※この作品はR-18です。

マイナーキャラ妄想短編集   作:ニンニク嫌い

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 もし彼女に仲のいい幼馴染がいたら?

 都市伝説解体センターの重大なネタバレがあります。未プレイの方は是非とも原作をプレイしてから見てください。




都市伝説解体センター(福来あざみ) 純愛 前編

 

 

 私の名前は福来あざみ。現在犬神大学に通う頑張り女子大生です。福が来ると書いて福来……なんですけど、最近の出来事を思うとあんまり福があるって気がしません!

 

 私はずっと、人とは違う世界が見えていました。他の人には見えない、不気味に蠢く赤い何かが常に視界に映るんです。

 それを幽霊だと思って、ずっと誰かに相談したいと思っていた私は、大学の仲の良い先輩が働く都市伝説解体センターと言う所に連れて行ってもらいました。

 

 そこで廻屋さんと言う車椅子の男性に会って、自分の能力が実は幽霊を視る力ではなくて過去の情景を念視する力、なんでもサイコメトリーだと教えられたんです。

 

 そこまではよかったんです。長年の悩みの種であった視界に映る赤い影たちの正体を知る事ができたのは、とっても幸運な事だったと思います。

 

 問題はそこからで。私はなんと、その都市伝説解体センターに置いてあった、座ったら死んでしまうと言う曰く付きの椅子を壊してしまったんです。それも修理費用に5000万もかかるなんて、女子大生の私にはとてもではないけど弁償できる額ではない椅子を。

 

 なので私はその借金を肩代わりしてもらう替わりに、都市伝説解体センターのスタッフとして働く事になってしまったのです。

 

 仕事内容はセンターに依頼されてくる都市伝説と思しき出来事の調査、もしくは検証。

 どちらも私の過去を辿る能力が役に立つんですが、立ちすぎていると言うべきか……ぶっちゃけとっても怖い思いに会いまくりです!

 

「どうしたあざみー、なんか震えちゃって……寝不足?」

 

「えっ、あっ! すいません、ジャスミンさん。ちょっとベッドの下に隠れた時の事を思い出してしまって」

 

 数週間前に私が初めてセンター職員として立ち会った事件。そこであわや死ぬかもしれなかった危機に直面した時のことを思い出して震える私に、車を運転していたジャスミンさんが声をかけてくれた。

 

 ジャスミンさん。本名を止木 休美さんと言う、都市伝説解体センターの先輩職員さんです。最初は素っ気ない返事ばかりで面倒くさがりな性格の人かと思ったんですが、実はとっても面倒見が良い素敵な先輩さんでした! 新人の私にもとっても良くしてくれて、今ではすごく頼りにしています。

 

「あーそれ聞いたよ、あざみちゃん。危なかったんだって? まったく廻っちも俺の後輩の女の子にいきなり無茶な事させてくれちゃって。もう一回キツく怒っておこうか?」

 

「へっ!? い、いえいえ! あれは仕方ない事ですし、むしろセンター長さんがいたから無事だったところもあるので! だから、その、藍美(あいび)先輩もそこまでセンター長を責めないでいただけると……!」

 

 そしてもう一人。助手席に座る私の後ろから声をかけて来た髪を金髪に染めた男の人、私の大学の先輩で、都市伝説解体センターを紹介してくれた幸下 藍美先輩。

 犬神大学では結構有名な人で、見た目通り遊び慣れした性格とそれでいてとっても面倒見が良いところが人気みたいです。

 

 実際、私の能力を大学内で相談できる唯一の先輩だったりします。都市伝説解体センターを紹介してくれたのも悩んでる私を思っての事で、それがまさか借金をしちゃった私を心配して、こうしてよく仕事の困り事について聞いてくれてるんです。

 なんでもこの間も私を危険に晒した事で、センター長さんに夕飯抜きの罰を与えてやったと怒っていました。センター長さん、藍美先輩に自分のご飯作らせてるんですね……。

 

 でも初めて会った時も私のことを甲斐甲斐しく面倒見てくれた藍美先輩なら、それぐらい文句言いながらもやってくれそう。

 

「ふぅん。あざみちゃんがそれで良いなら俺は何も言わないけど。嫌な事は嫌って言ってもバチは当たんないぜ〜」

 

「なに、あいびーはセンター長に不満たまってるわけ?」

 

「それはもう。同僚としても、廻っちの数少ない友人としても不満たらたらだっての。とりあえずは動画編集を俺に丸投げする分の給料を上げるべきでしょ」

 

「それならあたしの給料も上げてよ。確かあいびーがセンターの経理も兼ねてるんでしょ? そこんとこチョチョイと上げれないの?」

 

「おいおい、俺がジャスミンちゃんが可愛いからって勝手に給料を上げる男に見えるわけ?」

 

「見える」

 

「あは、正解!即答してくれてありがとう! だけど残念、さすがに職員の給料明細は廻っちがちゃんと確認するからしたくても出来ないんだよね〜」

 

「うっわ。あのセンター長、以外とそこんところしっかりしてんのかい。あいびーにおんぶに抱っこの経営だと思ってた」

 

 先輩と会った時のことを思い出して思考を埋没させていた私の隣で、藍美先輩とジャスミンさんの会話が楽しそうに弾んでいた。お互いセンター長さんへの愚痴を言っているようで、その声にはあまり負の感情はありません。

 

 愚痴は愚痴でも、心からの物ではない。気さくなやり取り。

 そんな関係を藍美先輩と築けているジャスミンさんが、少しだけ羨ましく感じてしまう。

 

 なぜなら、私はーーーー

 

「あっ、そろそろ目的地に着きそう。それじゃあざみー、降りる準備しといて」

 

「えっ? あっ、はい!」

 

「えー、ジャスミンちゃん俺には何も言ってくれないの?」

 

「あんたは言わなくても別にわかってるでしょ」

 

 依頼人と落ち合う場所の近くで車が停まる。忘れ物がないようにバックの中を確認する私の横で、気安い関係を思わせる二人の会話は続いて行く。

 少しだけ、胸が痛い。なんだか、チクリとした痛みを感じる。

 

「あざみちゃん、行こうか」

 

「は、はい!」

 

 でもその痛みも、藍美先輩がこちらを向いて笑いかけてくれるだけで吹き飛んでしまいました。

 その理由を考えて、私って単純すぎるなぁと内心笑ってしまう。

 

 だって、好きな人に笑顔で話しかけられたから幸せになってしまったなんて……うう、恥ずかしいです。やっぱり。

 

 

 

 

 幸下 藍美先輩と出会ったきっかけは、私の一目惚れでした。

 

 一目惚れ……と言うのも変な感じなんですけど、先輩を見た瞬間になんでか目を離せなくなって、ああこの人だって感じたんです。なんと言うか、運命みたいな。前世から好きだった人と今世でも巡り会えたみたいな……とにかく、そんな感じがしたんです。

 

 それで友達の美桜に相談したら、それ絶対一目惚れだよっと言ってくれて。だから私は大学でもチラチラと先輩を目で追いながら過ごしていたんですが……ある日、そんな先輩と交流を結ぶ事になりました。

 

 それは、体調が悪いと話している先輩の周りにあの赤い影が纏わりついているのを視てしまった私が、悪霊に呪われてしまったのではと勘違いして話しかけたのがきっかけでした。

 その時は、まだこの力がサイコメトリーと言うのを知らなかったんですけど、幸い私の能力で見た過去の影と先輩の体調不良は関係していたらしく、先輩は私のおかげで具合が良くなったと言ってくれました。

 

 好きな人の役に立てた。それだけであの時の私は思わず両手でガッツポーズをしたくなるくらい嬉しかったんですが、その件を境に私と先輩は何かと学内でご一緒にさせてもらう事が多くなったんです。

 

 とっても幸せな時間でした。それに、先輩は私の能力を知っても嘘だと思う事なく受け入れてもくれました。なんでもバイト先がそう言うのを調査する所で、結構本物っぽいのと遭遇しているからだとかで。まあ、それが都市伝説解体センターで、私もそこで働く事になるとは思いもしてなかったんですけど。

 うう……。でも、先輩と一緒に働けるのは嬉しい事です。センター長さんも変な人ですが、悪い人ではないですし。ジャスミンさんもとっても優しい人でした!

 

 この四人なら、私はどんな困難も大丈夫だと思います。

 

 それでもしできるなら、先輩ともう少しお近づきになれたらなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでですね、もうガスで私もジャスミンさんや他の皆さんも倒れそうになった時に藍美先輩が来てくれたんですよ! もう、すっごくかっこよくて!」

 

 都市伝説解体センターが置かれた地下4階の事務所へと、つい先ほど大変なミステリーツアーから無事生還する事が出来た私は戻って来ました。

 

 相変わらず照明は少し薄暗くて、作業をするには不適切に見える部屋がこんなに安心する物になるとは思わなかったです。

 最後にここを出た時と変わらず、備え付けられた棚には本がぎっしりと詰まっていて、他にも私ではどんな曰くがあるのかもわからない様々なオカルト的な物が所狭しと部屋に置かれている。

 

 そしてそんな場所こそが、都市伝説解体センターの事務所なのです。暗がりを照らす明かりが、三つの影を浮き上がらせていて最初は少し怖かったですが、その影が誰のものか知っている今では恐怖はありません。

 

 そしてその場所で、私は今回の事件の顛末を二人に伝えていました。

 と言うよりも、私たちを助けに来てくれた藍美先輩について熱心に話していると言うのが正しいです。

 

 一人は、先ほども紹介したこの都市伝説解体センターのセンター長さん。千里眼持ちのすごい人です。

 車椅子に乗っていて動くのが大変なので、私やジャスミンさん、そして藍美先輩が依頼場所に赴いて、それをセンター長さんが千里眼で把握しながら電話で指示を伝えると言うのが私たちの基本的な仕事手順だったりします。

 

 そしてもう一人は、この話題の中心人物である幸下 藍美先輩。なんとセンター長さんに代わって部屋の掃除から料理、洗濯、買い出し、経理まで全部こなしてる凄腕スタッフです。

 こんなに雑多に物が溢れているのに、汚いと感じさせないよう収納されているのは先輩の整理整頓能力あればこそって事ですね!

 

「あはは……褒めてくれるのはありがたいけど、ぶっちゃけあざみちゃんたちを見失って発見するのが遅れた俺の失態だから、複雑なんだけどなぁ……」

 

「おやおや、感謝と賞賛は素直に受け取っておくものですよ。それに異界に通ずる道を見つけられなかったのは、何もあなたの失態ではないのですから。むしろ上野の地下鉄線や第二次世界大戦頃の地図を引っ張り出して、あざみさんたちの辿り着くであろうゴール地点をほぼ完璧に割り出したのはお見事と言う他ありませんでしたとも」

 

 私の言葉に先輩が気恥ずかしそうに頬を掻き、そんな彼へとセンター長さんが功績を讃えるように車椅子の上でにこやかに笑う。

 私もその通りですよ!と強く頷けば、先輩はより恥ずかしそうになって「この話は俺が恥ずかしいだけだからやめにしよう」と話題を打ち切ろうとします。

 

「ええ! でも、先輩がどうやって私たちの居場所を特定したのかは気になります。地図を見てわかるものなんですか?」

 

 でもまだ先輩が助けに来てくれた時の興奮やら感動が冷めやらない私は、話題を続けるためにもふと感じた疑問をセンター長さんへと聞いてみました。

 

「普通は無理でしょうね。なにせ都市伝説と呼ばれるぐらい存在が確定視されなかった場所です。昔の地図を見比べたぐらいで見つかるなら熱心なオカルトマニアがとっくに解明しているでしょう。なので彼がやったのは逆引きです」

 

 そして私の質問に、センター長さんは嬉々として答えてくれました。そこに、まるで友人を褒めるような響きがあるのを感じて、センター長さんにとっても先輩は大切な仲間の一人なんだと嬉しくなります。

 

「あざみさんたちが消えたビルを入り口、政府の管理下に置かれた廃施設の管理者と確定させて、出口にも同じ管理者が保有する施設があると範囲を絞った。あとは地下鉄が通っていない地下空間、戦争中にそこに軍事施設が作られていてもおかしくない場所を重ね合わせる。これはそれだけのことです。ただ、それを解明するのにわずか一時間足らずでやってのけたのは、brilliant!! と言わずにはいられません」

 

 途中から謎を解明した手順自体に興奮し始めたセンター長さんの声が早口になりましたが、つまり先輩はそれだけ必死に私たちを探してくれたと言う事ですね!

 

「ほら、全然大したことなくないじゃないですか! 本当にありがとうございました、藍美先輩!」

 

「ははっ……いや、まいったなこれ」

 

 先輩は今度こそ観念したように両手を上げて、これ以上褒めないでくれと言わんばかりに笑っています。それがいつも余裕ある先輩をやり込めたような感じがして、私は申し訳ないと思いつつもそのまま先輩に何度も感謝を伝える。

 隣では熱が入りすぎたセンター長さんが旧日本軍の軍事施設に纏わる都市伝説を語り始めていて、私と先輩はしょうがないと言うようにアイコンタクトして、そのまま蘊蓄話の聞き役に徹する事にしました。

 

 これが、私が都市伝説解体センターに所属してからの日常です。大学で美桜や他の友達と一緒にいた時とは違う、でもとっても安らかで落ち着く時間。

 

 ああ、この日々がずっと続けばいいなぁ。

 私と、先輩と、センター長と。そして今はいないけど、ここにジャスミンさんを入れて四人で。ずっとみんなで。

 

 でもできれば、少しだけ関係を変えたい相手もいて。先輩や後輩のその先、友達のもっと上の関係になりたいなぁと思っている人。

 

 その人も、私と同じくらいこの時を楽しんでいてほしいなと思って、ちらりと視線をセンター長から彼へと映す。

 

 ――――あれ?

 ――――先輩、なんだか悲しそう?

 

 センター長さんの都市伝説語りを見ている藍美先輩は、口元はいつものように軽い笑みを映しているのに、その瞳はまるで今にも壊れそうなほど震えていて。

 

 それが、なんだかとっても辛そうで。苦しそうで。そんな顔、してほしくなくて。

 

 でも、私にはどうすることも出来ず、ただその顔を瞳に焼き付ける事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい天気ですね」

 

「そうだね。たまにはこうしてのんびりするのも悪くない、てね」

 

 麗らかな日差しが差すセンターの屋上で、私と藍美先輩は並んで日向ぼっこをしています。お尻にピクニック用のシートを引いて、そこにごろんと寝転がって。

 暑くもなく、寒くもない、そんな絶好の天気の下、私たちは束の間の休憩を味わっていました。

 

「でも、世間が大変な事になってるのに、こんなにゆっくりしてていいんでしょうか?」

 

「いいんだよ。周りが大変だからって、休んじゃいけない訳じゃないし。それに、その大変が自分のところに来て休めなくなっちゃうかもと思ったら、今のうちにしといた方がいいだろ?」

 

 SNSでは今もSAMEZIMAと言う人が予言したグレートリセットのカウントダウンと、そんな予言に触発されたジマーと言う信者が起こすテロ事件の話が持ちきりです。

 私も実際、毎日そんな記事をネットで追ってどの情報が正しいのか、グレートリセットとは何なのかを考えていました。

 

 そんな私を想って、藍美先輩はこの屋上での日向ぼっこに誘ってくれました。何も考えず、ただ空を見上げてお話しする。今までの慌ただしさを思うとびっくりするぐらい穏やかなこの時間は、久しぶりに私の心を穏やかにしてくれます。

 

「仕事、サボって大丈夫なんですか?」

 

「普段俺に頼りすぎなんだ。多少いなくなって嫌がらせするぐらい、別にいいでしょ」

 

「えっ、でもセンター長さんって割と藍美先輩がいないと食事もままならないって聞きましたけど」

 

「カップ麺は置いといたよ。お湯も沸かせられないとか言われたら知らんけど」

 

 しばらく、他愛のないやり取りが続いて行く。シートに寝転がって隣り合う私たちは、目線も合わせずに手が触れ合うような距離で言葉を交わす。

 それが気持ちいい。天気もそうだけど、先輩とこんなに近くで、二人きりで喋ってられる時間自体が気持ちが良い。

 

 先輩を一人占めしてるような、そんな気分になれる。

 

「そういえば、ジャスミンさんは呼ばないんですか?」

 

「ジャスミンちゃんは今日は忙しかったらしくてね。また別の日に呼ぶつもり」

 

「…………その日は……今日みたいに、ジャスミンさんと二人きりでするんですか?」

 

「えっ? まぁ、あざみちゃんが参加しなかったらそうなるかな。どして?」

 

「い、いえ。気になっただけです! そ、その時は私も参加します」

 

 話題は自然と共通の知り合いの話になって。そしてジャスミンさんの話になった時、私の中には少しだけ複雑な感情が見え隠れしてしまう。

 別に、ジャスミンさんのことが嫌いなわけではない。むしろ好きです。とっても頼りになって、優しくて、素敵な人です。

 

 だからこそ、少し怖い。仲のいい藍美先輩とジャスミンさんのやり取りや付き合いを見るたびに、先輩を取られてしまうんじゃないかと言う気になってしまう。

 別に、藍美先輩は私の物でもないのに。そう思っちゃうのは、どうしてなんでしょう。先輩が私以外の誰かとこうして二人きりで話したりするのかと思うと、なぜか胸がズキズキする。嫌だなって、感じてしまう。

 

 よくわからない。わからないけど、先輩には私だけを見ていてほしい。そんな気分に、最近はよくなるようになった。

 

「藍美先輩に、彼女とかいるのかな?」

 

「んん? 突然どうしたの、あざみちゃん?」

 

「…………へっ、私、いま口に出して……っ!? 〜〜〜〜ッ、な、なんでもないです!」

 

 うわぁぁぁ!! ど、どどど、どうしよう!? つい心の声が口から出てしまいました! 聞かれちゃいましたよね!? 聞き取れちゃいましたよね! うう、ヤダーーーー!!

 

「彼女かぁ……そういえば作ったことないなぁ」

 

「えっ!? そ、そうなんですか!」

 

 頭を抱えて今すぐ墓穴に飛び込みたくなっていた私は、先輩が口にした答えに一気に思考を戻しました。

 大学でも結構良い意味で有名人な藍美先輩が彼女がいた事ないなんて……正直信じられない気持ちが強いです。

 

「ははは、本当だよ。ずっとそれどころじゃなくてさ……あざみちゃんに言われるまで考えたこともなかったなぁ」

 

 そう語る先輩の顔は、冗談でもなく本気で言っているようだった。理由は、やっぱり都市伝説解体センターで働いているからでしょうか?

 だとしたら、もしかしたら同じ職場で働いている私ってすごくチャンスなのでは!? と思わず考えてしまう。

 

「欲しいとか、思わないんですか?」

 

 言ってから、いやいやこれは踏み込みすぎでは!?と後悔した。ちょっとあからさますぎる気がして、勘のいい先輩なら私の想いに気づいてしまうんじゃないかとハラハラする。

 

 いや、気づいてくれるなら嬉しいんですけど、これじゃまるで私が誘導したみたいに思われそうで。

 

「そうだな……今は、無理だと思う。やらなきゃいけない事があるから」

 

「――――っ!」

 

 でも返ってきた言葉に、私のそんな想いなんて無くなってしまった。

 だって、その言葉を口にした先輩の顔は、あの日美桜が私に向けた物と一緒だったから。

 

 自分の人生の終わりを悟った、諦めと覚悟が内包した表情。

 

 それに気づいた時、私の口は勝手に動き出していた。

 

「な、なら……っ! 今回の一件が終わったら私と一緒に、りょ、りょりょ、旅行とかしてみませんか!?」

 

 付き合ってくださいとは、言えなかった。それを言うには、まだ私の勇気は足りなさすぎます。だからせめてもと、なけなしの乙女の根性を奮い立たせてその一言を形にしました。

 それでも声はすごく震えて、顔は真っ赤になってしまいましたが。でも、言いたい事はなんとか噛まずに言い切れました。

 

「――――」

 

 視界の先で、驚いたように目を見開く先輩の顔が見える。こちらを見つめる瞳の奥に映る意図を、一世一代の告白で頭がこんがらがっている私には掴み取れない。いや、たとえ正常な状態だったとしても、センター長ほどの頭の良さのない私ではわからないでしょうけど。

 

 一秒、二秒。無言の時間が過ぎて行って、だんだんと私の中で後悔の感情の方が大きくなり始めた時に、ようやく先輩が笑った。

 

 「はは……っ」て……何か、すごく儚くて、叶わない理想を目にしてしまったような、切ない笑み。

 それに、胸の奥がぎゅっと締め付けられる気がして……私は強く先輩の手を両手で掴んでいた。

 

「絶対……絶対行きましょうね! 約束です!」

 

 それは、私が今までして来た約束の中でも一番力の籠った誓いの言葉だったかもしれない。

 

「…………ああ。全てが……終わったらね」

 

 でも、最後まで私は、先輩の悲しそうな瞳を晴らす事が出来ませんでした。

 それがとても辛くて、苦しくて、悲しくて……ああ、私は本当に先輩の事が大好きなんだって、そう思ったんです。

 

 絶対、幸せにしてみせます。

 今の私じゃ頼りないかもしれませんが、必ず。

 だって恋する乙女は無敵だって、ジャスミンさんも言ってくれましたもの!

 

 待っててくださいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 先輩が攫われた。

 それもグレートリセットを企むジマーの人たちに。

 

 私にその知らせが届いたのは、SAMEZIMA管理人の正体が7年前に自殺した如月努さんの弟である事を突き止めた後だった。

 

 その時まで私は、実は公安の人間だったジャスミンさんの上司である富入さん(なんでも公安の一番偉い人らしい)とグレートリセットを止めるための調査の真っ最中で、明らかになった7年前の上野天誅事件の真実の一端に衝撃を隠せませんでした。

 

 証拠もないのに上野天誅事件の犯人としてネットでひどい誹謗中傷に晒された如月努さんは、無実を証明する決定的なアリバイを持っていながら警察にその事実を隠蔽されて、真犯人を庇うためのスケープゴートにされてしまった、そんな残酷な真実。

 

 としても悲しくて、ひどい話です。こんな事が現実に起こって、そしてその禍根が今日本中に降りかかろうとしている。

 言葉に出来ない感情が心を荒れ狂って、その間にも富入さんは事件解決のために私へ避難するように告げていなくなってしまった。

 

 これからどうすればいいのか。私も、如月努さんの弟を探すべきなんじゃないかと決意しようとした時、センター長さんからさっきの知らせが届いたのだ。

 

 それを聞いた時、もう私の頭は先輩の安否以外何も考えられなくなりました。

 グレートリセットも、如月努さんの弟も、なんなら自分も今偽情報に惑わされた人たちから追われている事さえも、忘れて。

 

 私はただ、藍美先輩の痕跡を追って走りました。センター長さんから聞いた先輩が誘拐されたと言う場所から念視を使えば、追跡自体は不可能じゃありません。いいえ、たとえ不可能でも無理やり可能にします。

 先輩を……私の大切な、大好きなあの人を、絶対に救い出してみせると、そう決意してるんですから!

 

 そしてほどなく、私はジマーの人たちが先輩を監禁していると思しき場所に着きました。それは都内の、何の変哲もない一軒家です。念視で先輩を連れた謎の赤い影がこの家の中に入っていかなかったら、こんなところに人が監禁されているなんて思いもしないほど普通の家。唯一の目立つ点と言えば、隣にもう使われていない廃教会があることでしょうか。

 

 そこに、私は一人で突入した。

 鍵は、念視で隠し場所を発見しました。

 中に入ってからは、同じく念視で地下へと繋がる隠し階段を発見できた。

 そして下へ下へと、駆け足で降りて行った先に先輩はいました。

 

「藍美先輩!」

 

 両手両足を縛られて、目隠しに口枷、そしてヘッドホンを付けられている。体の自由どころか、視覚も聴覚も完全に封じられた状況。そのあまりにも執念深い拘束に、私はいても立っても居られずに先輩に駆け寄った。

 

「待っててください! すぐに助けますから!」

 

 先輩に近づくと、蕩けるような甘い匂いが鼻腔をくすぐる。それが何なのか、私はわからないままとにかく早く先輩を自由にしようと拘束を外して行く。

 先輩からの反応はない。一瞬最悪の想像が駆け巡って、しかし確かに鼓動を打つ心臓の音で眠っているだけだと安堵する。

 

 そして両手両足の縛りを解き、先輩の目と口を覆う拘束具を外そうとした時、後ろで大きな音が響いた。

 

「えっ!? と、扉が!」

 

 入ってきた扉がなぜか突然閉まったのだ。同時に先ほどから香っていた甘い匂いが急激にその濃度を増して行く。

 それが何なのかは未だにわからないけど、とっても嫌な予感がする。だから私は、まず先輩に目を覚ましてもらおうと強く叫んだ。

 

「先輩! 藍美先輩! 起きてください、先輩!!」

 

「――――ぁ」

 

「!!」

 

 反応はあった。瞼が開き、焦点の合わない瞳が微かに揺れる。口枷を外されてようやく自由になった口が何か言葉を紡ごうと開閉する。

 先輩は大丈夫だった。助けられたんだと言う喜びが全身を満たし、しかし今はそれに浸かってる場合じゃなかったと早いところ先輩を覚醒させようとして。

 

 言葉を、聞いてしまった。

 

「ジャス……ミン……」

 

 

 

「――――――――――――え?」

 

 

 

 ジャスミン?

 どうして、ジャスミンさんの名前が出てくるんですか。先輩の前にいるのは、私なのに。先輩を助けているのは、私なんですよ。

 

 なのに、どうしてジャスミンさんが真っ先に出てくるんですか?

 

 甘い匂いが、さっきよりも強くなった。

 

「藍美先輩、あざみです! 私が助けに来たんですよ、先輩!!」

 

「うっ……ぁっ……あ……み……?」

 

 先輩の瞳が、ようやく私の姿を捉える。よかった。やっと私を認識してくれた。今のは、きっと混乱で私がジャスミンさんに見えてしまっていただけなんでしょう。そうに違いありません! 誘拐されて監禁されたんです、そうなっても不思議じゃないはずです!

 

 だから、だから……先輩が私じゃなくてジャスミンさんに助けを求めていたと言うわけでは――――

 

「な、んで……? ジャスミンじゃ……ない……? どう、して……!?」

 

 ――――――――なんで、そんなこと言うんですか?

 

 甘い匂いが、強くなった。

 

「ジャスミンは、どうなっ……んんっ!?」

 

 気づいたら、私は自分の唇を先輩の口に押し付けていました。もうこれ以上、先輩からジャスミンさんの名前を口にしてほしくなくて。

 

「ちゅっ、ちゅぱっ、んんっ……!」

 

 きっと、先輩はおかしくなってしまっているんだ。ひどいをことをされて、正常な思考が出来なくなっているんです。

 

 なら、私が目を覚ましてあげないと。

 

「先輩、はむっ、んちゅっ……私を、見てください。先輩の前にいるのは、私なんですよ……っ!」

 

 私が助けに来たのに。

 私が、先輩を救っているのに。

 

 だから、私の名前を呼んでくれない先輩をお仕置きしても、許してくれますよね?

 

「んっ、ふぐっ……!?」

 

 カリッて、キスなんて初めてだったから、つい力がこもって先輩の唇を噛んでしまった。やりすぎですと、まだどこかで冷静さを保っていた私が声を上げている。

 だけど口内に垂れて来た苦味と塩辛さが混じった鉄の味を感じた瞬間、そんな私はどこかに消え去った。

 

「んっ、んんっ……♡」

 

 先輩の、血の味。

 先輩の、体液。

 先輩の、一部。

 それが今、私の喉を伝って胃の中に落ちて行く。

 

 全身が震えた。今まで感じたことがないような興奮と快感が体中を走り抜ける。初めてなのに、まるで何百回も繰り返してような中毒感を脳が感じて。気づいたら、私は先輩を床に押し倒してその顔に覆い被さっていた。

 

「はぁ、はぁ……っ! 先輩、先輩!!」

 

 きっとスイッチが入ってしまったんだ。

 でないと、私にこんな積極的な真似なんてできません。

 

 だから、これは全部先輩が悪いんです。

 私のスイッチを押したあなたが悪いんです。

 先輩が、先輩が、先輩が先輩が先輩が先輩が、ジャスミンさんの名前を呼ぶから!!

 

「ちゅっ、はむっ、んむっ……!」

 

 両足で先輩の胴体を挟み込んで馬乗りの体勢になって、先輩を支配したような姿勢で口を貪る。私の唾液を飲み込ませ、代わりに先輩の体液をもらう。唇の間で粘膜が卑猥な音を鳴らすのが聞こえて、それがより一層私をイケナイ気分にさせて来る。

 

 ひどいことをしてるって自覚はあります。でも、先輩が悪いんだと思えば全て正当化された気分になって。背徳感に、心がびっくりするぐらい興奮している。

 

「あ、ざみ……? なんで……違う、いや……どうして……んんっ!?」

 

「まだ混乱してるんですね、先輩。大丈夫です、私が先輩を助けますから!」

 

 ああ、やっと私を見てくれた。

 嬉しくて、つい強くキスをしちゃいました。でも驚いてこちらを見つめる先輩の瞳には、ちゃんと私が映っています。

 それを見て、今しかないと甘い熱に浮かされた私の心は覚悟を決めた。

 

「先輩、好きです」

 

 ずっと言えなかったその一言は、自分でもびっくりするぐらい自然と口に出た。

 たった四文字。口にしたらこんなに短いのに、言葉にするのにこんなに長くかかってしまったなんて。

 

「私、ずっと先輩のこと好きなんです。初めて会った時から、ずっと。ずっっと。先輩を見るたびに胸がドキドキして、体が熱くなるんです」

 

 そして一度溢れたら、どんどん先輩への今まで秘めて来た想いが堰を切ったように出てきてしまう。

 

 私が、どれだけ先輩が好きなのか。

 初めて会ってから今までどれだけ先輩といる時間が幸せだったか。

 一緒にいない時間がどれだけ寂しかったか。

 

 先輩が、私じゃない誰かと一緒になってしまうのを考えるだけでどれだけ不安だったかを。

 

 赤裸々に、隠すことなく。私は全てを打ち明けていた。そしてそうすれば、当然ジャスミンさんへの嫉妬も口にしていて。私のひどい内面を、先輩が知ることになってしまう。

 

 それでも止まらない。止められない。だって、先輩には私の全てを知った上で受け入れて欲しいと思うから。

 だってそうじゃないと、ジャスミンさんに申し訳ないです。

 

「だから、先輩。お願いです。私なんかじゃ、ジャスミンさんには敵わないかもしれませんけど、先輩への想いじゃ誰にも負けません」

 

 ジャスミンさんは、とっても素敵な人です。それは、私がよくわかってます。先輩が惚れてしまうとしても、悔しいけど納得してしまう。

 でも、負けたくないんです。私の方が先に好きだったから……なんて理由だけじゃありません。先輩とずっと一緒にいたいから。先輩の一番大切な存在でありたいと、そう初めて会った時から思ってしまったから。

 

 先輩を苦しめる何かから、私が救うって誓ったから!

 

「私が先輩を幸せにします。だから…………私を、選んでくれませんか?」

 

 最後は、少しだけ口が震えてしまった。

 やっぱり、どれだけ勢いと興奮に任せてしまっていても怖いものは怖い。先輩に受け入れられなかったらという、もしもが怖いです。今までセンターで働いている時に出会ったどんな事件の恐怖体験よりも、告白の返事を待つこの瞬間が一番。

 

「…………あざみ」

 

 私の告白を聞いて、しばらく呆けていた先輩はどこか遠い目をしてから、何かを諦めたような顔を見せた。

 それが、何であるかはわからなかった。聞く前に、先輩は覚悟を決めた目で私を見つめてきたから、考える暇さえもなかったから。

 

「――――――――一つだけ、いいか?」

 

 重い声で、先輩が言う。さっきまで混乱していたとは思えないぐらい、強い声だ。

 それに、私は覚悟を決めて先輩の瞳を見つめ返した。嘘だ。すっごく手が震えてる。先輩が次に何を言うのか、怖くて不安で心がぐちゃぐちゃになりそう。でも、今だけは目を逸らすわけにはいかない。

 

「なにがあっても。どんな真実がこれから明らかになっても、いなくならないと誓ってくれ」

 

 そして聞こえた言葉の内容は、私にとって予期していない物だった。告白の返事でも、質問でもなく、約束のお願い。

 それに戸惑って目をぱちくりさせるだけの私の前で先輩は安心させるように、私の頭を撫でた。

 

「そしたら、俺は福来あざみの幸せを証明し続ける」

 

「…………ふえっ」

 

 え?

 なんか、今。

 思ってた以上の事を言われたような。

 

「え、あっ、あの……そんな、〜〜〜〜!!」

 

 え、え、え、えぇぇっ!? 今のどういうことですか!!? これって、つまりそのOKということでいいんですか!? というより、私が告白してたのに逆告白されたみたいになってませんか!! そんな、それって、うううう……!

 

「ち、誓います! 絶対、絶対先輩の隣からいなくなりません! 私は、生涯先輩に寄り添います!!」

 

 嬉しいです。嬉しいに決まってます! もう嬉しすぎて自分がなにを口走ってるのかもわからないぐらい嬉しいです。やっぱり乙女としては告白するよりされたかったですから! なのでもう感極まりすぎて泣きそうです!

 

「ああ。それを守ってくれるなら、俺はもうお前の物だ」

 

「そ、それって……私と先輩は、こ、こここ……恋人!?」

 

「そうなるな」

 

 私の反応に困ったような顔で先輩が頷く。恋人という言葉を、否定せずに肯定してくれた。それだけで胸がいっぱいになります。

 

 ああでも、恋人になれたって事はつまり。

 

「じゃあ、その……このまま先に進んでいいんですよね?」

 

 

 

 

 

 

「これが……先輩の……」

 

 私の目の前に、生まれて初めて見た男の人の性器がそそり立っている。とても大きくて肉々しい。イカ臭さが鼻を突く。いつもの私だったら、鼻を摘んで目を逸らしてしまったかもしれない。

 

 でも。

 でも、それが好きな人の物だと思えば。

 このグロテスクにさえ見える男性器が、途端にすごく魅力的に見えてくる。

 これが、恋は盲目って事なのかな。だとすると、とっても素敵な魔法だと思います。

 

 だって私の目に映る先輩の性器は、こんなにもかっこよくて、美味しそうで、今すぐ咥えたくなるんですから。

 

「あまり、見つめられると恥ずかしいんだけど」

 

「あ、ああ! ごめんなさい、見惚れてしまって、つい!」

 

「…………あざみちゃんは本当に純粋だね」

 

 先輩がはにかんだように笑う。そのいつもの先輩らしい姿に安心と愛おしさが同時に込み上げて来る。この人は、もう私の恋人なんだと早くも独占欲が芽生えてしまう。

 

「じゃ、じゃあ……咥えますから」

 

 意を決したように言うけど、本当はもう早く口に入れたくてしょうがなかった。告白した時からずっと頭はピンク色に染まっていて、私ってこんなに変態だったんだって自分でもびっくりしてしまう。

 

 それに、この部屋の甘い匂いもその興奮を後押しする。いえ、この甘い匂いがそもそも……?

 どうでもいいや。今は、先輩とエッチしたいです。

 

「ん、ちゅぅぅ……」

 

 唇に先輩の先っぽが触れる。びくんと跳ねる性器。それが可愛くて、そのまま先端を一気に口の中に咥え込む。

 

「ちろ、ちゅる、じゅる……」

 

 初めての男の人の味は苦くて、塩っけがあって、病み付きになりそうでした。

 舌が自然と先っぽに巻き付いて、唾液でぬらぬらと濡らして行く。まるで、体がどうすればいいかを覚えているように、本当に自然と動いていた。

 

 それに少しだけ疑問が湧いて、でも上目遣いに見た先輩の顔が気持ち良さそうでどうでもよくなる。先輩が喜んでいるなら些細な事だもの。

 

「じゅる、ぢゅっ、んんんっ……!」

 

 先端を十分濡らしたら、今度はどんどん根本まで咥え込んで行く。私の口に入りきるか不安なほど大きいけど、なぜだか確信していた。大丈夫、私の口は全部咥えられるって。

 

「ふっ、んんんぅぅ……♡」

 

 その根拠のない自信通り、私は根本まで先輩を受け入れられた。さっきまで唇で挟んでいた先っぽが、今では喉奥まで届いている。息苦しさを感じるけど、それ以上に幸せな気分になった。

 

 これが、相思相愛エッチなんだ。

 

 じゃあ、先輩にももっと気持ちよくなってもらわないと。

 

「んっ……じゅぷ、じゅぽっ!」

 

 深く飲み込んだ性器を、勢いよく顔を上下して出し入れする。唇を肉皮にぴっちりと貼り付けて、卑猥な唾液塗れの私の口内で先輩の物を洗浄する。ううん、マーキングして行く。これは、私の物なんですって。

 

「ふぅ……♡ ふぅ……ッ♡」

 

 思考がどんどん先輩の性器の事しか考えられなくなる。ただ頭を上下させるだけの行為が、すごく気持ちいい。先輩の大事な部位が私の中に入って、私の体液で染められてると思うだけで、下腹部が熱くなる。

 

 先輩の顔が真っ赤に染まってるのがわかる。とっても気持ちよくなってくれてる。もっと、もっともっと幸せにしてあげます。

 

「じゅぷ♡ じゅぼっ♡」

 

 卑猥な水音をわざと強く響かせる。顔を動かして先っぽが当たる口の位置を頬裏に変えて、ほっぺが先輩の性器に押されて膨らむ。

 これが好きなんですよね?と、なぜか初めてのはずなのに知ってる先輩の好きな口淫の仕方に、疑問は抱かなかった。

 

(先輩のおちんちん好きです! もっと、もっと私の口で気持ちよくなって! 私を感じてください、先輩!!)

 

 だって、もう私の心は先輩への愛一色なんです。この時だけは、グレートリセットのことも、怪我をしたジャスミンさんのことも、如月努の弟の正体のことも、全部忘れられていました。

 

 それからどのくらい続けたかはわかりません。3分、5分? 10分は経ってしまったでしょうか? 夢中になりすぎて、もう時間の概念なんてほとんど忘れていました。

 

 先輩の性器は、もう私の唾液がない部位なんて無いってくらいテカテカに光っていて。股間まで淫猥な唾が垂れています。

 

 そして私の口中には、先っぽから溢れた苦くて美味しい汁が広がっている。この味も、知らないはずなのに知っている気がする。人生で一度も経験も知覚したこともないはずなのに、これが先走り汁だと自然と頭に浮かび上がって来た。

 男の人が興奮すると出してしまう物。これから先に来るもっとすごい物を浴びせて来る前の前菜。

 

「じゅるるるっ……ッ!」

 

 それが欲しい。口がより一層強く先輩の物に吸い付いて、両腕が先輩を逃がさないように腰に絡み付いた。意図してではなく、勝手に。こうすれば、先輩は……幸下藍美は私の口内に射精するしかないと体が知っているから。

 

「あっ、くぅぅ……! で、出る……!」

 

(出してください! 私の口内に出して! 射精して! いつものように、わたしの胃をあなたのベトベトで子種汁いっぱいの白濁液で満たして!!)

 

 頭に加熱させる先輩の精への渇望。そこに一瞬、私の物ではない誰かの思考が混じった気がして……でも口内で強く跳ねた性器にその懸念は霜と消えてしまった。

 

 びゅるるるるるる!!

 

「ん、んんんんっ……♡」

 

 喉奥まで咥え込んだおかげで、先輩の熱い液体が喉肉に直接叩きつけられる。ねばねばして、コクのある塊。口いっぱいにすごいイカ臭さが充満して、顔がみっともないぐらいだらしなく蕩けてしまう。

 舌先に触れた固形のようなドロリとした粘液の味を噛み締めた瞬間、私の体が歓喜に震えて股間から同じような何かを流すのがわかった。

 

 これが、先輩の。初めて味わったけど、これがきっと私が人生で一番好きな物になると確信した。あんなに好きだった芋けんぴよりも。それか、今度買って来た芋けんぴにこれを塗って食べたら美味しそう。

 

 そんな変態的な思考をしてしまうぐらい、この粘着液は麻薬だった。女性を虜にしてしまう危険薬物です。

 他の人に見られたらまずいですから、全部私の口の中に入れて証拠隠滅しときますね。

 

「ごくっ、んくっ……んんっ……♡」

 

 吐き出された液体を、残液も含めて全部嚥下して行く。こってりとした塊が喉を通り抜ける感覚がなんとも言えない気持ち良さを伝えて来る。本当に、やばいです。味も喉ごしも最高とか、先輩は私を依存させる気ですか? もう依存していて、離れられる気がしないですが。

 

「はぁ、はぁ♡ とっても、美味しかったです♡」

 

 自分でもわかるくらい情欲に染まった目で、先輩に感謝を告げる。そうすると彼はなんとも言えない表情で笑うだけでしたけど、いつか先輩も私に飲ませる事が好きで仕方なくさせてあげます。

 だって、私がこんなに病み付きになってしまったんですから。先輩も病み付きになるのが恋人としてフェアだと思います。

 

 そうだ、恋人なんです。私と先輩は恋人。なら、さらに。繋がっちゃっても、いいですよね?

 

「先輩……いいですか?」

 

 立ち上がって、スカートに手をかけながら確認を取る。でも、これもやっぱり形式上だけで、もしここで先輩がダメと言っても聞く気はありません。ここまでやって本番はダメなんて、ありえませんから。

 

 私の言葉に、先輩が瞼を閉ざす。何かを思案しているような顔。いえ、あれはまるで誰かに謝っている?

 先輩の行動の訳がわからず、もうこのまま無理矢理押し倒してしまおうかと思った時、ようやく彼は瞳を開いた。

 

「ああ、いいよ。――――セックス、しよっか」

 

「――――ッッ!!」

 

 合意のセリフ。それを聞いた途端、私はもうスカートを脱ぐのも手間になって先輩に飛びついていました。

 床に座る彼と抱き合って、先輩の性器をスカートの中に入れる。熱い塊が太腿に触れて、それだけでエッチな声を出してしまう。脚に触れただけでこれなのに、中に挿れたらどうなるんだろうと期待が膨らむ。

 

「先輩……♡ 挿れ、ますね。セックス……しますから!」

 

 これからする事を声に出す。それは抑えきれない期待を発散するためと、心に湧いた初めての恐怖を紛らわせるためだ。

 スカートの裾を捲って、少しセクシーな白の下着を露わにする。こんな事になるとは思ってなかったのに、なぜかちゃんと勝負下着を穿いていた朝の自分を褒めたくなります。

 

 それを指でずらせば、興奮と劣情でびちゃびちゃになったアソコから卑猥な糸が溢れ落ちる。少し、いやかなり恥ずかしい。でも、これからセックスするんだし、なんならこれから毎日いっぱいこんな事をするんだと思えば……! うう、やっぱり恥ずかしいです! 先輩に淫乱な女の子と思われるのはヤダーー!

 

「ここからは俺がリードする。あざみは、肩の力を抜いてて」

 

「ふえっ!? いや、でも…………はい、お願いします」

 

 そしてそんな私の内心を察してくれたのか、先輩が優しい気遣いをしてくれました。あんなに自分からがっついていながら肝心なところで申し訳ないと言う気持ちと、やっぱり初めては男の人からされたいと言う私の想いを汲み取ってくれた先輩にまた心をときめかせてしまう。

 

 先輩が自分の性器を握って、その先端を私の濡れる筋の入り口を探してススっと擦って来る。それだけで腰が痙攣してしまうような快感が走り抜けるが、頑張って踏み止まる。

 本当、これって挿れた瞬間に私気を失ってしまうんじゃないでしょうか?

 

「挿れるよ?」

 

「はい。私を、先輩の女にしてください」

 

 今度は、先輩が確認を取ってくる。それに万感の思いで頷くと、重なり合った性器がゆっくりと埋没して来る。

 

「んっ……!」

 

 まず感じたのは、お尻が広がるような感覚。そして太い物が内側へと侵入して来る異物感。次いで、下腹部に広がる熱と快感。好きな人の一部が、自分と結合していると言う女の幸せ。

 

「ぁっ……んんっ! はっ、ああ……っ♡」

 

「ゆっくり息をして。もうすぐ半分まで入るから」

 

「……うん♡」

 

 まだ半分も行ってないんだと、すでに幸せいっぱいの私はこれ以上の快感の存在に胸を高鳴らせる。

 そしてゆっくりと進んでいた圧迫感が、途中で私の中の何かに阻まれたように止まった。それがなぜなのか、性経験に疎い私でもそれぐらいわかる。

 

「そのまま進んでください。私の初めて……処女膜を、奪って……!」

 

 先輩が何かを言う前に自分から懇願した。もう、これ以上待ちきれないから。それに、やっぱりリードされっぱなしは少し申し訳ない。何より私はもう先輩の後輩じゃなくて、恋人なんだもの。

 

 私の言葉に、先輩が無言でゆっくりと腰を進めてくれた。押し上げられる内側。少しだけ怖くて目を瞑った私は、ブチっと言う思いの外呆気ない痛みと音を聞いた。

 

「あっ……あああああッッ♡♡♡」

 

 処女膜が破られた。先輩が私の最初で最後の初めての人になった。その感動と快感が濁流のように遅れて私の全身に駆け巡って、頭が真っ白に染まった。体が痙攣したようにぶるりと震えて、繋がり合ったアソコから卑猥な汁がいっぱい出る。

 この時はこれが何なのか知らなかったけど、私は絶頂したみたいです。それも、かなりすごい深イキと言う物を。

 

 そして処女を貫かれた衝撃からか、それとも初めてなのに昂りすぎた影響なのか、私の視界は急に疲れたように薄ぼやけて来ました。

 

 これからなのに、と思う。

 でも、ここまでやれたんだし頑張った方だとも思いう私もいる。

 普段の私だったら、逆立ちしてもこんな真似出来なかったでしょうし。

 

 だけど、このまま眠ってしまう前に。

 こんな形だけど、やっと恋人同士になれた大好きな人に、私の精一杯の想いを伝えたい。

 

「大好きです、藍美先輩」

 

 薄ぼやけていく視界の端で、先輩が頷いてくれるのが見えた。先輩とこの想いを通わせることができたんだ。

 

 その胸を焼くような幸せに包まれながら、私は微睡むように意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――ご苦労様、あざみ

 

 

もしFFのエロをやるならどのナンバリングが見たい?*FF7は意図的に外しています

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