Coma Anger Woe Wound Untied. 作:やわらかな土
女と舌を絡ませているという事実がよぎるたび、嫌悪感が詩の頭を醒めさせる。
きっと由紀姫もそうなのだろうと詩は思っていた。
詩は由紀姫の耳たぶから耳の穴を口全体で愛撫し、頸動脈に舌を這わせ、胸元に口付ける。
固く結んだ拳には指を差し込んで開かせた。
由紀姫の股の間に足を割り入れて、無理やり足を開かせる。
こうして由紀姫の体の自由を奪っていく手順は、蛙の解剖に似ていた。
由紀姫のブラウスの前を開けると、子供じみた綿のブラジャーが現れて、詩の頭を現実に引き戻す。
控えめな谷間の向こう側から由紀姫は見下ろすように目だけを詩に向けていた。
詩は次にすべきことの信号を受信して、手をブラジャーの中に滑り込ませ、乳房に直接触れた。
由紀姫は眩しそうに目を細めて、次の一手を待っている。
けれど詩は逡巡した――乳首はさすがに性器だし、それを愛撫してしまっては本当にセックスではないか、と。
手のひらから由紀姫の鼓動が伝わる。
「由紀姫。あなたは相手が女でも――誰にでもどろどろに欲情する女なのね」
詩が冷たく言うと、由紀姫は唇を引き結んで目を逸らした。
それを合図に詩は由紀姫の乳首を絞るようにつまんだ。
瞬間、由紀姫の口から甘く甲高い嬌声が迸った。
自分の声に驚いて由紀姫は慌てて手で口を塞ぐ。
これだ、と詩は思った。
まるで隠せていない、嫌でも反応してしまう快楽は、由紀姫の「本当」なのだ。
乳首を指で弄ぶと、由紀姫はおもしろいように体を弾ませる。
声を我慢している由紀姫に口付けると、溺れる者が空気を求めるようにして、詩の舌に吸い付いた。
由紀姫の大腿部が時折詩の股を擦り上げ、詩は倒錯した気持ちがした。
由紀姫は下から詩にしがみついて、もっとして欲しそうに腰を詩の足に擦り付けた。
触れ合う中で、由紀姫の手が詩の脚の古傷に触れた。
「ウタちゃん、この傷どうしたの?」
「ああ……。昔、ちょっと刺されまして」
脚の傷にはもう痛みはなく、ケロイド状の薄い線を残すだけになっていた。
けれど、詩には生きていることを確認できる立派な証だった。
由紀姫は詩の下から腰に手を回して力強く抱きしめた。
「私も同じ傷が欲しい……」
由紀姫は顔を詩の腹に密着させていて、声はくぐもっていた。
「あ、嘘々、気にしないで」と、顔を隠すように詩の胸に押し付けた。
「同じ傷……」
詩は浮かされるようにその言葉を口にした。
「ウタちゃんの胸の音が聞こえる、早い……」
由紀姫がうっとりと言う。
詩は由紀姫を押し返して倒れさせ、短パンに手をかけた。
「ちょ、ちょっとウタちゃん! 下はダメ!」
由紀姫は短パンを両手で抑えて脱がされまいと対抗した。
その様にイラついた詩は、すっかり位置の判明している由紀姫の乳首を指でつまみ上げた。
「あんっ! ダメ! ウタちゃん、そこだけは絶対ダメ!」
由紀姫は快感に必死に抗っていた。
「由紀姫」詩は由紀姫の腿を短パンの上からなぞって言った。
「私はここを刺されたの。男の人にグッて。無理やり」
そして詩は人差し指を一本だけ立てて、刺された位置をわからせるように由紀姫の腿を指先で押した。
「すごく痛かったのよ。初めて生きてるって思えた。由紀姫はどうかしらね」
詩が諭すように言うと、由紀姫が握り締めた手を緩めたのがわかった。
天秤が受け入れる側に傾いた――詩は短パンを握る由紀姫の手に指を掛けて、そっと引くと、短パンは由紀姫の手からするりと離れた。
詩は短パンに指を引っ掛けてゆっくりと由紀姫の腰から下げていく。
由紀姫は少しだけ腰を浮かせて、これから自分が詩にされることに加担した。
短パンを膝までずり下げ、詩が由紀姫の腿の裏に指を当てると、由紀姫は詩の意図を察して、短パンから片足を抜いた。
「よくできました」
そう詩に言われて、由紀姫は羞恥心から堪らず目を伏せた。
由紀姫の下着はブラジャーと同じく綿製で、由紀姫の裸体は薬の副作用によるむくみやニキビも相まって、体が大きくなっただけの子供を思わせた。
詩は下着に指を一本だけ引っ掛けて短パンと同じように促すと、由紀姫は羞恥に顔を歪ませながら、見えないように下を手で隠し、ゆっくりと時間をかけて片足を抜いた。
詩は由紀姫の脚を大きく広げさせて、自分の脚で挟み込むようにまたがった。
これで由紀姫は自分の意志で脚を閉じることができなくなった。
由紀姫の脚はしっとりと汗に濡れて冷えていた。
下を隠している由紀姫の手に、同じように指を一本だけ触れさせたが、由紀姫は首を振って拒否した。
詩が抵抗する手を掴んで引き剥がすと、由紀姫は思わず「ああっ……」と小さく呻いた。
由紀姫からは細かく砕けたゼリーの粒が夥しく溢れ出していて、あまりのおぞましさに詩は息を飲んだ。
自分は今から女とセックスをする――その事実が詩を戦慄させた。
こんなおぞましいことが、なぜ由紀姫は平気なのだろう。犯す側と犯される側の違いなのだろうか。
犯される側は天井の染みでも数えていればいいが、犯す側となるとそうはいかない。
全て自分で選択し、自分で実行する。
すべてに自発的な意志が必要なのだ。
ここでもし逃げてしまえば、詩は侮られてしまう。
ここで形成された上下関係は変化しない。
詩はいまここで由紀姫を支配しなくてはならなかった。
いまこの場には支配するかされるかの選択肢しかない。
詩がゼリーまみれの下の由紀姫を凝視していると、上の由紀姫が詩を見たのがわかった。
詩が指を一本だけ立てて由紀姫の入り口に引っ掛けると、由紀姫は追い詰められたような声を短く漏らした。
由紀姫は詩の指をすんなりと受け入れる。
由紀姫は空中のどこでもないある一点を見つめて異物感に抗おうとしていた。
やがて詩の指が由紀姫の中で突き当たってそれ以上先に進めなくなった。
「行くわよ」
詩はそう宣言して、壁を突き破るようにゆっくりと指を進めた。
うっ、うっ、うっ、と由紀姫は喉の奥を鳴らした。
由紀姫の苦しそうな声は詩の気分を昂揚させた。
「由紀姫、痛い?」
「うん……。大丈夫だから続けて……」
「教えて。痛いの?」
「うん、痛い」
「どのくらい」
「えっと、割と」
「注射とどちらの方が痛いのかしら」
「ウタちゃんの指の方が痛い」
「これが痛いの?」
そう言って詩が中で指を曲げると、由紀姫は余裕なく首を何度も縦に振った。
指の腹で突き当たりを押し拡げるようにすると、由紀姫は息を荒げ、顔を紅潮させた。
細い穴はわずかづつ拡張されていき、指がゆっくりと由紀姫の奥へ侵入していく。
「由紀姫、痛い?」と詩が訊く。
「うん、痛い」
「どのくらい」
「包丁で指を切ったときみたい」
それを聞いて今度は詩が喉を鳴らした。
詩の芯に血が集まる気配を感じる。
指先を由紀姫の中でくるくると回していると、あるときぬるっと第一関節が奥に滑り込み、由紀姫は「痛ッ……」と小さく悲鳴を上げた。
「由紀姫。あなた骨折をしたことはある?」
「ううん、ない」
「じゃあ捻挫は?」
「捻挫はある。でもそれよりは痛くないよ」
「そう。じゃあこれは?」
そう言って詩は手首を返し、下に押しつけるようにして由紀姫の中を拡げた。
「ああぁ………。あの、足をくじいて歩いたときと似てるかも」
「わかるわ。あれ痛いわよね」
「痛いよね、ふふふ」
笑い合って二人は目を合わせ、どちらからともなく顔を近づけて、唇を合わせた。
由紀姫の脚と触れ合っている詩の芯が敏感になり、擦れると軽く痛みが走った。
指を穴から抜き、ゼリーを巻き込んで再び中へ突き入れる――それを何度か繰り返すと、指はほとんど何の抵抗もなく入るようになった。
「ここまで入った」
詩は指を由紀姫に見せた。
第一関節にうっすら血の粒が付着している。
由紀姫はこくこくと頷いた。
指を再び由紀姫の中に戻すと、指先はあっけなく突き当たりを抜けて第二関節で引っ掛かった。
指に力を込めて奥へと押し進めると、由紀姫はその場から逃げるように背を仰け反らした。
やがて指先にぴりっという感触が伝わり、壁が裂けたのがわかった。
「痛い?」
「痛い……!」
「痛いでしょう? 私も痛かったの」
指を動かすと、もう由紀姫の中に引っ掛かる部分はなかった。
詩は由紀姫の中を知り尽くすように指で撫で回した。
「これは?」
「痛いけど、なんだかヒリヒリする。でもさっきより平気」
それを聞いて詩は人差し指に続けて中指も由紀姫の中に入れた。
そして中を広げるように大きく回した。
由紀姫は苦しそうに息を漏らす。
詩は自分の芯を由紀姫の脚に擦り付けた。
けれども乾いているため、敏感になった芯にヒリヒリとした痛みを残すだけだった。
「ウタちゃん、何してるの?」
詩は答えず、指で由紀姫の中を探るように壁を撫で回した。
「これも痛い?」
「痛いけど、嫌じゃない……。なんだか変な気持ち」
由紀姫は詩を欲しがるように手を伸ばした。
詩がその手を払いのけると、由紀姫は手を力なく落とした。
由紀姫の中をかき混ぜながら、親指で芯に触れた。
その瞬間、由紀姫は甲高い悲鳴を上げ、目を見開いた。
「あら?」と、詩が言う。
「ウタちゃん、今のなに!?」
詩は手のひらを由紀姫の芯に当て、揉みほぐすように動かした。
「――ッ! イヤ! これイヤ! ウタちゃんやめて!」
由紀姫は悲鳴とは裏腹に入り口からゼリーを溢れ出させた。
「痛いの?」
「すごく痛い! だからやめて」
由紀姫は両手を使って詩の手を掴み、目を見て言った。
由紀姫は瞳に切実な思いを浮かべている。
詩はペロリと舌なめずりし、手を掴まれたまま強引に由紀姫の中をかき混ぜた。
「イヤ! イヤだ! 怖い!」
由紀姫は悲鳴を上げ、詩の手のひらが剥き出しの芯に触れるたび腰を跳ね上げた。
由紀姫が暴れると、脚を押さえつけている詩の芯も同時に刺激され、詩は自分で自分の芯を責めているような錯覚があった。
由紀姫の芯を強く押しつぶすと、由紀姫は背をのけぞらせて脚で詩を突き上げて、詩の芯は由紀姫の脚で押し潰された。
手のひら全体で由紀姫の芯を擦り上げると、由紀姫は背を丸めてその場から逃れるように体を波うたせ、グラインドする由紀姫の脚は詩の芯をしっかりと擦り上げた。
詩は由紀姫の欲しがるところに指を添わせ、手が受け皿になるように由紀姫の形にしてぴたりと重ねた。
二人はいまや歯車の噛み合ったひとつの機械のように連結していた。
詩は手のひらに、膨らんで存在感を増した由紀姫の芯を感じた。
詩はグラインドする由紀姫の動きに合わせて滑らかに手首を回し、二人はシーソーのように往復運動を繰り返す。
由紀姫の腹が張り詰めてわずかに痙攣し、艶かしく悶えた。
その様は蠢動する虫を思わせた。
おぞましいのにか弱い――詩は手の中で蠢く蟲のイメージに由紀姫を重ね合わせた。
由紀姫が自分の手でブラジャーをずり上げた。
固く張り詰めた乳首が現れる。
もう乳首という性器に嫌悪感はなかった。
詩はそこに口付けて、歯を立てて甘く噛んだ。
由紀姫の口からあえぎ声が漏れた。
由紀姫が詩の服の中に手を入れて、詩の柔らかいところを遠慮なく触るようになると、詩は自分で服を脱いで下着だけになった。
由紀姫の手が詩の乳首や芯に触れても、詩には由紀姫ほどの刺激を感じることはなく、詩の体は渇いていた。
そんな詩の体とは対照的に、由紀姫は全身を湿らせて、生きている悦びに全身をうち震わせていた。
ふわふわの綿のようだった由紀姫の膣内は、膨らんだり縮んだり形を変えながら詩の指を欲しがった。
ふたりの動きが煮詰まっていき、由紀姫がいま、どこになにが欲しいのか、その動きから詩には手に取るようにわかった。
詩は下から突き上げるように動く由紀姫の脚を自分の両足で押さえ込んでいて、由紀姫の欲しがる動きが詩の芯を情熱的に擦り上げ、ひりひりとした痛みをもたらした。
「ウタちゃん…?」
詩は自分の下着の中に手を入れて確かめたが、芯は肥大しているのに濡れる気配もなかった。
詩は由紀姫から指を抜き、ゼリーまみれのその指を由紀姫の脚になすりつけた。
そして自分も下着から片足を外し、由紀姫のゼリーの上に自分の芯を直接当てた。
それを見て由紀姫は脚を詩の芯に沿って滑らせた。
ぬるりとした感触が詩の内股を襲って、詩の頭の中に由紀姫のゼリーが膣から侵入して内側から汚すイメージが浮かんだ。
再び由紀姫の中に指を入れる。
由紀姫の中は待ち焦がれていたものがやっとしゃぶれると言わんばかりに肉をむくめかせて指を飲み込んだ。
由紀姫は嬉しそうに腰を跳ね上げて、その動きが詩の芯を刺激した。
詩に一瞬、自分の指で自分の膣内を掻き回す妄想がよぎった。
由紀姫の求めに応じる形で口付けると、自分と唇を合わしている錯覚に囚われた。
詩の口内を犯す舌を、もはや由紀姫のものだとは感じられなくなっていた。
自分で自分を責めているのだと思うと、かき回す指にも自然と力が入る。
ぐっ、ぽっ、ぐっ、ぽっと粘っこい水音を立てて由紀姫の入り口が泡立つ。
詩にはそれがまるで自分の入り口が立てるもののように思えてしまう。
自分の体を使われて勝手に音を立てられてしまうのは屈辱的だ。
その屈辱感から思わず脚を閉じると、由紀姫の腿と詩の芯がぴったりと密着する恰好になった。
指を由紀姫の奥深くまで挿し込んで、突き上げながら腕を引く。
中をなぶるほど由紀姫は腰を激しく浮かせ、連動して詩の芯を突き上げる。
二人はさながら連結された動力機関のように引き合い、押し戻す。
手にべっとりとついた愛液は血の混じったピンク色をしていて、詩は舌を伸ばしてそれを啜った。
粘液は不思議とほとんど味も香りもなく、口の中で唾液と合わせて転がすとほのかに甘い香りが立った。
飲み込むと、粘液は糸を引きながら喉の奥に流れ込んでいった。
詩は名残を惜しむように指についた粘液を舐めとった。
とろりとした流体が喉を通り過ぎると、今度は汚物が体内を汚すイメージが沸き起こって、詩は吐き戻しそうになる。
嘔吐感によって涙が込み上げて、詩はいま自分が生きていることを感じて嬉しくなった。
そんな詩の様子を由紀姫は熱に浮かされたような目で見ていた。
詩は再び由紀姫の中に指を突き入れて愛液を掻き出し、それを口に含んで唾液と混ぜ合わせ、餌を与える親鳥のように由紀姫に口移しした。
由紀姫の舌が詩の口内に残る粘液を舐めとり、喉を鳴らして嚥下した。
けれど、うまく飲み込めずに咳き込んでしまう。
由紀姫の白い腹が激しく波打つと、合わせて膣の入り口も収縮し、詩は指を締め付けられた。
快感によって極限まで酷使された由紀姫の脚は、咳がきっかけになってガクガクと震え出した。
詩は由紀姫の震えを芯で感じた。
由紀姫だったものは変貌し、本来の由紀姫になった。
もはや以前までの由紀姫とは別人なのだ。
「怖いの?」と詩が尋ねた。
「怖い。でも、うれしい」と由紀姫が答えた。
詩は由紀姫の脚を挟んだまま、体を添わせるように横たわった。
火照った体を慰めるように、由紀姫の中をたおやかにかき混ぜた。
優しい刺激に由紀姫はうっとりとした表情を浮かべた。
ちゅっ、ちゅっ、と二人はじゃれるようにキスをした。
詩が露わになったままの由紀姫の乳首に歯を立てると、由紀姫は嬉しそうに詩を咎めた。
連結された動力機関のようだった二人は、惰性で動き続けるそれのように、お互いの体を慈しみ合った。
詩は由紀姫の舌を受け入れて、唇で繋がったまま、弁の壊れた心臓のように二人の唾液が口の中で混ざり合うことを許容した。
そして唾液を飲み込んで息をつく間すら惜しむように深く繋がった。
いつ果てるとも知れない慰め合いは、達してしまった由紀姫の細長く尾を引く声で終わりを迎えた。
由紀姫の叫ぶような声に潜む甘い響きと、張り詰めた腿が詩を昂らせる。
最後に詩は由紀姫の腿に体重をかけて自分の芯を圧し潰し、甘い痛みに貫かれながら背を仰け反らして小さく達した。
ことを終えてすぐに由紀姫は寝息を立て始めた。
喉が渇いた詩は由紀姫を置いて、裸のままリビングを抜け、キッチンの冷蔵庫を開けた。
中にはパックで落とした麦茶と未開封のミネラルウォーターがあり、詩はミネラルウォーターを手に取った。
水を一口含むと、指先から由紀姫の匂いがした。
匂いは手を洗っても落ちることはなかった。
玄関にアルコールがあったことを思い出し、詩は裸のまま玄関へと向かった。
けれど、いくら手をアルコールで消毒しても由紀姫と混ざり合った感覚は消えていかなかった。
気配を感じて目をやると、鳥籠の中からカナリアが詩を見ていた。
詩はある考えを思いついて、鳥籠の中に手を入れた――。