※この作品はR-18です。

あかるくたのしい小学校生活   作:プニたけっち

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たけっちグループ製怪人No.6 電脳怪人ナビゲート登場


2.ダイスの女神は私を嗤った

桜並木に花びら舞い、学校に通う子どもの元気な声が住宅地に響き渡る春の新学期。横断歩道にはご近所の方々が交通事故に遭わないように誘導を行い地域の触れ合いを欠かさない。

 

町の広大な敷地の中の小学校では、先生おはようございますと行儀良く綺麗な角度でお辞儀をする。先生は厳格な態度で返事を返す。

 

『絵梨糸小学校』エスカレーター式を謳っているものの、入学自体が非常に難しい狭き門。小学校でありながら筆記試験、面接を行い親の財力。全てをクリアした子どもだけが入学を許される、選ばれし者の学校なのだ。

 

そこから少し離れた場所に新しく建設された小学校。できたばかりである為入学者は少ない。3階建てで白い壁、何の変哲もないごく普通の小学校であった。

 

誰もそう疑わなかった。入学させた親御さんも、絵梨糸小学校の面々も、この学校…『炎上小学校』の秘密に気が付く者は現時点ではいなかったのである。

 

 

 

炎上小学校…丸藤さやか校長が作り上げた新しき学び舎であり、温故知新、報恩感謝、実践躬行を旨とする突如現れた謎の小学校であった。新校舎だけあってまだ汚れの一つもない、設備はしっかりしているが使われた形跡も無い歴史を積み重ねていないまだ赤ん坊のような校舎。

 

その校長室では新しいシックなスーツに身を包んだ丸藤校長が某髭ダメ親父兼司令のポーズを取りながら紙の内容を暗記していたのであった。

 

「丸藤さん、いい加減覚えました?」

 

「話しかけるな…今必死に覚えてるんだから」

 

ブツブツと呪文のような言葉を口にしながら目を血走らせ文字通り必死に始業式の挨拶文を暗記するは、炎上小学校の校長、丸藤さやかである。

 

彼女は元々うだつの上がらない男で先日不摂生がたたり心筋梗塞によりこの世とグッバイしたはずだったが、たけっちグループの計らいでゲームの世界に転生させられたのであった。本人の意思は考慮されなかったが。

 

※ ※ ※

 

さて、一応何故うだつの上がらない元男が校長などという重大な役職に就いているのかを説明せねばなるまい。

 

「なんじゃこりゃああッ!?」

 

前回、不摂生がたたり心筋梗塞で死亡した一人の男。丸藤さやかは元男のモデルになった女子高生の名前である。スリーサイズ、声、手足のサイズ髪の長さまで全部同じである。そう、彼は電車で険悪なムードとなった褐色肌の女子高生『丸藤さやか』として生まれ変わったのである !

 

「いやちょっと待って、おかしいでしょ。なんで元の姿にしてくれないの ? なんでよりによってあの女子なのさ ? っていうかあんた誰 ! ? 」

 

かわいらしいパジャマを着たごく普通っぽい女子高生がギャアギャアわめいている。黙っていれば美少女なのだろうが今の彼女は非常にやかましい近所迷惑な小娘であった。

 

「まあまあ、落ち着いてください。ほら私が淹れた煎茶です。飲みます ? 」

 

「いらんわ ! 」

 

さやかの部屋には青い髪で20代半ばくらいの女性が正座しながら自宅内の煎茶をしれっとお茶をすすっていた。その様は非常に絵になっており着物を着せていれば誠に美しいであろう。女性は湯飲み茶碗をテーブルに置きながらさやかの前に再度姿勢を正し眼を見据えた。

 

「先ほどは声だけで失礼しました。私はたけっちグループ製怪人No.6 電脳怪人ナビゲートと申します。あなたの校長としての生活をサポートする事となりました。以後宜しくお願い致します」

 

「え ? あ、その、よ、よろしくお願いいたします」

 

所詮はごく普通の一般人、空気に飲まれてついつい正座をしながら挨拶をしてしまう。

 

『ここに契約は成った ! 』

 

「な、なに ? 今頭に変なメッセージが…」

 

「ああ、それゲームのオープニングで校長先生になる事を受諾すると流れるメッセージですからお気になさらず」

 

はあ…と空返事をするさやかだがよく考えると聞き捨てならない言葉をナビゲートが口にしていたことに気が付く。

 

「ちょっと待て ! 俺に校長先生だと ! ? できるわけねえじゃん ! そもそも説明が足りない、何で俺が女なのか、ここ何処なのか ? なんで校長なんてやらなきゃいけないのか教えてくれよ ! 」

 

しっかり考えれば確かに言う通り、疑問ももっともであるからナビゲートはしっかり一から説明をすることにした。

 

「まず順番に説明しましょう。まず先ほども言いましたがあなたの身体は死にました、しかし現実世界で死者蘇生などできないのでゲーム世界の住人として蘇生することにしました。ここまではよろしいですか ? 」

 

さやかはコクリと頷く。自分の事だから一言も聞き逃すまいと真剣である。返事を確認してからナビゲートは続けた。

 

「ここはたけっちグループ制作の学校経営シミュレーションゲーム『あかるくたのしい小学校生活』の中です。そこでこのゲームの登場人物として代わりの肉体を用意する必要がありました。本来ならプレイヤーの分身を作るのですがプレイヤーであるあなたが亡くなってしまったので、あなたの記憶に残る最も印象が強い人物の情報を私が回収しアバターを作成したのです。丸藤さやかとはそのボディの名前です。残念ながらあなた本来の名前は記憶情報が残っていなかったのでボディの名前で登録した次第です」

 

なぜ丸藤さやかなのかと思うかもしれないが、彼が生前最後に会った人物の中で一番印象に残った人物が丸藤さやかなのであった。職場での彼の存在感はあまりなく、同僚の事も印象に残っていなかったのであろう。

 

「次に、ここはゲーム内のあなたの自宅です。借り家ではなく一軒家、あなたの両親は死別しており天涯孤独、そこで余った遺産を使って家を建てて、それでも余ったから小学校を作ったというのが本ゲームの導入です」

 

「…無理矢理すぎね ? 」

 

「…そういう仕様です」

 

内心ナビゲートも同じ気持ちなのだろう。そも、この世界はたけっちグループ制作のゲームの世界であるから多少の無理は通る。例えば…なんで女子高生なのに教員になれるのか ? 校長になるための試験はどうした ? 女子高生なのだから高校生活あるんじゃないのか ? というごもっともな疑問を『仕様です』の一言で封殺できるのだ。だいたいフィクションなのだからこれくらい設定がぶっ飛んでいてもおかしくはないだろう。それでも鼻息荒く設定の穴を突いてくる輩にはご退場願うのみ。現実とゲームは違うのだという事が分からない者にはいくら話しても意味が無いだろう。

 

「でもさあ、校長と言ったって俺に何しろと ? 俺に先生としての知識なんて無いよ ? 」

 

「心配ご無用。その身体はとても若いですし身体能力も本人よりも大幅に向上させていますから今後のイベントにもついてこれます。実際の業務はこれから雇う教師やわたくしナビゲートにお任せください」

 

まあそれなら…と一度死んだ身としては納得するしかなかったさやかだが、何故身体能力を大幅に向上させなければならなかったのかを確認し損ねた。その理由が判明するのは始業式である…。

 

 

 

さて、では今からすることはと言えばやはり校舎の作成、設備投資、教員の雇用だろう。本来であればかなりの額が必要であるのだがバッサリカットである。というのも。

 

「今回はわが社の配慮により、学校に関する事は全てお金(フレーバー)です。あなたの生活費以外は気にすることはありまえんので」

 

え ? と声をあげるさやかは別に不思議ではあるまい。資金繰りとかどうすんの ? とか質問しようと思っていた所なのだ。なのにそこら辺が一気に解決した。もっとも雇用と入学してくれる生徒に関しては金だけではどうにもならず運が絡むようだが。

 

(これもしかしてヌルゲーじゃね ! ? 資金無限みたいなもんだし簡単に校長生活楽しめるんじゃね ! ? )

 

と内心考えていたに違いない。

 

甘い。

 

その考えは始業式に崩されることになる。何故資金を事実上の無限にする必要があるのかを…。

 

「ではどうします ? 早速設備投資の指示を」

 

「そんなの決まってるじゃん。全部最高ランクでの物をそろえてくれ」

 

「なるほどわかりました。では壁の強度、熱にも耐えられる耐熱耐寒素材にして…敷地はこれくらい…と。よし、では明日にはできますので吉報を始業式の挨拶文を考えながらお待ちください」

 

ナビゲートは空間に現れたコンソールを操作しながらあっという間に校舎関連の手続きを済ませると最後に爆弾を投下しながら部屋を出ていこうとした。

 

「うんうん…うん ? 待って、明日 ? 始業式… ? 始業式っていつ ? 」

 

「二日後ですね。その時までに文章は考えておいてください、スーツや私服、現金等はお部屋にありますから…それでは」

 

ナビゲートの無慈悲かつあまりにも現実離れした言葉に固まるさやか、そりゃそうだ。すべての準備が約2日で終わると言ったのだから。

 

「おい待て ! いくらなんでも早すぎるって…どうすんだよ ! せめてこの女の身体でも楽しもうかなとか思ってたのに ! 俺文章考えるの苦手なんだよ…」

 

前途多難なさやかの校長生活はなんともグダグダな感じでスタートしたのだ。

 

※ ※ ※

 

こうして冒頭に戻るのだが、さやかは文章を考えてはいたもののつぎはぎだらけの文章を考えていたため肝心の暗記をしていなかったのである。一応カンペという手もあるがなるべく最初なのだからカッコ良く決めたいという元中年オヤジの意地だったのだ。

 

まるで試験直前の受験生であるがその貴重な時間はコンコンとノックする音で終わりを迎えた。

 

「校長先生、そろそろお時間です」

 

「ひ、ひゃい ! 」

 

さやかを呼びに来たのは野木みのりという雇用した女性教諭、物腰の柔らかそうな女性だがこれでも昔は陸上選手を務めていた女性で得意科目が体育だというのも頷ける話であった。

 

「ついに、ついに来たか…」

 

「はい、校長先生初めての仕事です。キビキビ逝ってきてください」

 

「お、おう…ねえ、今漢字間違ってなかった ? 」

 

「気のせいです」

 

ナビゲートに後ろからグイグイ背中を押され体育館まで押されていくさやか、入口までたどり着くとそこは自身の学生時代よりも広くて、できたばかりの木の匂いが漂う体育館があった。あまりにもスピーディーに物事が進みすぎて校舎内の把握ができなかったさやかにとっては、これが自分の新しい職場なのか…と感じるものがあった。

 

「それでは新入生の皆さん、校長先生からのご挨拶です」

 

「ひ、ひゃい!」

 

今まで大人数の前でまともに話しなんてしてこなかったさやかには百人にも満たない生徒や保護者、教師の前で話しをするなんて事は人生をかけた一瞬のような話しに感じた。あまりにも緊張しすぎて手足が同じ方を出して歩き油の切れたロボットのようにぎくしゃくしながら体育館の教壇に向かって歩いていく。みんなざわざわと話しをしているのが聞こえる。

 

生徒はまあ子どもだから、若いお姉ちゃんだと話しているが問題は保護者。

 

あんな娘が校長?何かの間違いでしょ?

 

まぁごもっともな意見が噴出しており進行役だった先生も顔合わせするしていなかった校長が本当に女子高生だった事に困惑、どうすればよいのかオロオロしていたがマイクの前に立ったナビゲートが、お静かにと話した事で一旦は騒ぎが収まった。しかしさやかが上手く言葉を出し切り抜けなければならない事に変わりはない。

 

(やべえ…緊張しすぎて文章忘れた…)

 

まさにオワタというやつだろう。教壇に到着したさやかはやむを得ずポケットのカンペを取り出そうとした…が。

 

 

ウーウー!

 

校舎内に突然けたたましい警告音が鳴り響いた。

 

え?なに?

 

生徒、保護者、先生達、そしてさやかも何が起きたかわからない。知っているのはナビゲートのみ。壇上に上がってきたナビゲートから言われた一言にさやかは自分の耳を疑った。

 

 

「丸藤さん、怪獣が現れました。これより炎上小学校はバトルモードに入ります」

 

 




今回から前置きに某特撮物でおなじみの、〇〇登場という風に特殊キャラを書いていきたいと思います。また、タグの変更は都度行っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。

また今回のサブタイトルの意味ですが、学校の名前をダイスで決めた所、よりにもよって炎上というネタ枠に当たった。絶対にこのダイスの女神は愉悦型だと思ったからです。
m(_ _;)m
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