※この作品はR-18です。

秘書子とソーマ   作:タイフーンの目

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スタジエールの夜に(その3)

■04 夜、深まる

 

 緋沙子が寝付けず、もう何度目の寝返りを打った頃だったろうか。ソファのほうから創真のくしゃみが聞こえた。続いて、鼻をすする音。

 

「……幸平創真」

 

「ん、おう、わり。音立てないように気をつけるわ」

 

 ソファの影から、創真の右手がひらひらと振るわれる。

 

「…………」

 

 緋沙子はしばし考えた後、むくりと体を起こし、

 

「こっちで寝てはどうだ……」

 

 と、小さな声で問い掛けた。静かな室内では、自分の声がやたら大きく響いた気がした。

 

「こっちって、ベッドでか?」

 

「ああ。そのままでは風邪を引くぞ。その……幸い、ベッドは広いワケだし……2人寝るくらいなら、何とか」

 

 言いながら、急に恥ずかしさが込み上げて来た。

 

 何を言ってるんだ私は。

 一緒に寝る?

 朝まで?

 そんなこと――

 

 やっぱり撤回しようと唇を動かしたその時――。創真が上体を上げてこちらを見た。暗がりの中、視線が宙でぶつかる。

 

「いいのかよ……?」

 

 どきん――

 心臓が大きく跳ねた。

 

「う、後ろ向きだぞ!? 手は触れるなよ!」

 

 慌てて言葉を継ぐ。

 創真の反応を待たずに、緋沙子はベッドに倒れ込み、窓のほうを向いて布団に包まった。 

 

「……んじゃま、お言葉に甘えて」

 

 創真の声がして、背後に近づいて来るのが分かった。布団の片側が持ち上げられ、ふわりとした風が緋沙子の背中を撫でた。ごそごそと、彼がベッドに入ってくる。約束通り、背中合わせだ。

 

「さんきゅ。実は結構寒かったんだよな。助かるぜ」

 

「そ、そうか」

 

 こうして、緋沙子は自分の行動に確かな答えを持たぬまま――夜の闇の中で、睡魔が眠りへと誘ってくれるのをひたすら待った。

 

  + + +

 

 創真がわずかでも動くと、緋沙子は過剰に反応してしまう。今のところ彼は紳士的に振る舞っているが、正直、気が気ではなかった。

 とはいえ、自分から言い出しておいて、緋沙子は引くに引けぬ状態になっており、もはや「早く朝よ来い」と祈るばかりだった。

 

 創真の咳払いに、びくっと肩を振るわせた時。彼は言った。

 

「……あのさあ。オレ、やっぱソファに行くわ」

 

「え?」

 

「このままじゃお前、眠れねーだろ?」

 

 彼の声は、少し気だるそうにも聞こえた。

 ……それはそうだろう。招かれてやって来てみれば、明らかに警戒されているのだ。居心地が悪いに違いない。

 

 しかし、彼が立ち上がろうとした瞬間、緋沙子は思わず彼の部屋着を掴んでいた。

 

「す、すまない……、そんなつもりはないんだ。敬遠しているつもりは……」

 

 なぜだか、弁解しないといけない気がした。

 

「その、少し話せないだろうか?」

 

 そう言って、彼を引き留めていた。

 

 

 

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