■06 桃色吐息
「本当に、こんな格好で――?」
緋沙子は不安げな声で言う。
浴室の壁に敷き詰められたピンクのタイルに両手を突いて、創真に背中を向ける。
「そ、その、これは……」
「ん? 恥ずかしいのか?」
「あっ、当たり前だろう――!」
「うーん、緋沙子……」
「な、何だ――?」
嫌な予感を抱いたらしい緋沙子が問い掛けると、案の定、創真は、
「緋沙子のお尻、……エロいな」
「馬鹿者!」
「色々と丸見えだし――」
「うるさっ――ひゃうっ!?」
創真のペニスが緋沙子の秘部にあてがわれる。しかし彼はまだ挿入せず、粘膜同士の接触を楽しむように、上下に動かす。
「う、熱…………あんっ!」
上下運動に合わせて、緋沙子の背中が時折、びくんと縮む。
「すげ……緋沙子の柔らかくて気持ちいい」
「き、君のも……熱くて、固い……んっ――」
先ほどまで軽口を叩き合っていた2人は、互いの性器が与える刺激にすっかり酔っていた。
にゅるっ、にゅるっ――
秘裂から溢れる、ぬるぬるとした液体が潤滑油となって、摩擦運動をさらになめらかなものにしていく。
「はっ、ああっ――!」
緋沙子の腰は、創真の肉棒をねだるように、突き出されてくる――その要求に応えて、彼は彼女の細いを両手で掴み、腰をさらに密着させる。竿に絡みつくひだの感触。引き締まっているのに、肉感的な
我慢の限界に到達した創真は、少しだけ腰を離し、角度を変えると、割れ目へと先端を押しつける。
つぷっ――と、柔らかい肉をかき分ける感触があった。
「やっ! あん……は、入ってくるぅ……」
緋沙子の背中が一際大きく跳ねた。彼女の内側は、既にとろとろにゆで上がっていた。奥に進むに連れ、男性に快感を与んとするかのように――緋沙子が包み込んでくる。まるで熟し切った果実の中に侵入しているような――それは神秘的とさえ言えるほどの快感だった。
「う、動くぞ、緋沙子――」
創真の声にも余裕がなくなる。それでも必死に、カリの近くまで引き抜き、また深く押し入れる。今度は、根元まですべて緋沙子の中に隠してしまう。亀頭の先端が、彼女の子宮口にまで達して、
「ふあっ!? くっ、ひぃ――はあっ、うん――っ!」
緋沙子の体が震える。きゅうきゅうに締め付けてくる膣内。腰を握る創真の手にも力が入る。もはや頭の中は真っ白だった。何も考えることが出来ず、ただただ腰を打ち付ける。緋沙子の中をかき混ぜ、かき回す。
「ひゃあうっ、そこっ、当たるっ――! へ、変なところに、当たるぅ!」
ぱちゅん、ぱちゅ!
腰を前後させるたび、みだらな音が響く。弾力のあるヒップが揺れ、背中がうねる。飛んでしまいそうな意識の中で創真は、夢中で緋沙子の背中に舌を伸ばした。
「んひぃっ!?」
浮き出た背骨。それを支える健気な背筋。舌で舐め上げた柔らかな肌は、少しだけ塩の味がした。両手を胸へと這わせる。双丘を鷲づかみにし、乳首を転がす。
「あっ、あっ――気持ちいいっ! ダメっ! やあっ! そ、創真ぁ――」
触れあうところ、すべてに快感が走った。創真の舌先にも、指も、手のひらも。下腹部は言うまでもない。もはや緋沙子の膣は、蜜の詰まった壺のようである。
もっと奥へ、もっと奥へ――
どこまでも突っ込んで、無茶苦茶に蹂躙したい。緋沙子のすべてを壊してしまいたい。創真の欲望が頂点へと向かっていく。やがて緋沙子は、
「ああ、やあ、また……また来るっ! 凄いの、来ちゃうっ――!」
痙攣を始めた。
「緋沙子……イキそうなのか」
「はっ、ああっ――! と、飛んじゃう、やああっ――」
もはや彼女はまともな応答さえ出来ないでいた。ひたすらに快感に身を
ぱちゅっ! ぐちゅっ! ぱちゅん――!
激しく、一定のリズムで緋沙子の肉壺を突く。
「あっ、ダメっ、だめぇ――い、イクぅ……!」
ビクン! 緋沙子はのけ反り、
「あ、はぁっ…………」
タイルに頬を付けると、そのまま全身を弛緩させていった。にゅるりと肉棒が抜け、支えをなくした彼女は力なく床に座り込む。
「は、はあっ――す、すまない……、我慢できなくて…………」
言うと、潤んだ瞳で見上げてくる。その
■07 目覚め
柔らかな浴室マットに背を預け、創真は仰向けに寝そべった。彼の腰の上に、緋沙子がおずおずと
「ははっ、いい眺め――」
顎を引くと、緋沙子の全身が見える。艶やかに濡れた髪も、恥辱と興奮に
「うぅ……こ、これは先ほどより――」
恥ずかしい、と彼女は言った。
「何でこんな……」
「だから、先にイッた罰だって。ほら、自分で入れてみな……」
「くぅ……」
緋沙子は下唇を噛んだ。やがて観念したかのように、おそるおそる、細い指を創真のペニスへと伸ばした。
ごくり。彼女が生唾を飲む音が聞こえた。
「どうしたんだよ。ほら……」
「わ、分かっているっ――!」
自らの手で、割れ目へとあてがう。しかし上手く挿入できないのか、
「んっ、んうっ――」
にゅるっ、にゅるっと滑る。
「何? また擦って欲しいわけ? 気に入っちゃったのかな、新戸サン」
「ちっ、違っ――……あっ!?」
ずぷっ――そり立った創真のそれが、緋沙子の中に埋もれていく。
「うわ、入るとこ、丸見えだぜ」
「やあっ! み、見るな……」
緋沙子はいやいやと首を振るが、それとは反対に、彼女の下半身は創真のことをしっかりとくわえ込む。
「すげ、全部入っちまった。なんだよ、まだコレが欲しかったんだな、緋沙子は」
「う、ああっ――、違うっ……」
「ふーん、あっそ。じゃあオレこうしてるからさ。気持ちよくなりたかったら自分で動けよな」
「そっ、そんな…………」
緋沙子は泣きそうな顔で言う。
「自分でなど、そんな破廉恥なこと――」
「いいじゃん。オレしか見てないんだしさ。緋沙子のエロいとこ見せてくれたって。……なあ、もっと気持ちよくなりたいだろ?」
「それは――っ」
「そ。腰動かして……ほら、自分で気持ちいいところに当ててみろよ」
「んっ――! はっ……はい……」
腰を浮かせ、沈める。
「あっ、あんっ!」
「段々いい顔になってきたじゃん……なあ?」
「はい――き、気持ちっ! いいですっ――」
次第に動きが大きくなる。
「ああっ! すごい、固いのがゴリゴリって……ふあっ!」
「やっぱエロいんだな、お前。いじめられるのが興奮すんのか?」
「うっ、ああっ――」
「ほら、答えろ――って!」
不意に、創真が下から突き上げると、
「――やあんっ!」
緋沙子の
「どうなんだよ――」
「こ、興奮しますっ――すごく、か、体の芯が熱くなって――ああんっ、き、気持ちいいです……!」
ぐちゅっ、ぐちゅっ――!
結合部から淫らな音がする。緋沙子の内壁は
「やっと正直になったな。――んじゃ、ご褒美」
両手で乳首をつまんで、コリッ、コリッと刺激すると、
「ふああっ! それ、いいですっ――」
もはや彼女の体面は崩れ去っている。言葉に導かれるまま、快楽に身を任せる獣になり果てていた――が、その時、脱衣所のドアが開く音がして、
「おおい、お嬢ちゃん――」
ふみ緒の声が聞こえた。
「着替え、ここに置いとくよ」
「――――っ!?」
緋沙子が一気に正気に戻って、脱衣所のほうを見やった。脱衣所に続くドアは磨りガラスのような加工が施されており、互いに姿は見えない。シルエットくらいは映し出されているかもしれないが――。もし、声を聞かれたり、ドアを開けられようものなら……
(ほら、何か答えねーと、怪しまれるぞ?)
唇だけを動かして、創真は緋沙子に語り掛ける。
「う……」
緋沙子が上ずった声で、
「あ、ありがとうございますっ――んんっ!?」
言った瞬間、創真が腰を突き上げた。少女の細い体はビクンと跳ねる。
「ん? 大丈夫かい? 具合でも――」
「い、いいえっ――」
必死に取り繕う緋沙子のことを、創真の肉棒がかき回し、乱す。
「やっ――い、いえ……シャンプーが、目にっ……!」
緋沙子の体はガクガクと震える。
「おっと、そうかい。……あ、そうだ。幸平のやつ知らないかい? 姿が見えなくてさ――」
まさか、私の下に居ます――とは彼女も言えず、
「じ、自室に戻ると言っていました……」
「ふうん……」
やや
「いきなり声かけて悪かったね」
と言って去って行った。
「いやー、ヒヤヒヤしたよなー」
「き、君のせいだっ!」
「おい、おっきな声出したら、まだ聞こえるかもだぜ?」
「うっ……」
緋沙子は慌てて口元を押さえる。
「でも緋沙子……いつもより感じてたよな? やっぱりお前ってさあ――」
「そ、それ以上言うなっ――」
「Mなんじゃね?」
「言うなと言っているのにっ――」
涙目の緋沙子。どうやら自覚はあったらしい彼女の反応が、あまりに初々しくて、創真の顔は
「悪かったよ。ほら、来いよ」
両手を突き出して彼女を迎える。彼女は彼に覆い被さるようにして倒れ込み、抱き合った。緋沙子の耳元で創真は、
「敬語プレイも良かったよな?」
「うっ! ば、バカっ――」
「今度はオレが動くからさ。一緒にイこうぜ」
言うと、彼女は照れたようにこくんとうなずいた。
密着した姿勢のまま、創真は腰をグラインドさせる。緋沙子の膣内を味わいながらゆっくりと、奥を刺激するように小刻みに、または、激しいリズムで打ち付けるように――下腹部に生まれる快感だけでなく、耳元で聞こえる彼女のあえぎ声も堪能する。
それは――
他の誰も聞いたことのない、創真の前でだけ
「はっあ、うんっ――ふぁ、好き、大好きぃ……もっと、もっと――」
ぬちゅ、ぬちっ、じゅぷっ――
結合部から漏れる音も、
「きゃんっ――!」
緋沙子の甲高い声も、
「あ、ああっ――!」
肉棒に絡みつく甘美な感触も、すべてがたまらなく、彼の思考を狂わせる。
緋沙子もそれは同様で、快感に身を震わせながらも、必死で肩にしがみついてくる。
「緋沙子、大好きだ――」
「わ、私もっ――私も、だいすき、すきぃ――あんっ! そうまっ、そうまあっ!」
ずぷっ、ぐちゅっ! ぐちゅっ――!
彼女の高まりに呼応するように、ひだひだが肉棒を刺激して、快楽の果てへと誘う……
「出してっ、奥、奥にっ――」
「緋沙子っ――!」
「やあっ、来る、くるぅ――!」
びゅるびゅるっ――――!
2人は同時に果てた。大量の精液が膣内にぶちまけられる。
それでも…………止まらない。
「う、お……」
「はっ、はあっ――、ま、まだ出てるっ……」
びゅく、びゅくっ――!
きゅんっ――と緋沙子に締め上げられ、最後の一滴まで搾り取られる。
「す、すごい……私のなか、いっぱい……」
どく、どく、と肉棒はまだ脈打っている。
「創真……」
緋沙子が口づけを求めてくる。創真は彼女を強く抱いて、むさぼるように唇を重ねた。
「んっ、んうっ――」
そうして2人はしばらく、浴室の床で繋がったまま、濃厚なキスを交わした。
■08 宴は続く
食堂では、相変わらず宴会――もとい、薙切えりなによる品評会が繰り広げられていた。
もっとも……、
「えりなっちー! 次は私のね!」
「お並びなさい、吉野さん! 順番だってば!」
当のえりなは、進んで試食をしているというより、向上心溢れる寮生たちに巻き込まれているという形ではあったが。
何かと因縁のある創真は、にべもなく試食を断られると、濡れ髪を拭きながら緋沙子の横に並ぶ。口を尖らせ、
「ちぇー、薙切の奴、なーんかケチだよなー」
と言った。
一方の緋沙子は、喧噪の中心で表情豊かに応じるえりなを見て、
「えりな様は変わられている……少しずつだが、ご自身の中にある暗い影を払拭するように――」
優しく微笑んだ。
「ふうん、そっか」
創真も満足げに笑うと、パジャマ姿の緋沙子に右手を伸ばした。当然、皆の目の前で抱きすくめるわけにはいなかい。
だから、小指と小指を絡め、誰にも見られないよう、肌を触れあわせた。
「う……き、気づかれるではないか……」
「大丈夫だって。まだ皆、試食に夢中だし」
緋沙子は頬を赤らめながら、やや
「しかし……えりな様が大変なときに、私は何という――」
風呂場での情事を思い出し、罪悪感を顔に浮かべる。しかし創真は、
「ま、いーんじゃねーの?」
「……君はまた――」
「だってさ」
「さっきのお前、ホントにしんどそうだったぜ? 薙切を支える前にさ、緋沙子が倒れちまったら意味ないだろ。マジでヤバいときにはさ、ちゃんと頼れよな」
「う……」
緋沙子は一瞬言葉に詰まったが、
「――ああ、そうだな。そうさせてもらう」
「そこは『はい、承知しました』だろ?」
「! せっかく人が神妙に応えたら……!」
「ははっ――ほら、元気になったじゃん」
まったく、と緋沙子は肩を落とす。
私の恋人は、果たして思慮深いのか、それとも本能のままに生きているだけなのか……。
彼女は
えりなのことも、創真のことも――
どちらも失いたくない。
そして、彼とならそれが出来る。緋沙子はそう確信した。
窓の外は相変わらずの冷たい雨。
緋沙子は、背中でその雨音を聞きながら、小指の先に伝わる体温を何度も確かめていた。それは、指から腕へ、そして全身に行き渡るほど、とても心強い温かさだった。
きっと上手くいく――。
大切な人たちの横顔に微笑み掛けながら、緋沙子はそう思った。