■04 夜、深まる
緋沙子が寝付けず、もう何度目の寝返りを打った頃だったろうか。ソファのほうから創真のくしゃみが聞こえた。続いて、鼻をすする音。
「……幸平創真」
「ん、おう、わり。音立てないように気をつけるわ」
ソファの影から、創真の右手がひらひらと振るわれる。
「…………」
緋沙子はしばし考えた後、むくりと体を起こし、
「こっちで寝てはどうだ……」
と、小さな声で問い掛けた。静かな室内では、自分の声がやたら大きく響いた気がした。
「こっちって、ベッドでか?」
「ああ。そのままでは風邪を引くぞ。その……幸い、ベッドは広いワケだし……2人寝るくらいなら、何とか」
言いながら、急に恥ずかしさが込み上げて来た。
何を言ってるんだ私は。
一緒に寝る?
朝まで?
そんなこと――
やっぱり撤回しようと唇を動かしたその時――。創真が上体を上げてこちらを見た。暗がりの中、視線が宙でぶつかる。
「いいのかよ……?」
どきん――
心臓が大きく跳ねた。
「う、後ろ向きだぞ!? 手は触れるなよ!」
慌てて言葉を継ぐ。
創真の反応を待たずに、緋沙子はベッドに倒れ込み、窓のほうを向いて布団に包まった。
「……んじゃま、お言葉に甘えて」
創真の声がして、背後に近づいて来るのが分かった。布団の片側が持ち上げられ、ふわりとした風が緋沙子の背中を撫でた。ごそごそと、彼がベッドに入ってくる。約束通り、背中合わせだ。
「さんきゅ。実は結構寒かったんだよな。助かるぜ」
「そ、そうか」
こうして、緋沙子は自分の行動に確かな答えを持たぬまま――夜の闇の中で、睡魔が眠りへと誘ってくれるのをひたすら待った。
+ + +
創真がわずかでも動くと、緋沙子は過剰に反応してしまう。今のところ彼は紳士的に振る舞っているが、正直、気が気ではなかった。
とはいえ、自分から言い出しておいて、緋沙子は引くに引けぬ状態になっており、もはや「早く朝よ来い」と祈るばかりだった。
創真の咳払いに、びくっと肩を振るわせた時。彼は言った。
「……あのさあ。オレ、やっぱソファに行くわ」
「え?」
「このままじゃお前、眠れねーだろ?」
彼の声は、少し気だるそうにも聞こえた。
……それはそうだろう。招かれてやって来てみれば、明らかに警戒されているのだ。居心地が悪いに違いない。
しかし、彼が立ち上がろうとした瞬間、緋沙子は思わず彼の部屋着を掴んでいた。
「す、すまない……、そんなつもりはないんだ。敬遠しているつもりは……」
なぜだか、弁解しないといけない気がした。
「その、少し話せないだろうか?」
そう言って、彼を引き留めていた。