自身の恋心を自覚したイングリスは、彼が天上領に帰る前にその心を自身に縛りつける事を決めた。
それは全てが一つ片付いた後の幕間。物語で言うなら、第一部が終わって第二部へと向かう前のインタールード。とある少女が、十六歳の誕生日を迎えて一つの到達点へと達した頃。
そして、その少女の想い人たる少年が天上人の住まう天上領に帰らなくてはならない事が決まった時だ。
「来てくれてありがとう、リィン」
「別に……さすがに知り合いの誕生日を無視する訳には行きませんから」
「またまた〜……わざわざラファエルを使ってお母様から私の欲しい物を聞き出そうとした事はわかってるんだけどな〜」
「…………………やはり彼に頼むべきではありませんでしたね」
アカデミーから離れた、騎士見習いたちのサバイバル演習場として存在している森の開けた広場を、月が天頂に差し掛かる時間帯にイングリスとリィンは連れ立って歩いていた。
今宵は満月。幻想的な月光の明かりが、銀と桜の二つの艶やかな髪を照らして、二人の絶世の美男美女をより超常的な美へと昇華させているかのよう。
「ふふ、そんなことはないよ。ラファエルは頑張ってたらしいもの。ただ、私の母上が察しが良すぎただけです」
「騎士が腹芸も出来ないのはどちらにしろ問題では? まあ、そこが彼の美点と言えばそうですけど」
「そうそう。それにおかげで私は、こんな素敵なネックレスをリィンから貰えたんだからね」
「…………そう、ですか」
十六歳になったイングリス・ユークスは、一年前からより格段に美しくなっていた。
その美貌は年頃の少女の初々しさを残しながら、大人の色気を醸し出し始め、比例するように膨らみを増した胸や臀部がよりその蠱惑的な魅力に拍車をかける。
さらにわずかに香る香水の匂いに、さりげない化粧を施した顔は、彼女の女として元々高かった素材を極上と呼べるまで高めていた。
ただでさえ絶世の美少女だったイングリスは、恋をしてより女として高みに登ったのだ。好きな異性を振り向かせるために、興味のなかった化粧やオシャレを学び、肌の手入れや色気の出る仕草を覚えた。
結果、イングリスは今ではアカデミー屈指のアイドル的存在だ。元の戦闘狂的一面が変わったわけではない。天上人に毎回試合を申し込みに行く世間知らずの怖いもの知らずと言う評価が外れたわけではない。
だがそれを覆すほどに、彼女の女としての魅力が高まりすぎたのだ。アカデミー中の男子生徒が、そんなの些細な欠点だと思えるほどの極上の雌としてイングリスはただ一人の少年のために進化した。
そんな彼女が、わざと胸を強調するように頭を下げて上目遣いをすればどんな男も忽ち虜になってしまう。事実なんでもないような風を装って目線を逸らしたリィンを見れば、彼女の魅力がしっかりと機能している証だろう。
「ところで、さ」
だがふとそこで、イングリスが話の流れを変える。今までの和やかな談笑の雰囲気を維持したまま、触れ難い話題に踏み込もうとする。
「天上領に、帰るんだってね」
「そうですね。元々私が天上領を降りれたのも、この剣の腕をより昇華させると言う建前でアカデミーを卒業するまでの条件付きでしたから。なので卒業次第、私は即座に天上領に戻されるでしょう」
ほのかな震えさえ感じられたイングリスの問いに、リィンは何の澱みもなく答える。彼にとって、まるで普段通りの明日の予定を読み上げるような感慨の無い口調。
それが、イングリスの心を強く締め付けている事を、彼はきっと理解していない。
「そしたらさ……もう、今みたいに気楽に会えなくなるよね」
イングリスの声が、わずかに裏返る。それが溢れそうな強い思いを押し殺しての物だと、彼にはわからない。殺し殺されの世界で生きて、死んでしまった彼には殺意以外の感情を読み取れない。
「元々、今の状態でも気楽に会っていい立場では私はないんですけど。はぁ…………まあ少なくとも、もうあなたと試合する事は不可能に近いでしょう」
「--------そっか。やっぱり、そうなんだ」
イングリスが漏らした僅かな言葉に、一体どれだけの感情が宿っていただろうか。彼からわざと視線を逸らして、天上領よりも高くから光を降り注ぐ満月を見上げる彼女の胸の内を、その向けられる対象たる少年は気づかない。
しばらくの静寂が、二人を包む。
草木が擦れる音と、夜の虫が鳴く音だけが、月の光に照らされる二人を優しく幻想の世界へと誘ってくれる。
----ちりん
鈴の音が、イングリスの鼓膜を揺らす。それが隣の彼の音色なのだと、彼女は知っている。どんな職人にも真似する事ができない、リィンだけが奏でられる音。
それを、手放したくない。
「ねぇ……天上領に帰るの、止めてくれない?」
たっぷり一分ほど。ようやく口を開いたイングリスが言葉にしたのは、彼女らしくない懇願に近いお願いだった。
「それは私の一存では無理ですね。元々天上人は空で暮らすべき、なんてよくわからないルールが罷り通ってますから」
「リィンは戻りたいの?」
「特になんとも。私は、この生に価値を感じていませんので。戻れと言われれば、戻るだけですよ」
そっか、とイングリスは笑った。その笑みにギラついた危険な何かが含まれている事を見てとって、ようやくリィンは眉を顰めた。彼女の持つ雰囲気が、明らかに戦闘する時の物へと変移していると、殺し合いに関する事だけは誰よりも敏感に感じ取れる少年は勘づいたのだ。
イングリスの手に剣はない。それでも彼女は、そんじょそこらの魔石獣なら恐怖で逃げ出すほどの威圧を放っていた。
好いた相手が、自分との日々を得ても生に価値がないと言った事を、彼女は静かに激怒していた。
「私が、止めると言っても?」
「止められるとでも? あなたが、私を?」
アカデミーの生徒、それこそ先生でも即座に参りましたと言って降参してしまいそうなイングリスの覇気を、微風同然に受け流しながらリィンが答える。
そこに、感情はない。イングリスの噴火する直前の活火山の静けさに対して、リィンは完全に死火山の如き虚無。それがより、イングリスの覚悟を昂らせる。
「ねぇ、試合をしましょう」
「今からですか? 自分の誕生日ぐらい大人しく祝ったら……いえ、むしろあなたらしいか」
しょうがないと言うように、リィンがイングリスの対面に立つように広場を進む。その手には何の魔術も込められていない剣が一振り。
彼が持つ、ただ一つの武器。彼を最強たらしめるのに、ルーンはいらない。魔術もいらない。厳かな装飾も、謂れのある、なんて肩書きも必要ない。ただ、彼の絶技を振るうための体と媒体があればいい。
それが彼の前世の、身一つで最強を証明し続けた者たちが跋扈した世界の常識だ。
「こっちが勝ったら、わかってるよね?」
「約束なんて無意味でしょう。この世界で天上人の敷いたルールを破る事は、今のあなたでは無理ですよ。どれだけゴネようと、私が帰る未来は変わりません。----なにより」
スッと、少年の瞳が細められる。それは、目前に立つ彼女の強さをもう一度測っているかのよう。
「勝てませんよ、あなたでは。少なくとも、まだ」
「----ええ。私じゃ、まだ勝てない。まだ、リィンに並び立つ女にはなれていない。それは、悔しいけど認めましょう」
無慈悲に下したリィンの批評に、イングリスは粛々と頷いた。その通りだと、自嘲にも似た笑みをこぼして。
それが、リィンに違和感を覚えさせた。彼が知るイングリスは、こんなにしおらしく試合が始まる前から負けを認める相手ではないから。
「本当は、一人でリィンを倒したかった。私が、あなたを一人占めしたかった。でも間に合わなかった。今日を逃せば、リィンはもう私の手の届かない所に行っちゃうから」
その理由を、リィンは理解した。ずっと気にはなっていた、自分たちの後を付ける複数の気配と、試合をすると言いながら武器を持たないイングリス。そこから、彼女が自分に勝つためにどう言う戦法を選んだかを導き出した。
「だから----
「失礼な。合意の上での、共闘だよ」
リィンがため息と共に、ずっと自分たちから付かず離れずの位置で隠れてこちらの様子を伺っていた、イングリスと同じくらい見知った、少女の姿をした武器たちに目線を向ける。
「リィン様、天恵武姫たる私たちがあなたに刃を向けてしまう事、どうか今だけは許してください」
「イングリスには返しきれない恩があるからね。それに、個人的にもリィンくんがこのままイングリスたちと別れるのは賛成できないもの」
天上人が生み出せし意志持つ武器、天恵武姫ことエリスとリップル。
最上級の絹糸のような金髪を垂らした聡明な顔立ちと、犬のような耳と尻尾を生やした茶髪の美少女二人、いや美少女の姿をした武器二つは、彼女たちにとって造物主たる天上人の一人であるリィンに強い眼差しを向けている。
「卑怯だって、罵ってくれても結構ですよ」
「? なぜですか? 自分よりも強い相手と戦う際の基本は、大勢で叩く事です。あなたの戦法は、正しいですよ」
リィンの脳裏に、前世のいくつもの戦いの光景が浮かぶ。自分一人で勝った戦い、そんな物一つもなかった。自分の敵は常に化け物ばかりで、そんな相手に一瞬の隙をついて手傷を負わせて、強い仲間がそれを起点に活路を開く。
その強い仲間が、いつもとあるサイヤ人の青年で、皮肉なほどに息の合ったコンビネーションを戦場で見せてしまうのが、リィンにとっては不満だったが。
「ええ----それで私に本当に勝てると思うのなら、ですが」
----ちりん
音が鳴る。
少年が構える。
目が鷹のように鋭く尖る。
その手はすでに剣の柄に握られている。
それはつまり、初手から本気。
「ええ、勝ってみせますとも!!」
イングリスの宣誓の言葉と共に、彼を取り囲む少女従騎士と天恵武姫は一斉に攻撃を開始した。
戦闘は、やはりと言うべきかリィンが圧倒していた。
武器化したエリスを装備したイングリスと彼女を援護するリップルの連携は、熟練の聖騎士さえも感嘆の息を飲むほどの完璧な調和となって少年を襲うが、その全てが決定打どころかかすり傷さえ生み出せない。
応酬する剣撃と銃撃の二重奏。だがその音は五十を越えて百に達し、今もなお鳴り止まぬ事なく続いて行く。
それはつまり、イングリスたちは本気の彼を相手に未だ戦いになっていると言う事。
彼女の努力は、確かに今この時に実りを迎えて開花しているのだ。
「はああ--ッッ!!」
閃光のような速度を持って振るわれたエーテルを纏ったイングリスの一撃を紙一重で躱すリィン。そのまま返す刀で斬撃を放とうとした彼を、リップルが針の穴を通すような正確な射撃で彼の剣の軌道を阻む。
それによって刹那の硬直を強いられた彼に、至近距離から拳を突き込んでくるイングリス。だがそれも、彼が膝を上げて彼女の音速で放たれた拳を突き上げて軌道をずらされた事で失敗に終わる。
その完璧すぎる迎撃に、さすが私の夫となる男だと、満面の笑みを浮かべるイングリスを、直後に爆発するような衝撃が襲う。
彼女の体が宙を平行に吹き飛ぶ。迎撃のために上げた足が、そのままゼロ距離から放たれる蹴り足として彼女の胴を抉ったのだ。
「--ッ、まだまだ!!」
「イングリスちゃん! 私を使って!」
常人なら一瞬で意識が刈り取られるような痛み。だがそれさえも、エーテルで体中を守るイングリスには耐えられない物ではない。
平行に地面を吹き飛びながら、イングリスの手の中へと銃に転身したリップルを連射。マナが宿った弾丸が正確に頭、手、心臓、足を狙う。
「ここです!!」
そして示し合わせたように、イングリスが攻撃された瞬間に空へと放り投げたエリスが人間体へと戻り、宙に漂う人間には不可視のマナを足裏に収束、隕石の如き速さで持って短剣をリィンへと突き落とす。
それら完璧な連携の一撃に対して、少年は持っていた剣をただ顔横に平行に構えるだけで。
----ちりん
聖騎士さえもなす術なく敗れ去るだろう彼女たちの攻撃を、当然のように全て迎撃した。
「ああっ!?」
エリスが吹き飛ばされ、放った銃弾は露と消える。そして気づいた時には、ようやく地面を転がって態勢を整えたイングリスの目前にリィンが迫っていた。
「……っ、流石の速さですね! 素敵です、リィン!」
「あなたは、相変わらず口数が多いですね」
直後に始まるのは、常人はおろか歴戦の聖騎士でさえ目で追うことが出来ない超人の組み手。
音を置き去りにする速度で繰り出されたリィンの貫手を、イングリスが同じく残像さえ残した手の動きで迎撃し、お互いの手が接着したゼロコンマ一秒後には、まったく違う攻撃と防御が行われる。
お互いの呼吸音さえ感じられる超超至近距離での息もつかせぬ攻防。瞬き一つ、息継ぎ一つで勝敗が決まるであろう極限のせめぎ合いは、守る側であるイングリスにとってとことん不利。
(ああ、楽しい! 楽しい楽しい楽しい! やっぱり私にはあなただけです、リィン!! あなた以外の相手なんて、私には考えられません!!)
だがその状況を理解しながら、リィンの胸に宿るのはどうしようもないほどの喜悦。この真綿で首を絞められるような劣勢が愛おしい。あの初めての敗北の日から、打ち合う事が出来るまで成長できた自分が誇らしい。
なのにあれだけ修練を積んで、それでもここまで勝ち筋が見えないリィンにどうしようもなく雌としての自分が刺激されて子宮が震える。
「大好き! 私はあなたが好きです、リィン!! 女として、あなたと添い遂げたいと思ってます!! だから、私と結婚してください!!」
「----っ」
バキリッとリィンとイングリス両名が立つ地面に亀裂が入る。二人の神速の拳の打ち合いに、それを支える土台の方が先に悲鳴をあげたのだ。
そのわずかな足場の歪みを、イングリスの情熱的な愛の告白に刹那とは言え気を取られたリィンが足を取られる。それはほんの微かな技のズレ。完璧に構成されていた連撃に生まれた0.1ミリ程度の誤差。だがそれは達人同士の戦いでは、攻守を反転させる大きな隙に他ならない。
「初めてあなたと会った時に、私はあなたの剣技に魅せられました! それから何度も試合をして、あなたと時間を共にするうちに、私はあなたの剣だけでなく、リィンに夢中になっていました!!」
「…………ッ!」
攻め手がイングリスに、守り手がリィンへと入れ替わる。彼女の口から赤裸々に語られるプロポーズの言葉に、訳もわからず心を乱された少年が押されて行く。それに反比例するように、胸の内に抱え続けた恋慕全てを吐き出さんとする美しき戦乙女はよりその勢いを強める。
「寝ても覚めても、あなたの事を考えています! あなたの隣にいると、感じた事がないぐらい胸が幸せいっぱいに包まれます!! あなたがいないだけで、私の心にはぽっかりと穴が空いたような気分になるんです!!」
「なにを……っ、戦いに、変な感情を、持ち込んで……!?」
イングリスの強烈な右拳の一撃が、リィンの胴体を捉える。それは彼女の言葉に、殺し殺されの冷え切った心を羞恥で熱くされ、顔を真っ赤にした少年に吸い込まれるように放たれる。
だがやはりそこは数々の怪物たちと戦った少年。咄嗟に利き手じゃない方の手を防御にして、痛打を避ける。それでもその衝撃を逃す事は叶わずに、先ほどのイングリスのように大きく地面と平行に飛んで行く。
数十メートルの距離が離れた彼我の距離。
イングリスは両足で地面を強く踏み締め、まるで舞台役者のように背筋を伸ばし、強く誇らしく、一切の貴賎のない自身の全てを高らかに謳い上げる。
「私、イングリス・ユークスはリィン・レインフォースを愛しています。あなた以外の男なんて考えられません。あなた以外の男の妻になんてなりたくありません。あなた以外の男の子供なんて産みたくありません」
「そして----」
「あなたが私以外の女と添い遂げるなんて事も、絶対にさせません。あなたは、私の物です。私は、あなたの物です。絶対に……絶対に!!」
その声が相手に届いているかを確認する事なく、イングリスがその手をリィンへとかざす。その手からは魔石獣さえも消し炭と化す可視化されるほどのエーテルの光が瞬いていおり、それは刹那とかからずその手の平から射出された。
「エーテルストライク!!」
光り輝く極光が地面を抉り、彼女の想い人へと向かう。もし直撃すれば死体一つ残さず消し去ってしまうと言うのに、イングリスは力を抑えたりなんて事はしない。
それは彼がこの程度でくたばる事などないと、確信しているから。
「さすがです、リィン!! やっぱり、あなたは私の目標です!」
その予想に違わず、桜色の髪を宙空に靡かせて少女を睥睨する彼に傷はおろか埃一つさえついていない。音速の勢いで飛んできた極大のエーテルを、音さえ置き去りにする速度で躱したのだと、イングリスは即座に理解した。
「ああ……本当に、素敵です……」
月を背に暗闇の空を舞う姿は、まるで夜桜のようだと戦乙女は愛する男の美しさに見惚れる。鋭く射抜くような眼差しが、自分を見つめている。その視線だけで全身が興奮と歓喜で震えてしまう。
だがただ目を奪われているだけでは、彼に相応しい女になどなれはしない。心奪われるのではなく、彼の心を奪う存在にならなくてはいけないのだから。
「エリス! リップル!」
「わかってますわ!」
「まさかリィン君に、本気の一撃を放つなんて思いもしなかったよ」
吹き飛ばされながらも、二人の攻防の最中にイングリスの元に戻ってきたエリスが再び剣へと転身。
両手に握った天恵武姫にイングリスが自身のエーテルを流し込み、その力を最大開放させる。それは本来、特級印を持つ聖騎士にしか成せないはずの力で、もっと言えば真の力を開放した時、その所有者の魂を吸い取る細工がされているのだが…………そこら辺はイングリスがとっくに全て無効化していたりする。
「イングリス、こんなんじゃリィン様には届かないわ! あの御方は虹の王よりも強いのですから!」
「そうだよ、イングリスちゃん。私たちの事は気にせず、もっと力を注ぎ込んで!」
「ええ、言われずとも!!」
虹の王を唯一滅ぼす事が出来る強大な武器に、さらなる常識はずれの最大火力が溜め込まれる。それは天恵武姫を持ってしても武器たる本体に亀裂が入りかねないオーバーフロー。だが二つの武器少女たちは、喜んでその過負荷を受け入れる。
イングリスの手に集められた爆発的な力の奔流を見て、宙を舞うリィンの顔から先ほどの動揺が消えてまた以前のような凍りつくような無表情に変わる。
そして手に持つ剣を構えるが、ほんの僅かだがイングリスの右拳を防いだ方の手の握りがおかしい。魔石獣をパンチ一発で即死させるチート従騎士の本気の一撃は、さすがの彼であっても完璧に防ぐ事は困難だったと言う事か。
「さあ、私の想いを受け取ってください!!」
そんな彼に向けて、イングリスは一切の手加減も油断もない、歴代の聖騎士たちでさえ出した事がないであろう天恵武姫の最大最高火力を、この世界において最上位存在たる天上人に解き放つ。
それは現世に降臨した神の雷光そのもの。この世の全ての生命を普く誅殺する絶対なる輝きの権化。それは寸分違わず空中で身動きの取れないリィンに向けて掃射され----
----ちりん
「----ッッ!!」
その瞬間を、イングリスは確かに人の数倍優れた視力で視認した。
リィンが剣を握る両手、その右手の拳から光る特級印の輝き。その直後に彼の剣先から放たれた、彼の殺意を凝縮したような漆黒に輝く破壊の光線。
それは遍く輝きを寸断する、極限まで研ぎ澄まされた魔力刃。
天上人として生まれ落ち、特級紋なる新たな世界の理を手に入れた地球人最強の少年が生み出した神技。
無窮へと通じ、塵刹を穿ち、天明を断つ魔技。
【絶剱】
極光が両断される。光が黒に塗り潰され、神の威光は死神の冷たい鎌に刈り取られた。
そのあまりにも、あまりな光景に武器状態のエリスとリップルが心の内で顔を愕然とさせる。これが、本当に人間の成せる技なのかと。
「あ、ああ……あああ!! リィン、リィンリィンリィン!!やはり、あなたはすごいです! 最高です!! まだそんな隠し玉を持っていたなんて……! 一体、どれだけ私を惚れさせるんですか!!」
だがイングリスだけは、その光景を恋する乙女の熱い眼差しで見ていた。頬を紅潮させ、胸を高鳴らせ、子宮が熱を持って股を擦り合わせてしまう。
だがそんな発情状態にありながらも、イングリスは気づいていた。極大の破壊の奔流同士のぶつかり合いが、空中にいたリィンを大きく後方に跳ね飛ばしている事を。
流石に空中で、しかも片手を負傷している状態では衝撃を完璧に相殺する事は不可能だったようだ。
リィンの体が落ちて行ったのは、イングリスから千メートルは離れた位置。常人なら戻ってくるのに数分はかかりそうな長距離だが、ことリィンに限りその距離はイングリスに息継ぎを整える程度の時間にしかならない。間違いなく、彼らの恐るべき神速の縮地の前には数秒と経たず埋められる。
だが、その数秒こそをイングリスは狙っていた。
「--------」
リィンの呼吸が止まる。
踏み込んだ足の先にあった光景に、思考が真っ白に染まった。
自身の十歩先にいるイングリスの合わせた両手の内に渦巻く光に、あまりにも見覚えがありすぎる力の波動に、彼はこの二度目の生において初めての戦慄を覚えた。
「やはり、こう使うのであっていたんですね」
イングリスが笑う。自身の潜在エネルギーを凝縮させると言う初めての試みに、彼女の全身が痛みに悲鳴をあげるが、その全てを黙殺してただずっと見たかった愛しい男の驚愕の表情を目に焼き付ける。
バキバキと、周りの地面が軋む。ビリビリと空間が振動し、前世で英雄王と謳われた少女の全エネルギーを濃縮した規格外の攻撃の予兆に、世界が恐れをなしている。
だがその爆発的な力の波動に、それを溜めるイングリス自身の体が耐えられない。彼女は今この瞬間も脳が焼き切れるほどに沸騰し、体中の神経が断裂を起こす。臓器のいくつかが内部出血を引き起こし、イングリスの両目、鼻、口から鮮血が飛び散る。
「あなたのおかげです、リィン。あなたがいたから、私はここまで強くなれた」
それでも、彼女は笑うのだ。
愛した男を倒すために、この瞬間のためだけに錬磨し続けたイングリス・ユークスの正真正銘全力全開。
「これが、その証明! 私の全て!!」
両手に溜めたエネルギーを前へと突き出す。そこから放たれるのは、イングリスの二度の生でも見た事もないような絶大なる力の熱線。虹の王さえも余波だけで消し炭にしてしまえる、間違いなくこの世界最強の技。
「いっっけぇぇぇ----ッッ!!」
ああ、その技はまるで----
「------------悟空」
全てを消し去る蒼い破滅光が、自身の視界を埋め尽くす間際、リィンが呟いた一言は誰に聞かれる事もなく消えて行った。
----ちりん
ありえざる、鈴の音が響いた。
ドラゴンボールの世界において、地球人があのインフレし続ける戦いに最後まで着いていくのは不可能だ。
それは単純な、生まれ持った生物としての限界点。どれだけ己を鍛え上げ、超人と呼べる存在となろうとも、星を一撃で粉砕するような人外魔境たちに敵う術は存在しない。
攻撃力が違う。耐久力が違う。速度が違う。基礎的なステータスが倍なんてレベルではなく、文字通り天と地ほども離れている。
ただ動くだけでソニックブームを発生させ、山を割るような一撃でさえ致命傷とならない怪物たち。
そんな彼らと戦いをこなす為に、その先に待つ仇と戦う為に、彼は己が全てを捧げたのだ。
十歩、一足。是、我が間合いなり。
それが、彼の絶対的な不文律。
その間合いに入れば、彼は必ず敵を切る。
たとえそれが、サイヤ人だろうと破壊神だろうと。その圏内にいるのなら、彼は誰よりも早く刃を届かせる。届かせた。
唯一、
その時のリィンの目には、悟空が映っていた。その在り方に嫌悪し、その強さに戦慄させられた、彼の戦いしかなかった人生のほとんどの戦場を共にした苦手な男。
そして----戦いに殺し殺されの価値観しかなかった自分に、初めて殺すのではなく勝ちたいなんて感情を抱かせた、ただ一人の憧れが。
全身の筋肉が歓喜に打ち震え、心臓が早鐘を打ち、魂がこの二度目の生で初めて熱く燃え盛る。
あいつがいる。悟空がいる。
ただそれだけで、リィンの心は今生全ての感情の揺れを合わせても足りないほどの激情を身に宿す。
殺し殺されではない、ただお互いの強さを確かめ合うだけの戦い。そんな何の価値もない物を、お前となら良いかもしれないなんて私に思わせといて、結局一度も戦う事の出来なかった相手。
それこそが復讐を果たした彼にとって唯一の心残りで、この二度目の生に価値を見出せなかった理由。
ここに、悟空はいない。自分に熱を灯してくれた男は存在しない。自分のこのしこりを晴らしてくれる武の極地たる彼は、どこにもいない。
だけど、いた。悟空は現れた。ここまで自分を興奮させ、心を高揚させてくれる相手が悟空じゃないはずがない。
リィンがその身を低く地に這わせて、かめはめ波を放つ彼の懐へと飛び込む。極太のレーザーのようなエネルギーの放出が、わずかに背中をかすめ、だがそれさえも気にせず手に持った剣を振りかざす。
それは下段からの切り上げとなって、正確に相手の首を狙う。何者にも阻む事が出来ない超絶技巧。これに反応が出来る存在など、それこそあの世界の上澄みたちだけ。
そう、悟空なら、この一撃さえも対応してくる。
振り上げた刃は、刹那の時さえおかず目標の相手の首皮一枚へと到達し、その刃を向けた相手の顔を視認して----
--------違う
違う、あれは悟空ではない。悟空は私と最後まで刃を交わせる事なく、私の死を看取ってくれた。
目前に立つ悟空の姿が、変わって行く。その存在感も、威圧も、何一つ変わらないのに、姿だけが溶けるように崩れて、似ても似つかぬ少女へと変わって行く。
そこにいたのは、銀髪の美しき戦乙女。
自分に何度も挑みかかってくる、厄介で、なのに何故か拒否できなかった少女。
何の色も映さない私の二度目の生に、僅かな灯りを差し込ませた彼女。
そして今、悟空のように殺意しかなかった私の世界へと胸を熱くする感情を呼び起こして。
悟空ではないのに、私のこの心の名残りを溶かしてくれるほどの強さを持つ者。
ああ……そうだ、彼女の名は----
「----クリス」
「やっと、私をその名前で呼んでくれましたね」
ズドンッと、イングリスの首へ振り落とした刃を直前で止めていたリィンの無防備な腹に、一撃で意識を刈り取るほどの重いボディブローがめり込んだ。
それが、一人の少年と想いを寄せる少女の戦いの幕切れだった。
ちゅぱ、ちゅぱ、じゅず、じゅる
「うっ…………ぁっ…………」
長い気絶の末にリィンを現実に呼び起こしたのは、自身の耳に届く水音と、体中を走り抜ける生暖かい感触。
ようやっと瞼を見開き、ボヤけた視界に飛び込んで来たのは、煌めくほどの鮮やかな白銀。
「あ、起きました? すいません、起きるまで我慢しようとしたんですが、ちょっとあなたの寝姿があまりにもエロすぎたのでもう初めてしまいました♡」
「…………イングリス?」
そう言って、艶やかに笑うのが自身を気絶させたイングリスだと認識して、だがリィンに疑問の感情を抱かせたのはそんな彼女が服を脱いだ下着姿であると言う事だ。
「ク・リ・ス。さっきは呼んでくれたのに、また呼んでくれなくなっちゃう悪いお口はこれですか? はむ、んっ、ちゅるる♡」
「…………っ!?」
クリスの柔らかな唇が、リィンの唇を塞ぐ。驚愕に目を見開く彼を置いて、アカデミー屈指の美少女はその舌を想い人の口内へと侵入させて蹂躙してくる。
「んっ……っ、んちゅ、ぁっ……何を、イングリス……!」
「こら、抵抗しないでください、よ! ちゅぱ、ちゅっ♡ あなたは、負けたんですから、んまっ、大人しく、私に愛されてください」
世の男性全てを魅了する絶世の美貌を興奮と愛欲に蕩けさせて、イングリスが馬乗りの体勢で少年を貪る。リィンの鼻腔を、彼女のふわりと垂れた白銀の髪から漂う甘い香りが占領する。
咄嗟に動かそうとした手はガチャリと鈍い音を立てる何かに阻害され、リィンはそこで初めて自身の両手が頭の上で手枷で固定されている事に気付いた。即座にその枷を破壊しようと手に力を込めるが、亀裂はおろか軋む音さえ響きはしない。
「んちゅ♡ っあ、ふむぅ……♡ んあ、れろ、ちゅぱっ♡ ふふ、逃げられませんよ、この時のために私のエーテルを注ぎ込んで作った特注の拘束具ですから」
「本当に……なにを、考えているんですか……っ!」
その様子をキスしながら感じ取ったイングリスが、発情した顔で彼へと告げる。その言葉に自分が今天上人を監禁して辱めていると言う自覚は皆無。この世界において、騎士団長の娘と言えど即刻処刑を言い渡されるレベルの大罪。
元々常識のない人間だと思っていたが、ここまで愚かな事をするなんてと、少年が怒りの視線を彼女へと向ける。
「そんな目で見ないでくださいよ。----唆られてしまいます」
「あっ!」
それはかつて、イングリスが初めてリィンと会った時に言われた言葉。それをそっくりそのまま言い返しながら、彼女は言葉とは裏腹に顔を生娘のように赤面させて、普段の威圧の一分さえ感じないような可愛らしい睨みを効かせる想い人を嗤う。
イングリスの細い指がはだけた少年の胸元を這い、そこで起立する乳首をくすぐる。その瞬間こぼれ落ちる、恋愛面がノーマルの男でも即座に股間の怒張をそそり立たせてしまうような美少年の艶声。
イングリスの雄が胸を高鳴らせ、雌が股座から淫液を溢れさせる。
「ああ、やっぱり。以前事故でキスしてしまった時から何となくそうじゃないかと思ってました。リィン……あなた、セックスが激ザコですね♡」
「なにをっ……ふむっ!?」
反抗するように口を開いたリィンの口内に、今度はイングリスが指を突っ込む。そして優しく少年の舌を指先で苛めながら、片手で彼の性感帯である乳首を刺激する。
「噛まないでくださいね。まああなたなら、この状況で反抗する事の無意味さをよくわかっているでしょうから心配してませんが、念のため」
「んんっ……んぐぅ……!」
口内に入って来た指に、舌を、歯を、頬裏を無遠慮に蹂躙される。それが醜い大男なら見るも無惨な強姦なのに、それをするのが息を飲むほど美しい銀髪の美少女なのだから、まるで一つの特殊な宗教画のように美と淫美さを濃縮する絵となってしまう。
もっとも、指を突っ込まれる側の少年が涙目で頬を赤らめているので相手が大男でもそう言うプレイなのだと勘違いしそうだが。
「口に指を突っ込まれてるのに、そんな顔をしちゃうなんて。リィンは本当に相手を煽るのが得意ですね。本当、その顔を見せるのが超絶美少女な私でよかったです。これがもし醜い豚男にでも見られたらと思うと……胸糞悪いですから」
「ふぅ--っ! ふぅ----っ!!」
「言っときますけど、今の怒った風の顔もとっても可愛いですからね。あなたは後で自分がエッチな事されてる時の自分の顔を自覚するべきですよ。でないと----」
カリッと淫魔のような顔で顔を近づけたイングリスがリィンの耳を甘噛みする。
「----ッッ」
その瞬間、ぴくりと彼の体が震えて思わず口を閉ざして口内に入れられた指に歯を立ててしまいそうになる。だがそれを指にエーテルを張り巡らせていたイングリスは軽々と防ぎ、逆に自分の指を強く咥えるような顔になったリィンの姿に瞳を輝かせた。
「こうやって、思わず苛めたくなってしまいますから♡」
じゅぽっとようやく口から指が引き抜かれた時、イングリスの指はリィンの唾液で淫靡に輝いていた。
「ちゅぱ、んちゅ……うん、やっぱりリィンの唾液は美味しいですね」
そしてそれを見せつけるように、リィンの鼻先で唾液付きの指先を咥えてみせる。それに信じられないような物を見る顔でより顔を赤らめる想い人が、イングリスには堪らなく愛おしい。
「どうして……こんな事を……」
ここに来て、ようやく逆レ被害者たる少年の口からそもそもの疑問が口を出る。自分のイングリスの勝負。その結果が、イングリスに気絶させられた自身の敗北であった事はわかるが、それがなぜ起きた時にこのような状況になってしまったのか、彼には未だ理解できない。
「…………はぁ。本当にわからないんですか? 私の想いは、全部吐き出したつもりなんですが」
それに、心底呆れたようなため息を吐くイングリス。「まぁ、そこも含めて好きなんですが」と口を窄めて付け足して、しょうがないと言うように彼女はリィンの頭横に両手を付いて至近距離から目を合わせた。
「何度でも言います。私はあなたが好きです。女として、あなたと添い遂げたいですし、出来ればあなたの子供も産みたいです。もっと欲を言えば男の子と女の子でそれぞれ二人ずつ。さらに欲を言えば、あなたがこのまま誰の目にも付かないように勝者の権利として一生監禁しときたいですが、流石にそれは無理だと思うので止めておきます」
「添い遂げ……子供……!? な、何を言ってるんですか!」
「照れちゃって可愛いですね。恋愛耐性も弱々なの、どれだけ私を昂らせるつもりなんですか?」
自身の体の下で一言一句に顔を赤くして反応する、ともすれば美少女にも見える美少年の艶姿に、イングリスのショーツ裏の陰裂はすでにびしょびしょだ。
「こんなあなたの姿が見られるなんて……本当、命を賭けた甲斐がありました」
パチリと、イングリスが自身の豊満に育った胸部を隠すブラジャーのフックを外す。彼女の銀髪によく似合うレースで彩られた純白の下着が剥ぎ取られ、その下で隠されて来た男の欲望を形にしたような、シミひとつない吸い付くような肌艶の膨らみと、その中心に輝く淡いピンク色の突起が露わになる。
「〜〜〜〜ッッ!」
「こら、私のおっぱいを見たぐらいで暴れないでください。これから毎日見て、揉んで、吸い付くようになるんですから♡」
前世では復讐と戦いに生涯身を捧げた事で女性経験はおろか恋をした事がなかったリィン。それは性欲さえも心を殺意一色に染め上げるために枯れさせたから。
だから自分に、そう言う色恋にまつわるあれこれは一生理解できないと思っていた。それは天上人として二度目の生を得て、数多の見目麗しい女性たちから誘惑されても欠片も心動かされなかったからこそ、より確かとなった彼の考え。
だがその認識は、目前の絶世の美少女によって打ち砕かれた。今まで何とも思っていなかった彼女の美貌と完璧なプロポーションに、全身が熱を持ったように焼けて行く。顔と股間に熱が集中し、心臓の動悸が激しさを増す。
前世含めて一度として感じた事のなかった性欲を、リィンはイングリスに目覚めさせられた。
「あの勝負、私は最後に見せたあの技でリィンを倒せるとは思ってませんでした」
初めての股間の昂りに、訳もわからず混乱で抵抗を激しくしたリィンを組み伏せながらイングリスは語る。なぜ自分が勝てたのかを。
「あれを使っても、今の私じゃ逆立ちしても本気のリィンに勝てない。いいえ、勝てないならいいんです。嫌なのは、リィンの本当の本気を見る事なく負けてしまう事。それは、死ぬことよりも辛い」
イングリスの手が、自身の秘部を隠すショーツへとかけられる。下界で手に入れられる素材としては、最上級の絹糸を使って作られたショーツは、もう洗ってもその雌臭が消せないほどに淫液を染み込ませていた。
「だから私はずっと、あなたに本気を齎せる何かを探してました。あなたへの恋心を自覚した日から、あなたの一挙手一投足、鼓膜のわずかな震えに至るまで、全てを観察して」
それをイングリスは拘束したリィンの顔を跨いだ、鼻先数センチのところで見せつけるようにたくし下ろす。ぐちゅりと卑猥な音が響いて、ムワッとリィンの鼻腔に生涯忘れられないような本気汁の臭いが叩きつけられる。
「だからわかったんです。私のエーテルストライクを初めてあなたに見せた時、確かにあなたの瞳孔が収縮したのを。あなたが、私がある力を使う時だけゼロコンマ六秒だけ呼吸を止める事があった事を。私が、あなたから学んだ気を使って体に纏わせた時、一ミリだけ剣を持つ指を震わせたのを」
露わになった女の蜜壺は、リィンが見たどんな絶景よりも淫靡で卑猥で……そして美しかった。
「そして考えました。自分の生命エネルギーたる気を使ったエーテルストライクみたいな技なら、あなたの心を奪った誰かを模倣出来るんじゃないかと。あなたの心を縛り続ける誰かを、私で上書きできるんじゃないかって」
ヒクヒクと揺れる女陰。そこから僅かに見え隠れする綺麗なサーモンピンク色の肉襞。彼女の割れ目の周りには微かに銀色の陰毛が生え揃い、そこを興奮による愛液が滴って濡れそぼっている。
「その結果、本気になったあなたに殺されたとしても、私は構いませんでした。だってそれは、あなたにとって私が殺す価値のある相手だと認識してくれたって事だもの」
その魅力的な光景に目を奪われながら、同時にイングリスの言葉が心に直接語りかけられるように入ってくる。彼女の常軌を逸した自身への想いに、心まで奪われてしまう。
「でも、あなたは私を殺さなかった。あの時どうしてあなたが私の首を落とす刃を止めたのか、私はわかってますよ。だって、あの時のあなたの瞳には、私が映っていたんですから。あなたにとって私は、殺したくない人だった」
その言葉を否定する事を、リィンは出来なかった。
なぜならそれは、正しいから。確かにあの瞬間、リィンは必殺の刃を向けた先にいたのがイングリスだと気づいた瞬間、本能的にその動きを止めてしまった。
あれほど戦いの熱に浮かされていた心を冷ましてしまうほどに、彼女を殺す事を魂が拒絶した。
「これってつまり……そういう事で、いいんですよね? リィンは、私をそういう風に見てくれてたって事で、いいんですよね?」
顔を愛欲で蕩けさせながら、満面の喜色の笑みを向けてくるイングリスを、リィンはもう否定出来ない。
ずっと気にも留めていなかった彼女への、恋とはいかないまでも確かにあった情をこんな形で突きつけられて……リィンはそれでも否定するように叫んだ。
「し、知りません! そんな感情、私にあるわけないでしょう! い、今ならこの事は私の胸の中で閉まってあげます! だから私を解放し----っ!?」
そんな開いたリィンの口に、愛液で濡れたイングリスの純白の下着が詰め込まれた。ぐちゅりと粘ついた粘液が舌上に垂れて、その何とも言えない女の味に彼の意思とは無関係に股間が熱く昂ってしまう。
「その強情さも、すぐに溶かしてあげます。あなたが私を心から求めて、私無しでは生きていけないようになるまで」
「----!!」
イングリスの唇がリィンの鼻先を啄むようにゆっくりと重ねられる。鼻腔を舌でくすぐり、その下の自分の下着を咥えた少年の唇をなぞる。
その甘い愛撫にビクビクと震えるリィンは、とてもではないがつい先ほどまでの死神のような威圧を出していた少年と同じとは思えない。
「ちゅぱっ、ちゅる、じゅつつ、じゅぱ……」
イングリスの彼を蹂躙する舌先は、そのまま顎、首へと伝い、まるで吸血をするように少年の首筋に吸い付いて女の独占マークを付けていく。
「あはぁ♡」
美少女にも見える美少年の白肌についた赤い鬱血の跡。それを見た瞬間、イングリスの理性は切れた。
「ちゅううう♡ ちゅう、ちゅう♡ じゅずずず……♡♡」
「んんむ、んんん……っ!」
リィンの全身と言う全身に、イングリスの証が刻み込まれて行く。腕に、胸に、お腹に、太ももに……十を超えて、二十、三十に届くのではと思うほどの彼女の独占欲を形にしたキスマークで、この世界では最強の称号に最も近い少年が埋められて行く。
「ああ、リィンの乳首……ちゅうちゅうしてあげますよ♡ ちゅううっ……♡ ちゅぱ♡」
だがそれだけではイングリスの十年近くにも渡る狂気と紙一重の片想いを満足させるには足りない。
彼女の口がリィンの男の乳首を咥えて、まるで男性が女性にするように搾乳する。それはイングリスの男性としての欲望、好きな人の胸に執着してしまう男のサガ。TSしても変わる事ない、彼女の性的趣向であった。
「ちゅ、ちゅぱ、もう、どうしてあなたからは母乳が出ないんですか? リィンの母乳なら、私毎日飲んであげるのに……天上人の技術で男からも出せるようになりません?」
「ふぐぅぅ……!」
イングリスの無茶苦茶な要求に、彼女の下着を咥えさせられたままリィンが反抗の声をあげるが、それはすぐに彼女の乳首を愛撫する舌先と指使いで黙殺された。
「本当、男なの勿体ないぐらいに綺麗で細い体つきですね。これが私の夫になるあなたの体じゃなかったら、思わず嫉妬してしまったかもしれません」
イングリスの胸を責め立てていた口が、今度はリィンの細いお腹周りと下半身に狙いを変えて、臍や太ももを唾液塗れに変えて行く。当然その際にキスマークを増やすのも忘れない。
「んっ……ふぅ……!」
「ふふ、パンツがすっごいテント張ってますね。リィンもやっぱり男の子だったみたいで、とても嬉しいですよ」
すりすりと、愛しい男の怒張をイングリスが下着越しに優しく手のひらで撫でる。その感触だけで、思わず昂らされたリィンの性感が限界を迎えそうになるが、それを抑えるように彼女の指先がそっと亀頭部分に添えられた。
「ま・だ、ですよ? 射精するなら、私の口の中でしてくださいね♡」
「!!?」
リィンのパンツが引き下ろされる。布による圧迫感から解放された初めて人前で晒す事になる雄棒が勢いよく解き放たれ、彼の人としての強さを現すような雄々しい肉の槍がイングリスの前に晒される。
(あ、大きい……♡ 前の私のよりも全然逞しそう……♡ 戦士としてじゃなく、雄としても私、彼に完敗してるんじゃないですか……♡♡)
「ッッ----♡♡」
リィンの前世の自身のよりも大きくて固くて、雌としての今世の自分を孕ませてくれる生殖棒。それを五感全てで知覚した瞬間、イングリスは軽イキした。
あまりにもイングリス・ユークスの番として相応しすぎる剛直に、彼女の全神経が早くも幸福の極みに達してしまったのだ。
「はぁ、はぁ……♡ それでは、リィン……あなたのおちんぽ、私の口でご奉仕してあげますね……♡」
「っ、ッッ……!!」
イングリスが熱気を含んだ吐息を亀頭に浴びせながら、その唇をキスするように突き出す。ぬちゅりとイングリスの唾液で濡れた唇と亀頭が重なり合い、そのまま舌で彼の剛直を誘導するように口内へと飲み込んで行く。
リィンの肉棒に歯を立てないように細心の注意を払いながら、それでも欲に駆られた彼女の舌は興奮のままにカリ首や裏筋を舐め回す。
「んおっ♡」
我を忘れてリィンの肉棒に吸い付いていたイングリスの顔が、彼の股間に触れた。それはつまり、根本まで愛する男の剛直を受け入れた証。それを感じ取るや否や、イングリスは本能のままに首を前後させる。舌全体で亀頭を包み込み、唇を肉茎に押し付けながらじゅぼっじゅぼっと淫らな音を肉棒と口の端から響かせた。
「じゅぶ、じゅぽ♡ んんぅ……♡」
銀髪の美しき乙女が、男の肉棒を熱心に奉仕している光景は実に倒錯的で、彼女と同じ学園に通う男子生徒が見れば二度とイングリス以外で勃てなくなるだろう。
「ふぅ……ふぅ……ッッ!!」
彼女のリィンを喜ばせるためだけに磨いたテクで、意中の少年の性感帯を的確に責め立てる。舌先がちろちろと動いて裏筋をくすぐり、頬裏で亀頭をマッサージすると、鈴口から溢れ落ちたカウパーと自身の唾液をわざと大きな音を立ててじゅるると飲み込む。
そんなどんなインポでも籠絡する極上のフェラチオテク。それに恋愛経験ゼロのセックスクソ雑魚童貞が敵うはずがない。
「----ッッ!!」
「♡♡----!!」
イングリスの口内で肉棒が跳ねる。その意味を即座に悟った彼女が腰を下げようとしたリィンの腰を掴み、頭を下げて喉奥まで彼の亀頭を咥え込む。頬を下品なほど窄めて彼の肉棒を口全体で拘束する。
その瞬間、彼の体が僅かに痙攣して口内に粘ついた液体が吐き出された。
「んんっ、んふっ……ごきゅ、ごきゅ……♡」
初めて味わった男の精液の味に、彼女の体が震える。だがそれは一瞬。即座にわざと淫らな音を鳴らしながら強烈な雄臭さを放つ液体を飲み込み始める。
「んちゅ、ちゅぱ……♡ ぷはぁぁ♡ はあ、はあ……ああぁ♡ ご馳走様でした♡」
亀頭から喉肉に放出された精液を胃に流し込んだイングリスが、口から自身の唾液塗れになった肉棒を取り出す。
長い口淫で荒い息を吐くイングリスは、それでも尽きる事のない愛情に染まった瞳でリィンを見つめながら肉竿に付いた残液を舌で掃除していく。射精したばかりで萎えた男根が、その後処理だけで再び元気を取り戻す。
「ちゅっ♡ れろ♡ ふふ、本当に奉仕し甲斐のあるおちんぽさんですね♡」
「----っ、んんぅ!」
イングリスの可愛い物を見るような嘲りに、射精して放心していたリィンが反応する。
潤んだ瞳を必死に尖らせ、快楽で真っ赤にした顔を怒りによる物だと誤魔化して、下着を突っ込まれた口から唾液を垂らして呻き声をあげる。その姿に、可愛い以外の感想なんて浮かぶはずがない。
「どうしてそう、私を昂らせる行動ばかりするんですか♡ ああ、もう…………本当はもうちょっと前戯を楽しみたかったのに、そんな顔されたら我慢できるわけないじゃないですか♡」
リィンの精液の味がまだ残る口から抑えの効かない欲望を吐露し、イングリスが淫魔顔負けの妖艶な雰囲気を纏いながら彼の肉棒を握る。
自身の唾液と彼のカウパーで濡れた肉棒がねちゃりと音を鳴らし、再び固く勃起した事で浮かび上がった血管の感覚と興奮の鼓動が指を通じて感じられた。
その愛しい生殖棒を、イングリスは自身の蜜壺へと当てがう。濃い雌臭と雄臭が混ざり合い、彼女の陰唇が肉棒の先端を捉えた。
「んんッッ!」
リィンが悲鳴をあげる。それは果たして、イングリスと繋がり合う事の拒絶の悲鳴だったのか、はたまた亀頭が触れただけで察せられた未だかつてない快感への期待と恐れの混じった声だったのか。
少なくとも、イングリスには後者にしか思えなかった。
「愛してますよ、リィン。だから私の処女、貰ってください♡」
言葉と同時に、イングリスの美尻が寝そべるリィンの腰に向かって下される。すでに亀頭を咥え込んでいたイングリスの陰唇は肉棒の形に沿って押し広げられ、十分以上に濡れそぼっていた膣道は処女穴とは思えないほどスムーズに彼の剛直を受け入れた。
「お゛っ♡ お゛、あ゛っ、ああぁああ----♡♡!!」
ぶちんっと処女膜が破れる音がイングリスの耳に響いた。同時に僅かに感じた内側が傷付けられたような痛み。その衝撃に一瞬身を固くしたが、直後に襲ってきた膣襞をカリ首が擦り上げる快感に脳が真っ白に埋め尽くされる。
「あっ♡ あはぁ♡ これ……すごい……! こんな、気持ちいいのは、初めてです……リィン!! セックスって、こんなに、ああっ……こんなに病みつきになるほど気持ちいいんですね♡!!」
「ふっ、うう----ッッ!!」
みっちりと肉竿と密着したイングリスの膣襞が、僅かに体を動かすたびに性器同士擦れあって双方にとって極上の快感を与えてくる。ただ呼吸する、それだけの動作が齎す揺れさえもお互いの敏感な場所を刺激する物になってしまう。
詰まるところ、イングリスとリィンの体のセックス相性はすこぶる良すぎたのだ。
「ああ゛ッ♡ 少し、動くだけで、おお゛♡ 敏感なところ、擦られちゃっ、んいい♡♡ あっ♡ あっ♡ まずい、私、もうイッ、イクッ♡ イッ----♡♡!!」
ぶしゃっ♡と結合部からイングリスの愛液が飛び散る。未開発のはずの膣から得られる快感とは思えないほどの強い性感に、彼女は病みつきになって絶頂しながらも強く愛しい男の肉棒を肉襞で挟み込む。
「お゛ッ、おお゛〜〜♡ 私たち、体の相性良すぎです、ね♡ あっ、またイク♡ あっ、あっ、あっ♡ 初めて同士で、これとか、もうこれ、運命じゃないですか♡♡」
「----!!?」
脳を白く染め上げる快楽に適応して来たイングリスが、腰を上下に振り始める。上体を前に倒し、覆い被さるような態勢からお尻を打ち付けるようにリィンの腰に叩きつける。
ぱんッ♡ ぱんッ♡ ぱんッ♡ とリズム良く鳴り響く肌と肌の破裂音。その音色と共に体中を駆け抜ける無限大の快楽に、イングリスは何度となく絶頂を決めながらもその持ち前の体力で、「もっともっと♡」と強欲に求め続ける。
やがて解れて来た膣道がより深く肉棒を咥え込み初め、そうすると更なる未開の場所を開発される快感に酔ったイングリスが腰の振りを早くする。
「気持ちいいですか、リィン? どうです、私と結婚したら、毎日この快感を味わって過ごせるんですよ♡ 寝ても覚めても、私があなたのおちんぽを咥えてあげます♡ 一生、この体であなたを喜ばせ続けますよ♡」
ばちんっ♡ とイングリスの尻肌がリィンの腰と打ち合い、ついに亀頭が子宮口を突き上げて彼女の赤ちゃん部屋を押しつぶす。
その衝撃に「お゛ほぉッ♡」とイングリスが大きく体を仰け反らせて、肉棒を締め付けながら絶頂する。
「はあっ……♡ あ゛ぁ……♡♡ こんな物知って、もうこれが無い生活に戻れるわけないですよね♡」
それはリィンへの言葉であり、自分への言葉でもあった。体の奥底まで愛する男の肉棒に貫かれた感慨と湧き上がる愛情に、イングリスは前世含めて間違いなく最高の幸福を感じていた。何よりも素晴らしいのが、その幸福度合いが現在進行形でどんどんと最高を更新し続けている事。そして、この幸せは彼の妻となれば一生死ぬまで感じ続けられるという事。
「はぁ♡ はぁ♡ 奥っ、もっと潰して♡ 私の子宮口、リィンのおちんぽの形に変えて♡ お゛ッ……イクッ……子宮、ぐりぐりされて、イッ、イグッ----♡♡♡」
絶頂したての敏感な膣を収縮させながら、イングリスはもう思考する事さえも忘れてただ目先の快楽のために一心不乱に腰を振った。
リィンの胸板に手を置いて、腰を発情した猿のようにへこへこと上下させるだけの単純作業。それだけで感じられるこの世の誰よりも愛しい男との、深い男女の繋がり。
膣を肉棒が出入りする度に本気アクメを決めて、自慢の尻や太ももの肉を震わせる。イングリスの顔は元の美しさを台無しにするほど快楽に染まり切ったアヘ顔を浮かべていて、舌をだらしなく垂らしながら唾液をリィンの体へと撒き散らしている。
「あはっ、あひっ、好きぃ♡ リィン、好きなの、大好きだから♡ 愛してる、からぁ♡ お願い、私を、お嫁さんにして♡ 一生、あなたを幸せにするって、誓います、から♡」
獣のような高速ピストンをしながら、イングリスは無意識に近いながらもリィンにダメ押しとばかりの愛の告白を捧げる。倒した上体は、リィンの顔の目前まで迫り、焦点の合わない瞳で見つめ合う。
「そして、あなたの中に残る誰かを、全部私で上書きしてあげます」
「----」
耳元で囁かれたイングリスの有無を言わさぬ宣言。その言葉が頭を駆け抜け、脳に届けられた瞬間、リィンはかつての世界での復讐を誓ってからの戦いの日々と死ぬまでの記憶、そこにいた彼の姿を想起して…………その全てがイングリスから与えられる快感に洗い流された。
びゅるるるるるるる!!
彼への複雑な感情がイングリスからの愛に埋め尽くされる感覚に、リィンの昂った性感は限界を迎えて彼女の子宮口へと大量の精子を解き放った。
「ん゛っ! お゛おっ♡ お゛ほぉぉッッ♡♡♡!!」
自身の胎へと注ぎ込まれる愛する男の暖かい子種に、イングリスが歓喜のオホ声を上げながら体を仰け反らせて絶頂する。膣襞が彼の遺伝子を自分の遺伝子と組み合わせる機会を逃してなるものかと強く茎に絡みつき、一滴の出し損ねも許さないと彼の精液を貪欲に吐き出させる。
ようやく射精が終わった時、イングリスの子宮はリィンの遺伝子を載せた白濁液でいっぱいになっていた。
「ぉっ……ぉお……ふああっ……♡ これが膣中出し……んっ、お腹があなたの子種で温かく満たされてます♡ ふふ、もしかしたらこれで妊娠してしまったかもしれませんね」
子宮から感じる愛しい男の温もりに、感極まった光悦の笑みで陶酔するイングリスは、その視線だけで男を蕩けさせる眼差しで眼下の番となった少年を見やった。
リィンは、人生初の膣中出しの快感と悦楽にすっかり身も心も犯されていた。イングリスを見やる瞳に反抗心や抵抗の光はなく、ただ与えられた許容量を超える性感に震えている。
その姿を見て、イングリスが小悪魔のような意地の悪い笑みを浮かべてようやくリィンの口から自身のショーツを抜き取った。
ぐちゅりと、水の中に突っ込んだと思うほど濡れた下着は彼の口から伸びる唾液の糸と繋がっていて、それが彼の美少女にも見える美形と合わさり、犯された後の少女のような淫靡さがあった。
「さぁ、リィン……初のセックスはどうでしたか? とっても気持ちよくて、幸せでしたよね?」
膣で射精したばかりの肉棒を締め付けながら、イングリスが囁くように問いかける。それは今の二人の雰囲気と態勢も合わさって、少女を誘惑する淫魔のように見る者には映るだろう。
そんな神の使いたる戦乙女から人を誘惑する悪魔の一人へと堕落した美少女、イングリス。
そして彼女によって淫楽へと引き摺り込まれたかつて地球最強の人間だった少年は----
「も、もうやめて、ください……これ以上、気持ちいいのは、嫌……なんです……こんなの、私みたいな人間には、相応しくない、のに……!」
まるでいたいけな少女のように、涙を流して許しを乞うていた。
「----」
そのリィンの姿を見た時、イングリスはまるで雷に打たれたような衝撃を受けた。
彼女にとって、リィンは一生の憧れだ。強くて、かっこいい、無機質な刃を思わせる美形の少年。だけど色事の耐性がとことん低くて、性関係で責められると今みたいに加虐心を唆る反応をしてくれる愛しい相手。
だけどこの瞬間にリィンが見せた表情は、そのどれでもなかった。
幸せになる自分を拒絶する姿は、まるで戦士としての仮面が剥がれ落ちて、罪悪感に震える子供のよう。
それが、彼のもう一つの歪み。
復讐に生きた彼にとって、自分が幸福な道を歩いている姿はとっくに捨てた未来であり、それを徹底的に拒絶したからこそ、彼はサイヤ人たちとも渡り合えるレベルの力に手をかけた。
だから彼にとって、幸せになる事は弱さに直結する。今までの自分の道を否定する事に繋がってしまう。だからそれに通ずる感情を抱かないようにして、それでも自分の心震わせる誰かを全て戦闘に結びつけた事で目を逸らした。
悟空たちと共に生きたいと思った考えを、彼と戦いたいからだと言い訳した。
イングリスに惹かれた理由は、ただ因縁の悟空と似たような雰囲気を感じたからだと誤魔化した。
その全てが、自分を幸せへと導いてしまうからだと本能で悟っていたから。
「私を、弱くしないで……!」
「--------そうだったんですね」
その告解を聞いた時、イングリスの心は完全に決まった。
「お゛っ♡!?」
ばちゅん、と音を鳴らして大量の精液を子宮に注がれたばかりのイングリスの膣道がリィンの肉棒を再びストロークする。その衝撃と快感に、涙に染まったリィンから混乱と淫欲の混じった呻き声が漏れた。
「決めました。あなたは絶対に私に堕とします。もう二度と以前のあなたに戻れないように、徹底的に壊して壊して壊して、私と幸せになる未来を受け入れるあなたに変えてあげます」
「お゛ぁっ、や、やめっ……ふむぅ!?」
静止を望むリィンの弱々しい懇願の声。それを全て封じ込めるように、イングリスは彼の口を自身の唇で塞ぐ。そしてもうほとんど抵抗の意思が感じられない降伏状態の口内を、より徹底的に自分と言う女を刻ませるように蹂躙する。彼の舌を捕まえ、嬲り、陵辱して二度と愛を拒絶出来なくさせるまで犯し尽くす。
ちゅぱちゅぱと重なり合った口内が卑猥な音を鳴らし、繋がりあった下半身からはじゅぼじゅぼっと精液や愛液がピストン運動で撹乱される淫音が響き渡る。
そうなれば射精して半勃ち状態の肉棒は再び元の大きさを取り戻させられ、それどころか第三発目の射精準備を強制的に進められる。
「んあっ、やっ、んじゅっ、やめへ……! わはった、これはらは、ちゅぱっ、んぐっ、クリスって、呼ぶから……っ、ふぁっ、だから、私を壊さないれ!」
抗えない快楽の奔流に震える桜色の髪の少年。もうイングリスを拒絶する力さえない彼は、涙を流して彼女の慈悲を乞うだけの、復讐を誓う前の少年へと退化させられてしまった。
そんな彼を両手で優しく抱きしめながら、口を離したイングリスはまるで聖母のような微笑みを浮かべて、彼にとってどこまでも残酷な処刑宣告を告げる。
「さっきも言いましたよね? 幸せにしますって。ええ、絶対に幸せにします。あなたをそうやって苛むようにさせた辛い過去も全部忘れさせるぐらい幸せにしてあげますから」
「だってそれが、夫婦って言うものでしょう?」
「あ、あああ----ッッ!!」
言葉と同時に、イングリスの膣襞でリィンの剛直が震えて、彼の精神的な敗北を告げる射精が三度勢いよく放たれる。精液ですでにいっぱいのイングリスの子宮に追加で注ぎ込まれた子種は、子宮口周りを粘液で塞ぎ、これからの二人の道行きを示すように膣道全てを真っ白に染め上げた。
「あ、ぁあ…………ぁ? お゛っ!? な、なんで、出したばかりなのに……!?」
「そんなの関係ありませんよ♡ 私はあなたが今までの自分と決別して、幸せになる事を望むまで手を緩める気はありませんので♡」
だがイングリスは射精したばかりの彼の肉棒を離すことなく、再び情熱的にお尻の上下運動を開始する。さらには両手でリィンの乳首を弄り、彼の次なる射精までのスパンをより短くしようと快楽の量を増やしている。
「とりあえず、まずは快楽に堕ちるまでありとあらゆるプレイをやってみましょうか。私ならどんなアブノーマルなプレイだって喜んでやってあげますよ。アナルプレイも、SMも、首輪だって付けてあげますし、あなたが望むなら排泄プレイだってしてあげます」
イングリスは自分で言いながら、脳内でリィンとそう言うプレイを勤しむ光景を想像して股座から愛液を流して彼の肉棒を強く締め付ける。
その快感に再び抗えない興奮の高みへと登らされようとするリィンを、全身全霊で愛しながら、イングリスはこれから死ぬまで共に過ごす自身の夫との愛の誓いを完了させる。
「愛してますよ、リィン。だから安心して、私と
「んんんぅっ♡♡」
承諾のサインは、亀頭から放たれた熱い白濁液で子宮へと塗りたくられて。リィンの全てはたった一度の敗北で、愛を知った戦闘狂に根こそぎ上書きされてしまうのだった。
数ヶ月後、天上領に同じ天上人からも畏怖と畏敬を持って接せられるリィン・レインフォースが下界から帰って来た時、天上領を降りる前の常に無表情で飽いたような顔を浮かべていた彼からは想像がつかないような…………頬を赤く染めて、愛を教え込まされた表情を浮かべた少年の隣には、彼の専属騎士であり、いずれ彼との間にたくさんの子供を作る、妻たる少女の姿があったと言う。
イングリス
ぶっちゃけ戦闘シーンはイングリスにかめはめ波を打たせたくて書きました。戦闘だと全戦全敗、ベッドの上だと全戦全勝するベッドヤクザ系女子。最初はエッチはベッドの上だけだと自重してたけど、二月と経たない内にところ構わずリィンを性的に襲うようになった。性欲だけはTS失敗して男子中学生並。
リィンとは婚約者の関係になったけど、天上人にはなっていない。あくまで立場上は彼の専属従騎士。ラニは心良く親友の門出を祝ったそうな。天上人の夫持ちとなったので、血鉄鎖旅団の事は原作以上に警戒している。
「私はリィンの騎士です。ないとは思いますが、もし万が一彼を害そうなんて考えたのなら…………潰しますよ。あなたたちも、あなたたちの大切な人も。例外なく全員、ね」
リィン
元ネタはfateの沖田総司。なので彼の技はだいたい沖田モチーフ。イングリスの天恵武姫二刀流必殺光線を打ち消したのだけは、オルタの「なんかすごいビーム」が元ネタ。
達観した冷めた死生観を持った美少年。元の世界においてパトローラーとして戦ってきたが、多くの友人や先輩がゴミのように死んでいく世界で生き残り続けた事から枯れた心を持つに至る。その中での悟空への色々と屈折した感情は本編の通り。もし生き残ってたら、ドラゴンボール世界にヤンデレバトルジャンキーホモ男の娘が爆誕していた。
あの後、宣言通りイングリスからあらゆるアブノーマルなプレイを体験させられて色んな性癖に無理矢理目覚めさせられた。
時おり寝言で悟空と呟いたりしてる。もしそれをイングリスが聞いたら嫉妬で狂う。狂った。
「悟空……私のリィンの心にいつまでも付き纏い続けるなんて……っ! 必ず彼の記憶からあなたの事を綺麗さっぱり消し去ってやりますからね!!」
天恵武姫
作者が泣く泣くカットしたシリーズその2
本当は天恵武姫たちもエロシーンに参加してハーレムの予定だったけど、主人公とイングリスの物語には蛇足になってしまうのと、エロシーンが収集付かなくなってしまいそうだったのでカット。
エロシーンの裏で、天上人であるリィンが行方不明と言う一大事件が問題にならないように多方面にアリバイ作りをしてくれてた。具体的には卒業前に良い仲だったイングリスと二人きりで内緒の任務に行ってるとか何とか。普段の二人のあれほぼカップルでしょ、な関係を知ってる学園長や生徒たちはみんな騙された。その後、天上人であるリィンと戦う条件であった彼の共有化の約束はしっかりと守られた。4Pはさぞ盛り上がったそうな。
「ぐぬぬぬ……確かにあの時は二人に協力を頼まないとあの奥の手を出すところまで持っていけなかったですが……! それでも……それでも私の夫が他の女の中に射精するのは……! うぅ、頭が……割れる!!」
悟空(カカロット)
大嫌いだ。私に復讐心以外の感情を抱かせたあなたが。
憎い。全てが終わって、もし命があったらあなたたちの仲間になってもいいかなと思わせたあなたが。
戦いたかった。殺し合いではなく、ただ純粋に武を追求した好敵手として。
願えるのならば、本当は何もかも忘れて君と共に笑い合いたかった。
でも、この未練はもう終わりにします。この世界で、私はあなたのようで、でもあなたとは違う人に見初められてしまったので。
リィンが二度目の生を無気力に生きる事になってしまった全ての元凶。彼にとっての永遠の武の極地。イングリス最大の恋敵。快楽堕ちさせて自分無しでは生きていけないぐらい深く繋がりあったのに、未だにふとした瞬間に悟空を思い出すリィンにイングリスの寝取られ脳はもうボロボロ。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。私のリィンの初恋?を奪った悟空とやら、一体どこにいるんですか!? 絶対にリィンの前であなたを倒して、リィンの憧れを私で塗り潰してやりますからね!!」(多分無理)
ここまでお読みいただきありがとうございます。
世界観やキャラがクロスオーバーするわけではないクロスオーバー作品と、初めての試みでしたがなるべく前世側の要素を取り入れようとした結果こうなりました。これで、大体私がクロスオーバー系を書くとしたらどんな感じかの目安になってくれると思います。
前編含めてエロ短編にあるまじき長い戦闘シーンは私の趣味です。
最初はラニたちもヒロインにしようかと思ったけど、あの主人公をラニやレオーネが好くとは思えずに途中まで書いて断念しました。やっぱり強烈なキャラの主人公にすると、ハーレムって難しい。
いつかリベンジで書いてみたいけど、原作の天上人や権力者のキャラが竿役として美味しすぎるので書くなら陵辱系になりそう。
もしFFのエロをやるならどのナンバリングが見たい?*FF7は意図的に外しています
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