■07 プライベートルーム
「緋沙子」
口元を拭いつつ、緋沙子がこたつから這い出ると、創真は彼女を引き寄せて言った。
「上、行くぞ」
「上?」
はて、と緋沙子は首をかしげる。
「え、うわっ!? 創真?」
彼は緋沙子を抱きかかえて、立ちあがった。急に持ち上げられて緋沙子は、慌てて彼の首にしがみつく。
「な、なにをする!?」
「オレの部屋に行こうぜ」
「部屋!?」
そのまま、創真はずんずんと進んでいく。
「ほら、ちゃんと抱きつけって。落ちるぞ?」
「いや待て! これは、その――」
いわゆる『お姫さまだっこ』だ。男性からこのように扱われた経験は、緋沙子には当然ない。じたばたすると落ちてしまいそうで、しかし離してはくれないようなので――彼女は諦めて、創真の首に腕を回した。
創真の胸に抱かれながら緋沙子は、
(細いのに――やっぱり、がっしりしてるんだな)
と、いまさらながら頬を赤らめた。
創真は、さして危なげもなく階段を登り、自身の部屋へと緋沙子を連れ込んだ。
(ここが創真の……)
外はもう夜。カーテン越しに、淡い街灯の光が、わずかに部屋の中を照らすだけだ。お姫さまだっこが初めてなら、男性の――それも恋人の部屋に入るのも初めてだ。
創真が中学まで使っていた部屋。ここに自分がいるのだということが、緋沙子には不思議に感じられた。そっとベッドに下ろされ、キスをされると、なおさらふわふわとした気持ちになった。
と、同時に、これまでとは別種の高揚もあった。彼の部屋で、彼の寝ていたベッドで、これから私は……そう考えると、体の芯がかあっと熱くなった。
「緋沙子」
創真は電気も点けず、緋沙子に覆いかぶさる。軽いキスから、唇は頬へ。髪をかきわけて耳たぶをやさしく噛まれる。
「んうっ……」
思わず漏れる声。天井の一点を見つめながら、彼の唇の感触と、わき上がってくる期待に身を任せる。首筋を舐められると背筋が震えた。鎖骨に口づけをされると、たまらず彼を抱きしめた。
「創真――……やんっ!」
彼の手が、胸をまさぐる。すでに乳首は勃起しており、服の上から愛撫されるだけでしびれるような刺激が走った。ワンピースの裾がたくし上げられると、寒さのために身震いした。そのせいもあって、あらわになった素肌に添えられた彼の手のひらが、とても熱かった。まるで火傷してしまいそうなほどの彼の体温を感じた。
(もっと……)
もっと彼を感じたい。どうしようもなく抑えがたい欲情が、胸の内からあふれ出てくるのを自覚した。
「んっ、あ――」
創真は緋沙子のブラジャーをはぎ取り、じっくりと乳房の周囲をなめ回す。くすぐったい。じれったい。もっとしっかりと――そんな感情を創真に見抜かれた。
「――どうしたんだ、緋沙子?」
意地悪に、しかし小声で囁くように彼は訊いてきた。
「して欲しいことがあるんなら、ちゃんと言えよ。分かんないだろ?」
鋭い目で見上げられて、緋沙子はぞくっとした快感を覚えた。
さらに、創真の膝は緋沙子の太ももの間に置かれていて、彼はときおり、ぐい、ぐいとそれを押し付けてくるのだ。もはや、体面を気にする余裕などなかった。
「創真、舐めて……」
緋沙子は懇願した。
「乳首を舐めてください。もっと気持ちよく、して」
ぬるりと、創真の舌が胸を這う。
「――っ、あんっ!」
創真が、緋沙子のしこりを口の中で転がすと、彼女はびくびくと体を痙攣させる。
「やあっ、ん、――気持ちいいっ。それ、もっと」
彼は一定のリズムで胸を揉みしだきながら、乳首にも刺激を与え続ける。舐め回すだけでなく、ときに舌を尖らせ、つつくように、押すようにしてくる。
彼のベッドで、彼のにおいに包まれながら、体をむさぼられる。はしたない声を上げて、彼の熱い体を抱きしめる。――創真の手が、緋沙子の下半身に伸びた。
■08 創真の触手(上)
するりとタイツが脱がされると、部屋には発情したメスのにおいが漂った。緋沙子は羞恥に身をくねらせながらも、その体は期待で濡れそぼっていた。もはや触れられるまでもなく、愛液は溢れ続ける。
そしてゆっくりと下着も脱がされる――と、緋沙子は思っていた。
しかし創真は、中途半端に緋沙子のタイツを下ろし、膝のあたりで止めたまま、彼女の股間へと顔をうずめた。まだ下着の薄布に包まれたままの、緋沙子の秘部に口を近づける。
「ま、待て――!」
緋沙子は慌てて声を上げた。
「それは駄目だっ」
「なんで?」
「だって、その、シャワーも浴びてないし……」
「大丈夫だよ。いいにおいしかしない」
「に、においって……!」
さっきまでとは違う恥ずかしさがこみ上げてくる。必死で抵抗しようと脚を閉じるが、創真の力は強い。ぐいと股を開かれて、とうとう、彼の唇は緋沙子の下着に触れた。
「あんっ!」
ふいに出る
「駄目っ、本当に、やだぁ……」
しかし創真はお構いなしに、ぐしょぐしょに濡れた下着に舌を這わせる。愛液と唾液とが混じり、もはや下着の存在すら曖昧になっていく。
「あっ、あっ――んうっ」
クリトリスを舌で愛撫され、割れ目を下から上になぞられ、創真の指は太ももをつうっと撫でる。緋沙子は、次第に脚に込める力を弱めていった。それも無自覚に。心のどこかにはまだ抵抗する気持ちがあったが、体のほうは、とうに快楽に溺れてしまっている。
暗い部屋で、緋沙子の甘いあえぎ声と、ぴちゃっ、ぴちゃっという音とが混ざって響く。
創真は下着をずらすと、じかに緋沙子の秘裂に触れた。指先ではなく、その長い舌で、愛液をすくい取るように舐め上げた。
「――――っ!?」
あまりの感触に、緋沙子は絶句した。粘膜同士の接触は、これまで感じたことのない刺激だった。はじめは少し気持ち悪かった。だが、すぐに快感に変わった。
創真は、つと顔を上げ、
「なあ、緋沙子――」
「そ、そこでしゃべるなっ!」
もはや悲鳴に近い声を上げた。
「緋沙子のここって――」
「へうっ?」
「すげー美味しい」
「ば、馬鹿ぁ……!」
さらに顔をうずめようとする彼の頭を、緋沙子は必死に抑える。しかし無駄だった。彼はむしゃぶりつくようにして緋沙子の陰唇へ舌をあてがい、そして、あろうことか――
「え、え――!?」
にゅるっという感触とともに、彼の舌が内部にまで
「あうっ、やあ――なにこれ、変に、変になっちゃう!」
ぐねぐねとしたものが、膣内を愛撫する。緋沙子の奥から愛液がどろどろと溢れ出る。じゅるっ、にゅる――! 創真は愛撫を止めない。両腕で緋沙子の下半身を固定し、逃げられないようにして、執拗に刺激を与え続ける。
「はあっ! くうっ! 創真、それ駄目、あっ――変な音でちゃう!」
二人の接触するそこから、ぐちゅぐちゅっといういやらしい音がする。緋沙子は身を震わせた。絶頂がすぐそこまで来ている。
(やだ、イっちゃう、舐められてイっちゃう……!)
創真の舌は、緋沙子の蜜をかき回す。そこでは、羞恥と快楽と愛欲とが、どろどろになって溶け合っていた。
「ああっ! 駄目、やああっ――!」
股間からはじゅぶっ、じゅぶっと、あり得ないほどの液体が溢れ、緋沙子の背中は大きく跳ねた。創真の舌に犯されて、緋沙子は激しい絶頂を味わった。
■09 創真の触手(下)
「はあっ……はあっ…………」
緋沙子は荒く息を吐いた。半裸の体は、もはや寒さなど感じなかった。むしろ、じっとりと汗すら掻いていた。内側からの熱が止まらない。
うつろな目で彼を見る。創真は上着を脱ぎ捨てたところだった。薄い明かりの中で眺める彼の筋肉。さらに、彼は下着も脱ぎ去った。彼の下半身は、痛そうなほどにそそり立っていた。
緋沙子の中で、ぞくぞくっとするような欲望が鎌首をもたげた。普段の、品行方正な彼女からは信じがたいことだが――いま緋沙子は、あの肉棒にむしゃぶりつきたい衝動に駆られた。
先ほどの感覚が蘇る。こたつの中で口に含んだあれは、本当に熱くて、鉄を咥えているような錯覚すらあった。もう一度味わいたい。そう考えるより先に、緋沙子の体は動いていた。
「おい、緋沙子――」
やや戸惑った創真の声。緋沙子は上半身を起こして、膝立ちになっている彼の股間へと顔をうずめた。やはり熱い。そして愛おしい。
(創真の、おいしい――)
自身の、はしたない言葉が頭の中で再生される。だが、もう抵抗はしなかった。欲望のままに彼の男根を舐め上げ、じゅる、じゅぽっと音を立てながら首を前後させる。創真は低くうめきながら、右手で緋沙子の胸を揉んできた。二人の上半身は折り重なるようになって、互いに刺激を送り合う。
(胸、気持ちいい。創真の指……もっと、もっと)
ペニスに口を犯され、乳房をもてあそばれながら、緋沙子は彼の腰に抱きついて、ひたすら舌をうねらせる。あごが外れてしまいそうになって、唇の端からは、だらしなく唾液が垂れ落ち、彼のベッドを濡らす。
我慢ができなくなったのは、はたしてどちらが先だったろうか。緋沙子は裸になっていた。口淫の最中にみずから脱ぎもしたし、創真の手によって脱がされもした。一糸まとわぬ姿になって彼女は、彼に押し倒された。
「寒いか?」
言って、創真は彼女に覆いかぶさると、その上から布団を掛けた。
「なんか、変な感じだよな」
「なにがだ?」
緋沙子は枕の上で首をかしげた。
「いやだってほら、オレの部屋に緋沙子がいてさ――しかも裸で」
緋沙子ははにかんで、こくりとうなずいた。
「私も、変な感じだ。でも、とても幸せな気もする」
「あれだな、ちょっと新婚さんって気分だよな」
「う……」
緋沙子は気恥ずかしくて、一瞬顔を硬直させたが、
「――そうだな」
と、微笑んだ。
「愛しているぞ、旦那様」
「オレもだよ、緋沙子」
顔から火が出る思いだったが、創真に優しく頭を撫でられて、口づけを交わすと、幸福感で満たされて恥ずかしさなど消し飛んでしまった。2人は裸で抱擁した。自然と唇を重ね、舌と舌を絡め合わせた。体温が混ざる。布団の中で、2つの肢体が互いを求めてまさぐり合う。
「んうっ、ふうっ……」
漏れる吐息も熱っぽい。動きは次第に激しくなっていき、創真の男根が、緋沙子の秘裂にあてがわれた。それはにゅるりと――とても滑らかに肉壺へと分け入った。
「んっ! ――ああっ」
内側を押し広げられて緋沙子は、ぶるりと、密かに軽い絶頂を迎えた。
「緋沙子の中……すげえ気持ちいい。ぬるぬるだ」
「ん、やあっ――」
創真の腰がゆっくりと動く。緋沙子の膣の感触を味わうように、硬くて熱いものが前後する。
「は、あっ――」
緋沙子は、創真の目を見つめながら、
「私も、いいっ! 気持ちいいの、創真の、すごく気持ちいい! たくさんして。私のこと、もっと犯して……創真の好きにして」
強要されるでもなく、そんな言葉が口を衝いた。自分でも驚いてしまったが、本心だった。彼にだったら何をされてもいいという気持ちだった。私のことを満たして欲しい。彼にもすごく気持ちよくなって欲しい。そんな思いを込めて、彼の瞳を見上げた。
「緋沙子――!」
創真の動きが激しくなっていく。緋沙子の細い腰をがしりと握り、創真は腰を打ちつける。結合部からはいやらしい音が響いた。
「やあっ、あっ、あっ――ひうっ!」
悲鳴のようなあえぎ声は、もう止められなかった。
「すげえよ緋沙子の
「はあっ! やあっ」
ピストンの衝撃が子宮まで届く。
(欲しいっ、創真のが、もっと欲しい……!)
必死になって彼にしがみついた。
「やあっ、ひぐっ、すごいよぉ、気持ちいいっ――あう、創真、もっと、もっと」
緋沙子は抱きしめられ、湯だった柔肉を鋼鉄の棒でかき乱されながら、全身を震わせる。
「んああ――、あんっ、もう駄目、欲しいの、創真のが中に欲しいのぉ! やああ、イっちゃう、イっちゃう……!」
ぢゅぼ、ぢゅぼっと肉壺を貫かれる。創真の肉棒がひときわ膨れあがって――
「あんっ、やああっ! 出てる、創真の出てるうっ……んううっ! あうっ、出されながらイっちゃう……!」
膣内にびゅるびゅると射精されながら、緋沙子は何度目かの絶頂を迎えた。その夜、2人は何度も愛を囁き、何度も肌を重ねた。
■10 夫婦の鏡像
翌日。
食事処ゆきひらのカウンターには、木原夫妻の笑顔が並んでいた。創真と緋沙子の振る舞う料理に舌鼓を打ち、当時の思い出話に花を咲かせていた。
「いやあ、昔はあんなに小さかった創真くんが、こんな立派な料理人になってるなんてね」
人の良さそうな顔をした木原電器の主人は、その見た目を裏切らない優しい口調で言った。創真は、にひひと笑って、
「まあ、まだ修行中っすけどね」
「それに、こんな素敵なお嬢さんまで連れて来ちゃって」
「そ、そんな! 私なんて――」
恐縮して両手を振る緋沙子に、木原夫人が笑いかける。
「あら、とってもお似合いよ。こうして並んでると、本当の夫婦みたい」
「ええっ――!? いや、その……あ、ありがとうございます……」
照れて小さくなる緋沙子を見て、3人はなおも笑った。
◇
木原夫妻を見送って、2人は片付けに取りかかった。肩を並べて洗い物。
そうしていると、創真がふいに緋沙子を見て、
「なあ、緋沙子」
「ん、どうした?」
「愛してるぜ」
緋沙子は、がしゃんと皿を取りこぼす。幸い、割れずに済んだようだ。
「な、ななな、だから急にそういうことを言うなと――!」
慌てふためく緋沙子に、創真が唇を重ねてきた。
「んう――……ん」
私も愛してる。
胸の中でつぶやいて、緋沙子は目を閉じた。
■『悲恋(WSS)が苦手なら飛ばしてね』的な18禁おまけ
それは良く晴れた、冬の日曜日のことだった。
ばたばたばた、と階段を駆け上がり、
(うう、幸平くん……)
食事処ゆきひらの前で彼女が目撃したのは、幸平創真が――幼い頃からの幼馴染みである創真が、他の女の子と並んで木原夫妻を見送る姿だった。その2人の距離感から、彼女はすべてを察してしまった。
だから真由美は、ゆきひらに背を向けて逃げるように走り去った。幸いなことに、今日の我が家には彼女ひとりだけ。おかげで誰にも泣き顔を見られることなく自分の部屋へと逃げ込むことができた。
頭から布団をかぶり、静かな暗闇の中で自分のすすり泣く声だけを聞きながら、彼女は考えた。
(やっぱり恋人、かなぁ……)
創真の隣に立っていた彼女は、とても美人だった。
その上、創真と目を合わせて笑った顔はとても柔らかくて、そこには遠慮など微塵も感じられなかった。親しげなまなざしを向け合う彼女たちの間には、誰一人として割って入ることはできなさそうだった。
今ごろ2人は――などと考えると、胸が締めつけられるように痛くなった。けれど、想像は止まらなかった。
(恋人だったら、きっと……)
自分の唇を、人差し指ですうっと撫でる。
幸平くんのキスってどんなだろう――、どんな言葉を囁くのかな? あの腕で抱きしめられたら?
いけないことと知っていながら、真由美は妄想に身を浸していく。
ぺろりと、指先を舐めた。彼女の指は、今はもう自分のものではない。創真の指だ。その指は、首筋を撫で、健気に膨らんだ胸に触れる。
(ダメ、こんなことしちゃダメなのに……!)
それでも、甘い誘惑には勝てなかった。せめて妄想の中でだけは、彼の愛情をこの身に――。
いつの間にか指は服の下へと潜り込み、胸のこりこりした突起物を転がしていた。もう一方の手は、しっとりと湿った下腹部へと伸びていた。くちゅ、くちゅん――と、愛液が音を立てる。
(は、ああっ……いやっ、幸平くん、ダメだよぉ……)
指は止まらない。じゅぶっ、じゅぶっと、熱い肉壺をかき回す。
「はあっ――んうぅ、気持ちいいよぉ、幸平くんのおちんちん、すごいよぉ……!」
あえぎ声も止まらない。
「……ああっ、イク、幸平くんのおちんちんでイっちゃうよおっ――!」
快楽の波がひとしきり過ぎ去ると、次には罪悪感が襲ってきた。
「はあ……はあ……」
目からは涙がこぼれ落ちる。しかし、寂しさを埋めるように、彼女の手はふたたび秘部へと伸びた。くちゅくちゅと、布団の中では湿った音が続いていた――。