベラトリックスの手元から伸びた鎖が、私の付けられていた首輪に繋がっていた。

 沸々と、恐怖と羞恥によって覆われていた怒りが湧き上がってくる。まるで人を家畜のように扱う様に、女として、一人の人間として許せないと、心が強く叫んでいた。反抗するのは賢明ではないと警告する冷静な私を無視し、怒りのままに私は叫んでいた。

 

「私は雌犬でも動物でもないわ! こんな扱いをされる覚えはな――――――ッ!!」

 

 右頬に強い衝撃が走った瞬間、私は固い牢屋の床に叩きつけられていた。視界が明滅し、遅れて鈍い痛みが広がり、口内を鉄味の液体が満たす。

 殴られたのだと理解した頃には、髪の毛を掴まれて倒れた体を無理やり持ち上げられる。目前に映ったのはどんな狼男よりもおぞましい狂気を浮かべたベラトリックスの顔だった。

 

「穢れた血は家畜と同じさ!!」

 

 また繋がれた首輪が引っ張られる。ただでさえきつく締め付けるように付けられていた首輪がさらに私の首を圧迫し、呼吸を阻害する。

 かひゅっ、かは、と私の口が酸素を求めて嗚咽を漏らす。だが何よりも、目前でどんな怪物や獣よりもおぞましい顔をして私を睨みつけるベラトリックスに、心臓が止まるほどの恐怖を感じたのだ。

 

 今まで何度も闇の魔法使いとは逃亡生活の中で戦ってきた。神秘部の戦いでは、あの場に集ったホグワーツ学生たちの中では一番戦いと呼べるレベルにまではなっていたと思っていた。

 

 思い違いだった。

 まじかで見る闇の魔法使いの殺気は、私の十数年の人生で経験した全ての恐怖を過去にするほどの絶対的な死の恐怖を伴っていた。

 

 今まで私はハリー・ポッターの近くにいる魔女の一人でしかなかった。戦いでも、常に仲間が側に居た。だから今まで個人が私一人にだけ強い殺気や狂気をぶつけてくる機会がなかっただけなのだ。

 

「はっ……あ……!」

「闇の帝王がお前に会いたがっている。穢れた血のお前が今もまだ生きていられるのはそれが理由だ」

 

 恐怖で完全に身が竦んでしまった私の前で、ベラトリックスの口からまるでこの世に強い恨みを持った怨念が喋っているのではないかと思うほどの、ひどく冷淡で、神経を凍り付かせるほどの声が発せられる。

 先ほどの激しい怒りとは180度違う。だが私にはすぐにそれが、怒りが沸点を越えて逆にある種の小康状態を作り出しているだけだと分かった。火山が噴火する直前に一瞬だけ静寂になるのと同じで、もし私がこれ以上何か彼女の怒りに触れるような事をすればどうなるか、想像もしたくない。

 

 数瞬前に燃え上がった反抗の意思は、一瞬にして消されてしまった。私は自分で自分が情けないと思うほどあっさりと、純粋な狂気の前に文字通り膝を屈してしまった。

 

 そこからはもう、誰も知り合いに見られていないことを祈りながら屈辱的な案内をされた。

 全裸に四足歩行で暗いどこかの建物内を歩かされる。手と膝を使って、赤ん坊の時にしかしないような歩行を強要されて、首には首輪とリード。まるで本当に家畜になったような気分と惨めさが私の弱った心をさらに強く痛めつける。

 

 そして目前を歩くベラトリックスは、四つん這いで歩かされる私を気にした風もなく歩む速度を落とすことはない。そして当然慣れない体勢で歩く私がその速度に合わせられる訳もなく、私が遅れるたびに何度もベラトリックスに首輪を引っ張られ、罵詈雑言を浴びせられる。すでに心を消耗させた私に、それに反抗する余裕は一かけらも無かった。

 

 どのくらい歩かされたのだろうか。気づくと私の目前には巨大な、威圧感を感じさせる黒い二重扉が佇んでいた。

 ここが、目的地なのだろうか? 疲れと恐怖でもうほとんど働かない頭で、私はやっと休めると、そんな見当違いな安心感を覚えていた。

 だがそんな私の横で杖を取り出したベラトリックスの姿に、私の体は反射的に竦みあがってしまう。もうこの短時間で私は彼女に対する強いトラウマと恐怖を刻み込まれてしまった。

 

 彼女の杖が振るわれると、空中に黒い布が現れる。それに疑問を抱くよりも前に、その現れた黒い布が私の目元に覆いかぶさった。一瞬で視界を奪われ、そして何か布自体にも魔法がかけられているのか匂いさえも感じられなくなる。

 これが目隠しの意図を持っているのだと気づいた時、私のお尻にパンッと鋭い音と痛みが走る。

 

「ああっ!」

「ちんたらしてんじゃないよ、この穢れた血が。とっとと進みな」

 

 それがベラトリックスに尻を馬に鞭を振るうようなノリで叩かれたのだと分かった時、全身にまた羞恥心と屈辱感が広がっていく。だが、この状態で反抗も抗議もできるわけがない。唇を噛んでこの地獄に耐えるのが精一杯だった。

 

 そこからは私が考えていた地獄よりもよほどひどい物だった。開け放たれた扉を潜った先もまた通路だったのだろう。視界も嗅覚も封じられた私は、ただ手と膝から感じられる地面の感触を頼りにそう予想するしかない。

 

 辛いのは通路を歩く際に曲がり角で上手く曲がれなかったり、見えない事で足を縺れさせたりする度にお尻を叩かれる事だった。何度も平手を食らい、時には私の女性器を強く叩かれ、私はそのたびに悲鳴を上げて、いつしか自分をこんな目に合わせた闇の魔法使いに「ごめんなさい、ごめんなさい!」と許しの言葉まで言うようになっていた。

 

「我が主、連れてきました」

 

 ベラトリックスの発したその言葉で、私は安堵のため息をつきそうになった。だがすぐに、彼女が主と言う存在が誰なのかを思い出し、再び全身を恐怖が包み込む。なぜならこの言葉の向かう先にいるのは、魔法界全体を恐怖と混乱で支配し、この恐ろしいベラトリックスでさえ跪かせた闇の帝王なのだ。

 

 そして私はそんな男の前に、武器も道具も衣服もなく、全裸に目隠しをされた四つん這いの状態で連れて行かれるのだ。

 

「入れ」

 

 全身が総毛立つ。

 閉ざされた扉の先から響いた声は、今まで聞いたどんな死喰い人の殺意よりも私に死の一文字を連想させる。

 それはかつて、秘密の部屋の番人たるバジリスクの蛇音を聞いた時と同じぐらい……いやそれ以上の絶対的な恐怖を私に齎した。

 

 ベラトリックスが私のリールを引いて部屋の中へと入って行く。この先に進む事がどれほど恐ろしくても、私に拒否権はなくて、大人しく手と脚を動かしてこの世で最も恐ろしい闇の魔法使いの前に進み出るしかない。

 

 まず最初に感じたのは、カーペットのふかふかとした感触だった。ずっと冷たく固い石畳を歩いて来た私にとって、手の平と膝から感じられるその柔らかなコットンの感触は実に心地良かった。

 

 そしてパチパチと暖炉の中で火花が弾ける音が聞こえて、その温もりは裸の私に思いがけず安心感を芽生えさせる。

 

 それが一時の勘違いでしかないのを、私はすぐに気付かされた。

 

「…………っ」

 

 全身に浴びせられる、私の体を値踏みし、貪るような粘着質な視線。四つん這いで乳房も臀部も晒した私を、陳列棚に飾られた商品か何かのように観察している。

 その絡みつくようないやらしい感覚に、私が身を竦ませようとした時、顎に細く冷たい指先が触れるのを感じた。

 

「はじめましてだな…………ハーマイオニー・グレンジャーよ」

 

 顎に当てられた指先で、優しく顔を持ち上げられた。そして直後に耳に入ってきた声の、あまりに心を安らがせる声質が、私の恐怖に震える体を包み込み、陶酔に近い安堵の感情を与えて来る。

 

 それは魔性の声。悪魔さえ魅了する魔人のカリスマ。

 世界で最も偉大な魔法使い、ダンブルドアと対を成すその存在感に、私は不覚にも魅せられてしまった。

 

 これが、闇の帝王。

 目隠しをされて見る事さえ叶わない私でもわかる、圧倒的な支配者の格。

 この男の前では、私なんてちっぽけな存在でしかないと、心が反抗心を抱くよりも早く魂が降伏を認めてしまう。

 

(ハリーは…………こんな、化け物と何度も戦っていたの……?)

 

 ここにはいない、私にとって大切な親友の姿が途端に大きく感じられる。今までもどんな困難にも打ち勝って来たすごい友人だとは思っていたけど、闇の帝王と直に対面した事で彼のその勇気に心からの尊敬を覚えてしまう。

 

 とてもじゃないけど、私では一年生の時に闇の帝王と相対したら恐怖で膝を折って、戦うなんて選択肢を導けもしなかっただろう。

 数々の魔法や伝承を読み解いてきたからこそわかる、隔絶した魔法使いとしての力量の差。術の一つとっても敵わないと思わせるだけの存在圧。

 

「怯える必要はない、ハーマイオニーよ。私の前に跪いている限り、お前が怯える理由などなにもないのだから」

 

 ああ、そうなのかもしれないと、私は心の中で肯定してしまう。

 闇の帝王の冷たい指先が、ゆっくりと私の顎から首、鎖骨、そして胸元へと滑り落ちて私の肌を労るように愛撫してくる。本来なら怖気を感じて然るべき手つきに、だけど私の体は触れてもらった所が熱を持ったように気持ちのいい温もりを覚えてしまう。

 

 先ほどまで全身を支配していた死の恐怖。それが、こうして四つん這いで傅いていれば感じなくなるのだと、闇の帝王の言葉が脳まで甘く浸透してその通りの結果を私に齎してくれる。

 

「ぁ……っ」

 

 闇の帝王の指先が私の胸の先端を触った。軽く指で摘むような手つき。思わず口から漏れてしまった私の声は、自分でも驚くほどに切ない声色に満ちていた。

 

「私の前に謁見できて光栄だろう?」

 

 耳元をくすぐる心を震わす低音。それだけで全身の皮膚が電流が走ったように嫌悪とは違う甘い感覚で泡立ち、だけど私は僅かに残ったハリーの友人としての自分を必死にかき集めて答えを返す。

 

「い、いいえ」

 

 だけど発した言葉は、誰が聞いても嘘だとわかるぐらいに虚勢に溢れていた。

 

 ククッと、目前の存在が声を噛み殺して笑ったのがわかった。そして彼の指先が、四つん這いになる私の背筋を首から下へとツツツゥとなぞる。

 

「んぁっ……!」

「自分は魔女だなどと虚偽を並べる割には嘘が下手なようだ。それとも、今まではこの体で男を誘惑してきたから、嘘の才能は必要なかったのかね?」

 

 闇の帝王が私の臀部を親が悪い子を叱るようにペチペチと叩く。その最低な行為にさえ不思議なカリスマが感じられて、私の心と体はまるで従属してしまったように反抗の声さえあげる事ができない。

 

「去れ、ベアトリックス。ここからは私と彼女の、親交を深める時間だ」

 

 闇の帝王が、この部屋に私たちが入ってきて初めて私をここに連れてきた彼女に言葉を投げかけた。だがそれは彼女の望む言葉ではなかったのか、私の横で意を唱えるように困惑した声が響く。

 

「し、しかし我が主、この雌犬はあのハリーポッターの仲間です。それに、彼女よりも私の方があなた様を満足させられ----」

「去れ、と私が言ったのが聞こえなかったのかね? ベラトリックス・レストレンジよ」

 

 ひっ、と私の喉奥から恐怖の嗚咽が漏れた。先ほどまで闇の帝王に体を触っていてもらったおかげで温もりを覚えていた体が、一瞬にして極寒の地に投げ出されたかのように凍てついて行く。

 

 窓一つない部屋に寒波が立ち込め、暖炉で燃えていた火がかき消され、その下に積もっていた灰が霜のように変わって行く。

 その理由が、たった一人の男が放った殺気にあるなどと、以前の私なら信じられなかっただろう。

 

「ぁ、ぎっ……!?」

「二度は言わんぞ、ベラトリックス。わかっているな?」

 

 私の横で何かが縛り付けられる音と苦悶に満ちた女の声が聞こえた。

 それが、無言呪文でベアトリックスを磔にしたのだと私は理解してしまう。私を恐怖で雁字搦めにしたあの連続殺人鬼が、一瞬にして無力化され、生殺与奪を握られたと言う事実に、私の全身は震え上がって、四つん這いの体をより縮こませて土下座するような態勢を取ってしまった。

 

 そうすれば、闇の帝王の反感を買わないのだと、先ほど教えられたばかりの作法を魔法界を混乱に陥れた男相手に実践する。それほどまでに、私の心はもう壊れてしまいそうなほどの恐怖で満たされていた。

 

 数秒と経たず、ベラトリックスが走り去って行く音と重い扉が閉まる音が聞こえ、途端に部屋中を満たしていた死の気配は消え去ってしまう。

 あるのは、私と闇の帝王の息遣いと、彼が握る私の首輪と繋がった鎖の音だけ。

 

「怖がらせてしまったようだ。汚れた血とは言え、客人を怯えさせてしまった事は謝罪しよう。水でも飲んで落ち着くといい」

 

 その言葉と同時に、黒布で視界を包まれた私の目前に何かが召喚されたような気配を感じた。

 

 そしてコンコン、とその何かを叩く音。それが、私もたまにやるペットのクルックシャンクの餌用食器を杖で叩いて水を出す音に似ていて。

  その考えをそっくりそのままなぞるように、ゴボゴボと水が溢れる音。それが意味する事。自分の目の前に置かれている水の入った容器と、自身の今の状態を思い浮かべて、私の全身が震える。

 

 あまりに最悪で最低な予想。だけどそれを補強するように、闇の帝王が言葉を投げかけてくる。

 

「さあ飲め、雌猫よ」

 

 その時私の心に宿ったのは、怒りと憎悪と、そして恐怖でその言葉を拒絶出来ない自分へのどうしようもない悔しさだった。

 

「………………んっ、ちろ、れろっ」

 

 頭を下げて、そこにあると思しき水入り餌用皿に舌を付ける。吸うのではなく舐めとるのは、音を立てたら目前の男の反感を買ってしまうのではないかと言う恐怖があったから。

 だから私は、わざわざ舌を伸ばしてぺろぺろと水を飲むなんて、本物の猫のような飲み方をしているのだ。

 

「良い子だ。ゆっくりと飲んで、疲れを癒すといい」

 

 細い指先が私の頭を撫でる。ペットを褒めるような手つきは、闇の帝王が私をどう思っているかを如実に語っている。

 なのに私の心は、彼に撫でられて褒められた瞬間に怒りよりも先に嬉しさを覚えてしまった。それが、闇の帝王が持つ悪のカリスマが成せる不思議な魅力だとわかっていても、そう錯覚してしまう心内を止められなかった。

 

「君は汚れた血だが、実に優秀な生徒だったと聞いている」

 

 ぺちゃぺちゃと水を舌先で拾っては口中に運ぶ私の上から、闇の帝王が話しかけてくる。彼の私の学歴を褒める優しい声音に、再び心が安心感に満たされて、今度はそこに充足感まで覚えてしまう。

 

 まるでマクゴナガル先生に「よくやりましたミス・グレンジャー」と褒められた時のような感覚。

 それをハリーを殺そうとした闇の帝王に、それもこんな最低な事をやらされながら感じてしまうなんておかしいとわかっている。

 

 だけど帝王が私の自慢の胡桃色の髪を優しく梳かす指が私の心の壁を取り払い、ダンブルドアの温かみのある声とは違う、心の隙間に入り込んでくるような低音が私の恐怖に濡れていた感情を解きほぐしてくれる。

 

「よくその年で色々な魔法を習得したものだ。素晴らしく聡明で、知性のある者にしか出来ないことだ」

 

 褒められている。あの闇の帝王に。

 それが、堪らなく嬉しい。胸が早鐘を打ち、誇らしささえ感じてしまう。

 

 まずいと、冷静な私が今の状態の私を客観的に見て判断する。闇の帝王の魅力に取り込まれ始めている危険性を、必死に警告してくる。だけどそれは、今現在闇の帝王の膝下で四つん這いになって水を啜っている状態で抗えるものではないのだ。

 

「だからこそ、お前はその汚れた血を清めて完璧になるために、新しい知識を学ばなくてはならない」

「…………っ!?」

 

 闇の帝王の手が、私のお尻の割れ目、陰毛に包まれた陰唇に触れた。下から上に、その線をなぞるように指先で撫でられて、水を飲んでいた私の体がその刺激に硬直してしまう。

 

 だがそんな私の震えを理解しているように、男の指先が再び私の頭を撫でる。ゆっくりと、優しく、心配はいらないと諭すように。

  そうされると、私の心は奇妙な安心感に包まれて陰部を触られていると言う嫌悪感さえ湧き上がらなくなってしまう。

 

「何も恐れる事はない。安心するといい。お前が学ぶのはたった一つの簡単なことだ」

 

 くちゅりと、闇の帝王の指先が私の縦筋を開きロンにさえ触れさせた事のない秘奥へと触れる。それさえも、もう私は違和感を感じなくて。

 

「私の指先で感じるのだ。想い人と初夜を遂げる生娘のようにな」

「ぁ……あん……っ!」

 

 陰唇に挿入された指が肉襞を擦った。他人の指が体の内側を弄る初めて感じた感覚に、私の口は自分でも出した事がないような甘い声を漏らしてしまった。

 

「そうだ、その調子で俺様の指をその体で覚えるのだ」

「ふあ……あっ……あっ……んんっ……」

 

 陰唇の入り口周りの肉襞を円を描くように細く冷たい指が動いている。指腹が敏感な場所を潰し、爪先が痛みを感じない絶妙な力で引っ掻いてくる。

 それが目隠しをされて視覚を封じられたことで普段より敏感になった私の痛覚に、性感と言う刺激を強く与えてきて、その脳を震わす甘い痛みに、私は耐えることなんて出来なかった。

 

「実に良い反応だ、ハーマイオニー。お前は魔法の才だけでなく、天性の卑き雌の才まで持って生まれたようだ」

「はうっ……!?」

 

 乳首に強い刺激を感じた。

 私の頭を撫でていた手を胸へと伸ばした闇の帝王が、私の乳房を手の平で掴み、その先端ですっかり興奮して勃起してしまっていた私の桜色の突起を指先で強く摘んだのだ。

 

 その扱いに、私の体は痛みよりも先に快感を覚えた。彼の骨ばった冷たい手に胸を包まれ、その肉感を味わうように指圧され、乳首を嬲るように弄られていると言うのに、私の心は闇の帝王へのマイナスの感情が湧いてこない。

 

「ああ……! うっ……はぁ、はぁ……あんんっ……」

 

 そこからは、もう私は闇の帝王の手のひらで転がされるおもちゃだった。

 彼の指先が私の性器を刺激する度に、私は口から艶声を出す。まるで彼に奏でられる楽器のように、私は彼が指を動かしては音の違う嬌声を響かせる。

 

 そうすれば、高まった性感は私の蜜壺からその証と言うように愛液を滴らせ初めて。陰部を弄る帝王の指先から、くちゅくちゅと水音を掻き鳴らすような音色が混じり始める。

 

「あっ、あっ、あっ……! んぁ、ぁああ……ッ、あっ、あくぅ……っ」

 

 そして釣られるように、私の艶声の響きは激しく、より大きく、もう抑える気もないほど淫らに曝け出されるようになった。

 口からは甘い声だけでなく、唾液も一緒になってこぼれ落ちる。目隠しした状態で唾を口から垂らすなんて、きっと余程ひどい顔をしているのだろうと思う。でも、そんな事が気にならないほどに、私はこの与えられる甘い刺激に酔っていた。酔わせられていた。

 

「あ、あ、あっ、くる……何か、くる……! あっ、ああっ……私、何かきちゃっ…………えっ?」

 

 体が浮遊してくる感覚。脳が思考を放棄して、真っ白に染まって行くような体験。全身が熱く高鳴り、何かの一線を超えて至福の境地に達そうとした瞬間、今まで私を愛撫していた闇の帝王の指が止まった。

 

 困惑が、全身を支配する。陰部から引き抜かれた指の残滓を追って、肉襞が開閉を繰り返す。もうすぐ訪れるナニかを求めて浮いていた腰が、突然のストップにフリフリと空中で戸惑いに揺れる。

 

 そんな私の姿を嘲笑うように上から響いた含み笑いに、私は声の方へと顔を向ける。そしてその際、目隠しをされているせいで相手には見えなかっただろうが、この時の私はきっと愛する主人に捨てられた猫のような潤んだ瞳をしていて。

 それほどまでに、私はこれから訪れたであろう境地に辿り着きたいと願っていた。

 

「イキたいか、ハーマイオニー?」

 

 闇の帝王の心震わす囁き声が耳に浴びせられる。その言葉の意味を、私は知らなかったが、すぐにそれが私が上り詰めようとしていたあの感覚に名前を付けた物なのだとわかった。

 

「俺様の手で、イキたいか? 汚れた血の雌猫よ」

「…………はい」

 

 その言葉を、私は拒絶出来ない。

 出来るわけがない。

 だって、体はもう、こんなにも熱く興奮しているのだから。

 

「言葉にしろ。懇願には、具体的な主語が必要だ」

「イキたいです……私は、イキたいです!」

 

 覚えた言葉を早速使って懇願する。史上最も最悪な闇の魔法使いに、それをする事がどれほど恥ずかしくてみんなの信頼を裏切るものか、今の私には判断出来ない。

 ただ一刻も早く、このあと一歩の所で引き留められたままな切ない感覚から解放されたい一心で、私は彼の命じるままに従う。

 

「誰に、が抜けているぞ。ホグワーツの才女はそんな事にも気が回らないのかね?」

「あ……それは、あなたに……」

 

 言って、しまったと思った。闇の帝王の雰囲気が冷たくなるのを、確かに感じてしまう。彼が私の敬称が抜けた呼び方に機嫌を悪くしたのだと、自分の恥知らずなミスに心底後悔する。

 

「あ、あなた様……に」

「良い子だ、ハーマイオニー。俺様は自分の失敗を即座に理解して正せる雌猫が好きだ」

 

 頭を再び撫でられる。その言葉に、心底安心する。そして好きだと言う言葉に、嬉しさと誇らしさが込み上げて、思わず闇の帝王の手に頬を押し付けたくなる衝動に駆られてしまう。

 それはきっと、クルックシャンクが私の手に擦り付いてくるのと同じ理由。私は初めて、飼い猫がなぜ主人の手に顔を埋めてくるのか、その訳を知った気がした。

 

「これからは俺様をご主人様と呼べ。お前と言う汚れた血の雌猫を飼ってやる、有難い主人として、敬意を込めて呼ぶのだ」

「はい…………ご主人様」

 

 そして闇の帝王……ご主人様が言った言葉に、私は感謝の念とダンブルドア以上の最上級の敬意と尊敬をたった一つの単語に込めて返す。

 

 不意に涙が溢れた。それが、今までの自分やみんなを裏切ってしまった事の贖罪の涙だったのか、それとも絶大なカリスマを持つご主人様に傅く存在になれた事の喜びの涙だったのか、それさえももう私はわからなかった。

 

 でも一つだけ確かなのは、私はこの瞬間の事を死ぬまで忘れる事はないだろうと言う事だ。

 

「あっ、ああぁあッッ----!!」

 

 ご主人様の指が私の胸を弄り、陰唇と尿口の下にある陰核を擦り上げる。上下の敏感な部分を同時に刺激された瞬間、私の限界まで高まってお預けを食らっていた性感がスパークした。

 

 頭からつま先まで電流が走り抜けたような快感に体が弓形に仰け反り、それでも受け止めきれない悦楽を声として口から叫ぶ。

 

 これが、イク。

 偉大なる闇の帝王であるご主人様から初めていただいた、イクと言う体験。

 本やハリーたちとの学生生活では経験できない、女の本当に幸せな瞬間。

 

「あ……ぁ、ああ……はぁぁ……」

 

 真っ白に染まった視界が、ようやく元の黒布に覆われた景色に戻ってきても、私の思考は甘い倦怠感に包まれて動く事が出来なかった。

 

 知らず締め付けを強くしていた陰唇から、ご主人様の指が引き抜かれる。穴から無くなる温もりに、私の陰部が切なげにヒクヒク揺れてドロリとした愛液をカーペットへと垂らしてしまう。

 

「お前が何者か、これでよくわかったな?」

 

 投げかけられる主人の質問。

 ボヤけた思考の前に、正常な判断が出来ない私はただコクンと首を縦に振る。言葉代わりにと私の口からこぼれ落ちる唾液の塊が、私が何なのかを物語ってくれた気がした。

 

「あっ……!」

 

 じゃりっと首輪が引かれる。前へと引っ張られた私の体を、弛緩した四肢では支える事が出来ずに、そのままカーペットへ投げ出されるように倒れてしまう。

 だがそんな私の頭を、ご主人様が固い何かに導くように運んでくれた。

 

「お前は魔女でも、ましてや英雄でもない」

 

 それがご主人様の膝なのだと理解した時、私の心は感動と畏れ多さで震え上がる。

 だって自分のような小娘を、闇の帝王であるご主人様が膝枕してくれるなんて。

 

 でも私の髪を梳かす優しい指使いを感じた時、私のそう言った感情は洗い流された。代わりに感じたのは、やっぱり安心感と充足感。ここが私の居場所なんだと言う、漠然とした感覚。

 

「お前は、俺様のペットなのだ。永遠に俺様に傅き、この体を捧げるな」

「んっ……」

 

 有無を言わさぬ絶対的な響きを纏った声。

 ご主人様の手が、私の輪郭を肩から太ももまでを撫でる。細くて冷たい手が、私の興奮で熱くなった体にはちょうど良くて、つい甘い吐息を漏らしてしまう。

 

 それからしばらくの間、私はご主人様に火照った体を愛撫されながら、彼の膝で微睡みに包まれていた。

もしFFのエロをやるならどのナンバリングが見たい?*FF7は意図的に外しています

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