※この作品はR-18です。

マイナーキャラ妄想短編集   作:ニンニク嫌い

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 もしオデットのトラベラーストーリー3章で、オデットが一人でラムジを助けに行ってセルベッサ達に敗北していたら?

 頂いたアイデアを元に書いてみました。アイデアを下さった方、ありがとうございます。

 原作を知らない方へのオデットのキャラデザ
 
【挿絵表示】



オクトラ大陸の覇者(オデット)

 

 日が沈みきるより少し前、オデットはサンシェイドの外れに建つ古びた倉庫の前へたどり着いた。

 

 乾いた風が砂を巻き上げ、傾き始めた陽光を鈍く濁らせている。扉の周囲には目立った見張りの姿こそなかったが、無人であるはずもない。隠すつもりで消された足跡、窓の隙間から漏れる僅かな灯り、そして風向きに逆らって漂ってくる人の汗と油の臭い。どれも、中に複数の人間が潜んでいることを物語っていた。

 

「なるほど。歓迎の準備だけは整っているらしい」

 

 オデットはそう呟き、杖の先で地面を軽く叩いた。

 

 本来ならば旅人へ協力を求め、慎重に包囲するべき場面だ。だが、セルベッサの手下たちがラムジを攫ったと知った時点で、悠長に人を集めている余裕はなかった。

 あの男がどれほど計算高いかは、ようやく理解したばかりだ。こちらが動くことまで織り込み済みだとしても、だからといってラムジを見捨てる理由にはならない。

 

 オデットが扉へ手を掛けると、内側から閂の外れる音がした。

 

「随分と親切だな」

 

 直後、扉が勢いよく開き、二人の男が同時に飛び出してきた。

 

 一人は短剣を手に正面から迫り、もう一人は横へ回り込む。オデットは半歩だけ身を引き、杖を振るった。巻き起こった風が砂を巻き込み、最初の男の視界を奪う。その懐へ杖の石突きを突き込み、息を詰まらせたところで足を払った。

 

 横から振り下ろされた棍棒は、身を沈めてかわす。杖を地面へ突き立てると、男の足元から光が弾けた。悲鳴を上げた男が転がり、棍棒が乾いた音を立てる。

 

「二人。隠れている者を含めれば、あと四人といったところか」

 

 倉庫の奥で誰かが舌打ちした。

 

「化け物みてえな学者だな……!」

 

「学者に対する評価としては、いささか独創性に欠けるね」

 

 オデットは倒れた男を跨ぎ、倉庫の中へ足を踏み入れた。

 

 薄暗い室内には木箱や麻袋が積まれ、奥の柱にはラムジが縛りつけられていた。口には布を噛まされていたが、怪我らしい怪我は見当たらない。オデットを見つけた少年の目が大きく開き、必死に首を振った。

 

 来るな、と言いたいのだろう。

 

「安心したまえ。説教は帰ってからだ」

 

 オデットは平静を装って笑った。

 

 次の瞬間、木箱の陰から三人の男が飛び出した。さらに頭上の梁から投げ網が落ちてくる。オデットは杖を掲げ、風で網を弾き返した。そのまま横薙ぎに光を放ち、迫ってきた二人をまとめて壁際へ吹き飛ばす。

 

 残る一人の剣が肩口を掠めた。

 

 布が裂け、浅い傷から血が滲む。オデットは痛みに眉を寄せたが、杖を持つ手は止めなかった。足元へ氷を走らせ、男の動きを封じると、杖の一撃で剣を叩き落とす。

 

「これで三人。残りは――」

 

 床が沈んだ。

 

 乾いた亀裂音が響き、オデットの足元に張られていた古い板が割れる。咄嗟に体勢を立て直したものの、右足が膝近くまで床下へ落ち込んだ。

 

 罠ではない。腐食した床板が、戦いの衝撃に耐えられなかっただけだ。

 

「まったく……こういうものは、事前に調査しておくべきだったな」

 

 自嘲を漏らした直後、背後から男が飛びかかってきた。

 

 オデットは杖を振り向ける。しかし、その男は彼女へ襲いかかるのではなく、柱に縛られたラムジの髪を掴んだ。短剣の刃が、少年の喉元へ押し当てられる。

 

「動くな!」

 

 オデットの杖が止まった。それは時間にしたら数秒にも満たないほんの一瞬。

 だがその隙に、背後から太い棒が彼女の脇腹へ叩き込まれた。

 

「ぐっ!?」

 

「オデットさん!」

 

 息が肺から押し出され、視界が白く染まった。それでも倒れまいと踏みとどまり、杖を構え直す。視界の端で、口を塞いでいた布を吐き出しラムジが涙目で叫んでいるのが見えた。

 

「余所見するな!」

 

 だが再びその僅かな隙に、二撃目が背中へ落ちる。

 

「があっ!!」

 

 片膝をついたオデットは、歯を食いしばって顔を上げた。ラムジの喉元には、まだ刃がある。魔法を放てば男を倒すことはできるだろう。だが、ほんの僅かに狙いが逸れれば、風圧だけでも少年を傷つけかねない。

 

 彼女の迷いを見抜いた男たちが、じりじりと距離を詰めてくる。

 

「杖を捨てろ、学者先生」

 

「断れば?」

 

「ガキがどうなるか、試してみるか?」

 

 オデットは黙って男を見つめた。ここまでの戦いで、相手の力量は把握している。全員を倒すこと自体は不可能ではない。

 しかし、ラムジを無傷で救い出すとなれば話は別だ。負傷した身体に崩れた足場、そして人質。偶然と悪意が、まるで示し合わせたように重なっていた。

 

「……分かった」

 

 オデットはゆっくりと杖を床へ置いた。

 

「オデットさん、駄目だ!」

 

「心配する必要はない、ラムジ」

 

 彼女は少年へ穏やかな声を向けた。

 

「少々、研究計画に修正が必要になっただけだ」

 

 そういつものようにニヒルに振る舞った彼女へと、男が背後から腕を捻り上げ、荒縄を巻きつける。オデットは抵抗しなかった。床へ転がされた杖が蹴り飛ばされ、木箱の下へ滑り込んでいく。

 

 両手を拘束され、立ち上がるよう乱暴に引かれながら、オデットは倉庫の奥へ視線を向けた。暗がりの向こうから、ゆっくりと拍手が聞こえてきたのだ。

 

「実に見事でした、オデット殿」

 

 聞き覚えのある、丁重で耳障りな声だった。積み上げられた木箱の陰から、セルベッサが満足そうな笑みを浮かべて姿を現す。

 

「まさか、たったお一人でここまで私の部下を退けるとは。あなたの才能を高く評価していたつもりでしたが……どうやら、それでも足りなかったらしい」

 

「それは光栄だ」

 

 オデットは荒い息を整えながら、男を睨み返した。

 

「もっとも、君からの評価を履歴書に記す予定はないがね」

 

 皮肉を込めた安い挑発だ。もちろんセルベッサは怒ることなく、むしろ愉快そうに目を細めた。

 

「ええ。その減らず口も含めて、あなたは実に惜しい女性だ」

 

 彼が指を鳴らすと、男たちがオデットとラムジを倉庫の奥へ引き立てていく。

 

 救出は失敗した。それでもオデットは俯かなかった。ラムジが生きている限り、まだ全てが終わったわけではない。セルベッサが自分を殺すつもりなら、とっくにそうしているはずだからだ。

 

 ならば次に来るのは、脅迫か、交渉か。

 

 オデットは痛む身体を引きずりながら、セルベッサの薄笑いを冷静に観察していた。

 

 

 

 

 

 倉庫の奥には、外からは存在の分からない小部屋が設けられていた。窓のない石造りの室内を壁掛けのランプが照らし、中央に置かれた古びた机と椅子の周囲を、セルベッサの部下たちが固めている。

 

 オデットとラムジは向かい合う椅子へ座らされ、両手を背後で縛られていた。オデットの衣服は砂と埃に汚れ、裂けた肩口から覗く白い肌には細い傷と血が滲んでいる。

 

 先ほど殴られた脇腹の痛みを堪えながらも、オデットはそれを感じさせないよう背筋は真っ直ぐに伸ばしていた。乱れた髪の奥の瞳にも、捕虜となった者の怯えは欠片もなく、逆にこちらの動きを逐一観察するような鋭い学者の目をしていた。

 

 セルベッサは、そんな彼女の姿を黙って眺めていた。

 

 彼女の美貌には以前から気づいていた。だが、研究机へ向かう横顔を盗み見るのと、杖を奪われ、縄で自由を封じられた姿を正面から眺めるのとでは意味が違う。

 荒い呼吸に合わせて乱れた襟元から覗く白い肌が上下するたび、これまで頭脳の陰に隠れていた成熟した女の艶が、否応なく目を惹きつける。

 

「随分と熱心に見ているようだね。私の顔に、未発見の古代文字でも浮かんでいるのかな?」

 

 そしてそんな露骨な視線に気づかないほど、オデットは鈍くはない。彼女は冷ややかに問いかけると、セルベッサは視線を逸らすことなく逆に笑みを返した。

 

「いいえ。改めて、あなたを失うのは惜しいと考えていたのですよ」

 

「君に惜しまれる覚えはないが」

 

「そうでしょうか。あなたは、ご自分が簡単には殺されない理由まで理解しているはずだ」

 

 セルベッサは机を回り、オデットの前へ立った。視線の高さを合わせるように腰を屈めても、彼女は目を逸らさない。

 

「私を殺すつもりなら、わざわざここへ運ぶ必要はない。ラムジも同様だ。褒め言葉は結構だから、目的を話したまえ」

 

「では、率直に申し上げましょう。私はあなたの頭脳を失いたくない」

 

 セルベッサが口にしたのは、これまでオデットへ与えてきた研究場所や資金、そして彼女が生み出した成果だ。だが、それが純粋な支援でなかったことは、もはや説明されるまでもない。

 

「あめつちの書か」

 

「ええ。あなたは踏み込んではならない領域へ踏み込んだ」

 

「雨を降らせる術が完成すれば、水源と土地を握る君の利益が失われる。実に分かりやすい話だ」

 

「分かりやすいからこそ、困るのですよ。あなたは優秀すぎる」

 

 セルベッサはそう言いながら、オデットの肩へ落ちていた髪を一房馴れ馴れしくすくった。

 

「触れる許可を出した覚えはないが」

 

「失礼。ですが、これからも許可が必要とは限りません」

 

 髪を指から滑らせたあとも、セルベッサの視線は裂けた肩口に残っていた。傷そのものではなく、その周囲から覗く肌を眺めていると気づき、オデットの表情が一段と険しくなる。

 

「……回りくどい言い方はやめたまえ」

 

「では、条件をお伝えしましょう」

 

 セルベッサは身体を起こし、今度は後ろにいるラムジへ目を向けた。

 

「『あめつちの書』の解読を永久に諦め、その記録もすべて渡していただきます」

 

「断る」

 

「まだ話は終わっていません」

 

 彼が指を鳴らすと、ラムジの背後に立っていた男が少年の肩を掴んだ。オデットの表情から、先ほどまでの余裕が消える。

 

「その子から手を離したまえ」

 

「条件を守っていただけるなら、ラムジは解放します。今後も危害を加えないと約束しましょう」

 

「その代わりに、何を求める?」

 

 セルベッサは再びオデットを見た。

 

 今度は欲望を隠さなかった。彼女の頭脳だけでなく、その美貌も、気高さも、旅を続けてきた自由さえも自分の屋敷へ閉じ込め、可愛がってやる。そんな想像を愉しむように、ゆっくりと彼女の全身へ目を走らせながら、その欲望を叶える言葉を発した。

 

「私の妻になっていただきたい」

 

 小部屋が静まり返った。オデットはすぐには答えず、セルベッサの顔を見つめ、それが冗談や虚勢ではない事を観察している。

 そして気づいたのだろう。セルベッサの目に宿っている、彼女の身体に向けられた下卑た所有欲を。

 

「君は、自分が何を要求しているのか理解しているのかね?」

 

「もちろんです。町では私の妻として振る舞い、屋敷では私の許可した研究を続けていただく。それ以外の役目についても、説明する必要はないでしょう」

 

 オデットは低く息を吐いた。研究だけでなく、生活も、行動も、自分の身体さえもセルベッサの管理下へ置けという要求だった。

 

「断れば?」

 

 セルベッサは答える代わりに、ラムジへ視線を移した。

 

「オデットさん、駄目だ! 僕のことなんていい!」

 

「静かにしたまえ、ラムジ。君のせいではない」

 

 オデットは少年へ言い聞かせながら、頭の中で幾つもの策を探していた。自分一人なら、どのような扱いを受けても隙を待てばいい。だが、拒絶の代償を払うのはラムジだった。

 

「私が書を諦め、君の妻になれば、ラムジは解放される。今後も君や部下は、この子へ危害を加えない。間違いないね?」

 

「誓約書を用意し、町の有力者を証人に立てましょう。ただし、あなたが逃げれば約束も無効です」

 

 予想していた答えだ。ラムジの安全そのものを鎖にして、オデットを屋敷へ繋ぎ止めるつもりなのだ。セルベッサを欺く方法が幾つ浮かんでも、今この場で少年の安全を保証できない以上、それは不確かな賭けにすぎなかった。

 

 オデットは目を閉じ、短い沈黙のあとでラムジへ顔を向けた。

 

「判断を誤ったのは私だ。君が責任を感じる必要はない」

 

「でも……」

 

「君は生きてここを出たまえ。それが今は、最も重要なことだ」

 

 少年を安心させるように微笑んでから、オデットはセルベッサへ向き直った。その瞳には怒りも屈辱も残っていたが、声は震えていなかった。

 

「……条件を受け入れよう」

 

 その宣言に、セルベッサの唇にゆっくりと笑みが広がった。

 

「賢明なご判断です、オデット殿」

 

「勘違いしないことだ。私が選んだのは君ではない。ラムジの命だ」

 

「ええ。今は、それで構いません」

 

 セルベッサはオデットの顎へ指を掛け、顔を上げさせた。彼女は逃れようとしたが、拘束された姿勢では十分に身を引くことができない。

 

 砂と汗に汚れ、疲労を滲ませながらも、間近で見るオデットは息を呑むほど美しく、何よりセルベッサを満足させたのは、その瞳になお残る抵抗の光だった。

 

「これから末永く、よろしくお願いいたします」

 

「その挨拶を返す日は来ないと思いたまえ」

 

 指が離れると、オデットは触れられた顎を嫌悪も露わに拭った。セルベッサはそれさえ愉しむように笑い、部下たちへ命じる。

 

「少年を別室へ。誓約書が整い次第、解放しなさい。それから、私の妻となる方には相応しい部屋と衣装を用意するように」

 

 連れ出されるラムジの姿が扉の向こうへ消えるまで、オデットは目を逸らさなかった。やがて扉が閉じられ、室内には縄の感触と、セルベッサの欲を含んだ視線だけが残される。

 それでも、オデットは俯かなかった。条件を受け入れたことと、完全な敗北を認めることは同じではない。

 

 少なくとも、そのときの彼女はまだ、そう信じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜が深まるにつれ、セルベッサの屋敷は静けさに包まれていった。昼間には廊下を行き交っていた使用人たちの足音も途絶え、厚い石壁の向こうから、砂を運ぶ風の音だけが低く聞こえてくる。寝室に灯された燭台は、豪奢な調度品の表面へ鈍い光を落としていた。

 

 セルベッサは寝台の脇に置かれた椅子へ腰掛け、卓上の酒杯を指先で弄んでいた。ラムジが町へ戻ったことは、オデット自身にも確認させている。誓約書には町の有力者二名の署名を添え、彼女が妻として屋敷へ留まる限り、少年の安全は保証される。

 

 鉄格子も見張りも必要なかった。ラムジの安全を鎖に変えた以上、オデットは自分の意思でこの部屋へ来る。そう確信して酒杯を傾けたとき、寝室の扉が控えめに叩かれた。

 

「入りたまえ」

 

 短い沈黙のあと、扉がゆっくりと開いた。セルベッサは酒杯を口元へ運びかけたまま、そこに立つ女へ目を奪われた。

 

 オデットは、薄い黒紫のネグリジェを身に纏っていた。

 

 昼間の戦いで負った傷は手当てされ、砂と血に汚れていた肌も洗い清められている。長い髪は濡れた艶を残したまま下ろされ、普段よりも柔らかく肩から背中へ流れていた。

 

 ネグリジェは、彼女自身が選ぶはずのない衣装だった。胸元は大きく開き、細い肩紐だけで身体へ留められている。透けるほど薄い布は、灯りを受けるたび、その下に隠された肌の色と身体の線を曖昧に浮かび上がらせた。

 

 腰の辺りで僅かに絞られた布は、成熟した身体の丸みへ沿い、裾は太腿を覆う程度の長さしかない。細かな刺繍が施されてはいたものの、慎み深さを加える役には立っていなかった。歩けば布が脚へまとわりつき、立ち止まれば胸から腰にかけての輪郭を隠しきれない。

 

 オデットは扉の取っ手へ手を置いたまま、冷ややかな目でセルベッサを見据えていた。平静を保とうとしているが、頬には薄く赤みが差し、唇も普段より固く結ばれている。

 

「随分と待たせたな」

 

「悪趣味な衣装ほど、身につけるのに時間がかかるものらしい」

 

 セルベッサは答えずに立ち上がり、彼女の姿を遠慮なく眺めた。視線は開いた胸元から腰へ下り、薄布の裾から覗く脚を辿って、ゆっくりと顔へ戻ってくる。

 

 用意されたこの衣装は、肌を隠すためのものではない。覆われている部分まで想像させ、女の身体を男の意識へ焼きつけるために作られていると、オデットは胸元を腕で隠したい衝動を抑えながら、今着ている服を学者らしくそう評価した。

 

 だがその姿をこそ、セルベッサを興奮させているとはオデッサは思うまい。

 セルベッサにとって、従順な女が同じ衣装を着ても、これほど目を奪われることはない。自分を嫌悪し、心だけは渡すまいとしているオデットだからこそ、その知性も美貌も、いつか抵抗する意志まで自分のものにしたいと雄としての征服欲を刺激されるのだ。

 

 セルベッサは彼女の前まで歩み寄り、先ほど倉庫で触れた時のように肩へ垂れた髪を一房すくった。指先が髪を辿り、ネグリジェを支える細い肩紐の近くで止まると、オデットの肩が僅かに強張る。

 

「よく似合っています」

 

「君の趣味の悪さを証明する衣装としては、実に見事だよ」

 

 皮肉を返す声は冷静だったが、セルベッサの指が肩紐の縁をなぞると、オデットの呼吸が微かに浅くなった。彼はその変化を見逃さず、満足そうに目を細める。

 

「いいでしょう。では、そのまま私のために脱いでいただきます」

 

 セルベッサはそう命じると、脇机に置かれた小型の蓄音機へ手を伸ばし、円盤へ針を落とした。やがて低く重い打楽器の音が寝室へ流れ始める。彼は椅子へ深く腰掛け、オデットの瞳を正面から見つめた。

 

「ただ衣装を脱ぐだけでは味気ない。せっかくですから、美しく見えるように踊ってください」

 

「セルベッサ……」

 

 オデットの声には明らかな抗議が滲んでいた。しかし、セルベッサの眼差しが鋭さを増すと、彼女は唇を引き結び、わずかに視線を落とした。

 

 今さら、この部屋まで来て拒む余地など残されていない。頭では理解していても、男の目を楽しませるために自ら衣服を脱ぎ、踊らされる屈辱まで容易に呑み込めるはずはなかった。

 

 オデットは胸を落ち着かせるように深く息を吸い、左の肩紐をゆっくりと外した。片側の支えを失った黒紫の薄布が緩み、胸元がさらに深く開く。続けて右手を反対の肩へ伸ばそうとしたとき、セルベッサが小さく咳払いをした。

 

「脱ぐだけではなく、踊れ……ということかね」

 

「ええ。あなたほど聡明な方なら、一度申し上げれば十分でしょう」

 

「君はつくづく、知性の無駄遣いをさせることに長けているな」

 

 皮肉を口にしながらも、オデットは音楽に合わせてゆっくりと腰を揺らし始めた。最初の動きはぎこちなかったが、重い打楽器の拍子が床から足を伝い、次第に身体の奥へ染み込んでくる。

 

 どこかで耳にした曲だった。おそらく、サンシェイドの酒場か、踊り子たちの舞台の近くを通ったときだろう。まさか自分が同じ曲に合わせ、たった一人の男のために衣服を脱ぐことになるとは思いもしなかった。

 

 もう一方の肩紐も外したオデットは、羞恥に耐えるようにセルベッサへ背を向けた。だが、正面から胸元を隠した代わりに、薄布越しに浮かぶ腰から臀部の線が彼の視線へ晒される。左右へ揺れる豊かな丸みを目で追われていることは、振り返らずとも分かった。

 

 普段のオデットは身体の線を拾いにくい衣服を好んでいた。その自分が、人目から隠してきた腰つきを見せつけるように揺らしている。意識した途端、熱い震えが背筋を駆け上がった。

 

 彼女が両肩を小さく動かすと、黒紫のネグリジェが胸元から滑り落ち、繊細な黒いレースで覆われた乳房が露わになった。

 

「美しいレースですね。よくお似合いだ」

 

「……君の感想を求めた覚えはないよ」

 

 平静を装ったものの、顔へ集まる熱までは抑えきれない。

 ネグリジェは腰まで落ちたところで、丸みを帯びた臀部へ引っ掛かって止まった。オデットが手で押し下げようとすると、セルベッサが喉の奥で愉しげに笑う。

 

「腰を振ってください。先ほどよりも、もう少し大きく」

 

「このような姿を眺めて悦に入るとは……君には品性というものが欠けているらしい」

 

「否定はいたしません。さあ、続けてください」

 

 オデットは屈辱を噛み殺し、低い音楽に合わせて腰を左右へ揺らした。柔らかな臀部が動くたび、引っ掛かっていた布が少しずつ下へずれていく。それでもすぐには抜けず、彼女は羞恥に頬を熱くしながら、男の命じたとおり何度も腰を揺すらなければならなかった。

 

 やがて黒紫の薄布が豊かな丸みを越え、音もなく太腿から足元へぱさりと滑り落ちる。

 

「ふふ、お見事です」

 

「君の評価の基準は実に低俗だよ」

 

 続けてオデットは黒いレースの下穿きへ指を掛け、音楽に合わせて腰を揺らしながら少しずつ引き下ろした。小さな布が臀部から太腿、膝へ落ち、最後には片足ずつ抜かれてネグリジェの上へ重なる。

 

 そして隠すものの少なくなったオデットの艶姿をセルベッサは満足そうに眺めていた。

 

「こちらへ来てください。今度は胸元の下着を外していただきます」

 

 オデットの腰の動きが止まる。

 

「せっかくですから、外すところまで私によく見せてください」

 

「君の要求は、際限なく品を失っていくようだね」

 

「お褒めいただき光栄です。さあ、こちらへ」

 

「褒めてはいないよ」

 

 そう言い返しながらも、オデットは床の衣服をまたぎ、セルベッサの前まで歩み寄った。

 

 彼の膝先で深く身を屈めると、豊かな膨らみが黒いレースの内側で形を変え、その谷間が眼前へ迫った。彼女は一度きつく目を閉じ、背中へ両手を回す。

 

 学者として知識を追い、他者の評価など意に介さず歩んできた自分が、今はセルベッサの鑑賞に供するため最後の覆いを取り去ろうとしている。その落差が、単に裸を見られる以上に自尊心を刺激した。

 

「随分と時間を掛けるのですね」

 

「女性の下着を外すところまで細かく指図する男に、急かされたくはないものだよ」

 

「では、急かさずに拝見いたしましょう」

 

 逃げ道を塞ぐような返答に、オデットは小さく息を吐いた。やがて留め具を外すと、胸を支えていた下着が緩み、柔らかな膨らみへ頼りなく引っ掛かる。

 

 両肩から細い紐を外し、黒いレースをゆっくりと滑らせる。布が乳房の頂を越え、硬くなり始めた乳首を掠めて床へ落ちると、セルベッサの眼前へ、白く豊かな双丘が余すところなく露わになった。

 

「……これで満足かね」

 

「実にお美しい」

 

 セルベッサの囁きには、珍しく素直な感嘆が含まれていた。

 

「感想は求めていないと言ったはずだよ」

 

「ええ。ですが、申し上げずにはいられませんでした」

 

 彼は両手を伸ばし、露わになった乳房を左右から掴んだ。指を深く沈め、柔肉を下から持ち上げるように揉みしだく。丁寧な言葉遣いとは正反対の手つきに、オデットの身体がびくりと震えた。

 

「んっ……もう少し優雅に扱うという発想を持てないのかね……」

 

「こうしたほうが、よく反応してくださるようですので」

 

「勝手に……決めつけないで、いただきたいな……あっ!」

 

 セルベッサの指が乳首を摘まみ、硬く尖った先端を捻った。オデットは息を呑んで顔を背けたが、乳房を揉み合わせられるたび、隠しきれない吐息が唇から零れる。

 

 その反応を愉しんだセルベッサが、唐突に命じた。

 

「私のものを咥えてください」

 

「……何だって?」

 

「跪いて、咥えていただきます」

 

 彼は左右の乳房を順に強く握り、最後に両方の乳首を押し潰すように刺激した。鋭い快感が背筋を駆け上がり、オデットの口から甘い声が漏れる。

 

「んぁっ……!」

 

「お分かりいただけましたか?」

 

「そこまで念を押さずとも、意味くらい理解できるよ……」

 

 セルベッサが手を離すと、解放された乳房が柔らかく揺れた。オデットは唇を引き結び、床へ膝をつく。

 

 目の前には、ズボンを内側から大きく押し上げる膨らみがあった。先ほどまでの踊りを眺め、彼の肉棒が硬く勃ち上がっていることは布越しにも明らかだ。

 

 オデットが前合わせへ手を伸ばすと、セルベッサの声が降ってくる。

 

「手は使わないでください。口だけで外していただきます」

 

「……つくづく、私を辱める方法には頭が回るのだね」

 

「あなたほど聡明な方にお褒めいただけるとは、恐縮です」

 

「だから褒めてはいないと……もういい」

 

 頬を熱くしながら、オデットは金属の引き手へ歯を掛けた。顔を下げて金具を引くと、露わな乳房がセルベッサの脚へ擦れ、乳首へ細かな刺激が伝わる。

 

 前合わせが開いたところで、彼は上の留め具だけを自ら外した。まるで最も屈辱的な部分だけを彼女にさせることが目的だったような手際に、オデットは苦々しく目を細める。

 

 それでも命じられたとおり、歯と唇でズボンと下着を脇へ押し退けると、内側に収められていた肉棒が勢いよく飛び出し、べちんっ、とオデットの下唇を軽く叩いて顔の前へそそり立った。

 

「……っ」

 

 知識として男性の身体構造を知らないわけではない。医学書や研究資料であれば幾度となく目にしてきた。しかし、生身の男のそれをこれほど間近で見るのは初めてだった。

 

 これは平均的な大きさなのか。六インチ、あるいは七インチほどはあるだろうか。反射的に推測したものの、目の前で熱を放ちながら脈打つ実物には、紙面の図からは得られない生々しい存在感があった。

 

「本物ですよ」

 

 セルベッサが愉しげに囁いた。

 

「書物の挿絵や模型とは、随分と違うでしょう。ご感想はいかがです、オデット?」

 

「……少なくとも、研究対象と呼ぶには自己主張が強すぎるようだね」

 

「ですが、目を逸らしてはいらっしゃらない」

 

「初めて見るものを観察するのは、学者として当然の習性だよ」

 

「それは好都合です」

 

 セルベッサは肉棒を片手で後ろへ反らし、そのまま指を離した。勢いよく戻った竿が、再びベチンッ、とオデットの頬を叩く。

 

「っ……君は、品というものを本当に持ち合わせていないらしい」

 

「先ほど否定はしなかったはずです」

 

 彼はオデットの髪へ手を置き、ゆっくりと撫でた。

 

「恥ずかしがらずに、味わってください」

 

 オデットはしばらく肉棒を睨んでいたが、やがて覚悟を決め、唇を開いて静かに顔を近づけた。

 

「……君の命令だからだ。それ以上の意味はないよ」

 

「ええ。もちろん、そういうことにしておきましょう」

 

 舌の上へ肉棒が滑り込み、その表面を擦りながら口の奥へ進んでいく。セルベッサは彼女の髪を撫でながら、頭をゆっくりと沈めた。

 

「んんっ……!」

 

 太さが喉の入口へ押し込まれ、オデットの目尻へ涙が滲む。半ばまで呑み込んだところで耐えきれなくなり、彼女は咳き込みながら顔を引いた。

 

「けほっ……君は、もう少し加減というものを覚えたらどうかね」

 

「あなたの様子は十分に見ております。まだ続けられると判断したまでですよ」

 

「まったく……都合のいい観察眼だよ」

 

 乱れた呼吸を整え、オデットは再び亀頭へ唇を重ねた。頭を下げては引き上げ、不慣れな動きで肉棒を口内へ出入りさせる。だがそれは、ただ口を肉茎に沿って前後させているに過ぎず、男に快楽を与えるテクとしては赤点レベルの拙さであった。

 

「どうやら、知識と実践との間には少なからず隔たりがあるようですね」

 

「んっ……余計な、世話だよ……」

 

「私がお手伝いいたしましょう」

 

 そう言うとセルベッサは、彼女の頭を両手で挟むと一息に腰元まで引き寄せた。

 

「んっ、んんん゛っ!?」

 

 肉棒が喉を押し広げ、オデットの目が大きく見開かれる。苦しさにセルベッサの脚を何度も叩くが、彼はしばらく彼女を根元まで呑み込ませたまま動かなかった。

 

「力を抜いてください。抗えば、かえって苦しくなるだけです」

 

「んんっ、うっ……んあっ!? うっ、げほっ……ごぼっ……うぶっ!?」

 

 そんな今さらすぎる忠告の後ようやく引き上げられると、オデットは激しく息を吸った。だが、休む間もなく頭を前後させられ、セルベッサの望む速さと深さで口内を使われる。

 

「んぐっ、んっ……んんぅぅっ!!」

 

 自分の意思より彼の快楽が優先される。持って生まれた聡明さも、築き上げてきた地位も、この瞬間には何の意味も持たない。その事実が屈辱を滲ませる一方で、身体の奥には否定し難い熱が生まれていた。

 

 オデットは苦しさを和らげるため、喉へ入る角度、呼吸のタイミング、セルベッサの身体が強張る瞬間を観察し始めた。普段なら研究へ向けられる知性を、今は目の前の男を悦ばせるために使っている。そのことが何より癪だった。

 

 だが、一度法則を見出せば、身体はすぐに動きへ反映させてしまう。舌先で肉棒の裏側をなぞり、顔の角度を変え、溢れる唾液で硬い肉を包み込む。先ほどより深く受け入れると、セルベッサの吐息が明らかに重くなった。

 

「さすがはオデット。覚えが早くていらっしゃる」

 

「褒められても……んっ、ちゅぅぅ、嬉しくは、ないよ……ちゅぷっ」

 

「ですが、舌は随分と熱心に動いていますね」

 

 図星を指され、オデットの頬へ赤みが差した。言い返そうと口を開けば、代わりに肉棒が深く入り込んでくる。彼女はセルベッサの脚へ両手を添え、自ら鼻先が下腹部へ触れるところまで顔を沈めた。

 

 やがて頭を押さえていた手が離れた。それでもオデットは止まらず、自ら顔を上下させて肉棒を吸い続ける。

 

「私はもう手を添えておりません。それでも続けてくださるのですか?」

 

「……黙っていたまえ。途中でやめれば、余計に気分が悪いだけだよ」

 

「そういうことにしておきましょう」

 

 愉しげな声への腹立ちをぶつけるように、オデットは肉棒へ強く吸いついた。じゅる、ちゅぷ、と湿った音が寝室に響く。その音が自分の口元から生まれている事実が、秘部の濡れをさらに深めた。

 

「んっ、んむぅ、ちゅっ……じゅる、じゅずずっ……!」

 

 音も味も、喉を満たす感触も、次第にオデットの思考を塗り潰していく。頭を深く沈めるたび下腹部の熱が膨らみ、触れられてもいない秘部が切なげに疼いてしまう。

 

 その時だ。セルベッサが再び髪を掴み、肉棒を喉の奥まで押し込んだ瞬間、オデットは背筋が大きく仰け反らせて思考が真っ白に染まってしまった。

 

「んっ、んんんんぅ……っっ!!?」

 

 セルベッサが喉の奥へ精を放つのとほぼ同時に、オデットの身体は絶頂に達した。秘部が何度も痙攣し、溢れた蜜が内腿を濡らして地面に滴り落ちる。明滅する視界が、セルベッサの陰毛だけを写して瞬いていた。

 

「あっ……そ、そんな……触れられても、いないのに……っ」

 

 その事実を理解すると、屈辱と快感が混ざり合い、震えはいっそう強くなった。そして肉棒が引き抜かれ、ようやくオデットは咳き込みながら息を吸えた。だが同時に、引き抜かれた肉棒の亀頭から飛び散った残液が頬や額へ降りかかり、彼女の美貌を白濁に塗装していく。

 

「随分と……愉しそうだね」

 

「ええ。あなたが想像していた以上に素直でしたので」

 

「ずいぶんと勝手な解釈だよ……」

 

 今度ばかりは、減らず口にも力がなかった。そして彼女の精神的疲弊を感じ取ったセルベッサは返答の代わりに乳房を掴むと、硬く尖った乳首を指先で捏ねくり回した。

 

「んあっ!? き、君は、まだ……!」

 

「先ほどの様子を見る限り、こちらも十分に悦んでいるようですが」

 

「身体の反応を、私の意思と混同しないでいただきたいね……んんっ!!」

 

 気丈な反論とは裏腹に、甘い声が漏れる。セルベッサはしばらく柔肉を揉みしだいたあと、傍らのベッドへ視線を向けた。

 

「顔を拭いて、ベッドへ上がってください」

 

「……分かったよ」

 

 オデットは床へ落ちた胸元の下着を拾うと、それで顔を拭った。惜しさは感じない。どうせ無理矢理着させられた物なのだから。そして白濁液を拭ってイカ臭くなった下着を傍に投げ捨てると、言われたとおりベッドへ腰を下ろした。

 

 その後、座ったオデットの後に続いてベッドに乗ったセルベッサは、彼女の両肩へ手を添えると、その身体を仰向けに押し倒した。

 

「いい眺めですね」

 

「そういう感想しか言えないのなら、君の語彙力は相当低いよ」

 

 全裸の美女が自身の腕の下で寝転んでいる。男なら誰もが昂る光景に、セルベッサもまた興奮のままに彼女の素肌へ口を寄せた。

 

「んっ! な、にを……!? そんな、人の肌を所構わず、舐めて、ひうっ!?」

 

 セルベッサの舌が、オデット首筋から胸、滑らかな腹部へと、順にその唾液の跡を伸ばしていく。うなじをくすぐり、乳首を咥え、臍周りに唾液をたっぷりと塗して、さらに下へ。

 

 そしてここまで来て、彼女にしては珍しい事にようやく目的を察したオデットは、反射的に両脚を閉じた。

 

「まさか、君……そこへ口をつけるつもりかね」

 

「ええ。そのつもりです」

 

 セルベッサは両手を差し入れ、重ねられた膝を左右へ押し開いた。眼前へ晒された秘部は濡れきり、肉襞から溢れた蜜が内腿まで伝っている。

 

「随分と楽しんでいらっしゃるようですね」

 

「身体が勝手に反応しただけだよ。都合よく解釈しないでいただきたいな」

 

「承知いたしました。では、単なる身体の反応として味わわせていただきます」

 

「待ちたまえ。まだ話は――んっ!」

 

 セルベッサは返答を待たず、膨らんだ陰核へ唇を押し当てた。敏感な部分を柔らかく吸い上げられ、オデットの腰が跳ねる。

 

 先ほどまで自分の口を快楽のために使っていた男が、今度は脚の間へ顔を埋め、彼女を悦ばせるために舌を使っている。その予想外の丁寧さに、オデットは屈辱とともに奇妙な感銘を覚えた。

 

「んっ……そのように慎重に扱えるなら、初めから……ああっ!」

 

「ご不満でしたか?」

 

「それを今……尋ねるのか、んんぅあっ!!」

 

 皮肉を返し終えるより早く、舌が濡れた肉襞の隙間へ滑り込む。内側へ入り込んだ舌先が粘膜をなぞり、下から上へ蜜を掬い上げた。

 

 どこへ触れれば身体が震え、どの角度なら声が漏れるのか。セルベッサは反応を確かめるように舌を動かし、敏感な場所を正確に探り当てていく。

 

「んあっ、そこは……んくっ、あっ……ずいぶん、熱心に調べるものだね……っっ!」

 

「あなたを満足させるためです。手を抜く理由はないでしょう」

 

「口だけは、相変わらず立派だよ……あぁっ!!」

 

 オデットの片手がセルベッサの髪を掴んだ。当初は引き離すためだったはずなのに、舌の動きが速まると、指は彼を逃がすまいと深く食い込んでいく。

 

 だがセルベッサは溢れた蜜を舐め取り、陰核へ達する直前でわざと舌を逸らした。

 

「何を……勿体ぶっているのかね……」

 

「何かご希望があるのでしたら、言葉にしていただけますか?」

 

「君は……本当に、性格が悪いな……」

 

「否定はいたしません」

 

 陰核へ短く口づけられ、オデットの身体が大きく震えた。もっと同じ場所へ触れてほしいという欲求を口にすることだけは自尊心が許さない。しかし、左右へ開かれた脚は自らさらに広がり、腰は彼の舌を追い始めていた。

 

 セルベッサは両腕を腿へ回して身体を抱え込み、陰核を唇で吸いながら、膣内へ舌を深く潜り込ませる。

 

「んぁっ……セルベッサ、す、少し……速度を落としたまえ……!」

 

 言葉とは裏腹に、髪を掴む指は彼の顔を秘部へ強く押しつけていた。舌が膣内を出入りするたび、濡れた水音が寝室へ響き渡っていく。

 

「聞いて……いるのかね……あっ! そ、そこ……また、そこを……んんっ!」

 

 セルベッサは答えず、彼女の蜜を味わうことへ没頭していた。その貪欲さから、自分の味を心から楽しんでいることが伝わり、オデットの羞恥は奇妙な高揚へ変わっていく。

 そしてその直後に陰核を強く弾かれ、オデットの背はまたしても弓なりに反って、激しい快感が脳を駆け抜けた。

 

「んあああぁああぁ……っ!!!?」

 

 抑えきれなくなった悲鳴が寝室へ響き、激しく痙攣する秘部から溢れた蜜が、ぶしゅっ♡ と飛び散ってセルベッサの顔を濡らす。そのままオデットは腰をカクカクと小刻みに上下させ、やがてどさりと力尽きたようにベッドにお尻を沈めた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……!」

 

 波が収まっても、オデットはしばらく脚を開いたまま動けなかった。自分を辱めるはずだった男の口によって、想像もしなかった絶頂へ導かれた。その事実を認めることに、もはや最初ほど強い抵抗は感じなかった。

 

「君は……随分と、余計な技術を身につけているようだね……」

 

「ご満足いただけたのであれば幸いです」

 

「満足したとは……言っていないよ……」

 

「では、もう一度確かめる必要がありますね」

 

 セルベッサが身体の向きを変えた。オデットが重い瞼を開けると、蜜に濡れた肉棒が唇へ押し当てられている。それはシックスナインと呼ばれる体勢で、オデットも知識としては知っていたが、こうしてされるのは初めてだった。

 

 先ほどなら皮肉の一つでも返していただろう。しかし絶頂の余韻で思考の鈍ったオデットは、本能に従うように口を開いた。

 

「んむっ……んっ……」

 

 そして命じられてもいないのに、自ら頭を動かして肉棒を吸い始める。その間にもセルベッサは再び脚の間へ顔を埋め、舌を濡れきった膣内へ出入りさせた。

 

 互いの下半身へ口をつけ合う淫らな姿勢に、オデットの心臓が早鐘を打つ。早く彼を満足させれば行為も終わる。そう言い聞かせていたはずなのに、もう本気で終わりを望んでいるのか、自分でも分からなかった。

 

「んふぅっ……ちゅっ、じゅる……んぶっっ……!」

 

 オデットが舌を裏筋へ絡ませれば、セルベッサの舌も陰核を吸い上げる。互いの動きは次第に激しくなり、やがて二度目の絶頂がオデットの全身を駆け抜けるのと、セルベッサの肉棒が口から引き抜かれ、彼女の顔へ熱い精を放つのは同時だった。

 

「あっ、んあぁぁ……っっ!! 熱っ、あっ、ああぁ゛ぁ゛っああ……!!!」

 

 絶頂の快感を味わいながら、熱い白濁が頬や額へ降り注ぐ。オデットは股から愛液を噴きながら、唇へ落ちた精液を舌で受け止め、そのまま飲み込んでいた。意識なんてしていない。ただ無意識に口が動いて、また指先も頬へ残った分へ指を伸ばし、自然と唇へ運んでしまっていた。

 

「……まったく。君は最後まで、後始末を他人任せにするのだね……」

 

 そして自分がやってしまった事に気づいても、苦し紛れの皮肉を口にするのが精一杯で、オデットは顔へ残った精を丁寧に舐め取るのを自分でも止める事ができなかった。

 

 そのとき初めて、セルベッサが身体の上へ身を乗り出し、唇をすぐ近くまで寄せていることに気づいた。

 

「んっ……!」

 

 唇を塞がれたオデットは胸元を押して離そうとした。しかし、セルベッサの舌が唇の隙間へ入り込み、逃げる舌を追って絡みつくと、抵抗は長く続かなかった。

 

 彼の口内には、先ほど舐め取ったオデット自身の蜜が残っていた。その味を舌へ移され、彼女は眉を寄せながらも小さく喘ぐ。

 

 やめるべきだという理性の声に反して、彼を押し返していたはずの手は、いつしか胸元の衣服を掴んでいた。舌を絡め返すたび口づけは深くなり、離れようと傾けた顔さえ、次の瞬間には自分から彼の唇を追ってしまう。

 

「んっ……こんなことで、私を……懐柔できると、思わないことだね……」

 

「もちろんです。ただ、随分と熱心に応えてくださいましたが」

 

「それは……君が離さなかったからだよ」

 

「そういうことにしておきましょう」

 

 再び唇を塞がれ、反論は湿った吐息へ変わった。セルベッサの胸板が乳房を押し潰すように密着し、覆い被さる男の影がオデットの身体を包み込む。

 

 やがて下腹部へ硬い熱が触れた。肉棒が濡れきった秘部へ押し当てられ、膨らんだ亀頭が肉襞の隙間を擦っている。

 

「ま、待ちたまえ……」

 

 セルベッサは答えず、亀頭で肉襞を上下になぞった。先端が膣口へ触れるたび、秘部は誘い込むように収縮し、新たな蜜を溢れさせる。

 

「やめ……たまえ、セルベッサ……ぁっ……」

 

 拒む言葉とは裏腹に、オデットの腰は逃げなかった。亀頭が離れるたび、むしろその熱を追うように持ち上がってしまう。

 

 セルベッサは頬へ軽く口づけると、耳元へ囁いた。

 

「私を『ご主人様』とお呼びください」

 

 オデットは激しく首を横に振った。

 

「それだけは……お断りだよ。君をそのように呼ぶ理由など、どこにも――」

 

 言葉の途中で、セルベッサは腰を強く押し進め、その先端を割れ目へと咥え込ませた。

 

「ああぁっっ!!!」

 

 太い肉棒が濡れた膣口を一息に押し広げ、奥深くまで入り込む。圧迫感と快感が同時に身体を突き抜け、オデットは背を反らして声を上げた。

 

「あっ、あぁ……! お、大きい……っ! 君のものが、奥まで……!」

 

 セルベッサは根元まで収めた肉棒をゆっくりと引き、再び深く突き入れる。腰が打ちつけられるたび、柔らかな臀部が寝台の上で揺れ、濡れた肉音が響く。

 

「あっ、んぁっ……待ちたまえ、まだ……身体が、慣れて……あぁんっ!」

 

「ですが、随分とよく締めつけてくださいます」

 

「それは……身体が勝手に……んっ、あぁっ!!」

 

 オデットはセルベッサの背中へ両腕を回し、爪を食い込ませた。突き放すためではない。激しい律動で揺さぶられる身体を支え、彼から離れまいと抱きつくためだった。

 

 肉棒が引かれるたび、膣内は名残惜しむように吸いつき、押し込まれる瞬間には奥から溢れた蜜を絡ませて呑み込んでいく。

 

「んあっ、あんっ、あっ……! こんなに、お、奥まで届くものなのか……ッ!」

 

 セルベッサは腰の角度を変え、敏感な場所を探るように突き上げた。オデットの身体が大きく跳ねると、その反応を見逃さず、同じ場所へ何度も亀頭を押し当てる。

 

「あっ! そこは……ひぐっ!? ああっ、そ、そこを続けては、駄目だ……!」

 

「駄目とおっしゃる割には、随分と嬉しそうですね」

 

「違う……これは、単なる……生理的な反応だよ……んああっ!!」

 

 じゅぽっ♡ じゅぶっ♡ ぶちゅっ♡

 

 探り当てられたGスポットを重点的に責められ、オデットの蜜壺が絶え間なく愛液を分泌し出す。そうすると先走りと蜜が混ざり合い、腰がぶつかる度に卑猥な淫音が鳴り響いて、それがオデットの興奮を煽り、喘ぎが途切れることなく漏れ出ていく。

 

 セルベッサが信用に値しない男だということも、このまま屈服してはならないことも理解している。それなのに、身体の奥から湧き上がる欲求は、もっと深く、もっと激しく突かれたいと訴えていた。

 

「気持ちいいのでしょう?」

 

 耳元で問われ、オデットは喘ぎながら首を横に振った。

 

「違う……お願いだ、少し……あぁっ!」

 

「何をお願いなさるのです?」

 

「やめ……いや、もう少し、ゆっくり……あっ、ああっ!」

 

 セルベッサは腰を打ちつける速度をさらに上げた。オデットは否定の言葉を失い、脚を彼の腰へ絡め、肉棒をより深く迎え入れていく。

 

「た、頼む、君のものは……大きすぎる……! これでは、本当に……壊れてしまうよ……!」

 

「それでも、ご自分から私を奥へ引き込んでいらっしゃる」

 

「ち、違う……!」

 

 セルベッサは首筋へ唇を押し当てながら、肉棒を最奥へ突き入れた。亀頭が子宮口へ触れ、腹の奥へ鈍く甘い衝撃が広がる。

 

「んおっ゛っ゛! ひょ、ひょこ……そこまでされたら……!」

 

 否定は、もはや自分自身にすら届いていなかった。セルベッサに抱かれる行為が、理性を手放したくなるほどの快楽をもたらしている。その事実こそが、何より信じ難かった。

 

 これまでオデットは、恋愛や情欲など研究の妨げにしか思っていなかった。だが今、硬い熱に満たされた身体は、それまで知らなかった充足を容赦なく突きつけてくる。

 

「んおっ、おぁっ……! 私は、こんな……こんな男にぃぃ、ああっっ!」

 

 セルベッサが最も深い場所へ肉棒を突き入れた瞬間、オデットはもう何度目かわからない絶頂に大きくのけ反った。

 

「おっ、おおお゛ぉっ! イク……!! 私、またイッてしまう……っ!! あっ、んほぉぉぉッッ!!!」

 

 子宮口を突き上げられての絶頂は、今までよりもさらにオデットを快楽の高みへと連れていく。彼女の顔は普段の知性が感じられないほど淫らなアヘ顔を晒し、その声も無様なオホ声を響かせる性楽器に変わっていた。

 

 そして絶頂によって引き締まった膣内が激しく痙攣し、肉棒へきつく絡みつく。その締めつけに応えるようにセルベッサも大きく脈打ち、熱い精液を最奥へ解き放たれた。

 

 びゅるるるるるるるる!!!

 

「んおっ!? お゛っ! おおぉぉ……っ!! ぁっ、熱い……! 中に、こんなに……! ほっ、ぉぉ……火傷、しそうだ……ッ!!」

 

 膣内に精液が注ぎ込まれるたび、オデットの身体は細かく震えた。それは彼女がこれまで経験したことのないほど強烈な性行で、そして間違いなく人生最高の絶頂と膣中出しだったと思える物だった。

 

 いや……今夜これから与えられる快楽の中で、それは最初のものにすぎなかった。

 

 オデットが汗に濡れた胸を上下させていると、セルベッサは肉棒を引き抜いた。溢れた精液が開いた肉襞から流れ出し、シーツへ白い染みを作る。

 

 彼はオデットの腰を掴み、身体をうつ伏せへ転がした。持ち上がった豊かな臀部へ、掌が鋭い音を立てて振り下ろされる。

 

 ベチンッ!!

 

「んひぃっ!?」

 

「四つん這いになってください。今すぐに」

 

「は、はい、セル――」

 

 オデットは途中で言葉を止めた。熱に霞む瞳を伏せ、震える腕で身体を起こす。最後に残っていた自尊心を押し込めるように息を吐き、両手と両膝をシーツへついた。

 

「はい……ご、ご主人様……」

 

 オデットは四つん這いのまま荒い呼吸を繰り返していた。飲み下した精と子宮の奥へ注ぎ込まれた熱を意識するたび、さらなる快楽を求める渇きが身体の奥から湧き上がる。

 

 無意識に豊かな臀部を左右へ揺らすと、セルベッサの掌が再び振り下ろされた。

 

 バチンッ!!

 

「あぁっ……!」

 

「随分と待ちきれないご様子ですね」

 

「そ、そのように見えるのなら……君の観察眼も、随分と鈍ったものだよ……」

 

「では、確かめさせていただきましょう」

 

 亀頭が濡れきった膣口を押し広げ、先ほど注がれた精液を掻き混ぜながら奥へ進む。

 

「んぁっ……あぁぁ……!♡」

 

 オデットは背を反らし、肉棒を根元まで迎え入れた。セルベッサは片手で彼女の髪を掴んで上体を引き起こし、腰を打ちつけ始める。反対の手が豊かな臀部へ振り下ろされるたび、オデットは歓喜に満ちた声を上げた。

 

「ひぁっ!♡ あっ、んお゛ッ♡ ご主人様、そこ……奥へ……!♡」

 

 それはまるで馬の手綱を引いてお尻を叩いて走らせるように、オデットはセルベッサの乗り物と化していた。少し前の彼女なら怒りと憎しみに燃えていただろう扱いだが、当の彼女は先ほどまで拒んでいた呼び名を、今では喘ぎとともに嬉々として叫んでいる。

 

「今後、私がお呼びしたときは、必ず来ていただきます」

 

 セルベッサは腰を打ちつけながら、耳元へ静かに言い聞かせた。

 

「研究中であろうと、講義の途中であろうと関係ありません。書物も、名誉も、あなたの都合も、私より優先してはなりません」

 

 髪を引く力が強まり、オデットの背が深く反る。

 

「あなたは私のものです。お分かりですね?」

 

「そ、それは……あぁっ!♡ そのような、勝手な……!」

 

 否定しようとした瞬間、肉棒が敏感な場所を抉った。言葉は悲鳴へ変わり、膣内は彼を逃がすまいと強く収縮する。

 

 脳裏へ、研究室にいる自分の姿が浮かんだ。読みかけの書物や未完成の論文。その最中にセルベッサから呼び出しが届く。

 

 以前なら、研究を中断するなど考えもしなかっただろう。ところが今思い浮かべたのは、何もかも放り出して彼の寝室へ急ぎ、その場で衣服を脱いで跪く自分だった。

 

 そんな光景を想像しただけで、オデットの膣内が大きく震えた。

 

「あっ、あぁぁ……!♡♡ わ、私は……壊されているのか……?」

 

「いいえ。ご自分に相応しい役目を理解し始めただけですよ」

 

「そんな……はずは……あっ♡ あんっ、ああっ♡ ま、また、イッてしまう……! イクッ! イクッ! イグッッ!!♡♡♡」

 

「返事をしていただけますか、オデット?」

 

「んほぉっ!?♡ は、はい……はいっ……!♡」

 

「何をしていても、私のもとへ来るのですね?」

 

「お呼びなら必ず参ります、ご主人様! 研究中でも、講義の途中でも……すべて放り出して、あなたのもとへ……!」

 

 セルベッサの手が再び臀部を叩き、オデットは歓喜に身体を震わせた。

 

「私はご主人様のものだ! どんなことでもいたします、ご主人様ぁっ!♡♡」

 

 叫びと同時に、オデットは再び絶頂へ達した。それでもセルベッサは動きを止めず、既に注がれていた精液を膣内で掻き回しながら腰を打ちつけ続ける。

 

 やがて彼はオデットの腰を強く引き寄せ、最奥へ肉棒を押し込んだ。

 

「よくできました。もう一度、満たして差し上げましょう」

 

「はい……ください……! ご主人様のものを、もっと……!」

 

 肉棒が大きく脈打ち、新たな精液が何度も放たれる。熱い奔流が子宮口を濡らすたび、オデットは甘い声を漏らし、一滴でも多く受け取ろうと臀部を押しつけた。

 

 だが、それで夜が終わることはなかった。セルベッサは長い時間をかけ、さまざまな体勢でオデットを抱いた。仰向けに戻して両脚を胸元まで折り畳み、立ったまま抱き上げ、最後には冷たい石壁へ押しつけて背後から深く貫いた。

 

 オデットも声を枯らしながら腰を打ち返し、絶頂へ導かれるたび、何度も「ご主人様」と叫んだ。

 

「すごい……ご主人様、また奥まで……!♡ 私の身体が、あなたの形を覚えてしまうよ……!♡」

 

「それでよいのです。次にお呼びしたときも、すぐ受け入れられるようにしてください」

 

「はい……何度でも、いつでも! 股を濡らして受け入れます……!♡」

 

 何度絶頂したのか、途中から数えることさえできなかった。夜が深まる頃には、オデットの身体は内も外もセルベッサの精で汚れ、下腹部には重い充足感が残っていた。

 

「私は……何という姿をしているのだろうね……」

 

「私には、とても美しく見えますよ」

 

「君の好みなど……とうに理解しているよ、ご主人様……」

 

 口では呆れたように言いながら、オデットは嬉しそうに目を細めた。

 

 セルベッサは力の抜けた彼女を浴室へ運んだ。身体を洗うはずが、そこでもオデットは濡れた壁へ手をつき、背後から抱かれた。湯音へ甘い喘ぎが重なり、最後には再び膣内へ精を注ぎ込まれる。

 

 すべてを終えると、セルベッサはオデットを寝室へ運び、腕の中へ抱いたまま眠りについた。

 

 オデットは抵抗しなかった。それどころか、自分から彼の胸へ顔を寄せ、鼓動を確かめるように頬を擦りつけた。眠りへ落ちる直前に夢想していたのは、二人きりで過ごす生活と、毎夜のように彼の身体で満たされる自分の姿だった。

 

 

 

 翌朝、先に目を覚ましたのはオデットだった。

 

 窓を控えめに叩く音が聞こえ、視線をやると一通の封書を首から垂れ下げた鳥がガラスを嘴で叩いている。オデットはセルベッサの腕を抜け出し、そっとその窓ガラスを開くと、鳥は開いた隙間から封書を器用に落とすと、そのまま飛び立ってしまった。

 

 落ちた封書を拾い上げると、封蝋には彼女と縁のある学院の印が刻まれていた。中には早急な返答を求める書簡と、長年探し求めてきた古代魔法に関わる碑文の拓本が収められている。

 

 よくもまあ私がセルベッサの元にいるとわかったものだと、先ほどの鳥の優秀さに思わず感嘆とも呆れとも言えない感覚が湧く。内容から、きっと腐れ縁のあの天才バカが書いた物で、先ほどの鳥は以前彼と行動を共にしているところを見かけた女狩人の物であろう。

 

 きっと、旅の先で私が研究していた物を偶然発見して、それを親切心一割、学術的興味九割で送ってきたと言ったところか。

 

 これまでのオデットなら、その送られてきた拓本を寝食を忘れて読み解き始めていただろう。複雑な文字列も失われた術式を示す図形も、昨日までなら何より心を躍らせる発見だったはずだ。

 

 しかし今の彼女は、数秒だけ拓本を眺めると、ほとんど興味を失ったように手を離した。封書は床へ落ちる。

 

「今は……こちらの研究のほうが重要なのでね」

 

 オデットが選んだのは、眠っているご主人様だった。

 

 彼女はセルベッサの身体へ掛けられた寝具をめくり、朝の勃起で硬くなった肉棒へ恭しく口づけた。

 

「んっ……おはようございます、ご主人様……♡」

 

 起こさないよう慎重に始めたはずが、その硬さと味を確かめるうち、オデットの動きは熱を帯びていった。唇を亀頭へ被せ、舌を裏筋へ沿わせながら深く呑み込む。

 

「んむっ……じゅる、じゅぶっ♡」

 

 喉近くまで肉棒が滑り込む感触に、オデットは嬉しそうに目を細め、そのまま激しく音を鳴らしながら口淫していく。

 そしてそれだけうるさくしていれば、彼女のご主人様が目覚めるのも時間の問題で。

 

 セルベッサは、程なくしてその快感によって目を覚まし、自分へ奉仕する彼女を見下ろして満足そうに微笑んだ。片手を伸ばして頭を上下させる彼女の髪を掴み、指を深く沈める。

 

「おはようございます、私の淫らなオデット」

 

 その挨拶に、オデットは肉棒を口から解放すると、唇へ残った先走りを舌で舐め取りながら見惚れるような淫靡な笑顔で微笑んだ。

 

「おはよう、ご主人様。最後までさせていただいてもよろしいかね?」

 

 期待に瞳を輝かせ、甘えるように臀部を揺らす。セルベッサが頷くと、オデットは堪えきれないように小さく笑った。

 

 彼女は睾丸から肉棒の先端まで舌でゆっくりと舐め上げた。しかし、口だけで終わらせるつもりはなかったらしい。セルベッサの腰を跨ぎ、濡れ始めた秘部へ亀頭を押し当てる。

 

「朝から……私の中を満たしていただくよ、ご主人様……♡」

 

 性欲に満ち溢れた笑顔を主人に向けて、その目を愛しさで輝かせながら、オデットはゆっくりと腰を落とし、硬い肉棒を根元まで呑み込んだ。

 

「ああっ、あぁぁっ……♡」

 

 ただ咥えただけで、極楽に浸かったような悦びの声を上げるオデット。大きな快感に全身を震わせる彼女の顔には心からの幸福と陶酔が浮かんでいて、もうその頭に先ほどの拓本の存在などこれっぽっちも残っていなかった。

 

「ご主人様♡ これから毎日、こんなふうにたっぷりと奉仕するよ♡ 朝は君のチンポを口で咥えて、膣中でその日の初射精を受け止める♡ 君が仕事の時は、手慰みに私の好きなところを弄ってくれていい♡ どんな扱いも喜んで受け入れよう♡ それこそ、もしトイレに行くのが面倒なら、私の中に注いでくれ♡ ああ、そういえば私はもう君の妻だから、どこかの社交界にでも連れて行くのかな? 安心してくれ、君の妻たして立派に勤めを果たそう♡ 君をどれだけ愛しているか、君の性技はどれだけ素晴らしいか、私がどんなふうに君に組み伏せられ悦んで鳴いているか、たっぷりと話してやる♡ それから――――」

 

 オデットはセルベッサの腰を跨いで、笑顔で何度も上下へ身体を弾ませながら、淫らなこれからの結婚生活について話し出す。その内容はどれも淫猥で、倒錯的で、破廉恥で……オデットの尊厳をめちゃくちゃにする物ばかりだ。

 

 それを嬉しそうにご主人様に喋りながら、彼女は甘い声で何度もセルベッサに愛を囁いた。

 

 その後オデットがセルベッサとの間に第一子を儲けるのに、そう時間はかからなかったという。

 





 ここまでお読みいただきありがとうございます。

 連続でオクトラ大陸の覇者です。知らない人の方が多いと思うマイナーなソシャゲですが、これを読んでキャラやストーリーのどちらかに興味を持ってもらえたら嬉しいです。そしてオクトラ0を買ってプレイしてもらえたらもっと嬉しいです(ダイマ)。

 気になったキャラのトラベラーストーリーを動画サイトを使って読むだけでもおすすめなので、私が書いた彼女たちと竿役が出てくる物語を是非見てみてください。たまにとんでもなく鬱なストーリーが混じってますが……。

 初夜服姿のオデット
 
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もしFFのエロをやるならどのナンバリングが見たい?*FF7は意図的に外しています

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