■09 言いたいこと
創真は緋沙子の下着に手を掛けると、するする――と、ゆっくり下ろしていく。
「っく…………」
緋沙子は恥ずかしさに震えているようだが、抵抗するそぶりはなく、なすがままになっている。
創真は彼女の足の間で膝立ちになり、自分の下着も脱ぎ去ると、ぐっと前に出た。ベッドが深く沈み込むので、動くのに少し苦労した――それに、緊張もあったのかもしれない。
そそり立った自らのものを、緋沙子の秘部にあてがう。
ぬるり、
とした粘膜の感触を先端で味わう。何度か擦るように上下させると、緋沙子は顔を横に向けながら、悶えるように声を漏らす。
「んっ、ふぅっ――、じ、焦らすな……、や、あっ――!」
創真はしばらくこの快感に身を任せたかったが、このままでは自身が果ててしまいそうだった。ぐいっと腰を押し出し、
「入れるぞ、新戸……」
緋沙子の返答を待つ前に、彼は腰を深く埋めた。
「んっ! は、あ……やああああっ、くうああ……!」
痛みに耐える緋沙子の中に、創真のものが深く突き立てられていく。
肉を掻き分ける感触。それは、痛いほどに締め付けてくる――。
「う、あ、新戸っ――、大丈夫、か……?」
「だい、じょうぶ。……けど、すこし、このまま……」
震える声で緋沙子は答える。
創真は動きを止め、両手を緋沙子の顔の左右に突いて、体を支えた。彼女を見下ろすようにして、
「なんかこう……すげーな」
「こ、こっちはそれどころじゃ……ない」
「……だよなぁ」
緋沙子の顔は苦しそうだが――不謹慎にも、それすら愛らしいと思ってしまった。
「新戸、オレ、お前のこと好きだわ」
「は、はぁっ!? い、今、このタイミングで言うことかっ……、それは!」
至極もっともなリアクションが返ってくる。
「いやぁ、ちゃんと言ってなかったなって思ってさ。順番は変わっちまったけど」
「だから、そういう――」
言い終わる前に、創真は上半身を覆いかぶせるようにして、緋沙子を抱きしめる。
「な――」
「好きだ。オレ……、正直、こんな気持ちになったのって、初めてでさ……。わり、告白の仕方とか、分かんねえんだわ」
耳元で囁く。
抱きしめた緋沙子の体は熱くて、こちらの肌まで溶かされてしまいそうだった。
「こんな急にで――、しかもちゃんと一緒に過ごしたのはたったの1週間だろ? 説得力、ねぇかもしれないけどさ――」
「なんだ……、じゃあ、おあいこ……だな」
「?」
緋沙子が吐息まじりに言う。
「私も……同じだ」
それは、消え入りそうな声だったが、はっきりと耳に届いた。
「……そ、その――好き、だ」
どくん――
先ほどまでとは違う興奮が、創真の心臓を大きく跳ねさせた。
吐息がかかるほどの距離で、緋沙子の瞳を覗き込む。
「もう1回」
「は――、どういう、意味だ?」
「新戸の口から、もう1回聞きてえなって」
はあ? と緋沙子の眉が潜められるが、
「オレは、お前のことが好きだ」
きっぱりと言うと、緋沙子の目は見開かれて――どうやら、観念したようだ。
「……私も、好きだ」
次の瞬間、ごく自然に唇を合わせていた。肉欲に支配された口づけではない。今度は、互いを慈しみ合うようなキスだった――。相手の唾液が、まるで甘い蜜のように感じる。
体中の汗が止まらない。抱きしめ合い、触れ合った全ての箇所が、溶けてひとつに混ざっていく錯覚に襲われる。
唇も、胸も、下半身も――全身で繋がる。
体も、心も溶け合わさる。
「ふ、あ――」
先程までは痛みを含んでいた緋沙子の吐息にも、艶やかな色が戻って来た。
創真がゆっくりと腰を押し込むと、
「あっん――!」
嬌声。同時に、自身の男根が、根本まで埋もれたのを創真は自覚した。すべてが、緋沙子に包まれていた。
「新戸、動くぞ……?」
そっと声を掛ける。
彼女は小さくうなずき、創真の首に腕を回した。
「わかった……でも、出来れば――」
ためらいがちに創真のことを見上げて、
「キスしたまま、して欲しい――」
「……ああ、分かった」
創真は唇を落とし、そして、緩やかな動きで腰を前後させる。彼女のことを傷つけてしまわないようにゆっくり、しかし、互いの繋がりを確かめるように、緋沙子の中をかき回していく――。
「くっ、ふうぅう……!」
口づけを交わしながらでも漏れる、緋沙子の悲鳴。
だがそれは、抑えがたい快感を伴っていることが、創真にも見て取れた――彼女の中の湿りが、先ほどよりも明らかに増したからだ。
奥へと突き立てた時には、彼女の柔肉をかき分けていく感触が肉棒を震わせ、吐きそうなほどの快感が胸にまでこみ上げてくる。
引き抜こうとすると今度は、緋沙子の濡れた肉が絡まり、腰から背中へ、そして脳天へと、電流のように刺激が駆け巡る。
ゆっくりとしたピストン。
気を抜けば、すぐにでも全てをぶちまけてしまいそうだった。
創真は奥歯を噛みながら、絶えず打ち寄せてくる快感の波に耐える。
……何しろ、腰の動きを止めていても、下腹部を締め付けるように
キスをする余裕すらなくなった。腕を回し、彼女の体を抱え込むようにして、ひたすらに腰を動かす。
「新戸、新戸っ――!」
「ふ、あああっ! やっん――!」
ぐちょ、ぐちゃっ――
2人の結合部から、淫らな音が響く。
「だめっ! やあ、私……きゃあ! 好きっ、好きぃ――!」
「オレも――、もう、駄目だ!」
無我夢中で腰を打ち付けると、もう止まらなかった。我慢が出来なかった。
ぐちゃ――! ぱちゅ――!!
リズミカルな動きは、次第に激しさを増し、互いの快感も絶頂へと登りつめていく……!
「く、あああぁっ――!」
2人の絶叫が重なった時、創真は、緋沙子の奥に欲望の全てを吐き出していた。
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[chapter:10 モーニングを一緒に]
「ん…………」
緋沙子は、まどろみから目を覚ました。ゆっくりとまぶたを開けると、部屋の中には、わずかだが白い光が差し込んでいた。それがカーテンの隙間から差し込む陽光であることに気づき――緋沙子は、体を起こす。
視界には、ホテルの一室の風景。
ベッドの上。
ヘッドボードに取り付けられたデジタル時計を見て、随分と早く起きてしまったことを知った。まだ朝の6時前だ。朝食までは、まだ2時間以上ある。
(夢ではない――か)
緋沙子は、一糸まとわぬ自身の姿を確認して、そう胸の中でつぶやいた。
昨夜の熱は、確かに体の中に残っている。
あの興奮も、痛みも、そして彼の体温も――
隣に目を落とすと、創真が静かな寝息を立てていた。
(……………………)
不思議な気分だった。
軽率なことをしてしまった……と、以前の緋沙子なら思ったかもしれない。
だが今は――
あの夜を越えた彼女の胸には、温かなものが宿っていた。
「まったく……君は、本当に不思議だな……」
さえずるように呟いて、そっと、彼の髪を撫でた。
「ん……う――?」
創真のまぶたがピクリと動き、小さな声を上げた。
ややあって、のそのそと彼は上半身を起こした。
「すまない、起こしてしまったか?」
緋沙子が訊ねると、彼は呑気な声で、
「ん? あぁ、ふぁあ……。……うっす、おはよう」
軽く伸びて、締りのない笑顔で言った。
「ふふっ――」
「……? 何だよ?」
「いや、何でもない。……おはよう」
まさか自分が、男性を相手にこんな気分になるなんて、緋沙子は想像もしていなかった。
彼に対しては、尊敬の気持ちや、料理人としての対抗心もある。だがそれ以上に、やはり、愛してしまっているのだ。創真の何気ない仕草を見ていると、そんなふうに強く確信する自分がいた。
(それも悪くない――)
緋沙子は、自身の変化に驚きつつも、意外なほどすんなりとそれを受け入れていた。
+ + +
「ところでさ」
創真が緋沙子のことを見て、不意に言った。
「お前、裸だな、裸」
「っ、な――!」
確かに、互いに全裸だ。
昨晩、あのまま果てて、2人で抱きしめ合って眠った。シャワーを浴びたりだとか、服を着たりという余裕はなかったし、それをもったいなくも思っていたのだが……
改めて指摘されて、緋沙子は頬を赤らめた。
「ば、馬鹿者っ――! き、貴様には、ムードというものはないのか!」
一応胸は隠していたが、恥ずかしさがこみ上げてきて、布団をひっぱり、肩まで隠した。非難の目で創真を見ながら、
「……せっかくの朝を、ぐぬぬ……」
先程までの穏やかな気持ちはどこかに吹き飛んでしまった。軽薄な笑顔に向けて、鋭い視線を送る。
「ああ、そうだ、朝っていえば――」
しかし創真は気にするふうもなく、時計を確認し、
「――なんだ、まだ朝飯までは時間あるな。もうひと眠り出来そうじゃん」
そう言って笑ってみせる。
「…………」
緋沙子は膝を立て、布団の中で体育座りになり、しばらく創真を睨んでいたが、
「よし、わかった――」
意を決して切り出した。
「互いの呼び名を決めるぞ!」
「はあ? 呼び名?」
「そうだ。私たちは仮にも……その、あの……」
言いよどんでしまうが、ぶんぶんと頭を振って、
「――こ、恋人同士! なのだからな! 恋人同士の呼び名は、ちゃんと決めなければならないだろう!」
と言い放つ。
「……薄々感じてたけどさ、お前って、形から入るの好きだよな」
「だ、大事だろう!? そういうことは!」
緋沙子がムキになって顔を近づけると、創真はぐっ――と顎を伸ばして、軽くキスをしてきた。
「――っな! こ、こんなことで誤魔化されはしないぞっ!?」
「緋沙子」
「――――!」
急に名前を呼ばれ、ビクっとのけ反ってしまった。
「改めてよろしくな、緋沙子」
「…………! ………………!!」
せっかく不意をついて攻勢に出られたと思ったのに、すっかり切り返されてしまった。
(悔しい……! こいつにひと泡ふかせてやる――)
そう思った緋沙子は、がばっと、彼に覆いかぶさるように
「う、うお――っ!?」
戸惑いの声とともに、創真は倒れこむ。昨夜とは逆転して、緋沙子が創真を押し倒す格好になった。
「朝食までは、時間がある――」
創真の目を見て告げようと思ったが――こうしてみると、思いの外に恥ずかしく、彼女は目を泳がせながら言った。頬が信じられないほど熱い。
「だから、その……もう少し、甘えさせろ――そ、そうま……!」
裸のまま彼に跨ったまま、勇気を振り絞ってそう言った。おそるおそる彼の反応を窺うと……
「ぶ、ぶははっ――!」
「なっ、わ、笑うなぁっ!」
「いやあ、わりいわりい。……これが本当の、朝飯前ってやつかな?」
「な、何だそれは――! って、やっ――!」
ぐいっと下から抱きすくめられ、唇を奪われた。
「んっ!? うむっ――!?」
朝の光が強くなる部屋の中で、2人は裸のまま抱き合い、キスを交わす。緋沙子は、心地良い肌の感触と、創真の体温に抱かれながら、ゆっくりと目を閉じて身を
モーニングまであと2時間。
どんな朝食かは知らない。
しかし、いま全身で味わっている感触より、
恋人からの甘いキスに溺れながら、緋沙子はそう思った。
(スタジエールの夜に END)
※ここから2人のラブラブな生活が始まります……!