※この作品はR-18です。

秘書子とソーマ   作:タイフーンの目

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スタジエールの夜に(その4)

■05 本当の夜の始まり

 

「幸平創真。君の事を少し、誤解していた」

 

 2人はベッドに並んで座った。照明は消したままなので、部屋は暗い。柔らかなヘッドボードに背を預け、枕を胸に抱いて、緋沙子はそう切り出した。

 

「初めて会った時は、君は粗野で、乱暴で、品性の欠片もなくて、無礼で、無知で、有害で、不遜で……」

 

「おい、お前な――」

 

「しかし、このスタジエールで私の考えは変わった。君は状況に振り回されず、落ち着いていて、柔軟な発想で課題を切り抜けてみせた」

 

 目は合わせられなかった。膝の辺りを見ながら、緋沙子は続けた。

 

「君が居なかったら私は、きっと挫折していたと思う。それに何より――私が真に望んでいた事を、進みたいと思っていた道を気付かせてくれた。……感謝に堪えない。本当に、ありがとう」

 

 謝意を示しながら、横目で創真を窺(うかが)う。

 彼は相変わらず軽い笑みを浮かべている。

 

「なんだよ、いいっての、そんなこと」

 

「それに……楽しくも感じていたんだ。その……今回、君と過ごした研修は。なのに……。今だって君は冷静でいるのに、私は君を避けるような真似ばかりして、嫌な思いをさせて。すまない。でも、そんなつもりはないのだ。避けるつもりは」

 

「ふーん。誤解ねえ。なんだ、じゃあ、おあいこだな」

 

「あいこ? どういうことだ?」

 

 創真は笑ってみせて、

 

「オレだって新戸のこと、もっと堅物だって思ってたしな」

 

「堅物……」

 

「でも意外と可愛いところもある――っつーのが分かっただけでも、スタジエールに来た価値はあるよな」

 

「なっ、か――」

 

「不器用なとこもあるけどさ、真っ直ぐで、熱いやつなんだなって思ったぜ。それに……エプロンも似合ってたしな」

 

「だ、だから! 何なんだそれは! ――っ」

 

 緋沙子が隣を振り向いた瞬間、2人の目が合った。沈黙。しばらく見つめ合う格好になって、緋沙子は自分の胸の鼓動が、今までになく高まるのを感じていた。

 

 どうしてしまったのだろう。直視していると胸が苦しいのに、目を逸らすことが出来ない――

 

 

「新戸」

 

 創真の真剣な声色に、緋沙子は頬が上気するのを自覚した。辺りが暗くて良かったと思った。

 

「――ひとつだけ、お前、まだ誤解してることがあるぜ」

 

「まだ? 何を――」

 

「オレ、全然落ち着いてなんかねーよ。この部屋に入ってからずっと、緊張しっぱなしなんだよ」

 

 創真の左手が、緋沙子の右肩を掴む。

 

「あ――――」

 

 体が勝手に、びくんと反応する。

 創真の顔が、緋沙子のすぐ前に寄せられた。

 

「落ち着いてなんか、いられるわけねえだろ……」

 

「あ、や――」

 

 左肩も掴まれ、緋沙子の体が、創真の手によって引き寄せられる。

 

 ――そっと、2人の唇が重ねられた。

 

 緋沙子は、ただ堅くまぶたを閉じるしか出来なかった。

 

 

■06 むさぼり狂う

 

 初めは、ただ薄皮が触れる程度の口づけだった。

 しかし創真の激情は、堰を切ったように溢れ、もはや留めることは出来なかった。緋沙子はまるで固まったまま、目を閉じ、体を強張らせている。

 

 創真は、それを解きほぐすように、何度も唇を重ねていく。

 

 もう――我慢など、出来るはずもなかった。

 

 

 創真はずっと、彼女の事を見ないようにしてきた。部屋に入る時も、風呂あがりにも、ベッドに入り込む時にだって――目をそらしてきた。

 

 真っ直ぐに見つめてしまっては、きっと自制が効かなくなる。そんな確信があったし、実際、それは現実になった。

 

 

「んっ――はぁ……」

 

 緋沙子の吐息が、創真の脳髄を揺らす。

 

 お互いに、不器用なキス。

 しかし繰り返すうちに、彼女の唇からは余計な力が抜け、肩に込められていた緊張も、少しだけ様子が違ってきた。

 

「ん、ふぅ……」

 

「……新戸」

 

 一旦顔を離し、見つめ合う。

 緋沙子の瞳には、湿ったような熱が満ちていた。

 

「やっぱお前、すげぇ可愛いよ」

 

「な――」

 

 今度は、唇をむさぼるような口づけ。

 互いの粘膜と粘膜が、交じり合い、絡みあうような甘い快感。

 

 創真は、彼女の内側へと舌を伸ばす。

 

「――っん、うっ……!」

 

 緋沙子の驚きが、体の震えとして伝わってきたが、構わずに儀式を続ける。舌先で、彼女の薄く、それでいて柔らかい唇を堪能する。びくりと、少女の肩は震えた。

 

 さらに舌をねじ込む。

 緋沙子はまだ戸惑っているようだが、それでも、おずおずといった風に――創真の動きに呼応するかのように、舌の動きで愛撫に応える。

 

 ぬらりとした感触。

 どんな料理でも味わったことのない、甘美で、刺激的な感覚だった。

 

 じゅるっ、ぴちゃっ――

 

 2人の赤い舌は、まるで蛇のまぐわいのように、互いを絡め取ろうと這い回り、擦れ合う。

 

「は、ふぁ――」

 

 緋沙子は息苦しそうに声を漏らすが、容赦はしない。

 ――否、出来なかった。

 

 

(新戸をむちゃくちゃにしたい――)

 

 もはやその思考だけが、創真の体を突き動かしていた。

 

 

 彼女の肩を強く握っていた右手を、ゆっくりと這わせる。まずは、腕に沿って。緋沙子の両手は、胸の前で組まれたままになっている。

 

 細い二の腕の輪郭をたどり、肘を撫で、たおやかな手首へ。そこでようやく、彼女の肌に直に触れる。

 

「――――っ!」

 

 瞬間、創真の手のひらに快感が走った。

 これはまったく予想外だった。ただ肌に触れただけなのに、今の創真の手のひらは、まるで性感帯のように敏感に、彼女の肌の滑らかさを伝えてきた。

 

「んっ、んうっっ……」

 

 それは緋沙子も同じようで、身を捩って、小さく震える。

 

 

 絡みあう唇と、ふれあう指先。

 手を握りしめると、こんなにも小さいものかと、創真は改めて驚いた。

 

 

 彼女の肌に、もっと触れたい。

 

 

 衝動は、血液に混ざって、全身を駆け巡った。

 右手は、彼女の胸元へと伸びた。

 

 薄い布を隔て、胸の膨らみに触れる。

 

「あ、やっ――、そこは……」

 

 緋沙子は体を引こうとするが――左手を背中に回し、それを許さない。

 

「あっ、くぅ――」

 

「すげぇ、柔けぇよ。新戸の胸」

 

「や、やめろっ――そんなこと、言うなっ……」

 

 手のひらに収まる、瑞々しい弾力。それを優しく撫でる。どうやら布と肌とが擦れてくすぐったいようで、緋沙子は背中をうねらせる。

 

「やあっ……だめ……っあ!」

 

 創真の親指が、突起物を捉えた。

 

「ここ、気持ちいいのか?」

 

 布ごしにそのしこりを、一段と慎重に、しかし執拗に撫で回す。

 

「だめっ! それ、それ以上っ、う、あぁ――」

 

 快感から逃れようとするように、緋沙子は首を小刻みに振る。だがその動きが、創真の欲望をさらに扇動する。

 

 右手は、滑るように上へと動く。

 緋沙子の首筋に触れる。

 

「っきゃ――!」

 

 想定外の刺激に反応するように、緋沙子の顎が上を向いた。

 頬に手を当て、創真はもう一度、彼女の唇を奪う。

 

「んっ、ふむぅ……」

 

 深く口づけを交わしながら、右手はさらなる刺激を与えるべく、首筋を戻り、鎖骨に触れ――先ほど達した柔らかい肉を目指す。

 

 肌を隔てる布の下。

 彼女の柔肌に、直接触れる。

 

「――――っ!!」

 

 そこは、熱を持った彼女の白い丘。

 その先端を、中指で軽く押さえてやる。

 

 こりっとしたその感触と、明らかに荒くなる、緋沙子の吐息。

 

 さらに、転がすように、中指を回す。

 

「んんっ――、それは、本当に――、あ、う、はぁっ!」

 

 体を支配する快感から逃れようとする緋沙子を――創真は白いシーツの上に押し倒した。

 

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