※この作品はR-18です。

マイナーキャラ妄想短編集   作:ニンニク嫌い

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 もしヤルダバオトがただでは死なず、杉村(春の婚約者)に力を授けていたら?




ペルソナ5(奥村 春)

 

 

 ここで敗北するのだとしても……聖杯であり、ヤルダバオトであるその者は納得することができなかった。たとえ、イゴールの示した人の意志を認めたとしても、彼(彼女)は未だ統制の神【ヤルダバオト】であった。彼の愚者のペルソナを持つ少年は、最後までそれを変えることが出来なかったのだ。

 そして、滅びゆく神は自身を滅ぼしたトリックスターへの復讐を望む。来栖暁……自身が憎んだ混沌の全て、その体現者であった人間。

 

 ヤルダバオトがこの結末を受け入れられず、最後の足掻きを見せるのは当然のことだったのだろう。独自の意志を持たない聖杯へとその身を溶かし、消えゆく自我の中、最後の権能を振り絞り、自身の力の一部を切り離すと何処かへと飛ばした。

 

 来栖暁の絆の力、それを完全に引き裂くことのできる者を求めて。そして見つけたのだ……杉村という都合の良い男を。

 

 奥村春との婚約を台無しにされ、面目を潰された杉村は夢の中にあっても激しい怒りと憎悪を溢れさせていた。そして、他者の夢を覗くことのできるヤルダバオトには、杉村が自身のプライドを傷つけた者たちにどんな仕返しを行っているのかを見ることができた。

 

 他者に苦痛と恥辱を当然のように与える鬼畜で、下衆で程度の低さがにじみ出ている男……統制の神はこの瞬間、自身がまさしくジョーカーを引いたことを知ったのだ。

ゲームセットをひっくり返す最高のワイルドカードを。

 

「スギムラ」

 

 名を呼ばれた青年は、返り血で染まったスーツに身を包みながら固まった。ゆっくりと声のする方に振り返った彼は、宙に浮遊する小さな光、ヤルダバオトに残された最後の力の残滓を見つめた。何の恐怖もそれ以外の感情も感じられない空虚な瞳でその光を見つめる杉村の様子に、ヤルダバオトはやはり自身の見立ては間違っていなかったのだと確信した。

 

「私はお前にチャンスを与えに来た。復讐のチャンスを」

 

 杉村はその言葉にピクリと眉を動かすが、ヤルダバオトは気にせず話を続ける。

 

「お前はこのまま敗者として終わる運命だった。お前は自身が相手にする者の力を知らなかったが故に。お前が戦った相手は、公平な存在ではなかった。お前の敵は怪盗団そのものであり、彼らは卑怯なやり方でお前の名誉を傷つけた」

 

 目前の青年の心情が伝わってくる。杉村は俯き、眉をひそめながら、言われた言葉を頭の中で咀嚼していた。だが、これはまだ夢にすぎない。夢の中で何を言われようが、所詮泡沫の夢。目覚めれば消え去ってしまう。

 だからこそ、ヤルダバオトの語る言葉を真実のモノとして、彼に根付かせるにはさらなる後押しが必要だと。ヤルダバオトの残滓はその一押しを加える。

 

「見よ、スギムラ!お前の敵の姿を! お前を貶めた敵の勝利した姿を。これを見てまだお前はこの敵が絶望と喪失に苦しみ、惨めに這いつくばる姿を見たくはないと言えるか!?」

 

 ヤルダバオトは自身の力の一部を使い、現実世界の光景を映し出し、杉村に来栖暁の祝勝会の様子を見せた。杉村の心を揺さぶるための行動であったが、そこに映った光景はヤルダバオトでさえも腹立だしいものであった。

 来栖暁が多くの女性に囲まれ、和気あいあいとし、時に抱き着かれたり、手を繋いだりと幸せそうにしている姿はヤルダバオトの残滓にとってもひどく心を波打たせるものだった。

 

 幸せ。

 トリックスターが全身から漂わせるそれが、ヤルダバオトがこうしてここに居る理由なのだ。

 

 一方、死にかけている彼の隣でこの光景を見ていた杉村は別の理由で怒っていた。暁が幸せそうなのが一番腹立だしいのは変わらないが、彼に媚びるようにじゃれつく美少女たちの姿に、歯を喰いしばっていた。

 

 そしてなによりも春の存在だ。

 奥村春は自身を上流階級へと連れて行くための金のチケットだったはずだ。本来なら今頃、自身は奥村フーズの社長になっていたはずだったのに。奥村春はその成功の証として自身の妻となり、自身はあの体を好きなように蹂躙しながら世界有数の大企業の社長へとなるはずだったのだ。

 

 もし事が自分の思い通りに進んでいれば、今頃あそこで笑う彼女に自身の子を孕ませていたのに……それをあの怪盗団のせいで!!

 

 敵の正体を知った杉村はかつてないほどの怒りを募らせた。そして、現実世界の光景から目を離すと、横の最早光の形さえも見えず、空虚しかないそこに目をやった。

 そしてその瞳と表情に写るモノにヤルダバオトは歓喜した。

 

「どうやら覚悟は決まったようだな。私が永遠に消えてなくなる前に、この最後の使命をお前に託す。来栖暁とその周りの女たちとの絆を壊すのだ。奴から全てを奪い取り、奴の人生を生き地獄へと変えるのだ。そのための武器をお前に与えよう。それはお前を敵の心の中へと入ることを可能にし、内部から奴らの絆を打ち砕くことが、『改心』させることができる。健闘を祈るぞスギムラ。‘期待を裏切るなよ’と言いたいところだが、私はもう消滅する身。故にこう言おう。‘己自身の欲望を裏切るなよ’」

 

 そして今度こそ、ヤルダバオトの意志は完全にこの世から消え去った。だが彼が最後に引いたジョーカーが、杉村が残っている。ヤルダバオト最後の力で生み出した武器を手にし、来栖暁とその女たちを陥れる最悪のトリックスターが。

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ました杉村は、目を大きく見開き汗に濡れた体でベッドに座り込んだ。心臓が早鐘を打ち、水気を吸った衣服が重く感じられる。

 なんだあの夢は……ただでさえあのムカつく暁とか言う小僧になにもかも奪われて最悪の気分だというのに、夢の中でさえもあのクソガキに邪魔されるのか!

 たとえそれが夢の中での復讐だとしても、それはそれで溜飲が下がったというのに。

 

 だがその時、杉村は自身が何かを握りしめているのに気づいた。眉をひそめながらも、手に握りしめていたものを目前に持ってくる。

 

 これは……ガラケーか? それもかなりデザインが古い。完全に時代遅れの産物だ。

 だがそれでも、まるで何か未知の存在に後押しされるかのように折りたたまれた携帯を開くと、その電源を入れていた。しばらくして、携帯が起動すると画面中央にピクセル状のハートマークが現れた。

 

 それに少し顔をしかめるも、電源が完全に起動するとすぐに操作を始める。普通の携帯でないことはすぐにわかった。まず、電話をかけることができない。代わりに、自身の名前が載っており、それは……心に?アクセスできるようになっているらしい。

 今、名簿に載っているのは自分の名前だけだが、自身の心の中に入る意味はない。

 

 そして少しずつ、目の前の携帯と夢の内容が繋がり……杉村はようやく自身の見た夢が現実だったのだと気づいた。自身はただ暁の幸福そうな夢を見ていたわけではない。何かに真実を教えて貰っていたのだ。

 何か……そう誰かに…………ああ、あの威圧的な声は一体何だったのだろうか。だが、あの声が正しければ、自分は今の惨めな現状を変える力を手に入れたはずだ。

 

 やるべきことは一つ。そのためにも、まずは力とやらを試してみる必要がある。そしてその実験台となるのは、最初のターゲットとする女は……一人しか思い浮かばなかった。

 夢の中で見たあの女は婚約者であった自分のことなど欠片も気にしていなかったのだから。

 

 怒りにシーツを引き裂くと、ベッドから起き上がる。準備には時間がかかるだろうが、今夜までに暁の絆を一つ奪い去ってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 奥村春はまるで遠足を楽しみにする小学生のように瞳を輝かせながら、これから着て行く服を選んでいた。なぜならあと数時間後には、暁と二人きりでお出かけするのだ。恋する少女にとってはそれが楽しみでしょうがなかった。

 

 彼と世界を救った怪盗団の中には自分の他にも何人も魅力的な女の子が居るが、今夜のデートは私と彼の二人きり。そしてきっとその後のことも二人きりのものになる。

 

 今夜、自分は彼に私の初めてを捧げる。そのつもりでいる。これ以上、この胸の高鳴りを、彼への気持ちを抑えることはもう出来ないから。そして自分のこの想いを伝えるためにはそれぐらいの事をしなくちゃ釣り合わない。

 

 そのためにも、その素敵な一夜にピッタリのドレスを着て行きたい。あまりにあからさますぎるのはダメ。でも、彼が一目見て自分が望んでいることが分かるような服。

 たしかそんなドレスを前に見たことがあったはずなのだけど、どこに閉まっちゃたんだろう。

 

 そうやって服選びに集中している春は気付かなかった。自身の部屋の扉の外に、彼女にとって終わったはずの過去の断片がうろついていることに。

 奥村春の運命を捻じ曲げる悪魔の存在に、彼女が気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 監視の目のない塀を乗り越え、換気のために開けられていた窓から屋敷内に忍び込む。それは間違いなく不法侵入であったが、杉村はそんなことを今更気にするような道徳観を持っていない。

 

 杉村が春の部屋へと十分に近づくと、携帯の中に奥村春の名前が現れるのを確認した。そのまま彼女の寝室の目前、廊下の隅に座ると、ニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべながら、画面に表示された「送信」ボタンを押し込む。

 

「――――っ!?」

 

 何かに引っ張られるような奇妙な感覚を感じたと思った瞬間には、杉村は奥村春の心の中へと侵入していた。正直、どうやって侵入したのか、あの奇妙な感覚を何と形容していいか杉村には分からない。突然世界が歪み、自分の周りが渦を書くように回り出したのだ。

 

 杉村が座っていたのは幸運だったろう。なぜなら、杉村は知らないことだが、彼の憎む怪盗団が初めて誰かの心の中に入る時は強い精神的負荷がかかり、眩暈などに襲われて倒れてしまっていたのだ。

 

 杉村はようやく眩暈が収まると、自身がどこか別の場所に居ることに気づいた。

 そこは喫茶店の入り口だった。杉村は見たこともないその店の前で、携帯を片手に座り込んでいたのだ。瞬きしながらゆっくりと立ち上がると、携帯をズボンのポケットに仕舞い、古風で質素な小さい喫茶店の中を覗き込む。

 

 こじんまりとした、客の少なそうな店だ。人によっては趣のあるアンティークな喫茶店と称し、気に入るだろうが、あいにく嫌な上流階級の人間の見本のような杉村にとっては、みすぼらしい、ロバ小屋かなにかとしか思えなかった。

 店内は無人で、それに眉をしかめた杉村は一歩扉を開けて中へと踏み入った。瞬間、その目先に突如として人影が現れたことで、杉村の体は足を踏み出した体勢のまま固まってしまう。

 

「あなたはここに居るべきではないわ。出て行きなさい。今すぐに」

 

 杉村は一瞬その現れた人影、春と思われる者の姿を見て固まった。その姿は……もし彼が怪盗団の正体を探す人間であったなら、奥村春はその怪盗団の一味であると言う証拠を今すぐ提出できるような恰好だった。

 

 こうして間近で見れば、彼女が春だとすぐにわかる。しかし、このノワール調の衣装は間違いなく彼女の正体を隠すための物だろう。

 つばの広い羽根つき帽子に目元を隠すマスクに紫の手袋。そして身に着ける衣装は時代錯誤な中世の騎士、それも有名な小説『三銃士』のキャラクターを連想させるような恰好だ。

 

 正直言ってその姿は、彼女の普段の服装よりも、かなりセクシーに春自身を着飾っているように杉村は感じた。いつもは大人しそうな少女でしかなかった春は、ミステリアスと不思議な妖艶さを併せ持つ美少女となっており、そのギャップが杉村の雄の部分を激しく刺激した。

 

「もう一度だけ言います。出て行って」

 

 彼女は片手に持った斧を地面に突き立てながら、再び杉村に威圧的に命令した。

 その対応に、杉村はどうすればいいのか分からなかった。夢で聞いた声は自分に与えられた力で心の内側から相手を改心させることができると言っていた。

 

 だが、どうやって? どうしろと言うんだ? 自分が戦えるわけがない。特に今のように武器を持った春のような相手などもってのほかだ。

 そもそも、杉村は喧嘩をできるような人種ではない。彼は何よりも自分が可愛い人間だ。他者を一方的に殴ることはできても、殴られることは御免蒙るというクズの見本のような男なのだ。

 

 だが、慌てる杉村の脳裏に昨夜の夢の中での出来事が過ぎる。自分が絶対的に有利な立場に居る事。最早思い出せない何者かから貰ったあの携帯がある限り自身は、少なくともこの心の世界においては無敵なのだと。

邪悪な光が杉村の目に宿ると、呆れるように首を振り、陰湿な笑みを口に浮かべた。

 

「俺に命令するつもりか、春?」

「----っ」

 

 杉村の元婚約者であった怪盗姿の春が、仮面の下の頬を少し恐怖で引き攣らせた。それは今でも杉村と言う男の存在が春の心を動揺させるに足る者であることを示している。

 

「いいから出て――――――んんぅ!!?」

 

 彼女が口を開き何か言葉を紡ごうとした瞬間、杉村は動いた。彼女が慌てて動かそうとした両腕の手首を掴んで脇に押しやり、開いたままの春の唇へと自身の唇を重ね合わせた。

 

 そのまま春を壁へと押しやり、もちろんその間も春は杉村からの拘束を解こうともがいていたが、彼が彼女の手を強く掴んだ瞬間、彼女は一切の力を失っていた。

 

 彼女がどんな風に杉村にその手に持った斧を振り下ろそうとしたのかは知らないが、今は消え去った邪悪な神が与えた携帯の力により、杉村は他者の心の中に居る間、常に強力なバフがかかった状態になっているのだ。

 それはヤルダバオト直々の恩恵によるもので、杉村という何の才能もない人間を、数々の激闘を潜り抜けて来た怪盗団の一人を組み伏せることも可能とするほどのステータスアップを与えていた。

 

 それでも、もし春が万全の態勢で杉村へ最大限の注意を払っていれば、違う可能性もあったかもしれない。

 だが、春は気づくことが出来なかった。杉村をあくまで普通の人間と思っていたことと、たとえ嫌悪する相手でもあまり手荒な真似はしたくないという、生来の彼女の優しさが仇となった。

 

 もっとも、今となってはそんな事実、たいして重要なことではないのだが。

 

「ふんっ……んん……やめ、んふぅ……っ!!」

 

 杉村にとってキスは彼女を堕とす為の最初の一手だが、彼がこの携帯を持つ限り、春が彼を止めることはほぼ不可能。杉村にとっては幸運で、春にとっては最悪なことに、これで詰みなのだ。

 

 杉村は詳しいことなど何も知らない。だが重要なのは、目の前の春を堕とし、「改心」させれば、現実世界の春も「改心」するという事。そして杉村には目前の、「ノワール」と仲間に呼ばれていることも知らない深層心理の春がすでに自分という侵略者に支配されつつあるのを感じていた。

 

 そしてその感覚は真実だった。

 春は杉村からのキスに、確かな幸福を感じ始めていた。唇と唇が触れ合う感触に心が温かくなり、舌を口に押し込まれた時に感じる唾液の美味しさに胸が高鳴る。それが明らかにおかしい事だと理解していながら、春の心はまるで意志に反するように杉村という存在を受け入れようとしていた。

 

「ん、むぐ……あっ……♡」

 

 杉村が抵抗の崩れつつある彼女の状態を感じながら、より一層その口内を味わうことに集中する。同時に触れ合う唇越しに侵入してくる杉村の淀んだ欲望が、深層心理の具現である春の体へと流れ込んで行く。それは春の記憶を徐々に破壊し、彼の都合の良いように書き換え、変質させていく。

 

「----」

 

 そして突如、春は今までずっと男の所有物になりたいと思っていたことを思い出した。父親がオクムラフーズの社長を退いた後、父の会社を継ぐ男の妻となり、夫を家庭から支えていくのが春の子供のころからの夢だったのだ。

 

 杉村はまさしくその夢を叶える男で、それを自覚した瞬間、春の記憶の中に突然、忘れていた思い出が蘇った。夜景の綺麗なレストランの最上階。そこで、自分から杉村さんにキスをして、彼に身も心も捧げると誓った日のことを。

 

 そう、私にとって杉村さんはまさしく夫として理想的な男性で、彼と結婚して彼の妻になりたいって、運命の人だって、心の底から思っていたはずなのに。どうしてそんな大切なことを忘れていたのだろう。…………そうだ、思い出した。暁のせいで全て台無しになったのだ。彼は杉村さんの元から私を誘拐し、私から杉村さんへの恋心を奪い、自分のことを愛しているのだと思い込ませた!

 

 少なくとも、春の書き換えられた新しい記憶の中ではそう言うことになっていた。

 

 しかし、浸食が進む中でも、春は、ノワールは、それに必死に抵抗していた。今の春は以前の怪盗団に入る前の春とは違う。多くの経験とたくさんの仲間を得て、強くなったのだ。それをこんな……たかがキスの一つくらいで堕ちるわけにはいかない。

 

「や、やめて!」

 

 キスを跳ね除け、春は再び両手を拘束する杉村の手を振りほどこうと足掻きながら、どの記憶が本物で、どれが偽物か見極めようとしていた。なのに……できない。さっきまでは簡単に見分けが着いたのに、時間が経てば経つほど、彼女の中の記憶の正誤が曖昧になっていく。

 

 私は、怪盗団の一員で、杉村さんの役に立つのが生きがい、違う!いや、違わない? 子供のころからの夢は人助けの……違うそんな夢じゃない! 子供の頃からお父さんの会社の次の社長の奥さんがわたしの夢だった!うん、そう間違いない。小学校の将来の夢にもそう書いたもの。それで、私の好きな人は来栖アキ……そうだっけ?どうして彼のこと好きになったんだっけ? だって、彼はお父さんが死んで悲しんでいた私を慰めて、趣味も褒めて……違う? 慰めてくれたのも、褒めてくれたのも杉村さんだったような……?

 

 混乱したように思い悩むその姿を見て、杉村は自身の勝利を確信した。彼女は自身が強くなったと勘違いしてるようだが……そんなことはない。彼女は弱い、決して変わってなどいないんだということをわからせてやらなくては。

 

「お前は俺のモノだ、春。それを思い出す時だ」

 

 杉村は手を伸ばし、春のトップスの胸元、そのピンクのブラウスを掴むと、それを思い切り引き裂いた。ボタンが飛び散り、その下の豊満な乳房と桜色の綺麗な乳輪が飛び出すように露わになる。

 

「きゃあ!」

 

 ショックで呆然と杉村を見る春の喉からは驚きによるか細い悲鳴が漏れた。驚きの原因は、いきなり服をひん剥かれたこともそうだが、それ以上に確かに身に着けていたはずのブラがなかったことだ。

 それは、春の心がすでに杉村の手に堕ちていることの証明。彼女の心は杉村を受け入れている。彼には全てを包み隠さずにいたいと無意識に思ってしまっていた。故に、今のノワールの服の下には下着も何も一切身に着けられてはいないのだ。

 

「へぇ、ノーブラとか……そんなんで怪盗をしていたなんて、どうしようもない変態だな」

「ち、ちがっ! これは……あぁ!!」

 

 そしてそんな事情を知らない杉村は、常日頃から春がノーブラでいると思って彼女を嘲笑う。それに何とか言い返そうと、好きな相手に弁明の言葉を言おうとした春の口は、自身の剥き出しとなった胸へと荒々しく伸びた男の手によって強制的に遮られることになる。

 

 下卑た笑みを浮かべた杉村の手が、春の魅力的な乳房と安産型の尻を触り始め、再び彼女の口奥深くへと舌を伸ばす。手の中で、高校生にしてすでに大きく育っているその双丘を転がし、こねくり回したり、押し込んだりし、時折そのさくらんぼのように膨らんだ乳首を摘まんだりはじいて弄ぶ。

 

「んんっ……! んあっ、止めてくだ、ふぐぅ、ぁあ……胸、いじら、んああッ!」

「おいおい、どうした? 乳首が立って来たぞ。まさかもう興奮して感じてるのか?やっぱり変態だな、このマゾ雌」

「んぃイッ! わた、私はマゾなんかじゃっ、あ、ああ!」

「うるさいっ! 俺がマゾ雌って言ったらお前はマゾ雌なんだよ!女が男に口答えするんじゃねぇ!!」

 

 男尊女卑も甚だしい杉村の言葉だが、彼の両手によってストッキングとショーツを破り捨てられて、露出した尻肉を揉まれただけで甘い喘ぎ声を漏らしてしまった春に反論の余地はなかった。

 

「お前は生まれながらの淫乱だ。男に媚び諂って犯してもらうのが大好きな生粋の雌なんだよ!」

 

 繰り返し投げかけられる言葉が、本物の春の心の中を、彼女の深層心理であるノワール自身を卑猥で淫乱な女へと本人が知らないままに変化させていく。

 

 そうすると、春がいつか暁と共に経営することを夢見ていた場所、そんな春の心を象徴する趣のある小さな喫茶店が壊れ始める。それは杉村の存在によって、彼のもたらす悪意と行動によって、春の心と精神が犯され、堕ちて行っていることの証左。

 春の見せた一瞬の抵抗も、口の中に広がる杉村の唾液、その甘美な味わいの前に消え去り、春はただ杉村の手の中で胸やお尻を弄られながら喘ぎ声を上げ、彼の理想のための彼専用の性奴隷、都合の良い雌へと変えられることしかできなかった。

 

「んちゅぅ、ふぅ、んあっ♡ んふっ、じゅっ、じゅるる、ぁあ……」

「ふっ……くくく……」

 

 やがて杉村はキスをやめると、切なげに声を震わせる元婚約者を嘲笑しながら、彼女が好きだった暁を侮蔑する言葉を吐き捨てる。

 

「おまえはあんなガキの一体何に惹かれたんだ、春?あんな愚かで、程度が低い……ゴミのようなガキのどこに! 俺よりあんな愚図を選んだってのか! よくもそんなマネができるたな! 俺たちが築き上げてきたモノをあんなゴミのために全部捨てやがって!!」

「――――!!」

 

 杉村が暁を侮辱し嘲笑っているのを見て、彼を愛し、何よりも大切な仲間だと思っているノワールの意識が再び線を結ぶ。

 足は何かを耐えるように閉じられ、その頬には羞恥とは違う激情による深い赤みが広がっていく。

 

(自分が愛しているはずの彼のことをこんなにも侮辱するなんて―――!!)

 

 春の固まっていた腕に力が戻る。武器を手放し、素手となってしまった手でせめてビンタの一発でもと動かそうと力を込めて。

 

「彼を馬鹿に―――ッ!!?」

 

 その瞬間、口をついて出ようとた言葉は春の中で意味を失った。

 唐突に、まるで電池がオフになったように彼女の中で確かにあったはずの暁への思いがゼロになった。

 

 彼の顔を思い浮かべても、もう何も感情が浮かばない。

 彼との日々を思い返しても、まるで白黒映画のように色褪せている。

 杉村の彼への暴言を聞いても、なぜ自分が怒ったのか思い出せないぐらい。

 

 その代わり、春の中で湧き上がるのは激しく燃え盛るほどの暁への憎悪。

 

 あのゴミの顔を思い浮かべただけで全身が総毛立つほどの嫌悪感を覚えた。

 あのゴミが自分の隣にいたことが気持ち悪くて仕方がない。

 あのゴミを侮辱する杉村さんの言葉に全面的に同意してしまう。

 

 

 手遅れだったのだ。春が最後の抵抗をするには、あまりにも遅すぎた。杉村による精神への改心はもう取り返しのつかないところにまで来てしまった。

 

 そしてその変化は春の精神世界にまで及んでいった。

 

 浸食が進み、暁との憩いの場であった喫茶店は崩壊の一途を辿っていく。よく一緒に座って勉強していたソファ、彼が彼女のためのコーヒーやカレーを作ってくれたキッチン、そして彼の寝室があった屋根裏。その全てが壊れて行く、消えていく。

 

 

 

(ああ、そうだ。私が本当に好きなのは――――杉村さん♡)

 

 春はついに杉村が自身の運命の相手で、彼女が真に愛したただ一人の男性なのだと、完全に思い出した。

 

 そんな春の変化を、杉村は自身に向けられる彼女の瞳に映る深い愛情と尊敬の念を見て理解した。理解して、邪悪な笑みを浮かべた後、表情を厳格なものに変えてわざと彼女を引き離した。

 

「俺はもう行くよ。君がこれ以上俺との関係を続ける気がないのは明らかだからな。精々残りの人生をあの汚物と惨めに過ごすんだな」

 

 喫茶店のかろうじて残っていた扉へと杉村が歩を進めると、春は深いショックと絶望を顔に浮かべてその後ろ姿を見つめていた。

 まるでこの世の終わり。愛する人から見捨てられるという事実に現実を認識できなくなり、しかしその原因が悪い男に、例え洗脳されていたとは言え、愛を囁いていた自分にあると理解してしまったから。

 

「――――ッ!!ま、待って杉村さん!!」

 

 だからすぐに春は杉村の後を追った。彼の名を泣き叫びながら、縋るように彼を掴んだ。

 涙を流し、春は跪いて杉村の足に腕を巻き付ける。最愛の人が居なくなってしまうこと、やっと自分の居場所を示してくれる夫と離れ離れになってしまうこと……それを考えるだけで、春は人生の終わり、いやそれ以上の絶望を感じていた。

 しかし、救いを求めるようにしがみ付く春によって歩みを止められた杉村は、そんな春を軽蔑するかのような眼差しで見下した。

 

「へぇ? 何か言いたいことでもあるのか?春の本当の気持ちを聞かせてくれないかな。内容によっては、この場に留まってあげるかもしれないね」

 

「私は――――ッ」

 

 

 

 

 

 

(ダメよっ!この気持ちは偽物、私の物じゃない!)

(うるさい!偽物なのはあなたの方! あのゴミが作り出した気持ちの悪い幻よ!!)

 

 杉村に答えようとする春の心の中では二人の春による争いが起きていた。まだ微かに残っていた本来の春の心がしがみ付くように消滅する瀬戸際で耐えていたのだ。

 

(ゴミって……! 暁くんのことを、私の顔でそんな風に言わないで!!)

(そっちこそ!! 杉村さんの妻として生まれた私の顔をしておきながら、平民の男を名前で呼ぶなんて―――ッ!!)

(ふざけないで! それ以上、私の心を弄ばせさせない!! ペルソナ!!)

 

 精神世界のさらに奥、深層意識の中で普段の怪盗服を身に纏った春が偽物の言葉を掻き消すようにもう一人の自分に向けて中世時代ヨーロッパの貴婦人のようなペルソナ、ミラディを召喚して攻撃をしかける。

 

(ふざけているのはあなたの方よ。ペルソナァ!!!)

 

 それに対して、杉村によって形作られたもう一人の春、シャドウ春もまた自身のペルソナを召喚して迎撃した。

 

 シャドウ春の姿はノワールの怪盗服を卑猥に改造した、胸元と臍周り、そして太股を大きく露出させたエロコスチューム。さらに首には黒い首輪、両手首と足首には手枷足枷の輪っか部分がかけられており、まるで逮捕されて飼いならされた女怪盗という表現が似合いそうな姿だ。

 男の欲望をとにかく刺激するためだけのその衣装は、まさしく杉村が喜びそうなもの。

 

 そしてその変化は、シャドウ春のペルソナであるミラディにも表れている。貴婦人のような丈の長い赤いドレスであったのが、まるでストリップクラブの情婦のようなミニスカートに。首元には主人と同じ黒い首輪が、持っているセンスには淫売を意味する『Whore』の文字がプリントされていた。

 三銃士に登場する知恵と美貌を備え、自身の力のみを信じる女性の姿を模ったペルソナが、男に媚を売る売春婦その物の姿へと変わり堕ちたのだ。

 

(さぁ、スレイブ・ミラディ、私と杉村さんを困らせる悪党に正義の裁きを与えましょう!!)

 

 シャドウ春の声に応えて、堕ちたペルソナ、スレイブ・ミラディが本来のミラディへと念能力を行使する。

 

(サイ系の攻撃は私のミラディには…………え、ああッ!!?)

 

 センスが翻り、高火力のサイダインが春たちを包み込んだ瞬間訪れたのは、本来なら相性の問題で無効化にされるはずの念能力による痛み。今まで味わった事のなかった空間が捩れ、脳を直接攻撃される苦痛。

 それに思わず春が膝を折りそうになり、だが歯を食いしばって即座に態勢を立て直せたのは、彼女もまたヤルダバオトを倒したメンバーの一人であるからこそ。

 

(……っ、マカラカーン!!)

 

  春の声に合わせてミラディが自身の体に薄い魔力のシールドを付与する。それは万能属性以外のスキルを反射する破魔の守り。理由はわからないが、無効化されるはずのサイ系のスキルで攻撃を与えてくるシャドウ春への一先ずの牽制として春が選び取った手だ。

 

 それは対処がわからない相手への様子見の一手としては当然の、彼女の怪盗団としての経験が大いに役に立った選択肢…………それが通用する相手であれば。

 

(無駄よ、偽物。あなたの嘘の愛で、私たちの愛が防げるはずがないでしょう)

(えっ……? きゃあッ!!?)

 

 それは一瞬だった。再びスレイブ・ミレディから放たれたサイダインがミレディと彼女が纏うマカラカーンにぶつかった瞬間、本来なら反射されるはずのサイダインの攻撃が一秒と経たずにシールドを粉砕、そしてミレディをズタズタに引き裂いた。その後ろにいた春もまた、ペルソナが負ったダメージを精神的ショックとして味わい、今度こそ地面に倒れ伏す。

 

(これでわかったでしょう? あなたが偽物で、私が本物だってこと)

(うそ……そんな…………っ!)

 

 本来の春が碌な抵抗も出来ずに一方的にやられた理由は単純だ。ただ春を構成する精神力の要素のほとんどをシャドウ春に持っていかれてしまっているから。

 先に言ったように、この杉村に未だに反抗している春はもう搾りかすのような存在なのだ。二人の精神の力を数字にすれば、本物とシャドウで1:9どころか、0.1:9.9ぐらいの差があった。

 

 つまり、どれだけ春が自身の精神を昂らせた気になろうと、外部からの救援がない時点で、彼女の敗北は最初から決まっていたのだ。

 

 真なる我を決める戦いは、杉村によって生み出された新しい春の勝利によって決着が着いた。皆と絆を紡いできた春は敗北した。

 

(それじゃ、さようなら。私と杉村さんの幸せな結婚生活を妬んだくだらないゴミカスが作った残滓さん)

 

 シャドウ春が倒れた春の頭を踏みつけながら、スレイブ・ミラディにトドメを指示する。

 淫売を意味する言葉が書かれたセンスに、自身を消すための力が渦巻きながら集中して行くのを見て、春は自身の終わりを理解した。

 

(みんな…………暁くん…………ごめんね…………)

 

 それが春の最後の思考で、直後に訪れたサイダインの直撃に彼女の魂は粒子となって飛び散り、そしてその残滓さえも微笑みを浮かべたシャドウ春……いや、本物となった奥村 春に吸収され、偽物の春が居た痕跡は完全に消えてしまった。

 

 そんな事態が春の深層心理で起きている事を知らない杉村は、ただニヤニヤとした薄気味悪い笑みで自身に縋り付く春を見下ろしている。

 彼女たちの戦いは、杉村にとっては数秒にも満たない時の中での出来事で…………そして、杉村の質問に顔を上げて答えたのは、彼を愛し、尽きぬほどの忠誠と敬愛をその目に宿した本物の奥村春だった。

 

「あんな男、なんの価値もないわ。杉村さん……あなただけなんです。私に必要な男性は、あなただけなんです、杉村さん!私はあなたを愛してます。暁なんて男、塵以下の最低の下衆野郎です。弱くて頭も悪い! その上モラルもない! お願い、杉村さん、私には私を導いてくれる人が必要なんです! 私の居場所を教えてくれるあなたが必要なの!お願い、捨てないでください! お願いですから!!」

 

 その言葉を口にした瞬間、春の心は一変し、今まで積み上げてきた全てを失った。趣のあった小さな喫茶店は引き裂かれ、杉村への愛を象徴する豪華で美しい豪邸へと置き換わっていく。

 それに釣られるように、春の体もより女らしい、欲情的な姿に変わっていく。胸は杉村好みの大きさへと膨らみ、お尻はさらに肉付きが良く、ふっくらとした唇から漏れる熱の籠った吐息からは、杉村への献身的な深い愛情が感じられた。

 

 春の目の奥にはハートが浮かび、杉村の名を何度も口に出して、男の注意を惹こうとみっともなく縋ってしまう。そして、彼女が男への愛情を証明しようと杉村のズボンのジッパーを下ろしていくのを彼はニヤニヤと見守り、そして彼女の新しい心情風景に目を移した。

 

 春が完全に彼に屈服したのを示すかのように、豪華な部屋には所々に杉村の自画像が立て掛けられ、ここから見えるいくつかの写真立てには春と自身の存在しない思い出の光景が写っていた。まるでこれからの杉村との結婚生活を、彼の妻としての自分の始まりを祝福するかのよう、写真に写る春の表情は幸せそうだった。

 だが何よりも杉村を興奮させたのは屋敷のメインロビーにそびえ立つ、巨大な杉村の黄金の像の存在だった。それに一気に彼の下半身に熱が入り、固く勃起した肉棒が飛び出るように春の目前に現れた。

 

「あぁ……♡ これが杉村さんの……私の旦那様のオチンポ……♡ ん、ちゅうう♡♡」

 

 春がまるで誓いのキスをするようにその巨根の亀頭に口づけをするのを見ても、杉村はこれが現実の光景ではなく、所詮春の心の世界での出来事でしかないことは分かっていた。

 

 そして真に春の心を物にするなら、この先は現実世界の春で楽しまなくてはならない。ノワールの身に着けていた服がボロボロと剥がれ落ちていき、脇に捨てられていた斧が溶けて泡のように消滅する。それを気にすることもなく、春は目前の肉棒に舌を這わせ始め、それを眺めながら杉村は、自身のポケットから携帯を取り出すと現実世界へと帰還するためのボタンを押した。

 

 その先に待つ、自身の妻の姿を楽しみにしながら。

 

 

 

 

 

 

「これも良さそう! ああ、でもさっき選んだこの帽子とだと合わなくなっちゃうかな……?」

 

 現実世界の春は、今まさに自身の心の中で起きた事を自覚していなかった。彼女は未だに暁とのデートに何を着て行こうかと、年頃の少女らしい悩みに頭を抱えていたのだ。

 

「あ、でもこのスカーフと合わせれば良い感じにまとまりそう----」

「春、邪魔するよ」

 

 だがその乙女の時間は、突然寝室の扉を開けて我が物顔で入ってきた杉村によって消え去った。突然の訪問に、春の頭は一瞬フリーズし、だがすぐにそれが誰か分かると驚きに目を見開いた。

 

「なっ…………っっ!?」

 

 そもそも春は今は下着しか身に着けていないのだ。年頃の少女がそれを異性に見られたとなれば動揺するのも当然だろう。しかもそれが杉村であると言うなら、春の心が激しい怒りと拒絶感を覚えるのも無理はない。少なくとも、彼を認識して最初の数秒はそう感じていた。

 

 口を開き「出て行って!」と言葉を紡ごうとした瞬間、春の喉元を通り過ぎたのは、今まで感じたことのないような興奮と、快感と、愛情。そして何よりも目前の男へ服従しなければならないと言う隷属意識が濁流のように彼女の体と精神と意識に……そして魂を貫いた。

 

「----っ……ぁ、え? ふあ……ああっ……」

 

 膝を震わせ、内股になって太ももをすり合わせると、春は自身の蜜壺が濡れそぼっていることに気づいた。叱責の言葉を上げようとした口からは、甘い艶声が漏れ、杉村がゆっくりと下卑た笑みを浮かべながら近づいてくると、崩れるようにその場に膝を着いてしまう。

 

 目前に迫る杉村は、まるで王子様の如く輝いていて、全ての女性を虜にするような素敵な笑みを自分に向けている。そう、春の目には映っていた。

 杉村から漂う香水の匂いが部屋に充満し、春はその香りを吸い込もうと、無意識のうちに鼻孔を膨らませてしまう。完璧なルックスと王子様のような笑み、それを見た春はまるで少女漫画に出てくるヒロインのように胸を高鳴らせ、彼の全てに魅入っていた。

 

 杉村が指で春の顎を持ち上げる、乙女の夢見る『顎クイ』をされた春の目には、女性をただの自身の支配欲を満たすための装飾品としてしか見ていないとわかるその表情さえも、胸をときめかせるものでしかなくて。

 

 そして杉村、王子様はゆっくりとその唇を重ねようと顔を近づけてきて―――

 

―――キスを、唇と唇が軽く触れ合うだけの優しいキスをした―――

 

 そしてそれはまるでおとぎ話のような結末を、春≪お姫様≫にもたらした。運命の相手からの真実のキスが、『悪党』暁が掛けた『洗脳』を解き、春の杉村への『本当の気持ち』を『思い出させた』。

 

 春の瞳の奥に、長年連れ添った夫婦でさえ宿せないような深い愛情が浮かび上がる。そして、春の纏う雰囲気が変わる。純粋で清らかなお嬢様から、愛する男を誘惑して淫欲に耽るハーロットへと。

 奥村 春は内面世界の新しい自分へと変身を遂げた。人の体は心によって形作られていると、誰かが言った。心の在り方が変われば、体もまたその心に即したものへと変わると。春は今まさに、杉村と言う男の女として相応しい、雌へとその身も心も成長(堕落)させたのだ。

 

「あ、あああ…………ッッ!!」

 

 春は喉から嗚咽を漏らすと、立ち上がり杉村へと抱き着いた。まるで長らく離れ離れになっていた恋人のように、許しを乞う罪人のように、春は彼の胸元に顔を埋めて泣きながら謝罪の言葉を口にした。

 

「ごめんなさい、杉村さん!本当にごめんなさい! わた、私、どうしてあなたへのこの気持ちを忘れるなんてこと……! 暁、あの男のせいでこんなにもたくさんの思い出と時間を奪われてしまうなんて……!!ごめんなさい、杉村さん! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!」

 

 顔を上げて愛しの男の目を見上げた春はしかし、彼の瞳に彼女を許そうという慈悲も愛情も見ることは叶わなかった。代わりにそこにあったのは、粘着くようないやらしい笑みで、春は自身のお尻に杉村の手が回り、馴れ馴れしく揉みしだかれているのが分かった。

 だが、春にとってはそんな些細な事は気にならない。いや、好きな人に触って貰えると言うなら、むしろ幸福でさえあった。

 

「本当に悪いと思っているのなら……行動で示してみろ」

 

 その言葉に春は途方もないほどの喜びを感じ、婚約者への深い愛情を瞳に輝かせると、何度も興奮し頷いた。

 

「は、はい!もちろんです! すこし……すこし準備させて!」

 

 杉村が春を離すと、生まれたままの姿の彼女は自身の部屋のウォークインクローゼットに駆け込み、すぐに扉を閉めて外からは見えなくなってしまう。

 その間杉村は春が普段寝ているベットの上に腰掛けると、そこに広げられていた彼女の衣類、その中でもブラやショーツと言った下着類を手に取った。

 

 黒や赤と言った上品だったり刺激的だったりする大人な下着を手で転がし、これを春が着ていた姿を想像して悦に浸かる。

 白や水色のいかにもお嬢様らしい、春がよく履いていそうな下着なら、鼻元へと持ってきてその残り香を嗅ごうとする。

 

 気持ちの悪い男その物の行動を行う杉村だが、そんな彼の行動を咎める者も、また見て気分を害する人間もここにはいない。

 そして杉村が六枚目のショーツに舌を這わせようとした時、ようやく春がクローゼットから戻って来た。そしてその春の姿を見た時、杉村は思わず感嘆のため息を漏らしてしまった。

 

「どうですか……杉村さん……♡」

 

 春は顔を恥ずかしさに赤らめながらも杉村の前に止まると、蠱惑的で男の劣情を煽るようなポーズをいくつも披露した。彼女が着て来た黒の可愛らしいナイトガウンは、昔買った物なのだろうか、今の春には少し……いやかなり小さすぎた。

 それでも破れないギリギリを保っているが、彼女の豊満な胸のせいで上半身を隠すという役割を果たしながらも、服の丈が上がったことで、その魅力的なお尻と蜜壺が隠されることなく杉村の前に晒されている。

 

 そんな服装も相まって、今の春はまさしく男を誘惑するハーロットそのものだ。その上、春はふっくらとした唇をナイトガウンと同じ黒色の口紅で覆い、その口紅が際立つような妖艶な笑みを杉村に浮かべると、その手に持った彼女自身のスマートフォンをかざし、杉村に確認を取るかのようにその瞳を瞬かせた。

 

 杉村は彼女が何をしようとしているのかは分からない。だが彼女が、その許可を自分に求めて来たと言う事実に機嫌が良くなる。主人にきちんと伺いを立てるのが良い妻、そして良いペットと言うものだ。

 邪悪な笑みを顔に張り付けながら頷くと、春はこれから悪戯をしようとする子供のような笑みを見せ、連絡先を開くと、杉村の座るベットの隣に腰を下ろしながらその一番上に設定された相手…………暁の連絡先を押して携帯を耳に当てた。

 

『もしもし、春。どうかしたのかい?』

「ええ、暁くん。残念だけど、悪い知らせがあるの」

『え? 何かあったのか?』

 

 電話に出たかつて自身が好きにさせられていた暁からの質問に答える前に、春は愛しの婚約者の膝の上に向かい合うように乗っかると。

 

「ふふ、ごめんなさい、ちょっと待っててね…………あむっ♡ ちゅううっ……じゅるる♡♡」

 

 手に持ったままのスマホを音声がギリギリ届かない程度に口元から離し、そのまま上体を前に倒すと、将来の夫となる本当に好きだった男へと情熱的なキスを捧げたのだ。

 

「んくっ、ちゅぱ♡ はぁ--っ♡ んんっ……!」

 

 お互いの舌を絡ませる熱烈なディープキス。ちゅぱ、ちゅぱとわざとらしく絡み合う唾液音を迸らせ、ふくよかに育った双丘を相手の胸にむにゅううと潰れるほどに押し当てる。

 

「んんぅ♡ すぎ、むらさん♡ 激しくて……キス、ふむぅ♡ 上手、です……っっ♡♡」

 

 興奮した鼻息と粘着音、そしてお互いの衣服が擦れ合う摩擦音。そこにあるのは原初的な男女の交じり合いだ。肉欲と性欲に支配された雄と雌の前戯。

 春の持つ携帯から『どうしたんだ春? 大丈夫か?』と心配する声が聞こえるが、それを気にする人間はこの場に一人としていない。

 

「んんっ……ぷはぁ♡」

 

 ようやくキスが終わった時、体を引いた春の唇からは大量の唾液が橋となって杉村の唇と繋がり合っていて、それがまるで両者の想い合う心を形にしたようで春の心をより熱く湧き立たせていく。

 そしてその繋がり合った唾液橋を手に取ると、それを口元に持ってきてそのまま「はむっ♡」と咀嚼してしまう。その姿に性欲を刺激される杉村の前で雅に微笑んだ春は、わざと口をくちゅくちゅと動かして、その卑猥な行動をより強く淫猥に見せつける。

 

「…………っんく♡」

 

 そしてこくりと可愛らしく喉を鳴らして飲み込んだド級の淫乱変態美少女は、彼にウインクをすると、その剥き出しになっている下半身を彼の固い雄の象徴へと擦り付けた。

 

「好きにして、ダーリン♡」

 

 その猫撫で声は明らかに杉村の望みを意識してのものであり、そして杉村の方も、たとえ彼女の許可がなかったとしてもここまでされて自身の欲望を抑える気はさらさらなかった。

 

「ああ、言われなくとも!!」

「きゃっ♡」

 

 手を伸ばし、春の着るナイトガウンの襟元を掴むと、それを思い切り引き裂き、その下の女子高生のものとは思えない二つの双丘を剥き出しにする。巨大な二つの玉は解放された衝撃で大きく跳ね、杉村はまるで大好きなおもちゃを目前にした子供のようにすぐにその新しい自身のおもちゃを弄り始めた。

 そして自身の胸を欲望のまま弄る婚約者を愛おし気に見る春は、口から出そうになる喘ぎ声を抑えながら、引き立て役との電話を続けるのだ。

 

「ふぅ、ふぅ--♡ お、お待たせ。実は、んっ、今夜のデートの、んんっ、ことなんだ、けど……っ」

『あ、ああ……それがどうかしたのか?』

 

 春が電話先の相手を使って何をしようとしているのか……ここまで来れば杉村と言えど察っすることが出来た。だからこそ、その狙いをより面白くしてやろうと、杉村は自身の中で湧き立った邪悪な欲望を即座に行動に移さずにはいられなかった。

 

「それがね…………え?」

 

 突然自身の自慢のくびれた腰に手をやり、彼女の体を持ち上げた杉村の行動に、暁に悪魔のような微笑みを浮かべながら返事をしようとしていた春が疑問顔で固まる。

 

 そしてそんな彼女を、杉村は一切の躊躇もなく自身の太く勃起した肉棒の上に叩き落とした。

 

「ほっ----!?」

 

 自身の処女が一瞬で貫かれ、今まで大切に取っていた初めてをこんな方法で奪われた春は、あまりに一瞬の出来事に、間抜けな一言をこぼすしか出来なかった。

 

『春? 春、どうかしたのか?』

「あっ……ああ…………んああっ……!」

 

 そしてようやく自身の身に起きた事を体が実感してくると、春は驚きと処女膜が破られた痛みに目を見開き、しばらく放心した声を出すだけとなってしまう。

 

 愛する男に処女を捧げられた事は、確かに春にとって至極の幸福だ。だがそれが、こんなロマンもへったくれもないやり方で奪われるなんて、欠片も予想していなかったのだ。

 

 だが杉村はそんな彼女の様子に頓着することもなく、すぐに処女を失ったばかりのまだ未開発の膣内に何度も雄棒を叩きつけた。

 

「んああぁぁ! あっ、あっ、んんっ! す、すぎ……んむっ!?」

「シーー」

 

 固い肉の塊が自身の膣襞を抉り、子作り部屋を下から何度も押し上げる感覚に、春がまだ電話先が繋がっているままにも関わらず喘ぎ声を上げ、杉村の名前まで口走りそうになる。

 それを杉村は、春の口に親指を突っ込む事で無理やり押し留めた。日本トップクラスの企業の社長令嬢であり、ミスコン優勝も余裕で狙えそうなほどの美少女の口に自身の指を咥えさせるなんて、あまりに背徳的な行為。

 

 それをされた春は、本能で愛する男の体を傷つけないようにと言葉を飲み込み、まるでおしゃぶりを咥えさせられた赤ん坊のように静かにさせられたのだ。

 

 その従順な妻の姿に、杉村は心の底から満足した。これこそ、あるべき女の姿だと浅ましい男尊女卑の考えを満たしているのだ。

 そしてそのニヤついた笑みのまま、杉村は目線だけで春に命令した。彼女の持つ携帯を指して、『早く続けろ』と。

 

 その主人の命令を、春は肉棒に突かれる痛みと快楽に身を震わせながら頷いた。そしてその返事を確認した杉村が親指を口から引き抜いた後、春は必死に口から漏れる嬌声を我慢しながら心の底から憎い電話先の相手に喋りかけた。

 

「ご、ごめんね、ああっ、さっき届いた、あっ♡ 新しいマッサージ機を、んんっ、試してて、変な声、あくぅッ♡ はっ、はっ、変な声、出ちゃうの♡」

『そ、そうなのか? その、あまり電話でそういう声を出されると……いや、なんでもない!』

 

 この童貞め、と春は内心で暁を罵倒した。今の声のトーンからして、私の艶声を聞いて短小を勃起させでもしているのだろう。それで私に変な声を出さないように指摘しようとして、でも女の子にそんなこと言うの恥ずかしく取りやめたと言ったところね。

 本当、なんて気色悪くて、男気がなくて、惨めで、不快で、ウザいゴミクズなのかしら。

 

「あ、ああ♡ そ、それと、さっきの、ぉおお♡ は、話なんだけどね……っ♡ 今日は、で、デートに、んんっ、行けなく、あっ、なっちゃった、の♡」

『行けない?どうして……何かあったのか? 大丈夫なのか?』

 

 暁の落胆する声とこちらを心配するような声が耳に届きながらも、春の関心のほとんどは自身の下半身を激しく突き刺す杉村の肉棒にしかなかった。

 春はなんとか自分からも腰を振って杉村を気持ちよくさせようとしたが、事の主導権は完全に彼女の愛しのフィアンセが握っている。春は杉村の上に乗っていながらも、ただ彼の好きなように体を上下に跳ね上げられ、どんどんエスカレートし速度の上がっていくピストンにただ身を任せるしかないオナホールになっていた。

 

「だ、だい、んいいぃぃ♡♡ っ、ッッ♡♡ だい、大丈夫♡ 問題ないわ。ごめんね暁くん。でも 、ふぅっ♡ ふぅっっ♡ 今夜はどうしても、ダメなの」

『あ、ああ……わかったよ。それじゃ、何時なら大丈夫かな?』

 

 春はそんな彼の言葉に思わずその場で笑い転げそうになった。ああ、なんて愚かで馬鹿な男なんだろう。杉村さんと比べるのも烏滸がましい、クズらしい鈍感さだ。春は心の中でそうかつて確かに好きだったはずの少年を嘲笑しながらも、ここで会話を打ち切るよりも、続けた方が面白いと、なによりも愛した男を喜ばせられるという事を分かっていた。

 

 事実、夫たる杉村は下から彼女の膣内の奥深くにまで何度も巨根を突き上げながらも、自身の雌と負け犬の会話に気分を良くしているのだから。

 そんな彼の表情は、暁を騙して杉村のご機嫌を取りたいと考えていた春をさらに興奮させるのには十分なもので、彼女の頭の中には偉大な雄であり、次期オクムラフーズの社長になる杉村さんから、彼の所有物である私を愚かにも奪い取ろうとした塵をどんな風に侮辱し、傷つけてやろうかという考えが広がっていった。

 

「あん♡ あぁ、えぇっと、知っての通り、私のお父様が死んでイィッ、まった、からぁ♡ 色々とぉ、んぃぃ、すご♡ っく忙しくなりそう、なの。君との、デートよりもおぉ♡ 大事なことがあるからぁ、ああぁっ♡ お相手しなくちゃ、いけないことが。だから、自由な時間が何時、はぁあ♡ できるか、わからな、いイぃのぉぉ♡!!」

『は、春?どうしたんだ、本当に何かあったんじゃないのか?』

 

 なんとか漏れ出る声を我慢しようとしたが、杉村はそれを許さないとばかりにさらに激しく責め立てたことで、春はすでに限界だった。だが春は声を隠そうとしてるのに、それを邪魔する杉村ではなく、それに気づいた暁に激しい怒りを抱いていた。自身の神経の全ては夫を喜ばせるためだけに注がれているのに、どうしてお前のような愚図に気を使わなきゃならないんだと春の心がさらに暁に対する憎悪に燃え、携帯に向かって怒鳴り上げた。

 

「そんなわけないでしょ!何、あなたは……ああ、そういうこと。私のこと信じてないのね! デートを断られたからって、変な被害妄想しないでよね!!」

 

 春がかつて好いていた相手を怒鳴り散らす姿を、杉村は邪悪な笑みで見つめながら、春の怒ったことできつく引き締まった膣内の感触と、胸に這わせた指から感じる弾力を堪能する。そして春もまた、そんな最愛の夫に微笑むと、彼が自身の行動に喜んでいるのを感じて、心が温かく、幸せに包まれながら自身の子宮口とキスをする彼の亀頭に打ち震えた。

 

『え、そんなつもりは……ご、ごめん春。もちろん君を信じてる。だって俺は君が―――』

 

 最後まで電話先の塵が雑音を言い切る前に、春は電話を切った。そしてそのまま何の感慨もなく、完全に興味を無くしたスマホを横に投げ捨てる。

 

 スッキリした笑みを浮かべた春は、そのまま杉村の顔にキスをし、彼の顔が彼女の口紅の色で埋まるのではないかと言うほどのキスの雨を降らせる。そして我慢に我慢を重ねた快楽の嬌声を放出した。

 

「あああぁぁあ゛あああ----ッッ♡♡♡♡!!!」

 

 最早これ以上耐えることが出来なくなっていた春は、肉棒を強く締め付けて絶頂し、そしてその波が収まらない内にまた絶頂し、さらにまたと、何度も何度も。初めて会った時から愛していた、赤い糸で結ばれた運命の人とようやく一つになれたのだと言う幸せに全身を満たされながら、激しくイキ狂い続ける。

 

「教えてくれないか……君が俺のことを心の底からどう思っているのか、もう一度口に出してしっかりと宣言してくれ」

 

 春は今も杉村の雄の上でオーガニズムを感じ、脳が焼き切れるのではないかと思うほどの快楽の渦に、本来なら言葉を紡ぐことなど到底無理な状態であった。

 だがそれでもなお、春にとってのご主人様であり、神様であり、将来を永遠に共に歩みたいと願う愛する夫が命令したのだから、限界を超えて、春は必死に自身の意識を繋ぎ合わせる。そして目の前の旦那様と目を合わせ、春はゆっくりと、一字一句はっきりと刻むように喋り出すのだ。

 

「愛しでまず、杉村さん……♡!! ィイッ、こ、この世の、誰よりもぉ♡ あぁあ♡ 固くて、すごいぃ♡ 杉村さんの、私のマンコを。おぐぅ♡ おぎゅまで支配してる、オチンポ、好きですぅ……ッッ♡ 初めてだったのに……こんなにぴったり、ハマるなんて……♡ ぉぉおっ、んぁあああっ……♡ 私たち、本当に相性最高の、夫婦、なんですね♡ 嬉しい……んんっ♡!! 嬉しいです、あなたぁ♡♡!!」

 

 貞淑で、お嬢様と言う言葉がこれ以上となく似合う奥村 春が乱れに乱れながら、卑猥な言葉まで活用して夫である杉村への愛の言葉を叫んでいる。自身が杉村の妻になれたこと、彼の家系図に組み込まれる一人になったこと、彼の子種を卵子に着床させて愛の結晶たる子供、杉村二世とも言える我が子を産むことが出来ること。

 その全てに春は感謝し、歓喜し、来たる幸福な未来を与えてくれる杉村に無限の愛と尊敬を捧げるのだ。

 

「へぇ、それじゃ……あのクズ(暁)についてはどう思う?」

「…………っ!!」

 

 自身が物にした女の、一周して滑稽にさえ映る愛の告白を堪能した杉村は、次いで彼の優越感を満足させるためだけの質問を春に投げかけた。

 それを受け取った春は幸せいっぱいの顔を一転、目尻を吊り上げ、眉間に皺を寄せ、その美しい美貌を般若の如き怒りの形相へと変えてみせた。

 

「―――あの私の心を盗み取った害虫…………ッ!! そんなの、憎くてしかたないわ。百回殺しても飽き足らないほどに!」

 

 それは呪詛だけで相手を呪い殺せるのではと思うほどの憎悪、殺意。心優しい春が人生で一度として他人に抱いとことのない強いマイナスの感情を、彼女はかつて本当に好きだった相手へと向けるのだ。

 

「あなたが私をあの悪党から救ってくれて、この愛を取り戻す事ができたことを、あいつに見せつけてやりながら、無惨に殺してやりたいわ。私たちに、私の最愛の人を苦しめた罪を味わいながら、地獄で永遠に苦しめばいいのよ!」

 

 春は憎しみの言葉を口にしながら、その内心であの男が杉村さんの前に惨めに這いつくばっている姿を思い浮かべて、せせら笑った。

 

 誰にでも優しかった奥村 春はもういない。いや、元の優しさ自体はまだ確かに彼女に残っている。ただその優しさの優先順位が杉村さんを幸せにすることよりも遥か下に置かれただけ。

 

 困っている老人がいたら喜んで助けるだろう。ガーデンが近くにあれば、以前のように喜んで花を育てるだろう。

 ただそこに杉村が関われば、何よりも彼を優先してしまうのだ。なぜなら春にとって、彼はそれほどまでに愛おしい、運命の王子様なのだから。

 

「杉村さん、愛してます! 私を救ってくれて、あなたは本当の王子様よ! 心の底から、生涯を……ううん、何度生まれ変わっても貴方を愛し続けると誓うわ!」

 

 その永遠の愛を誓う宣言に、杉村は過去最高の笑みを浮かべて答えた。

 

「素晴らしい。それじゃ、僕たちの結婚式が予定通り行われることを役員会に知らせるんだ。そして、結婚したら、君の所有する全ての権利をそれを持つに相応しい夫に譲り渡すんだ。当然だよな?なぁ、杉村 春」

「〜〜〜〜っ♡♡!!」

 

 杉村からのそのプロポーズの言葉に、春は絶頂の波に激しく明滅する瞳から歓喜の涙を流した。それはいつものように非常で、女を男の道具として見下した物言いだったが、春にとっては欠片も気にならないどころか、むしろ当然のことだと感じていた。杉村のような偉大な男に股を振り、雄を喜ばせることしかできない女が同列のはずがないのだから。

 春にとって、今自身を犯している男の全てが愛おしく、特にそこらの彼の魅力も理解できないような雌たちが嫌うその傲慢さや残酷な面が輝いて見えるほどに美しく映るのだ。

 

「はいっ……はい、はい!!もちろんです! ああ、杉村さん♡ 私もあなたを愛してます♡ 死ぬまで……いいえ死んでもこの想いは変わらないわ!!」

 

 再び二人が唇を重ね合わせ、情熱的でお互いの愛を相手に刻むようなキスをすると共に、杉村は春の膣奥に自身の溜まりに溜まった欲望を解放した。

 

「んんぁぁあ♡♡ お腹が、杉村さんので満たされてる♡♡ 私の子宮、杉村さんの赤ちゃんの素でいっぱい…………ッ♡♡」

 

 自身の下腹部に感じる熱いモノを感じた瞬間、春は杉村の胸に顔を埋めながらうめき声を上げ、その欲情的で蠱惑的な体をピアノ線の如くピンと張り詰めさせた。

 

 子宮の中に注がれる愛した人の子種を感じながら、真っ白に染まる意識の中で春は、大きくなったお腹を撫でながら、人々を支配する偉大なる王となった夫の隣に跪く自分の姿を幻視した。そして、その前に無様に絶望して倒れ伏す暁(ゴミ)の姿を。

 

 そして最後の一滴まで健康的な母体となる春の膣に出し切った杉村は、脱力した彼女と共に服が散乱したベットに倒れこんだ。春が暁のために準備していたデート服や小物類が、まるで春の怪盗団としての日々を汚すように、男女の精液や愛液、汗を吸って汚れていく。

 

 だがそんな事を気にする者はもう誰もおらず、二人は至福のため息を漏らし合いながら、しばらくそのまま横になってお互いの体を抱きしめながら体を休めていた。

 

「んっ……杉村さん……♡」

 

 春は自身の胸を杉村の胸と重ね、彼の首元に自身の頭をまるで猫がじゃれつく様に摺り寄せながら甘い声を上げ、杉村もまたしばらくの間、そんな春のカールした綺麗な茶髪の髪に指を通し、恋人同士の甘い蜜月を堪能する。そしてようやく絶頂の余韻が引いてきた頃合いで、杉村がその口を開いた。

 

「俺はお前一人だけで満足するつもりはない。お前にはこれから暁に媚び諂う馬鹿な女たちを身も心も犯し、一人残らず奪うための手伝いをしてもらう。あいつの周りにいる女全てを俺の物にし、あいつが自分がどれだけ矮小で惨めな存在か気づくまでな」

 

 これから結婚し、夫になる男が他の女性を犯すことを考えていても、春はそれを不思議なことだとは思わなかった。春はただ微笑み、彼の胸の上で頷いてその考えを賞賛するだけ。

 英雄、色を好むと言うし、杉村のような完璧で英雄と呼ぶに相応しい男が、自身を愛し、崇拝し、満足させる女性を何人も求めるのは当然のことだ。彼の婚約者となり、彼の最初の雌奴隷になれた。春はそれだけで満足だった。

 

 そして、言うまでもなく杉村の語った暁の周りの女全てを奪い、彼を一人ぼっちの負け犬にするというアイディアは春の心を幸福に満たす素敵な考えであった。

 

 友人や恋人と呼んでいた人たちに見捨てられ、無様に取り乱して絶望する少年の姿を想像するだけで、思わずイってしまうほど春は興奮する。知らず邪悪な笑みを唇に浮かべた春は、溢れんばかりの愛の籠った眼差しで杉村の瞳を見上げると、ゆっくりとその唇から声を発した。

 

「はい……楽しみです、旦那様♡」

 

 その呼び方に、杉村は目を見開くと、彼の股間のペニスが一瞬にして再び固くなる。そして、胸の上に寄り添うように寝ていた春を巻き込んで、杉村は彼女が下に、自身が上になるようにひっくり返った。

 

「きゃっ♡」

 

 突然のことに軽い悲鳴を上げた春も、すぐに杉村の意図を察して(誘ったのは自分だが)彼に身を任せる。

 

 そしてその後、二人は何時間もの間交わり続け、杉村はあらゆる体位で彼女を犯し、その男を魅了してやまない体の内も外も自身の精液で染め上げて行った。

 

 春は本当に、恋に堕ちていた。彼女の子宮に何度目かもわからない膣内出しをしながら、杉村はあの死にゆく神から貰ったこの力で次に何をしようか考える。

 

 まずは春の夫となったことを正式に発表し、オクムラフーズを継ぐ。それか……いや、自分にはまだ暁とその仲間たちが改心を仕返してくる可能性が残っている。

 もし今春との婚約を発表すれば、残りの怪盗団全員を相手にすることになる。だから発表するならまず、怪盗団の過半数から春の結婚の賛成を得なければならない。そのためにも、暁のリーダーとしての立場を奪い、怪盗団内の春にも劣らない美しい女たちを彼の敵にしてしまえば……たとえ自分が世界を統べる王になると宣言しても、あいつはただ絶望し、指を咥えて眺めることしかできないだろう。

 

 最も、この時すでに暁たちは怪盗団としての力を失い、たとえ気づいても春を改心させるのは不可能に近いのだったが、その事を杉村は知らなかった。

 

(そうだ……まずは怪盗団を解散させる。そして奴の女を一人ずつ俺の物としてから、オクムラフーズのトップとしての地位を手に入れる。最後には仲間を皆失った奴の前で、俺の子を孕んだ俺の女たちを見せつけてやる)

 

  邪悪な考えを巡らせる杉村の頭の中では、かつて春を迎えに行った際に目にした幾人かの美少女たちの痴態が浮かんでいた。

 

 金髪碧眼のモデルのような体型をした彼女にバニーガール姿で奉仕プレイをさせる。

 茶髪の真面目な委員長のような雰囲気を持っていた女にミニスカ秘書服を着せてセクハラ接待をやらせよう。

 オレンジ髪の小柄な眼鏡少女に首輪を繋いで犬のように飼ってやろう。

 

 他にもあいつに連なる魅力的な女は全て、全て----

 

 そんな杉村の下で、何度目ともなる膣中出しを受ける彼の最初の妻となった杉村 春は、いずれ自身の横に並ぶ友人たちの幸せな顔を思って、一度の眠りに着くのだった。

 

 

 

 

 

 




 ここまでお読みいただきありがとうございます。

 ペルソナ5のエロは基本杏ちゃんか、真の二人が多い気がする。そして竿役は圧倒的に鴨志田が多くて他のパレス持ちはたまにあるかないかなの、鴨志田のキャラの癖を物語っているというか、ペルソナ5原作がそういうバッドエンドを想像しやすすぎるというか。
 春は主要メンバーの中では一番最後に仲間になる関係上、掘り下げや出番が少なかったけど、続編や外伝で色々掘り下げられて好きになりました。スクランブルの北海道編の春好き。

100話達成記念で見たい陵辱系の後日談はどれ?

  • オクトパストラベラー
  • 月が導く異世界道中
  • 龍が如く
  • イリスのアトリエ
  • ジョジョの奇妙な冒険
  • 異世界はスマートフォンと共に。
  • 銀魂
  • 仮面ライダーシリーズ
  • デビルメイクライ
  • ペルソナシリーズ
  • 聖女の魔力は万能です
  • Fate/Samurai Remnant
  • 百錬の覇王と聖約の戦乙女
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