■01 紅葉のトンネル
『
――それは〝敵対する者
◇
色づき始めた
遠月の系列らしいのだが、威圧するような仰々しさはなく、こぢんまりと、それでいて風格のある佇まいをした温泉旅館だった。
「ふうん、いいところじゃん」
幸平創真はひとり、ボストンバッグを片手にのれんをくぐる。
出迎えもまたひとり。
年の頃は十五、六といったところだろうか、ボブカットの少女だ。なでしこ色の着物姿の、ほっそりとしたシルエットに、涼やかな目元。薄い唇。格式のある旅館にもふさわしい、整った美貌の持ち主――
……というか、緋沙子だった。
「い、いらっしゃいませ。ようこそおいでくださいました……」
引きつった笑みを浮かべる彼女。
「おう。あれ、緋沙子ひとりなのか?」
「え、ええ……。そういう約束でしたから……」
「あー、そうだっけ? ま、いいや。んじゃよろしく」
「…………」
気負いなく振る舞う創真を案内しながら、緋沙子はにがい表情を浮かべ、胸のなかで叫んだ。
(どうしてこうなった……!? どうしてこうなったぁ…………!!)
■02 いざ尋常に!
発端は料理対決だった。
遠月学園は料理人を目指す少年少女たちがしのぎを削る、いわば梁山泊である。
より高みを目指さんとする彼らのあいだでは、正式なルールに則った食戟以外でも、腕試しというか、日常的に野良試合が繰り広げられているのだ。
「くっ、これは……。悔しいが、私の負けだ……」
その日の緋沙子は、もう何度目かの創真との料理対決で敗北を喫した。恋人同士とはいえ料理では真剣勝負。悔しいが、今回創真の差しだした皿は緋沙子のそれを上回っていた。
トータルの勝率は五分といったところ。
とはいえ、創真がゲテモノ料理を封印しさえすれば彼が勝ち越しているはずだが……。
「いやあ、緋沙子の薬膳ラーメンもなかなかだったぜ」
「……で、私はなにをすればいい?」
単なる料理勝負ではつまらない、ということで、最近は食戟さながら、敗者に罰ゲームを課すのが通例になっていた。今回、二人のあいだでの取り決めは『敗者が勝者を全力でもてなす』という漠然としたものだった。
「あー、任せるわ。緋沙子にできる最高のおもてなしってやつ、期待してるぜ」
「…………」
そうは言われても……。
思い悩んだすえに緋沙子の頭に浮かんだのは、遠月グループが所有し、その経営を新戸家が担っている温泉旅館のことだった。
そうだ、温泉旅行なんてどうだろう?
……という緋沙子の提案に、いじわるな笑みで創真は、
「ふうん。でもそれって
「う、それはっ――」
よし、そこまで言うならばやってやろうじゃないか!
発奮した緋沙子は旅館を貸し切り、自身は仲居として創真を招くことにしたのだった。
元来の凝り性である。
旅館スタッフの手も借りたものの、創真が宿泊する部屋のそうじ、玄関で出迎える季節の花や、料理の仕込みなどは彼女によるものだったし、自身の着物はわざわざ老舗の呉服店に足を運んで彼女の目で選んだものだ。
……だからまあ、「どうしてこうなったのか」は、半分くらいが自分のせいだった。
■03 まずは挨拶がてら
「どうぞ、こちらのお部屋です」
気を取り直し、緋沙子はおだやかな笑顔で
和室と寝室、それから内風呂のついた間取りで、障子とガラス戸の向こうには、情緒溢れる庭を眺めることができる。
すっかり仲居モードに染まった緋沙子は、ひと通り旅館内の説明を終えると、夕食の準備のため立ちあがった。
「…………」
緋沙子の和服姿は新鮮だ。彼女の持つ清楚な雰囲気が何割増しにも感じられ、しかもそれでいて、たおやかな仕草のなかに色っぽさも見える。
「んー……」
その後ろ姿を眺めているうち、創真は衝動的に立ちあがっていた。
「なあ緋沙子」
「はい――?」
背後から、彼女の細い肩を抱きすくめる。
「えっ、あの、お客さま!? い、いけません……!」
(…………。意外とノリいいな)
えりなのお付きとして長い緋沙子である。こういう、主従関係にはあまり抵抗がないのかもしれない。よし、せっかくなのでこのまま『成りきりプレイ』を楽しもう。創真はそんなことを思った。
「いいだろ、ちょっとくらい」
腕の中でもがく緋沙子を力尽くで押さえながら、首元に顔をうずめる。ほのかに甘い香り。創真は着物の
「お、お客さま……! あ、駄目です……!」
柔らかな胸をまさぐりつつ、強引に唇を重ねると、やがて耐えられなくなった彼女は、すとんと畳へ崩れ落ちた。
「こんなこと……!」
目もとを潤ませながらも、なお反抗的な視線で見あげてくる和服姿に、創真の嗜虐心がぞくりと刺激された。
■04 かしづく少女
夕暮れどきも近い。
窓からの西日は赤みを増して、少女の頬を朱に染める。
創真は緋沙子の腕をつかみ、強引に引き寄せた。
「あっ――」
緋沙子の眼前に股間を突きつける形だ。
戸惑う彼女に創真は、
「仲居さんのせいでこんなになっちゃったんだけど? どーしてくれるの?」
「ど、どうって……」
ズボンのふくらみを前に少女の視線がさまよう。
「お客が苦しんでるんだぜ? どうにかしてくれよ」
「ですが……こんなところで……」
緋沙子を見おろしながら創真は、彼女の美貌に手を伸ばす。くいっとあごを持ち上げ、その薄ピンクの唇に親指で触れる。
「あっ――」
緋沙子の背筋がびくんと跳ねた。
「この口で、気持ちよくしてくれよ」
「…………はい」
観念したように、そして熱に浮かされたように少女は、創真のベルトに手をかける。ジッパーを下ろし、ボクサーパンツの上から、揉むようにして創真の怒張を愛撫する。両手で、丁寧に。
「――――くっ」
その快感に、自分の意思とは無関係に腰がびくびくと震える。
「お客さま……いかが……でしょうか?」
緋沙子がボクサーパンツをずり下ろすと、痛いくらいに勃起した創真のペニスがあらわになる。少女は息を呑み、
「すごい、もうこんなに……」
手のひらで包むようにして、ささやかな愛撫をはじめる。もうこんな行為には互いに慣れているはずなのに、今日の緋沙子はどこかたどたどしく、それがやけにむず痒く、新鮮に感じられた。
ちろりと、小さな舌が肉棒に這う。根元から上へ。反り返った中腹を越え、その頂上へ。何度も何度も繰り替えされる。
「…………っ!」
立っているのがつらくなるほどに焦らされたあと、緋沙子の舌はようやく創真の亀頭へと伸びた。先端の穴をちろちろと舐めて、
「んっ、えうっ……ん、お客さまから、にがいお汁が出てます……」
いやらしい水音を立てながら緋沙子は肉棒を舐めまわし、やがて睾丸のあたりへ顔をうずめて、口に含むようにしてころころと転がした。
「うっ――く……」
じらすような少女の愛撫に射精感がこみ上げてくるが、刺激が弱すぎて達することができない。
「……なんだよ、無茶苦茶エロいじゃんか。したくてたまらなかったんじゃないのか?」
「そ、そんなこと……」
そう言う彼女だが、顔はすっかり上気し、涼やかだった目元はとろけている。和服の胸元ははだけ、形のいい鎖骨が見え隠れしている。
創真は彼女の口先に怒張を向けて、
「ほら、口のなか犯してやるよ。大きく開いて」
「…………はい、お客さま」
くぱっと開かれた、紅い口の中へとペニスを突っ込む。
熱い。
「んぐっ、んんっ――」
苦しげな表情で緋沙子は、懸命に頭を前後させる。
ぐぽっ、じゅる――
肉棒はたっぷりの唾液に包まれて、まるで膣内に挿入しているような快感を浴びる。少女の舌は口内でペニスを這いまわり、奥へ、奥へといざなう。深いストローク。
緋沙子の口角から、つうーっと唾液が垂れ、着物の裾を濡らす。
「はう、あむ……んんっ……」
着物姿の少女をかしづかせ、奉仕させる愉悦。下腹部にたまった欲望は暴発寸前だ。
「緋沙子――」
創真の限界を察したのか緋沙子は、
「どうぞ……私の口にたくさん出してください。濃いおちんちん汁、いっぱい注いでください」
ふたたび顔をうずめて、じゅる、じゅるっとペニスに吸いつく。
緋沙子の頭を両手で抱え、彼女の喉奥へと欲望をぶちまける。
「イクぞ、緋沙子――!」
「んうっ、んん――!」
びゅるっ! びゅるっ!
熱い口内で、激しい射精。
「ん――! んぶっ……」
ペニスの痙攣に合わせ緋沙子の眉も跳ねる。どくどくと注がれる精液を嚥下し、口をすぼめ、竿に残ったものを搾り取るように吸う。
「――ん、ふぁ……すごいです、こんなにたくさん……」
創真がペニスを引き抜くと、名残惜しそうなまなざしで緋沙子は見あげてくる。
彼女は
「……あの、お客さま。よろしければ、露天の浴場をご案内します」
遠慮がちにそう言った。