※この作品はR-18です。

マイナーキャラ妄想短編集   作:ニンニク嫌い

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 アイアンマン一作目のWhat if?
 もしオバディアがスターク社の社長の座だけでなく、その秘書も狙っていたら?


アメコミ&ハリポタ作品
アイアンマン(ペッパー)


 

 

 

「会社の僕のオフィスから、メインコンピューターにアクセスし出荷記録を盗んでくれ。ロックチップだ、これで入り込める」

 

ペッパーはトニーから与えられた使命を思い出していた。慣れしたんだスターク社の、さらにどこよりも慣れしたんだトニーのオフィスへ行く事に、こんなに緊張する時が来るとは想像していなかった。

初めて秘書として雇われて訪れた時にも、ここまで心拍数が上がることはなかったのではないか?

それは自分と彼の未来が、この先の自分の行動にかかっているからなのかもしれない。

 

誰もいない事を確認して、ペッパーはトニーのオフィスへと最小限の動作で扉を開けて侵入する。まるで子供の頃に見たスパイ映画みたいねとペッパーは心の中で自嘲した。

だがすぐに、今の自分がやらなければならない大切な仕事の重要性を思い出し、身を引き締める。

 

オフィスはその広さに反して調度品の数は少ない。特に仕事用のデスクの前は何も置いておらず、それがこの部屋の広さをより誇張しているように感じる。

最も、いつもはこのスペースでトニーがお誘いした女性記者や社員と共にミニゴルフに興じているため、なぜこんなに広いのかを知る身としては複雑である。

 

とにかく、目的のパソコンは仕事用デスクの上に置かれている。ペッパーは特注で何百万もして作られたオフィスチェアに腰掛け、ノートパソコンの電源をオンにする。

一秒と経たずログイン画面を表示した画面に、ペッパーは早速トニーから貰ったロックチップをUBS端末に接続した。

 

【不正アクセス】と表示された画面に一瞬ドキリとしたペッパーだが、すぐに画面上部で大量の数列が行き交い、何らかのアルゴリズムとファイアウォールの戦いらしきものが行われ、数秒と経たずに【アクセス許可】と表示された事で、改めてトニーの才能のすごさを実感した。

 

どんなハッカーも彼には形無しね。

そう心の中で賞賛しながら、ペッパーは開かれた会社の極秘情報ばかりが並ぶファイルの山から目的の物を探し出す。

 

「ゴーストファイル」

 

そこに保存されていた物は、一つでも世に出ればスターク社の株価を一瞬にして地に落とすほどの不正と犯罪の証拠だった。

裏マーケットへの武器の出荷記録、セクター16、そして極めつけは、オバディア個人宛てに送られてきたトニー・スターク暗殺依頼についてのビデオメッセージ。

 

「嘘でしょ、まずいわ」

 

思わず口から漏れた言葉は、ペッパーの驚愕と不安を雄弁に物語っていた。彼女のマウスを握る指先は、その恐ろしい裏切りの証拠を前に、即座に自分がすべき事を見つけ出した。保存されているデータ、その中でもオバディアに宛てられたビデオレターとオバディアの名前が記載された契約書、それら全てをピックアップしてそれをコピーし――――――

 

「デリート」

 

ペッパーの手は、何の澱みも、戸惑いもなく、オバディアの非常な犯罪の証拠全てを、塵ゴミを捨てるように闇に葬った。

 

「……はぁ」

 

ペッパーの口からため息がこぼれ落ちる。だがそれは、先ほどのように驚きや不安が混じったものではない。まして、トニーから頼まれた不正の証拠を消してしまった事への後悔によるものでもない。

そこには、深い安堵が込められていた。

自分と彼の未来を守る事が出来たという安堵だ。

 

「やあ、ペッパー。どうかしたのかな?」

 

誰も居なかったオフィスに、ペッパー以外の声が響いた。

扉の前に、男がいた。大柄な体格に、スキンヘッドの頭が特徴的な、スターク社の№2。いや、今ではスターク社の実権のほぼすべてを握った男。

その声を聞いた瞬間、ペッパーの心臓は跳ね上がった。思わず席から立ち上がり、そして次いで、その男へと歩を進めた。。

 

なぜなら、その男は――

ペッパーの心臓を幸せでときめかせてくれるその男は――――

 

「オビー!!」

 

自分が誰よりも愛し、慕う彼、オバディア・ステインなのだから。

 

トニーのオフィスの中心で、ペッパーとオバディアはその唇を重ね合わせた。

 

 

 

 

「それで、何か問題でも? ペッパー」

 

「んっ、それが、ちゅ、トニーが、あなたの不正の証拠を、はむ、じゅじゅ、掴んで来るようにと、あっ、頼んで……」

 

オバディアからの質問に答えるペッパーだが、その唇は彼の唇を啄むことを止めようとしない。それはトニーを裏切る事よりも、オバディアとの交わいの方が遥かに重要な事だと、ペッパーの中で確たる順位付けがされているからだ。

だが、その情熱的で背徳的な行動もオバディアの真剣な顔つきに一時中断を余儀なくされる。

 

「なんだと? トニーめ、ここまで強引な手段を取ってくるとは……」

 

「大丈夫、証拠のデータは消したわ。もちろん消しても大して支障がないものだけ。トニーには別の改ざんした情報を渡すつもりよ」

 

「そうか、ありがとうペッパー。やはり君は頼りになるよ」

 

「……ん、どういたしましてオビー」

 

頬を撫でるオバディアの指先の感触に、ペッパーの心は充足に満たされて行く。トニーといたどんな時よりも比べ物にならないほどの女の幸せを、全身で感じていた。胸が高鳴り、乙女のように顔を赤く染め、ショーツがオバディアへの愛情で湿気を含み始める。

 

ペッパーがオバディアとこのような関係になったのは、三か月前、トニーがテン・リングスを名乗るテロリストに誘拐されてすぐの事であった。

慕っていた上司がテロリストの攻撃に合い、生死不明の状態。その凶報に取り乱し、酷く衰弱したペッパーの心へとオバディアはまるであらかじめ計画していたかのように入り込んできた。

トニーの無事を祈るためと、お互いの不安を和らげるためと誘われたオバディアとの食事で、ペッパーは原因不明の興奮を覚え、そしてその激しい欲望の求めるままにオバディアと体を重ねたのだ。

 

今思うと、明らかにオバディアが何らかの薬を食事に盛ったのだろうが、当時のペッパーにはそんな考えは頭に過ぎりさえしなかった。

裸でオバディアのベッドの上で目を覚ましたペッパーは、激しい後悔と羞恥であくまでも心が弱っていたが故の一夜の過ちとして、心の整理をつけようとした。オバディアにもそう頼み、お互いに何も無かったものとして片付けようとした。

 

だが、そんな誤魔化しは他なるペッパー自身によって打ち破られた。スターク社でふとオバディアを見かける度に、あの夜のオバディアのたくましい体と、彼の巨大な肉棒、それに突かれる自分自身を思い出してしまうのだ。

オバディアに肩を触れられた時など、会社どころか私生活でさえ一度も出したことのないような甘い声を出してしまい、周りに不審がられたほどだ。

 

トニーの失踪から一週間も経ってないのに。

自分の身に起こった情けない状況に、ペッパーは人生で一番の自己嫌悪に陥ったほどに自分を恥じていた。だからこそ、二度目のオバディアとの食事に誘われた時、ペッパーは完全に自分の迷いを断ち切るために承諾したのだ。

 

結果は、言わずもがな。前回以上の激しい夜を過ごしたペッパーは、オバディアの言葉もあり彼との関係を一時的なものとして受け入れた。トニーのいない消失感を埋めるための傷のなめ合い。そんな言い訳を作って。

 

ペッパーは自分がそんなに弱い女だったことを受け入れ難かったが、オバディアとの相瀬を繰り返す内に自分がもっと罪深い女だったことを教え込まれた。つまり、雄に屈服されることに喜びを感じてしまう雌だという事。

オバディアに組み伏せられる度に、体が感じたことのないほどの快感で埋め尽くされた。彼の肉棒を咥えている時は、自分が絶対敵わない存在に支配されている気分を覚えさせられた。

そして、オバディアに愛を囁かれた時、トニーの時とは比べ物にならないほどの嬉しさを感じた。

それが明らかにオバディアによって都合が良すぎる事に、ペッパーは手遅れになる瞬間まで気づくことなく、彼への依存心に溺れて行った。

 

いつしか、仕事にまでオバディアとの秘密の関係を持ち込むようになってしまう。いつもは仕事終わりにオバディアの自宅でしかやらなかった事を、会社の中でもするようになっていた。

最初はオバディアのお願いで軽いものだった。それこそ、誰も見ていない、二人きりの時にお互いの愛称で呼び合う程度。

公私を分けるタイプのペッパーでも、それくらいならと了承したが、そのお願いの内容が少しずつヒートアップしていった。

 

誰も見ていない場での触れ合う程度のキス。お尻を触るなどのセクハラ。服を軽く脱いで今日着けて来た下着を見せる。性器への直接での愛撫。今日身に着ける下着の指定、もしくは着用禁止。バイブで乳首や膣を刺激したままの仕事。極めつけは会社内での本番行為。

 

どれも異常だ。少なくともまともな状態のペッパーが聞けばにべもなく断っていただろう。

だが少しずつ段階を踏んで、また夜のベッドで説得されることで、この程度の事ならオビーだから許してしまおうと都合の良い思考回路に躾けられたことで、仕事場での淫行への嫌悪感が薄くなってしまった。

 

むしろ好き合う者同士なら別に悪い事ではないのではと、何時の間にかペッパーの中でオバディアの存在が、心を慰め合うためのただのセックスフレンドから恋人へと変わってしまっていた。

 

そしてこの段階ですでに、ペッパーにとってオバディアとの関係は一時的なものではなくなっていた。それこそ、出来ればこのまま永遠に続けていたいと願ってしまうほどに、ペッパーはオバディアを生涯のパートナーとして受け入れてしまっていた。

 

「だが、こうなってはトニー・スタークの存在は我々にとっては最早邪魔でしかない。早急に、彼を消さなくてはな」

 

至福の時間に浸かっていたペッパーの心が、オバディアのそんな冷淡な声で現実に引き戻される。そしてその口から出た恐ろしい内容に、ペッパーの瞼は大きく見開かれた。

 

「……! それって、トニーを殺すって事……?」

 

誘拐から生還して以来、トニーは以前とは180度違う考え方を提唱し、スターク社での信頼を失っているとは言え、その世界的な影響力は絶大だ。それを殺すとなると、すでに一度失敗している手前、そう易々とは行かないだろう。まして今の彼には、あのアイアンマンまであるのだから。

 

「ああ、だが何も無策と言う訳ではない。しっかりと事故に見せかけて殺す案は出来ている。だがそのためには、ペッパー。君の助けが必要なんだ」

 

その言葉に、ペッパーの心胆が凍えるような寒気を覚えた。まるで悪魔の囁き、手を取れば二度と後戻りのできない深い沼の中へと飲み込まれるような、そんな幻惑が頭の中に浮かぶほどの邪悪な魅力がその声色には含まれていた。

 

「トニー・スタークを今夜、殺害する。そのための重要な役割を担ってくれるね、ペッパー?」

 

吸い込まれる。引き寄せられる。オバディアの言葉の一つ一つが、ペッパーの耳の穴を通り、脳に直接響き渡らせているような感覚。

ペッパーの頭の中で、いくつものスターク社に入社してからの日々が浮かんでは消える。トニー・スタークと出会い、彼の秘書として働く自分。

次に浮かんだのは、今日に至るまでに自分の中で築き上げられた倫理感。一般的なアメリカ合衆国市民としての法律への認識と、犯罪への忌避感。

そして最後に、オバディアと過ごしたこの三か月間の日々が彼女の中を台風のようにかき乱す。

 

情欲、幸福、刺激、快感、愛情

 

答えは出た。

 

「もちろんよ、オビー。喜んで協力するわ」

 

そう答えたペッパーの表情は、今まで彼女が見せたどんな笑顔よりも晴れ渡っていた。そこに、トニーを殺す罪悪感も嫌悪感も一欠片も存在しなかった。

 

 

 

結局のところ、オバディアにとってこのペッパーへの選択はすでに過去の物だった。彼女はすでに一度、オバディアとトニーを天秤にかけ、オバディアを選んでいる。

 

トニーが計画通りテロリストによって消息不明となった後、オバディアはスターク社の乗っ取りと平行して、兼ねてより目をつけていたヴァージニア・ペッパー・ポッツを自身のものにする計画を進めた。

 

初めてトニーの側で働くペッパーを見た時、オバディアは不肖ながら一目惚れをした。その真の強そうな瞳に、生真面目という言葉を顔に張り付けたようなお堅い表情、しかしそれでいてその容姿は間違いなく美人と形容して差し支えないほどに整っていた。

手際よく秘書としての仕事をこなしていくペッパーは、有能と言う賛辞がこれ以上となく似合うほどに、いや正直秘書としての役職から鑑みればそれでも足りないほどに仕事の出来る女だった。

 

そんな女を、快楽に堕とし、仕事よりも股を開く事が好きな淫乱に変えたらどれだけ素敵だろうか。あの堅物な表情が、自分に会う度に娼婦のような表情を浮かべ、体を擦り付けてくる。

そんな想像をするだけで、オバディアは笑みを抑えることが出来なくなる。

なぜ、自分の元ではなく、トニーの秘書となったのか、人事部の人間に思わず八つ当たりをしてしまいたくなる。

 

だからこそ、ペッパーをこの機会に乗じて何としても物にするのだと、オバディアは決めていた。彼女を言葉巧みに誘ったレストランで食事に非合法に作られた強力な覚醒剤、その中でも性ホルモンを活発化させる部分を強めた物を混入させた。

効果は即座に、そしてオバディアにとって最上級に近い形で出た。誰が見ても発情していると分かるほどに体を火照らせたペッパーを自宅に連れ帰り、その長年夢見た裸体を隅々まで蹂躙した。

 

控えめな胸を揉みしだき、その先端の突起を甘噛みする。薬の成果で簡単に絶頂するようになっている彼女の膣を気絶するまで責め立てた。生真面目だった表情が自分の肉棒を見た瞬間に、トロンとした目に変わって吸い付く姿を何度も写真に収めた。彼女の膣に初めて挿入した時は、あまりの気持ち良さと達成感に、わずか数分でコンドームを一つ駄目にしたほどだ。結果十本近いコンドームを使い切るまで、ペッパーを犯す手を止める事は出来なかったが、最初の一回目としてはむしろ十分すぎたと言えるだろう。

 

その後は予想通りの反応をしてくるペッパーを笑いながら、次のプランへと移った。すでに彼女との性交中に、今回使った薬を希釈した物を自分の肉棒や体に塗り、それを彼女に舐めさせることで薬による興奮と自分とを彼女の中で無意識に紐づけさせている。

この薬、常習性はさほど高くはないが、しばらく体に余韻とも言うべきものが残り続ける。

 

それこそ、オバディアがただペッパーの近くを通り過ぎるだけで、彼女の中に燻る薬の余韻とオバディアが結びつき、勝手に彼女が興奮してしまうほど。つまり、薬の後遺症、それも数日と経たず抜ける物を、ペッパーは自分がオバディアに興奮していると勘違いさせられていたのだ。

 

そして二度目の食事で、同じ手法を使ってペッパーをお持ち帰りしたオバディアは、今度は徹底してペッパーの性観念を壊しにかかった。

徹底した雄を刻みつけるようなセックス。何度もペッパーに自分が誰に犯されているか、どのように犯されているかを認識させた。オバディアが許すまでイク事を禁じ、何度も絶頂を懇願させた。オバディアが休憩している間も肉棒への口淫を命令し、自分の立場と言う物を教え込ませた。

 

結果、ペッパーはオバディアのセックスフレンドになる事に同意した。彼女の人生観で一度として経験した事も、そしてその性格から良い印象を持っていなかったセックスするためだけの関係を自分から進んで選ばせた。

 

そうなれば、後は坂を転がり落ちるようにあっという間だった。

セックスをする度に、ペッパーの中での性への認識は覆り、オバディアへの好意と従属心が高まっていく。最初はレストランでの食事と言うワンクッションを挟んでいたのが、仕事終わりに直接オバディアの家に訪ねて来るようになる。

こちらがお願いすれば、どんな無茶なものだろうと渋々従うようになる。

 

特にペッパーが会社内でノーパン、ノーブラで、胸と膣内に電動式ローターを着けたまま仕事させることが出来るほど彼女の倫理観を崩した時は、笑いが止まらなかった。

 

だがその幸福な時間は、トニー生還の報と共に消えて行った。まさかテロリスト共の手から逃れて生き延びるとは欠片も思わなかったオバディアにとって、その知らせは彼のスターク社乗っ取り計画にとっても、ペッパー籠絡計画にとっても寝耳に水であった。

事実そのニュースを見たペッパーの瞳は、彼女がオバディアとの性活に溺れてからは久しく見なかったかつての正気の色が宿っていたからだ。

 

トニーを歓迎しに行く傍ら、オバディアは焦った。まず間違いなく今のペッパーとの関係を隠す事は不可能だ。彼女に口を噤むように言えば、その性格からある程度は協力してくれるだろうが、そうすれば今までのように継続して体を重ねる事は難しくなる。

むしろトニーの秘書としての仕事に復帰することで、以前のような強く毅然として性格に戻ってしまう可能性もなくはない。そもそも何よりも、オバディアにペッパーを手放すという選択肢はない。最早彼女は自分の女であるのだという強い支配欲が彼を苛んでいた。

 

事は早急に手を打たなくてはならない。

つまり、ペッパーを完全に自分側の人間にしなくてはならない。

 

そのために、オバディアはある賭けに出た。今日までのペッパーの堕ち具合を信頼して、彼はトニーの記者会見後にペッパーを呼び出した。

 

いつものオバディアの私室に当たり前のようにドレス姿で来たペッパーの目には、強い不安の色があった。それは、トニーが戻って来た事で自分とオバディアの関係が終わってしまうのではという怯えから来るもので、それに気づいたオバディアは今日の賭けが勝利に大きく傾いたのを感じた。

 

ペッパーはもう、トニーの無事を喜ぶ感情よりも自分との関係を大切にしているのだ。

オバディアが自身の完全な勝利のために挑んだ賭けの内容は単純。全てをペッパーに打ち明け、彼女がトニーを選ぶかオバディアを選ぶか決めさせる。

彼女の前に、トニーのアドレスが入った携帯とオバディアが用意した婚約指輪を並べて、選択させたのだ。

 

ペッパーの混乱は相当なものだった。彼女はオバディアが行った裏切りと言う言葉では済まない犯罪行為に、泣き叫び、オバディアを責め立てた。彼女は何度もオバディアを力のこもっていない手で叩き、頭を抱え、何度も携帯と婚約指輪の間で目を泳がせた。

そして一時間後、彼女は覚悟を決め、自分の選択を選び取った。

 

婚約指輪を薬指に嵌める事で。

 

この時に、かつてのヴァージニア・ペッパー・ポッツは死んだのだ。

誰よりも仕事に真面目で、良識と常識を合わせ持った彼女は、愛する人と快楽のためにあらゆる犯罪と裏切りを黙認する事を選んだ。

その夜、ペッパーは今までにないほどの乱れようをオバディアの肉棒の上で晒した。オバディアは勝利の余韻を感じながら、彼女の全てを貪り、その心までもを征服した。

 

そして今、ペッパーはついに殺人計画に加担するほどに、その心を邪悪に堕としてしまった。

 

「それにトニーがいなくなったら、もう何の気負いもなく、これを着けられる。でしょ?」

 

オバディアへの協力を了承したペッパーは、先ほどとは打って変わった甘い声で囁いた。腰元のポケットから取り出したのは、あの日の婚約指輪。彼女の運命を決定づけたそれを、ペッパーは宝物を扱うように愛し気に触っている。

 

その姿を見るだけでオバディアは満足感と興奮で充実していた。あのペッパーが、自分が渡した婚約指輪をこの世のどんな宝石よりも価値があると言う風に考えているのだ。愛した女のその姿を見て、喜ばない男などいないだろう。

 

「そうだな、これからは四六時中着けて、君が誰の物かをしっかり周りに証明しないとな」

 

「ふふ、なんだったらオビー専用とでも書いた首輪を着けてみる?」

 

それは良い案だ。彼女と結婚して世間に大々的に公表したらそんなプレイをしてみるのもありかもしれない。

オバディアの笑みが濃くなるのを見て、ペッパーは自分の冗談が予想以上に彼を刺激してしまった事を知った。

もっとも、もしオバディアに頼まれればペッパーは喜んで首輪を着けるだろうし、何なら犬の真似をして四つん這いで歩くことも受け入れるだろう。ペッパーはそれだけオバディアを愛しているのだから。

 

「もう、オビーったら」

 

ペッパーは微笑み、すっと自分の薬指に指輪をはめる。それだけで頬を染め、顔をよりほころばせる愛しい妻となる女性の姿に、オバディアの興奮が高まり、下半身に熱が籠っていく。

そしてそんな様子を、仕事も私生活も、セックスでも才能を発揮する、スターク社での憧れる女性№1に選ばれたペッパーが見逃すはずがない。

 

「ねぇ、その計画の前に今日の分、済ませておきましょう」

 

今日の分、それが何を意味するかは二人の間では明白だ。そしてペッパーの注がれた視線の先が、その内容を補足するように物語っている。ペッパーの体もすでに、自身をただの雄に支配される弱い雌に変えてくれる最強の槍の存在に限界が近かったのだ。

 

「いいとも、それじゃペッパー、いつものように足を開くといい」

 

ペッパーが後ろを振り向き、先ほどまで犯罪の証拠の隠蔽を行っていた机に片手を着けると、もう片方の手で黒のショートパンツをめくり上げた。

その下から出て来たのは、ペッパーを知る人間からは信じられないほど卑猥でエロティシズムを感じさせる下着だった。

黒のレースショーツ。それも生地が非常に薄く、本来ショーツで隠しているはずの下の肌色が透けて見えるほどで、むしろ履いてないよりも雄の情欲を煽る。だがそのショーツの持つ仕掛けはそれだけでなく、この下着、何と真ん中に意図的に穴が空いているのだ。つまり、女性器が丸見えなのだ。

それだけで、この下着がどういう目的を元に作られているかは一目瞭然で、それを身に着けているペッパーの意図もまた同様だろう。

ペッパーの綺麗なサーモンピンクに輝く割れ目が、自分を支配する男の到来を待ちわびてヒクヒクと震えている。その周りに生えた陰毛はすでに愛液で濡れ、高級なタイルの床にポタポタと情欲の跡を残していく。

 

一目で上流階級の人間のみが使っているとわかる上品なオフィスで、それに似合うスーツと品格を持った金髪の綺麗な女性が、浅ましく男にスカートをめくって尻を向けている様を、一体何と形容すればいいのか。

少なくともオバディアはこの光景を額縁に飾り、一生保管しておきたいと思うほどに好んでいた。

 

「ふふ、そんな破廉恥な下着を着けて、トニーに発情した雌の匂いを嗅ぎ取られたらどうするつもりだったんだ?」

 

「その心配はないわ。だって…………トニーの前で私が発情するわけないでしょ」

 

それは今までペッパーから聞いたどんな言葉よりもオバディアの心を震わせた。ペッパーにとって、トニー・スタークとオバディア・ステインを比べてオバディアの方が雄として勝っていることの証明であり、自分がトニーの大切な秘書の心を完全に彼から奪い去った事の勝利宣言だったからだ。

 

「いいだろう、記念すべき瞬間を前の前夜祭だ」

 

オバディアが自身のきっちり仕立て上げられたズボンを下ろし、その内側からすでに張り裂けんばかりに欲情する肉棒を取り出した。

 

「あぁ……!」

 

ペッパーの口から感嘆のため息がこぼれる。その瞳は自身の肩越しにオバディアのペニスを熱望し、彼女のお尻は無自覚に男を誘う魅力的な腰振りを行ってしまう。

 

オバディアのペニスの亀頭とペッパーの割れ目がキスをするかのように、触れ合う。ペッパーの膣はすでに、前戯など必要がないほど濡れて火照っている。オバディアの調教の賜物であり、ペッパーはもうオバディアの声音一つで絶頂が出来るような変態に変えられているのだ。

 

「愛してるよ、ペッパー」

 

「私も、愛して、あ゛あ゛ああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ペッパーの返答を待たずにオバディアは彼女の膣奥、子宮にまで届かんほどの勢いで突き刺した。衝撃にペッパーの足が一瞬宙に浮き、そして重力に引かれ戻ってくる勢いでペッパーの子宮口が成人男性よりも数段大きなオバディアのペニスの先端に突き刺された。

 

「あ゛ああぁ、オビー、オビー!! んん゛ん゛っ!! い゛いっ! 気持ちいいの!!」

 

「ははは、何度使っても飽きないマンコだ。もう私以外のモノじゃ感じられないだろうっな!!」

 

オバディアがペッパーの体を机に押し付けるようにバックから体重をかけて押し潰す。金髪の美しい白人女性の体は机を境にくの字に折れ曲がり、傍目から見れば強姦現場と言われても疑問を抱かないほどに激しく、荒々しい、女の事など欠片も考えていないような獣の如き交尾。

パンパンパンと、リズミカルに響く肌と肌がぶつかり合う音が、性器を貫かれる女の色に染まった喘ぎ声が、地面に垂れ落ちる淫臭を放つ蜜が、この男と女の生殖行為が子孫を産むためではなく、ただ快楽のみのそれである事を物語る。

 

「んんいいぃぃぃ!! いやぁぁ、あなた以外のチンポなんて、死んでも入れたくない!! オビーだけよ! 私のマンコは一生あなた専用なのよっ!!」

 

オバディアの自分の優越感を高めるためだけの軽口、しかしペッパーは一瞬でもオバディア以外に抱かれる未来を夢想でもしたのか、激しい拒否感を見せる。それが何とも可愛らしく、そしてその必死の懇願に期せずしてさらに優越感が高まっていく。

 

本当に、主人を喜ばせる才能のある女だ、ペッパー!!

 

「んぅぅぅ! お願い、刻みつけて!! 私、ペッパー・ポッツが、オビー以外の雄には興味のない女だって!! あなたのチンポでしかイケない変態女だって!!」

 

オバディアの腰使いがさらにテンポを増す。

こんな魅力的な女のお願いを聞かない男など男ではないだろう。そんな気概で文字通りペッパーを自分のチンポでしか達することのできない女へと作り替えようとする。

 

肉ひだを肉棒が擦り、カリ首が膣壁の敏感な部分を刺激する。ペッパーの膣内は三か月ですっかりオバディアの肉棒を喜ばせるための名器に変わり、それはペッパー側も同様であった。連日連夜の交わりは、彼女の膣壁の感じる部分を掘り起こした。肉棒の先端が当たる部分、出し入れする度に擦る部分を性感帯として発達させたのだ。

 

だからこそ、今のペッパーの膣は正真正銘オバディアのペニスで一番感じるように出来ているのだ。彼以上に長すぎでも短すぎてもダメ。オバディアのペニスこそがヴァージニア・ペッパー・ポッツに世界で一番適しているのだ。

 

「ああぁぁ……!!イクっ、イクの、オビー!! あなたのチンポが良すぎて、あぁぁ!! イッくぅぅぅぅぅぅ―――――――!!」

 

その事実を知ってか知らずか、ペッパーの体が大きく震え、激しい絶頂を迎える。彼女の口はその快感による幸福を少しでもオバディアに伝えようと淫らな言葉を吐き出し、その膣と肉棒の結合点から愛液を噴出する。

そして絶頂と共に彼女の膣が一気にきつく締め付けられ、その圧迫感に、オバディアもまた限界を悟った。

 

「私もイクぞ!! きっちりその子宮で受け止めろ!」

 

宣言と同時に、オバディアの亀頭から大量の精液がペッパーの膣内を満たし、子宮口へと侵入していく。臍下に広がる自身の体温とは別の熱に、絶頂したばかりで夢見心地だった彼女の意識をさらなる幸福で高めていく。

愛しい夫の子種を一つ足りとて無駄にはしないと、ペッパーの膣は蠕動運動を行って、全てを子宮に送り届けようと奮闘する。それがオバディアにとっても心地よい締め付けとなり、亀口に残る僅かな残滓もしっかりと放出していく。

 

そしてそんな男を喜ばせる雌としてパーフェクトなペッパーだが、彼女の足は最早自力で立つのも難しいのか、机から滑り落ちるのをオバディアの肉棒を支えに止めている状態となっていた。それがより、子宮口に直接精液を送り込めるベストな位置まで肉棒を進ませたのは、男の子孫を孕みたい彼女にとって幸運だろう。

 

オバディアがペッパーとのセックスに、コンドームを使わなくなったのは彼女に婚約指輪を捧げてからのつい最近である。だが一度体験してみれば、もう二度とゴムありでやっていた頃には戻れないと思うほどに、生での性行為は素晴らしかった。

何よりも中出しした後のペッパーの貪欲に子種を吸収しようとする膣の動きは、生でやっている時でしか体験できない快感だ。

ペッパーの意識的か無意識かでの行動かわからないが、この癖を知ってからは、オバディアは一切コンドームを着けていない。それは必然的に着床の可能性が高まっていることを示しているが、婚約指輪を渡し、ペッパーを自分の側に完全に引きずり込んだオバディアからすれば願ったり叶ったりだ。むしろペッパーの方がその未来を熱望していると言っていい。

 

満足感と共に肉棒をペッパーの膣から引き抜くと、愛しい相手を失った膣口が寂し気に身震いする。その様に再び突き込みたい衝動に駆られるが、この後の大事な計画を思い出し、心を沈めて身なりを整える。

 

「さあ、立てペッパー。これから君のする事を伝える。何、そう難しい事じゃない。そう、ただトニーをとある場所におびき寄せてほしいんだ。このケツの魅力を使ってな」

 

パチン、とオバディアが軽く黒のレース越しのペッパーの尻を叩く。彼女の染み一つない薄白い尻肌はその刺激にビクンと反応し、まるでわかったと返事をするように、そのはきだしになった性器から新しい淫液を迸らせた。

 

「ええ、任せて。あなた」

 

そんな本当に愛する人にしか言えないような、心からの感情の籠った返事を言の葉に乗せて、ペッパーはオバディアにウインクした。

 

 

 

 

トニー・スターク、自身の経営する会社のテラスから酔っぱらって転落死。

 

そんな見出しが新聞に載って全世界を駆け巡った。一大企業の社長であり、つい最近テロリストの魔の手から生還したばかりの男の死は多くの衝撃を世界中に与えた。

第一発見者となったトニー・スタークの秘書、ペッパーは深い悲しみの表情で彼の酒癖の悪さを放置していた事を悔やむ発言をした。彼の経営パートナーであり、スターク社の№2であったオバディアもまた、トニーの死を追悼し、彼の遺産を無駄にしないことを記者たちに誓った。

トニーの葬儀は大々的に行われ、多くの参列者が並び、その代表として寄り添うように立つオバディアとペッパーの姿は多くの観衆から同情を買った。それこそ、涙を流すペッパーを抱きしめるオバディアの姿に、お似合いの二人だと思う人間が出てしまうほどに。

 

そしてトニーの所有する全ての彼の私的財産は、それぞれ慈善団体、会社、そしてペッパー・ポッツの元へと分配された。その際ペッパーは自身に相続されたトニーの作品を全て彼の会社のためにと、オバディアへと譲渡する旨をインタビューで伝えた。そしてこれからもトニーの志を守るために、オバディアと共にスターク社を支える事を宣言し、オバディアもまたペッパーを自身の個人秘書として雇うことで、共にトニーの夢を継ぐことを述べた。

 

世界中の者が、悲壮感を抱えながらも友の夢を継ぐと宣言する男と女の姿を見た。彼らと死んだ男の間に固い友情があったことを疑う人間はほとんどいなかった。そして、残された男と女のその後が重なり合う事を疑問に思う者もいなかった。

 

そしてトニーの死後からある程度のごたごたが片付いたある夜。

生前のトニー・スタークが所有していた海岸近くの自宅、今はペッパー・ポッツが相続したその家で一つの男と女の秘密の祝勝会が開かれていた。

 

「トニーに、乾杯!!」

 

「乾杯!」

 

かつてトニー・スタークが数々の歴史的発明をした彼の個人研究施設、その部屋で下着姿のオバディアとペッパーがシャンパンを手に人生の栄光を噛み締めていた。

その研究室にはスピーカーから流れるアップテンポの音楽が鳴り響き、二人の雰囲気と服装からどちらかというとナイトクラブのような賑やかな空気が漂っている。

 

とてもではないが、死者を労わる気の欠片もない二人の様子を彼らの表の顔を知っている人間が視れば卒倒するだろう。それほどまでに、カメラの前でトニーの死を労わる二人と今の彼らの様子は180度違っていた。

 

「良い女優になれるぞ、ペッパー! 私までお前が本当にトニーの死を悲しんでいると信じそうになった!」

 

「悲しんでいるわ、一応元上司だったんだですもの。ただそれを少し大げさに見せただけよ」

 

そう言うペッパーの顔は、本当にその悲しみがあるのかどうかさえ疑わしいほどに笑顔だった。

彼女が身に着けるのは前述したとおり下着のみ。しかも所謂ストリップクラブのダンサーが身に着けているような男を欲情させるための刺激的な下着だ。濃い紅色をしたブラジャーと、同じ色のフリルの付いた黒のTバック。太股までの薄いストッキングとそれを留めるための紅色のストッキング。さらに長いハイヒールを履いて踊る様は、誰がどう見てもそう言うお店の従業員にしか見えないだろう。そんなエロティシズムの塊のような姿、彼女の美しい体付きと黄金色に輝く肌色を、それを見る権利をこの世界でただ一人持つ愛する男に晒しているのだ。

 

彼女はボクサーパンツ一枚で酔っぱらって踊るオバディアの元へと、まるで妖艶な踊り子になったような気分でステップを刻みながら近づいていく。そして自身の魅力的な体を存分に使った蠱惑的な踊りを彼の前で披露する。

オバディアの足に股を擦り付けるように踊ったり、わざと四つん這いになってTバックに包まれた尻を見せつけたりと、最早低欲と呼んで差し支えないほどの乱痴気騒ぎを見せつけていた。

 

これがオバディアとペッパーの真実。

友の死を悲しむ、友情に固い男女など仮初もいいところ。

その本性は、長年共に仕事してきた相手を自分の都合のために殺し、その遺産の全てを奪い去った悪魔と言う言葉でも足りない外道である。

 

「まったく、あっけないものだったなぁ! トニーめ、お前の言葉を欠片も疑いもせずに、ノコノコあのアーマーも身に着けずに現れて……傑作だよ」

 

オバディアが嗤い、持っていたまだ中身の残ったシャンパンのグラスを目前で踊るペッパーの背中へと垂れ流した。

ペッパーの程よい筋肉のついた理想的な裸体の背中を伝うシャンパンの液は重力に引かれ、ペッパーのTバックへと浸み込んで行く。濡れた彼女の体は照明の光に当たり、淫靡に輝きを放っていてこれ以上とない至極の宝石のような魅力を彼女に与えた。

 

「きゃっ! もう、オビー。お返しよ!」

 

「ほう、いいだろう。それ!」

 

それに対する返事のように、ペッパーもまた持っていたシャンパンをオバディアへと浴びせる。そしてそれに対するやり返しにオバディアもまたシャンパンを浴びせる。

金持ちの夫婦の贅沢な遊びと形容できる光景。しかし異常なのは、この二人がつい数日前に人を一人殺している事と、その男から奪った成果を下敷きにして踊っていることだ。

 

「あら、シャンパンがかかっちゃった。大丈夫かしら、これ?」

 

「問題あるまい。トニーの作った物だ。たかがシャンパンがかけられた程度で壊れるほど柔な作りはしておらんさ」

 

「確かにその通りね。ふふ、ちゃんと私たち夫婦の幸せな未来のために役に立ってね。ね、アイアンマン?」

 

そう言って、ペッパーは、今まさに二人が踊っている場の地面。そこにずっと横たわっていた赤と黄のコントラストが特徴的な、トニー・スターク最大の傑作を足で小突いた。

世界中の科学者が結集しても、その実現に10年はかかると言わしめた世紀の発明品を、まるでスーパーで買って来た3ドルの玩具のように扱う様に、もはやかつてのトニーを心の底から心配し、彼の作る物に敬意を払っていたペッパーの面影は欠片もない。

 

「んっ、ねぇオビー。ちょっとトイレに行ってくるわね」

 

「おいおい、トイレなど行かずにここですればいいじゃないか。今さら尿を流している姿を見られるのを忌避するような間柄でもあるまい」

 

それに、トイレ替わりの丁度いい物があるじゃないか。

 

そう言って、オバディアが指さした先を見てペッパーは笑ってしまった。その視線の先にあるアイアンマンスーツは、過去の栄光などなかったようだ。

オバディアに視線で確認を取ると、彼はむしろ興奮したようにその手を早くやれとでも言うように振った。きっといつも自分の数歩先を行っていたトニーの集大成とも言える作品を、彼から奪ったペッパーの排泄物で汚す様が見たくてしょうがないのだろう。

 

トニーが死んだ今も彼へのコンプレックスを燃やす夫の姿に、ペッパーは、そんな可愛い一面も大好き、と彼への愛情を感じてしまう。

今まで培ってきた価値観、人間関係、性感の全てを木端微塵に破壊され、男の都合の良いように作り替えられた彼女にとって、今の自分の創造者とも言えるオバディアの言葉や仕草の全てが、彼への愛情を深めるためのスパイスになるのだ。

 

ペッパーが悪戯っ子のような笑みを浮かべながら、地面に仰向けの状態で横たわるアイアンマンスーツの頭の部分に跨るように立つ。

そしてTバックの性器を申し訳程度に隠していた紐の部分を指で横にずらすと、オバディアに笑顔を向けながら下半身の力を抜いた。

 

「乾杯、トニー」

 

じょろろろ、じゃーーー

 

スターク社が誇り、トニーが唯一信頼した、豊かな才能と確かな真の強さを持った女性、ペッパーのおしっこがトニーの遺産の上に降り注いだ。それはアイアンマンスーツの顔の金属部分に当たり、その水滴を跳ね返らせる。

そしてペッパーはゆっくりと足を後ろに動かし、その尿が当たる範囲を増やしていく。彼女の髪色と同じ金色の陰毛の間から放出される黄金色の液体は、アイアンマンスーツの首元から胴体、腕、脚部へと浴びせられ、スーツのパーツの中でペッパーの排尿でコーティングされていない部分がないのではと思わせるほどに、その赤く輝くボディを汚していく。

 

大量のシャンパンを浴びるように飲んでいた影響か、ペッパーの放尿は1分近く続いた。それだけの時間があればアイアンマンスーツの全てを尿で洗い流すのには十分すぎた。

それどころか、途中で尿の出る量を調整して排出の仕方を変えてオバディアを楽しませると言った遊び心まで見せていた。

 

「君のおしっこで乾杯されたんだ、トニーもあの世でさぞ喜んでいるだろうよ」

 

溢れる笑い声が隠せないオバディアが、拍手と共にそんな賞賛の言葉をペッパーに送った。見世物として今まで見たどんなショーやサーカスよりも面白かったと、自身を持って言える素晴らしいものだったとオバディアは心からの皮肉を込めて、ペッパーの芸を評価した。もちろん面白かったのは本心だ。それこそ、これから祝い事の日にはペッパーに何かしらトニーの遺品への放尿芸をさせようと思うほどに。

 

「ええ、そうね。私に気があったみたいだし、嬉しそうに味わってるかも」

 

「間違いないな。それでは、パーティを続けよう。次は全裸で行くとしようじゃないか」

 

「ええ、喜んで」

 

二人がその身に纏っていた最後の一枚を脱ぎ捨てる。そして脱いだ下着は、まるで屑籠に入れるかのような気安さで、アンモニア臭を漂わせるアイアンマンスーツにへと投げ捨てられた。

もはや光を通さない瞳の部分の上に覆いかぶさるように置かれた、自分の生みの親の友人であった男の下着と、秘書であり密かに想いを寄せていた女性の濡れた下着に物言わぬアイアンマンスーツは一体何を思うか。

 

そしてその上では全裸になった二人の男女が曲に身を任せて踊り、歌い、飲み、笑い、享楽の限りを尽くしていった。

そしていつしか、その声は艶声と獣のような唸り声に変わり――――――

 

 

 

一年後

 

ニューヨークの郊外にある墓所。死んだ人間を弔い、その存在の痕跡の一部を形として残すその場所に、彼トニー・スタークの墓もまた存在した。

彼の亡き父と母の隣に建てられたその墓石は、毎日誰かが手入れしているのか、今も綺麗な艶を残している。その墓前には、未だに疎らだが花が置かれ、それがトニーと言う男が愛されていたことを物語っていた。

 

ペッパーもまた、そんなトニーに花を手向けに来た一人だった。

黒いコートを身に纏い、トニーの墓前で手を合わせる姿は、彼と彼女の関係性を思えば非常に心苦しくなるような悲しい画だった。

 

今、ペッパーの周りに人影は一人もいない。それはたまたま人が来ない時間だったからではなく、ペッパー自身が自分の権力を使ってしばらくの人払いを命じたから。それだけの力と、それを振るう事の戸惑いの無さを今のペッパーは得ていた。

 

「今日はあなたに、報告があって来たの」

 

そう告げるペッパーの顔は慈愛に満ちていた。その容姿は一年の時が過ぎたにもかかわらず、より美しさと妖艶さを増した魔性の女とも言うべき魅力を彼女に宿していた。その肌艶はトニーの元にいた頃よりも潤いを増し、この一年で格段に上がったメイク技術がその持って生まれた至宝の美をより磨き上げている。

だが変わったのはそれだけではない。ペッパーの小さかった胸は、そのサイズを二段階ほど上げた豊満と言っていい膨らみに変わっており、コートから覗くその細脚は余分な脂肪や筋肉がなく、しかし上に上がるにつれて肉付きのしっかりしたモデルのような美脚へとより洗練されていた。

 

「私、結婚したのよ。相手はもちろんオビー。彼以外に私に相応しい人はいないもの」

 

あなたを含めてね。

そう心の中で付け加えて優しく微笑むペッパーの姿を、見るものが見ればその笑みの真意に気づくだろう。

慈愛の笑みは笑みでも、それは負け犬を労わるかのような、可哀そうな者へと向けた同情の笑み。

ペッパーは、トニーと言うオバディアに完敗した敗者への哀れみの笑みを浮かべているのだと。

 

「今の私の名前は、ヴァージニア・ペッパー・ステイン。いい、絶対間違えないでね、もう私はポッツじゃなく、ステインなの。この世で最も誇らしいファミリーネームよ」

 

幸せそうな笑みを浮かべるペッパーの姿は、やはり傍目には亡き友人に今の幸せを語る女性のそれだが、その声色には少しの毒が含まれている。

 

ペッパーとオバディアの結婚は世間にとってセンセーショナルな記事となったが、予想外という訳にはならなかった。

トニーの葬式の時点でお互いを励まし合い、その後二人でトニーの跡を継ぐ宣言をした二人が、お互いに好意を抱き結婚を決める。むしろドラマチックで、そういうストーリー性のある色恋沙汰が好みの層に二人の結婚は刺さった。世間は祝福の言葉を送るのがほとんどで、二人の関係をやましく思う者は決していないわけではないが、ほとんどいないと言っていいものであった。

その結果は、そういう風に思われるように地道に演技し続けて来た二人にとって予想通りのものであり、結婚式で愛を誓いあった時はペッパーにとってその苦労が報われた気分だった。何よりなんの気負いもなく表立ってオバディアの妻だと名乗れるのだ。世間もその肩書を祝福し、ペッパーがオバディアと結ばれる事が正しい事なのだと実感させてくれた。

 

「それと、スターク社だけど、今はオバディア&スターク社と言う名前になったの。あなたの名前を残したのはあなたへの敬意を表したからよ、トニー」

 

本当はオバディア社にしたかったんだけど。

 

ペッパーは内心でそうため息を吐く。世間ではトニーの意志を継いだと言っているため、彼の名前を会社のロゴから消すことは出来なかったのだ。まあそれでも、オバディアの名をスターク性より先に出来たのは良かったけど。

 

「あとあなたが私に残してくれたスーツ。さすがトニーね、現物があってもその解析と模倣に一年もかかったみたい。しかもまだいくつか不明の所があるみたい。やっぱりあなたは天才よ」

 

アイアンマンスーツは文字通りオーバーテクノロジーだった。人類の科学力の歴史を二十年は先取りしたかのようなその塊は、スターク社の科学者たちが総結集してもほとんど解析が進まなかった。最終的にとある機関からの助力もあって解析は進むことになるのだが、詳しい話はペッパーも知らなかった。

 

それと、スーツをスターク社のスタッフに渡した時、少しアンモニア臭い事を指摘されたが、ペッパーは笑って誤魔化した。

最もあれからトニーの私物をペッパーのおしっこで塗りつぶす事にハマったオバディアに命令され、何度も同じことをするようになった。トニーのサングラスや時計のコレクション、彼の自宅の様々なアンティークに、果ては彼の父親からの遺産に両親の肖像画と。途中からはペッパーもその行為に快感を覚えるようになり、おしっこしながら絶頂するようになってしまったほどに、その遊びは今でも続いている。

それこそ、今日持って来た花がペッパーのおしっこに浸からせていた物だと知っているのはオバディアと当の彼女のみだ。

 

「その花、きっと気に入るわ。それと最後に……」

 

ペッパーの目が自身の手の中でずっと抱えていたあるものに向けられる。それはペッパーの腕の中でもぞもぞと動き、その様子に今度こそ本当に慈愛の籠った眼差しを向けた。

 

「うみゅう、んん」

 

「私とオビーの子よ。妊娠してたのよ。多分時期頃からあなたが死んだ日か、その前日に。ふふ、運命かしらね。その出産でバタバタしてたのもあってなかなか来れなかったの」

 

そう言って微笑む様は、まさしく聖女のように穏やかで、その容姿の美しさもあり聖母マリアのモデルに彼女を選びそうな人もいるだろうほどに、その赤子を抱く母の姿は様になっていた。

もっとも真実を知れば聖女どころかサタナイルかハーロットのモデルに選ばれるだろうが。

 

「この子の名前ね、モーガンって言うの。私の叔父の名前から取ったのよ。モーガン・ステイン、とっても素敵でしょ? あなたなら、祝福してくれるはずよね」

 

ペッパーとオバディアの愛の結晶。ペッパーがオバディアの女である事の証。そして、トニー・スターク完全敗北の最後の一ピースを飾る存在。

 

命も、会社も、スーツも、女も、生まれてくるはずであったペッパーとの間に出来る子供とその名前さえも奪われた。

だからこれはオバディアからトニーに送られる最後の勝利宣言。そしてペッパーからの最後の別れの言葉なのだ。

 

「もう、あなたの墓に来ることは二度とないわ。ここに来たのは、さっきの事を伝えるためでもあるけど、決別をするためでもあるの」

 

そこでゆっくりと言葉を溜めたペッパーは、まるで万感の想いを吐き出すように次の言葉を発した。

 

「もう、私の人生にトニー・スタークは必要ない」

 

それは神の宣託のようの重く、そして絶対の意志の籠った言葉だった。屹然とした瞳で告げるペッパーに、迷いも後悔も欠片もない。

彼女の真実の想いだと、万人が理解できるほど強い言葉で、ペッパーはトニーを完全に自分の世界から切り離した。

 

サクリ、とペッパーの後ろから誰かが土を踏みしめる音が響いた。先ほどまで一切足音のような物が無かったにも関わらず、まるで意図してペッパーに気づいてもらおうとしたかのように、その音はペッパーのわずか数メートル後ろから聞こえたのだ。

 

「ミセス・ステイン、そろそろ飛行機の時間です」

 

若い女の声が墓場に響いた。美しく透き通るような声。聞く者に、この声の主は間違いなく美女に違いないと思わせるほどに、不思議な魅力を兼ね備えていた。

 

「ええ、分かってるわ。わざわざ迎えに来てくれてありがとう、ナターシャ」

 

ペッパーが振り向いた先にいたのは、その声の持ち主に相応しい非常に整った容姿をした女性だった。

赤毛の長髪にウェーブをかけ、意志の強さを感じるキリっとした目と瑞々しい薄ピンク色の唇に形の整った鼻付きをしたその顔は、女神が与えた奇跡と呼んで良いほどの美をそこに生み出している。

 

そしてその顔だけでも世の男全てを悩殺するに足ると言うのに、その下から伸びる体付きはランウェイを歩くモデルと比しても謙遜ない理想的なプロポーションを誇っている。

彼女が身に纏うオフィススーツの上からでもわかる豊満な胸から蠱惑的なお尻にかけてのラインは理想的な砂時計体型。

天はこの女性に何物与えたのかわからないほどに、その女性の持つ魅力は制限知らずに高められていた。

 

彼女はナターシャ・ロマノフ。半年前にオバディアが協力を結んだとある組織のエージェントであり、時たま今のようにペッパーを仕事の用事で迎えに来てくれるのだ。

 

「それじゃ、行きましょうか」

 

その姿に最初は夫を取られるのではと心配したペッパーだが、今では彼女とは良き友人だ。お互いに仕事人間であったため、波長があったのだ。そして、それ以外の共通点もペッパーは女の勘で感じていた。

ナターシャに近づいたペッパーは、彼女の横を通り抜け様にその耳元でいつもの合言葉を囁いた。

 

「ハ(・)イ(・)ル(・)・(・)ヒ(・)ド(・)ラ(・)」

 

「――――ハ(・)イ(・)ル(・)・(・)ヒ(・)ド(・)ラ(・)」

 

その合言葉に、微笑みを持って返してくるナターシャにペッパーはやっぱりと心の中で思う。

彼女もまた、強い雄に飼いならされた弱い雌なのだと。

 

彼女のご主人様は一体どんな人なのかしらね。

 

そんな他愛もない好奇心を抱きながら、ペッパーはナターシャに連れられ墓地を後にした。

その心に、トニー・スタークという男のことは欠片も残ってはいなかった。

 

 

 

 





 ここまでお読みいただきありがとうございます。

 実写作品ってどこまでOKなのか曖昧なので、とりあえずMCU作品で様子見です。

 アイアンマンは自分のヒーロー観に文字通り革命を起こしましたね。
 アメコミヒーロー=不幸の連鎖、報われない恋、正体は秘密のイメージがあった自分の価値観を一作目でひっくり返しました。あれがあったから自分のアメコミ好きは始まったと言っても過言ではありません。
 今でもMCUで一番好きなキャラの一人です。

もしFFのエロをやるならどのナンバリングが見たい?*FF7は意図的に外しています

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