【書籍化&コミカライズ】ツンデレ女子が幼馴染の鈍感男子に「ざまぁ」されていたので、寝取って教え込んであげた話 作:タイフーンの目
「霧崎……、入れるからな」
涼介はキリエを完全に仰向けにさせ、脚のあいだに移動すると、コンドームを装着して彼女の秘裂にあてがった。
ぐずぐずに濡れそぼった、無垢な裂け目。けれど発情した匂いをむわっと立ちのぼらせていて、それがまた、牡としての情動を強く駆り立ててくる。
キリエはまだ快楽の最中(さなか)にあって、処女喪失の危機に気づいていない。
このまま、前後不覚のままのキリエに押し入ってもいいが――
涼介は、彼女にその瞬間を自覚させたかった。
だらしなく開かれた脚の付け根。左手で陰唇をくぱっと開いて、ペニスの先端でその内側をぐちぐちと嬲る。
「んッ、――え? あっ」
ようやくキリエは、自分の置かれている立場に気づく。口をパクパクさせて何か言いたそうだが、それは言葉にも、声にもならなかった。
だが彼女の意志とは関係なく、キリエの魅力的な粘膜は亀頭にヌトヌトと貼りついてくる。
「息吐いて。一気にいくからな」
「えっ――、あッ、あぁッ!?」
意識はさせても、躊躇の暇(いとま)は与えない。
彼女の緊張と恐怖に肉体が追いつくより前に、怒張を彼女の中に押し入れる。みっちりと詰まっている膣壁を、十分過ぎるほどの硬度でもっと突き破っていく。
「い、あッ、うぐッ――!」
結合部に向けられたキリエの顔が、苦痛に歪む。
先ほどまで牡を誘うように蠢いていた牝の穴も、異物を押し返そうと躍起になってくる。
「や、だっ……、やっ、いやっ! あ、あッ――」
半分ほど埋没した亀頭が、ギチギチと締め付けられる。入口付近でこれだ。奥まで進んだら、いったいどれほどの圧力を掛けられてしまうのだろう。
「霧崎、こっち見て――」
結合部にばかり意識を向けていたキリエに声をかけ、視線を上げさせる。
「ッ、ッッ――!」
苦痛と戸惑いにすがめられた、強気な瞳。
涼介は彼女の両手を取って、その目を見つめ返す。
「なん、で……こんなッ、う、くッ――」
涼介の手が、ぎゅうっと握り返される。爪が食い込んでくるほど強く。
「一気に行くから――」
言って、涼介は腰を押しつけ、膣口に引っかかっていた部分を奥へと突き入れる。
「ッッッ――!?」
その瞬間をまぶたに焼き付ける。自分自身をキリエの奥深くに刻みつける瞬間。彼女にとって、最初で最後の瞬間。
そしてそれは、彼女の脳裏にも。
破瓜の瞬間の光景を、うろんになどさせない――。
「あ、ぐ、んぐッッ――」
比喩でなく、身が裂かれる感覚。自分の中に、他人が入ってくる感覚。そのあまりの衝撃に、全身の細胞が沸騰したように熱くなる。
こんなはずじゃなかったのに。そんなつもりはなかった。覚悟なんてなかったし、ましてや期待なんて――
……でも本当に?
本当は、覚悟はなくとも期待はしていたのでは? それは涼介に会うと決めたときから、いや、もしかしたらもっと前から。彼の部屋で唇を奪われたときからだろうか? それとも2人で会うようになってから? それとも、あの雨の日に彼に見定められた日から――
こうなることを、どこかで望んでいたとしたら。
何度も繰り返す自問自答。
その堂々巡りを切り裂くように、この身に降りかかってくる灼けるような痛み。
「う、く――師藤っ……」
痛みに耐えられそうになく、彼の名を呼び縋るや否や、涼介が覆いかぶさってきた。キリエのことを抱きしめる。キリエも反射的に彼の背中を掻き抱く。
(熱い……汗、いっぱい……からだ大きい……ッ)
細身なのに、ゴツゴツした逞しい男性のからだ。今さらながら実感が込みあげてくる。
(私、しちゃってるんだ。男の子と。セックスしてる――)
下腹部に突き立てられている異物。涼介の体温。息づかい。自分の喉が絞り出す、悲鳴のような嬌声。自室の天井。カーテンから漏れてくる夏の陽差し――
どれもが、キリエの深いところに刻まれていく。
それが好ましいものなのかどうか、今はまったく判断できない。
けれど――
どうだろう。
やめて欲しいだろうか? ここで喚(わめ)いて暴れれば、涼介は自分を解放してくれるかもしれない。でも――
「ッ、…………ッ」
性行為に及ぶのは、もっとずっと先のことだと思っていた。愛し合った相手と、時間を掛けて、言葉を重ねて、それからようやく結ばれるものだと夢想していた。
けれど、現実はそんなに曖昧なものではなかった。
痛い。怖い。
男の子の身体は、こんなにも熱くて、大きくて、生々しくて。
「ふぅっ、ふぅッ――」
今やめたら、この現実を手放すことになる。
もう引き返せないところまで来てしまったのだから……という妥協的な判断だけではない。
怖い。怖いけれど――
このまま彼に身を任せれば、いや、受け入れてしまえば、もっと自分の知らない場所まで連れて行ってくれるかもしれない。彼の他に、誰が自分にそんなことをしてくれるだろうか。誰と、こんなことを――
「奥まで――いい?」
耳元で囁かれる。
怖い。怖い。でも――
キリエはうなずく代わりに、涼介の背中をさらに強く抱きしめた。
涼介はそれを肯定と受け取り、腰を沈めてきた。もうこれ以上は無理だろう、と思われる地点より、もっともっと奥まで。
「あ、あ、あ――ッ」
自分の身体が自分のものでなくなるようだった。別の何かに変えられていく。もうさっきまでの自分には戻れない。決定的な行為。
昨日までの自分が突き崩されていく。
突き破ったのは――
怒張を根元まで突き入れた征服感に、涼介の腰がゾクゾクと震える。その愉悦は背筋を伝って、うなじを痺れさせ、頭の中で甘く弾けた。
キリエの息は荒くなっているものの、破瓜の瞬間よりはむしろ落ち着いているようだ。彼女の爪が背中の皮膚を破りそうなほど突き立っているが、それすらも涼介にとっては快感だった。
ゆっくりと、狭い膣内を前後する。
まるで肉壁に食いつかれているかのような感触の中、それは相当な苦労を伴ったが、している内に違和感は解きほぐれていく。
「う、ぁ、んぅッ! はッ、はッッ」
ほんの少しの動きでも、キリエは鋭敏に反応する。その初々しさが、涼介の劣情を増幅させる。
たっぷりと味わわせてもらおう。
もちろん今日が最後などにはさせない。これから何度も、何度でもキリエと交わるつもりだ。だが、今のこの反応だけは、これっきりだ――。
彼女の声が堪らない。肌の匂いも。震える腕も、脚も。胸板に感じる彼女の柔らかさも。性器には彼女の牝粘膜がこれでもかと絡みつき、戸惑いに蠢く。
「あっ、あっ、あっ――」
苦悶ばかりが色濃かったキリエの声に、ほのかに甘い響きが乗ってきた。さすがにこれを快感と断じるわけにはいかないが――思った以上に、彼女は適応力が高いのかもしれない。
「霧崎のナカ熱くて……俺、夢中になりそう」
「や、ぁ、あッ――!」
唆すための言葉ではなく、つい漏れてしまった本音に、キリエが敏感に反応した。両脚が腰に巻きついてくる。しっとりと柔らかくて、火照りきった肌。
「俺の、分かる?」
「分かるッ――、うぐっ、私の中で、動いてるッ……!」
「そう……俺たち、セックスしてる」
「んッ、うんっ、し、してる――のッ、あっ、あぁッ」
「これからもたくさんしよう。付き合わなくてもいいからさ」
「な、んでっ!? なんで、そんなこと言うのっ」
キリエの首元から顔を上げ、鼻先が付くほどの距離で彼女のことを見つめる。
「――うぅっ、ううッ!」
「霧崎が俺のこと好きじゃないなら、そうするしかないだろ?」
「私、わたしはッ……!」
「俺は好きだよ――」
どこまでが自分の本心なのか判然としない。
彼女の肉体を弄ぶための嘘なのか、なかなか靡(なび)かなかった彼女を征服したことへの高揚感から出た言葉なのか。それとも、まったく違う感情のせいなのか――。
キリエの答えを聞く前に、涼介は彼女の唇を塞いだ。
「んむぅッ!? んぐッ、んぶっ」
頭の中がぐちゃぐちゃになる。
もう十分に混乱して、痛みと、未知の感覚とに攪拌されて痺れきっていたのに――
その上で、キスで甘やかされてしまっては、もう何も考えることができなくなる。
少なくとも――
(師藤とのキスは、好き……っ)
とろけるほど甘美な感覚。唇が、舌が、頭の中までもが、形を失ってとろとろと解けていく。
「ふぅッ、んむッ、んッ、んッ、んッッ――」
彼の腰の動きが激しくなる。
痛みは相変わらずある。けれど、そのあまりの痛みにむしろ下半身が麻痺していくようで、今は、身体の中で動く彼のことを強く意識する感覚のほうが強い。
(師藤のがっ……、私の中でッ――!)
キスの快感とセックスの痛み。正反対のようでいて、根底は共通しているように感じられた。他人が自分の中に入ってくる。これまで誰も侵すことのできなかった――自分ですら意識したことのなかった領域にまで、踏み込んでくる。
「んっ、く……霧崎、俺もう限界だ」
涼介は、ふたたびキリエの首に顔を埋めてくる。その声は、どこか切なく、逼迫したものになっている。
「あっ、んぅッ――!」
体のしくみくらい、とっくに理解しているつもりだし、さっきも自分の手で
――なのに、新鮮な驚きがあった。
(私の中で、射精するの……っ?)
彼は避妊具を着けてくれていた。
それでも。
男女の営みの果てに、これから自分の性器へと射精が行われようとしているのだと考えると、これまで感じたことのない複雑な感動が全身を支配した。
怖いだとか、嬉しいとか、気持ちいいだとか――そういう表層的なものではなく、もっと根源的な感情。今自分を抱いているのがまったく違う生き物で、自分はその
抱きしめた涼介の背中が、びくびくと蠕動(ぜんどう)する。彼は腰を押しつけてきて、キリエの身体を強く抱いた。
「霧崎っ――」
「あ、あ、ああッ――!?」
膣内に根元まで収められたペニスが、どくどくと脈打つ。
体の内側で他人が暴れている。
愛情とか、恋心とか、そんな人間的な感情を飛び越えて――キリエの総身が、本能の悦びに打ち震えた。
■ ■ ■
初体験を終えてもまだ、キリエはふわふわした気分のままだった。
あのあと体を気遣われ、服を全部脱がしてもらい、ベッドの中で腕枕されて身を寄せ合っている。
(エッチのあとって、本当にこんなことするんだ……)
と、どこか浮ついた心持ちで、涼介の肌を感じていた。
だが、下腹部に残る痛みはこれが現実のことだと伝えてくるし、ここは間違いなく自室のベッドで、相手は、今ではよく知るクラスメイトの男の子だ。
――何をしゃべればいいのか分からない。
ただそこは涼介が、当たり障りのない会話で間を埋めてくれるし、居心地の悪さなどは感じない。それどころか――
(…………このままがいいなんて、思っちゃってる)
行為の最中は、涼介に強く他人を意識していたのに、こうして肌を合わせていると、ひとりで居るより落ち着くような気がする。体からこわばりが抜け落ちていて、恥ずかしさもまったく感じない。こうしているのが当たり前かのような、そんな心地よさを感じている。
「霧崎、聞いてる?」
「えっ、ううん……聞いてなかった」
「なんだよ、それ」
涼介がくすくす笑うと、その呼吸に沿って彼の胸が動く。寄せた頬でその動きを感じて、また不思議な気分になる。
(本当にしちゃったんだ……師藤と、セックス)
彼に裸を見られた。触られた。キスもいっぱいした。抱きしめたり、抱きしめられたり――変な声も出してしまった。どんなふうに思われただろう……思い返すと、さすがに落ち着いてばかりはいられなくなり、体温が上昇するのを感じる。だが涼介には気取られたくなくて、必死に平静を装う。
「霧崎」
「え? んっ――」
唐突に唇が重ねられる。
まるでこちらの思考を読み取ったかのようなタイミング――思えば、いつもそうだ。見透かされている。ずっと涼介の手のひらで転がされているような。
「んっ、んっ、やぁっ、んっ……」
唇に唇が絡められて、それが途方もなく気持ち良かった。表情が緩んでしまうのを、止められない。
するとそのとき――
「ん……霧崎、スマホ鳴ってる」
「あ……、うん」
床に放られていたポーチの中で、スマートフォンが短く震えた音だった。電話でもないようなので、キリエはあとで確認するつもりだったが、
「見といたほうがいいんじゃない? 緊急かもしれないし」
「緊急って――」
「親御さんが早く帰宅することになった、とか」
「っ…………!」
からかうように言われるが、しかし、もしも本当にそんなことになったら、冗談では済まない。
こんなところを親に見られたら……この先、真っ当に生きていける気がしない。
慌てて寝返りを打って、ベッドから出ないままにポーチをむしり取り、中を確認する。
スマートフォンには、1通のメッセージが届いていた。
「ッ――――」
送信者の名前を見定めて、冷や水を掛けられたような気分になった。
和樹からだ。
彼のほうからメッセージを送ってくることなんて、これまでまず無かったのに。なぜ、いまこのタイミングで? 咄嗟に視線を窓のほうに巡らせる。カーテンは引かれてあるままだ。彼の家から、この部屋の中が見えるはずもない。
「誰から?」
「べ、別に誰からだっていいでしょ……!」
涼介に背を向けたまま縮こまって、彼から画面が見えないようにスマホを顔に近づける。
メッセージの内容は、至って平和なものだった。
暇だったら遊びに来ないか、というお誘い。
(は……? 待って、なんで?)
今日は混乱しっぱなしだ。
彼の家に遊びに行ったのは、小学生の頃が最後だった。それ以来、学校で会うばかりの仲だった。それは、キリエが和樹のことを異性として強く意識するようになったからで、気軽に上がり込むことなんて、考えられなくなってしまっていた。
――そんな自分が、今では初体験の相手とベッドに潜り込んでいるのだから、なんとも笑えない話であったが。
ともかく。
メッセージの理由、というか動機を推し量りかねた。意図が分からない。
和樹の誤解が解けたことは、先日の焼肉会で知った。
でも、だからといってなぜ?
キリエとの距離を縮めようとしている? 誤解して傷つけた贖罪のつもり――だとしても、『遊んであげること』が罪滅ぼしになると思っているのだろうか?
「…………」
だとしても。
もし和樹と会ったとして、どんな顔をして、何を話せばいいのだろうか。いや、そもそも今は――
「ん、俺が返信してあげようか」
「やっ――」
背後から涼介が密着してきた。
それはきっと冗談で、いつもの軽口だったのだろう。
けれど理解不能のメッセージを前に困惑していたキリエは、必要以上に動揺して、スマホの画面に触れていた指が滑ってしまった。
「――それ、電話かかってない?」
「え」
言われて、ようやく深刻な事態であると気づく。
相手は、メッセージを表示していた和樹だ。発信を取り消そうと思ったが、遅かった。ちょうど彼もスマホを手にしていたのだろう。たった1コールで和樹は応答した。
『……キリエ?』
聞き慣れた声に、キリエは絶望を覚えた。
――いや、すぐに切ればいいだけだ。
誤操作なのは間違いないのだから、すぐに切って、あとで謝ればいい。なにもやましいことなんてしていない――
しかし、それは叶わなかった。
キリエより刹那早く状況を把握していた涼介が、背後からキリエのことを抱きしめたのだ。
別に彼は、操作を邪魔してきたわけではない。それでも、涼介の腕に抱擁されただけで、キリエの身体はとろりと痺れてしまって、スマートフォンを操作するどころではなくなってしまった。
『キリエ? どうしたの?』
いぶかしがるような和樹の声。
とにかく応答しなければ――と、気だけが急く。
「か、和樹? そ、その……メッセージ見たから……」
かろうじて言葉にしたものの、明らかに声は震えていた。
『あ、うん。どうする?』
「ど、どうするって?」
『ウチ来てもいいよ。大丈夫、果穂もいるし』
彼の妹が在宅だからといって、何が大丈夫なのだろう?
ますます困惑に拍車がかかる。
――お願いだから、声を出さないで、師藤。
胸の中でそう唱える。
こんな密着した距離で涼介の声がしたら、和樹はどう捉えるだろう?
心臓がバクバクと早鐘を打つ。
だが最初に涼介に抱擁されたときのような、背徳的な高揚感とはまったく違う、ひどく気分の悪い鼓動だった。
幸い――涼介は声は出さなかった。
代わりに。
「ッ――――!?」
彼の右腕が、下半身に巻きついてきた。それこそ蛇を思わせる滑らかさで、狡猾に、そして的確に、涼介の手のひらがキリエの下腹部を捉える。
怒鳴りたくなるのをグッと我慢する。
今はそれどころではないのに――!
『えっと、僕は別にどっちでもいいんだけど……どうする?』
キリエの無言をどう捉えたのかは知らないが、電話の向こうの和樹は、急に自信をなくしたような、間延びした声を出す。
『キリエ?』
もしも……
今日、もっと早く和樹が電話を寄越していて、彼の誘いを受けていたらどうなっていただろう?
そんな思いがふいによぎる。
久しぶりに上がる和樹の家で、きっとあのリビングで、和樹と果穂と一緒に談笑していたら……?
今は恋仲になれないのかもしれない。和樹は愛花に夢中だ。けれど、今は幼馴染に過ぎなくても、もしもいつか和樹がキリエのことを想うようになったら――
夢想していた将来が、途端に現実味を帯びてくる。
十年来の想い人と結ばれて、和やかに、ゆっくりと愛を育んで……大人になって、男女としての契りも交わしていたかもしれない。
だが。
「んッ、うん、どう……しようかなっ……」
お腹が、ずぐずぐと熱い。
涼介の手に触れられているだけなのに。性感帯を刺激されているでもなく、お腹を、優しく圧迫されているだけ。
下腹部にはいまだ、消えない痛みがわだかまっている。
けれど、涼介の手で撫でられると、その痛みを上塗りしてなお余りあるほどの、甘美な感覚がジワジワと広がってくるのを実感する。
(駄目……きっと和樹とじゃ、こんな……)
こんな快感は得られなかっただろう。
なぜだかキリエは、そう確信する。
幸せにはなれたかもしれない。幼い恋心は、もしかしたら満たされたかもしれない。
でも――
「……ごめん、やっぱり今日、駄目」
『え。そ、そう? 忙しかった?』
「ううん。そういうわけじゃ、ないけど……あっ」
『……? え、キリエ、大丈夫?』
「なんでもないよ? んっ」
布団の中で、腰が勝手にビクビク震える。
気持ちがいい。
体の奥の、自分の中でもっとも獣に近い器官が、悦びに打ち震えている。
あえぎ声を不審に思われている。
もしかしたら、何かに勘づいているかもしれない――
それでも良かった。
それよりも早く――
「ごめん、切るね。バイバイ……」
『え――』
まだ何か言いたげだった和樹のことを置いて、キリエはスマートフォンを手放した。
「良かったの? 会いたかったんじゃない?」
さっきまでスマートフォンを押し当てていた右耳に、涼介の囁き声が流れ込んでくる。それだけで、背筋が、ふるふると気持ち良く震えた。
自分の欲しいものが、はっきりと分かった。
痛いけど、苦しいけど、怖いけど――
求めている。身も心も、強く求めている。そう自覚して受け入れたとき、頭の中でばちんと何かが弾けた気がした。
「う、ううん……。だって、急だったし。んっ、ぁっ」
「大丈夫?」
和樹と同じ言葉でも、響き方はまったく違う。
「大丈夫じゃ……ないっ。わ、分かってる……くせにっ」
「何が?」
余裕綽々な声がムカつく。
何もかもお見通しといった態度が、鼻に掛かって仕方がない。
――でも。
もっと責め立てて欲しい。弄んで欲しい。無茶苦茶にして欲しい。そのあとで……たくさんたくさん、甘やかして欲しい。
キリエは涼介のほうに寝返りを打ち、彼の左脚に自分の右脚を絡め、こすりつけて、ねだった。
「師藤。もう一回……」