■05 洗体遊戯
陽は山の稜線に姿をひそめ、しんしんとした夜が空を覆いはじめていた。
火照った体に秋の風が心地良い。
さほど広くない露天風呂。絶え間なく湯が注がれる岩風呂は、もうもうと湯気を立ちのぼらせている。
旅館が貸し切りなのだから、当然、創真ひとりだ。
洗い場で身体を流していると木の引き戸が開かれて、純白の
◇
緋沙子は頬を赤らめながら、
「そ、それでは……お背中お流しします……」
たっぷりの泡を手のひらに乗せ、創真の背に広げていく。
「次は前を……」
回り込んで、今度は彼の胸板へと手を伸ばす。
「…………」
湯の音と、虫の音が響く露天風呂に二人きり。薄手の長襦袢を羽織ってはいるものの、下着はつけていない。
(こ、これは……。むしろ裸より恥ずかしいような……)
創真の視線を受け身をよじりながらも、手を止めることなく、彼の首筋を、肩を、腕を洗っていく。創真はけっして筋肉質なほうではないが、よく引き締まった身体をしていて、緋沙子はしなやかな筋肉の感触を手のひらで味わう。
(この腕に抱きすくめられたら私は……)
などと考えて、全身が熱くなる。
しかし男の身体を洗って興奮するなんて、それはもう変態じゃないか……。
煩悩を振り払うように頭を振り、うつむくと、視線の先にちょうど、タオルが被せられた創真の下腹部があって、
「――――っ!?」
思わず緋沙子は身を固くした。
見慣れたとまでは言わないまでも、先ほどまで愛撫の対象にしていたのだから、興奮も緊張も今さらだとは思うが――しかし、ここは屋外なのだ。
いくら貸し切りとはいえ、見あげれば夜が迫る空が広がっており、垣根はあっても、その気になれば誰かが外から覗くこともできるだろう。
(こんなところで私は……)
はしたない。
そう思う一方で、心臓はバクバクと、もっと刺激を求めて脈打っている。両手は恋人の腹部を、そして腰を撫で回し、それから――
「緋沙子」
「は、はいっ――」
唐突に声をかけられ、驚いて見あげた緋沙子の
「――んっ!?」
唇を奪われた。
「んっ、んうっ――」
短いキスのあと創真は、
「緋沙子のことも洗ってやるよ。ほら、お湯」
「…………」
手桶で湯をかけられると、長襦袢が肌に貼りついて、不思議な感触がする。
やはり、裸より恥ずかしい。
「緋沙子、触ってもないのに乳首立ってるじゃん」
「えっ、やっ――!」
緋沙子が胸をかばうよりも、創真の指が伸びるほうが早かった。服の上から乳首に触れられる。軽くつまむようにして、やさしく、布越しにじれったい刺激を与えてくる。
「あっ、やぁっ――」
「すげぇ、もうコリコリだぜ」
びくん、びくんと背中が跳ねて、電流が走る。人差し指と親指で挟まれたり、先っぽを親指の腹で弾かれたり、つつかれたり。そのたびに快感が全身を射貫く。
「は、ああっ……い、いけませんお客さま……あんっ!」
いやいやをしながら、けれど胸を突き出すようにして愛撫に身を任せる。
「緋沙子、すっげぇ可愛いよ」
言われると、うずきが止まらなくなる。
(だ、駄目だ……こんな……)
ぎゅっと握った両手を自身の股間のところへ置いて、せり上がってくる溶岩のような愛欲に抵抗する。
「あ――――」
執拗な愛撫に、初めての感覚が襲ってきた。
「あっ、駄目です、それっ! やあっ――」
「……もしかして緋沙子、乳首だけでイキそうなのか?」
「――――っ」
言い当てられた
「ほんと、エロいんだな」
「そんな……ことはっ!」
「いいぜ。イっていいよ。見ててやるから」
リズミカルに、そして一定の強さで刺激を加えらたことによって彼女の乳首は、ビンビンに勃起していた。少しの刺激でも信じられないほど気持ちがいい。思わず腰が痙攣して、下腹部がきゅっと収縮する。
「はぁっ、いや、恥ずかしい――」
「いいからほら、イケって」
「うっ、やあっ! イっちゃう、私、ほんとに乳首でイっちゃう……!」
我慢できない。身を焼くような快楽に、頭のなかまで支配されていく。
「あっ! いいっ、イク、やあああああっ――!」
びく、びく!
全身を激しく震わせながら達して、緋沙子は荒い息を吐く。
「はあ……はあっ……」
ぼんやりとした視界のなかに、創真の屹立したモノがある。
「…………」
緋沙子はゆっくりとタオルをはがし、ボディーソープを泡立て、そっとそこへ手を差し伸べる。
「…………」
無言のまま、熱くそそり立ったペニスを洗っていく。
「くっ――」
創真の口から苦しそうな声が出る。
緋沙子は手のひらを先端に押し当て、撫でる。泡のおかげで滑りがいい。ぱんぱんに膨張した亀頭を撫で回しながら、もう一方の手で睾丸を包み込む。
「ここは念入りに洗って差し上げますね……」
「うっ――く」
悶える創真へ緋沙子は、熱い吐息まじりに言う
「気持ち、いいのですか……? ふふ、嬉しいです。もっと気持ちよくなってくださいね……」
指で輪っかをつくり、亀頭の付け根をきゅっ、きゅっと刺激する。
「う、やべぇよそれ――」
「……いいですよ。たくさん出してください。全部、
睾丸へのマッサージとリズムを合わせ、指を上下に運動させる。リズムを速めると、創真のあえぎ声が強くなる。
暴発しそうなペニスに顔を近づけ緋沙子は、
「出してください。創真さまの精液、びゅっびゅって、たくさん私にください」
「ぐっ、緋沙子っ――!」
びゅるっ、びゅるっ!
緋沙子の眼前で、いきおいよく白濁液がぶちまけられる。
「んっ!」
その熱くて生臭い液を顔に浴びながら緋沙子は、
「……ああ、すごい。まだ、まだ出てますよ……」
ペニスに残った精液を、先端へと導くようにして搾り取る。そこへ唇をつけ、ちゅうちゅうと吸い取る。射精後にもなお加えられる刺激に、創真は苦しそうな顔をする。
「ふふっ、創真さまのおちんちん汁、おいしいです」
言って緋沙子は、熱い視線で彼を見あげた。
■06 岩風呂
「あっ、はっ――、そんなところ……汚いです……!」
岩風呂の縁に緋沙子を座らせ、創真は湯船の中で膝立ちになって、彼女の股間へと舌を伸ばした。
脚を開いて秘部をさらすことに初めは強く抵抗していた彼女も、快楽には打ち勝てなかったようだ。長襦袢はほとんどはだけ、もはや衣服としての用を為していない。
「すげぇ綺麗だよ、緋沙子のここ……」
「い、言わないでください、そんなことっ――」
まじまじと秘部を見つめると、彼女は両手で頭を押してきて、拒絶の意思を見せる。
日は暮れ、あたりは暗くなったとはいえ、浴場に設置された暖かみのある灯りが二人を照らしている。
彼女の茂みは薄く、控えめな秘唇の色素もまた薄い。
その、きゅっと引き絞られた可憐な花びらから、とろりとした愛液があふれ出ている。創真はそこへ舌を伸ばすと、すくい取るようにして舐め上げる。
「ひうっ――! い、いや、いけません……!」
そうは言うが、秘部はひくひくと蠢いて、歓喜している。両手を沿えて花びらを開かせ、創真はなおもそこへと吸いつく。
「やあっ、あっ、あっ……!」
舌を、とろりとした蜜壺の、その奥へ。緋沙子のむせかえるような女のにおいが創真の興奮を掻きたてる。
「ふうっ――、うあっ、いや、いやぁ……!」
じゅるっ、ぐぷっ!
逃げようとする緋沙子の両足を腕で押さえつけ、執拗に
が。
創真は一旦、顔を離して、
「――そっか。いやなのか」
「……え?」
今度は指でクリトリスの包皮を剥き、
「緋沙子はこっちがいいんだな」
あらわになったピンク色の肉芽を、舌先で舐め転がす。
「ひっ、いやあっ、そこ、そこ駄目っ……おかしく、おかしくなっちゃう!」
ビクンと跳ねる腰を押さえつけ、なおも舌を這わせる。緋沙子の愛液を舌ですくって、そのままクリトリスへと塗り広げると、緋沙子の嬌声はいっそう高くなった。
「ひうっ、駄目、またイっちゃう! やだ、やだぁ――!」
髪を振り乱し緋沙子は絶叫する。
ひときわ大きな痙攣があったあと、彼女はぐったりと仰向けに倒れてしまった。じゅくじゅくに熟した秘部が創真の眼前にあって、そこから、むわっとした湿気が放たれている。
「……緋沙子、エロすぎ」
彼女を抱きかけるようにして起こし、体位を入れ替える。今度は創真が縁に腰かけて、緋沙子にまたがせた。抱き合う体面座位の格好で、肉棒を秘裂にあてがう。
「んっ――んんっ――」
たっぷりと濡れた緋沙子の肉を押し分け、挿入する。
ずぷっ、ずぷっ――
と、ペニスが根元まで収まったところで、
「は、はああっ……!!」
緋沙子がひっしと抱きついてきて、身を震わせた。
「……もしかして、
たずねると、彼女はこくこくと頷く。耳元に吐きかけられる息は切なく、湿っている。
だが創真は容赦しない。
腰をなめらかに動かし、緋沙子のことを突き上げる。
「――っ、はあっ、あぅっ!」
膣内は
「いいよ緋沙子、すっげぇ締まる……」
「んっ、いい……、奥、気持ちいいのっ! すごい、すごいの来ちゃうっ――! ん、んん――っ!」
必死にしがみつきながら達する緋沙子が愛おしくて、そしてまた嗜虐心を掻きたてられて、創真は何度も彼女のなかをかき混ぜる。柔肉が肉棒を包み、うねり、絶頂へと誘う。
「くっ、出すぞ緋沙子――」
どく、どくっと、またも濃い射精。それでもまだ治まらない。
「緋沙子――」
「あむっ、んんっ――」
唇を重ね合わせながら、空いた両手で少女の乳首をこりこりと転がす。
「ふっ!? んむぅ――! やああっ、駄目、胸は、やあっ!」
汗や唾液、愛液にまみれて緋沙子は、快感をむさぼるようにみずからも腰を振る。
ぱちゅ、ずにゅっ!
股間の粘膜が音を立て、互いのあえぎ声が混じる。
「来る、また来るっ――! 一緒に、創真も一緒に……!」
「――オレも、オレもやばい……!」
亀頭を緋沙子の奥、子宮口にまで押しつけ、一気に射精する。
どくっ、どくっ!
「ん、イク、イクっ! あああっ――、やああっ!」
膣が収縮し、激しくペニスを抱擁する。いったい何秒続いたのだろうという射精を終え、創真はぐったりする緋沙子に、
「つーか、途中から接待じゃなくなってない?」
「……し、仕方ないだろう。こんなふうにされては……」
今さらながらに彼女は、自身の乱れっぷりを恥じているようだ。
だが緋沙子は、腰を引き抜くと湯船に浸かり、まだ小さく痙攣するペニスをぱくりと咥えた。ちゅる、ちゅるっと残った精液を吸い取りながら、
「――お客さまのここ、綺麗にして差しあげますね」
にこりと笑った。
■07 ふたり
浴衣で部屋に戻ると、ややあって緋沙子が料理を運んできた。事前に下準備を済ませておいたらしい懐石料理は、味も素晴らしかった。
そこで今回の接待は終了、ということになり、緋沙子は内風呂で軽く汗を流し、浴衣姿で戻ってきた。
「ふう……」
さすがに疲れた。
……あのあと、風呂場でけっきょく二度ほど
「いやあ、最高だったなぁ」
などと、創真はあくまで呑気な様子だ。
「それになんだか身体がポカポカするしな。温泉効果か?」
「そ、そうか……」
ちゃぶ台の、創真の斜め横に座りながら、緋沙子は口ごもる。
実は、こういうことになるだろうと思って懐石料理には精力のつくレシピを選んでいたのだ。あまり露骨だと気恥ずかしいので、目立たない食材で誤魔化してはいたが。
それにしても、食事の前からあんなにしてしまうとは想定外だった。
今日はさすがに、このまま眠るだけだろう。いくら精力増強レシピとはいえ、そこまで即効性があるようなものではない。
(まあ、いいか……)
性欲は十分に満たされた。
けれど――
(せっかく二人きりなのだから……)
という気持ちが、ないでもない。
「…………」
投げ出された創真の脚に緋沙子は、自分の足先で触れてみる。
「ん――?」
「…………」
自分でも、一体なにをしているのだろうと思いながらも、ちゃぶ台の下で脚を絡め、すりすりと、甘えるように
「緋沙子?」
「い、いや……その……嫌じゃなければ、なのだが……」
うつむき、精一杯の声をしぼり出すと、ぐっと腕を引き寄せられた。
「あっ――」
創真の顔が近い。
ばくばくと胸が鳴る。
「緋沙子が可愛すぎて、手加減できそうにないけど、いいか?」
「う――ああ、好きにしていいぞ……。まったく、きみのせいで私まで変になってしまった……」
「そうか? 緋沙子は最初からエロかったと思うけど?」
「なっ!?」
「ほら、こことか……」
創真の手は緋沙子の浴衣の裾から滑り入ってきて、ショーツ越しに秘裂をなでる。
「あっ、やっ――」
「もう濡れてるじゃん」
「う、嘘を――」
吐くな、という抗議の声は、しかし、くちゅくちゅという蜜音に阻まれ、緋沙子は唇を噛んだ。
「くっ……」
嘘を吐いているのは自分のほうだ。創真に触れられる前から、とっくに彼を求めてうずいていたのだから。
創真は緋沙子を押し倒すと、自身の浴衣をはだけさせ、前戯もほどほどに彼女のなかに
「んっ、ああっ――」
しかし痛みなどない。緋沙子の肉体は、驚くほどスムーズに彼を受け入れていた。
「創真……」
彼の首に手を回して引き寄せる。応じた創真がやさしく頭を撫でてくれて、緋沙子は身体の芯から痺れるのを感じた。
「仲居モードの緋沙子も良かったけど、いつもの緋沙子もやっぱ最高だな」
「な、なんだそれは――んっ」
「大好きだってこと」
「――っ! そ、それは私だって……」
身も心もつながる快感に緋沙子は打ち震えて、
「私だって、大好きだ……」
ぎゅうと彼のことを抱きしめ、互いの熱を確かめ合った。
早秋の夜は、熱くて長い――。
(完)