【書籍化&コミカライズ】ツンデレ女子が幼馴染の鈍感男子に「ざまぁ」されていたので、寝取って教え込んであげた話 作:タイフーンの目
「…………」
とある夏休み。時刻は午後2時。
志乃原愛花は、複雑な心境でインターフォンを押した。
応答がある。
鍵は開けてある、とのことだった。
不用心だな、と思いつつも見知った玄関を通り――念のためドアに鍵はかけて――彼女の待つリビングへと向かった。
「お邪魔します……、えっ」
愛花の動きが止まる。
向こうから声がかけられる。
「し、志乃原さん……?」
「……霧崎さん」
師藤真凛と、霧崎キリエ。
思いもよらない取り合わせに、愛花はその場で硬直してしまった。
+ + +
愛花が師藤家を訪れたのは、真凛に招かれたからだ。
年下の少女に簡単に呼び出されてしまう自分を不甲斐なくも感じるが、相手が真凛なだけに、仕方がないだろう、とも思う。
ただ、キリエがこの場にいることはまったく聞かされていなかった。予想外もいいところだ。
彼女は真凛と並んで、ソファのすぐ前でクッションに座っている。
ごく自然とそこに居るのを見ると、やはり複雑な気分だった。
なお、涼介はこの時間は友人宅に出かけているという話だった。ちなみに、男友達。3日後に迫った、宿泊旅行の打ち合わせのためらしい。
愛花の〝彼氏〟も、その場に同席しているはずだ。
――幸野和樹のことを考えると、ますます気まずくなってしまう。
愛花は、キリエが和樹にフラれた場面に立ち会っている。当事者というほうが正確かもしれないが。
もともとほぼ接点のなかった2人だが、あれ以来は、学校で顔を合わせるのも気まずかった。今度の旅行に、キリエも参加することは聞いていた。どんな顔をすればいいのかと、それだけでも悩んでいたのに。
それがまさか、よりによってこんな場所で会うことになるなんて。
「あれ? お2人ともあまりお付き合いはない感じですか?」
そんな愛花の気持ちを知ってか知らずか――いや、おそらく熟知したうえで――真凛がとぼけた声で尋ねる。
「クラスが違うんですか? まあ、そんなものですよね。では私がお2人の仲を取り持ちましょう。――こちら、志乃原愛花さん。私の遠縁の親戚に当たるんです」
「「え」」
彼女の嘘に思わず声が漏れてしまったが、ちょうどキリエも同じように驚いてくれたので愛花の声は聞かれずに済んだ。
「小さい頃に面倒を見てもらったことがあって。最近まで、兄さんと同じ学校だとは知らなかったんですけど。……で、こちらが霧崎キリエさん。兄さんの彼女さんです」
「――――ッ」
「な、ちょ、ちょっと! 真凛ちゃん!?」
「あれー? もしかして秘密でした? ごめんなさい愛花さん、今のナシでお願いします」
「う、うん……」
頷いてはみたものの、キリエとのあいだはさらに気まずくなってしまった。
涼介の恋人になっている――
そう聞いても、大きな驚きはなかった。
ショックではあったが、
(やっぱり、そうだったんだ……)
という思いが先に立った。
愛花は以前、涼介が宣言したのを聞いている。
キリエのことを恋人にするのだと。
あのときは情事の最中での戯言かもしれないと思っていたが――その後、涼介がキリエと一緒に歩いている姿を何度か目撃したし、その頃から、愛花の相手をする機会がぐっと減っていた。
(もし、今ここで――)
愛花が、涼介との関係をバラしたらどうなるだろう。
キリエの顔を見下ろしていると、そんな昏い考えが頭をよぎる。
涼介が愛花にしてくれたことを、洗いざらい告白してしまったら、彼女の顔はどんな風に変わるだろう。冗談でしょと笑い飛ばすのか、引きつるのか、激怒するのか。取り乱すのか――。
だが同時に。
彼女が、涼介に愛されているのだと思うと、別の想像も沸き上がってくる。
涼介は、彼女のことをどんな風に抱いているのだろう。たっぷりと甘やかされ、愛されているだろうか。それとも、愛花にするように酷く責め立てているのだろうか――
(――――っ!!)
ゾクゾクっと腰の奥が痙攣して、危うく声を漏らしそうになってしまう。
いけない。
冷静さを取りもどさないと。
……少なくとも。
涼介との関係を打ち明けるという選択肢は、この間に愛花の中からは消え失せていた。愛花がそんなことを暴露したならば、きっと涼介はもう愛花に指一本触れてくれなくなる――そんな、確信めいた予感がよぎった。
「霧崎さんは、真凛ちゃんとも――」
「え、あ、うん。実は……」
と、キリエは真凛との馴れ初めを簡潔に語ってくれた。
なかなかセンセーショナルなエピソードだったが、真凛ならあり得そうだ、とすんなりと納得できた。
「ふふっ、キリエさんは王子様みたいでした。あのとき、一生付いて行くと決めたんです」
「あ、あのね……」
戸惑うキリエの腕に抱きつく真凛。
「あー。愛花さん、キリエさんに嫉妬してます?」
「えっ、え……?」
色々と心当たりのある言葉を投げかけられて、動揺が出てしまう。
「愛花さんは、私のことがだーい好きですもんね。私をキリエさんに取られて、ヤキモチ焼いてるんでしょ?」
「ま、真凛ちゃん、からかわないで……」
おどける真凛に何とか話を合わせて応じているうち、ほんの少し、愛花も緊張が解けてきた。
「それで……今日は、何の用事だったの? 霧崎さんまで呼んで」
「用事なんてありませんよ。ただ、私はみんなと仲良くなりたいなと思ったまでです。私、皆さんの学校に進学するつもりですし。女子会です。親睦会です」
「そ、そう――。それで、何を?」
そう水を向けると、キリエの頬が引きつるのが分かった。
「?」
「観賞会ですよー」
真凛が答える。
「愛花さんも一緒に観ましょう。キリエさんのお隣へどうぞ」
「観賞会――」
ふと、2人の体が向いている方向――リビングのテレビへと視線をやる。
真凛が、朗らかな声で言った。
「今日は、世界のおもしろ寄生虫シリーズです」
「ひッ――――」
+ + +
そこからの小一時間は、愛花にとってはあまりに衝撃的だった。
大画面に映し出される映像は、キリエとの気まずさなど忘れさせてくれるくらいの鮮烈さだった。
真凛はジュースとお菓子をテーブルに並べてくれていたが、愛花は一切、手を付けられなかった。
ようやく映像から解放されて隣を見ると、キリエの顔も青ざめていた。
ただ1人、真凛だけが満足げに、
「あー、素敵でしたね。あんな動きするなんて、信じられません」
「そ、そうね……」
「そうだね……」
2人して、沈んだトーンで相づちを打つ。
「生き物の本能って凄いですよね。工夫して、進化して、必死に生き抜こうとする姿――可愛くて堪りませんね!」
「ま、真凛ちゃんは将来は学者とか向いてるかもね」
声をかすかに震わせながら、キリエが話を継いでくれる。
「いえいえ、私なんてとても。これはただの趣味ですし」
「生き物全般が好きなの?」
「観察するのが好きですね。気持ち悪いっていう人もいますけど……私は全然です。健気で、可愛らしくて……素敵じゃないですか。私も強くならなきゃ、って励まされますね。まあ、飼うなら普通に猫ですけど」
真凛は親睦会だと銘打っていたが――確かに、この何とも言えない感情を共有できたという一点において、キリエとの距離は縮まった気がした。
そこからは、しばらく他愛もない会話に興じた。
会話を主導するのは主に真凛で、キリエが話を膨らませ、愛花は相づちを打つくらいで。
楽しい――と言えるほどのものではなかったが、当初想像していたよりは平穏な時間が流れた。
しかし、やがて真凛が、
「あ。お2人とも、良ければお夕飯一緒にどうですか? そろそろ兄さんも帰ってくるでしょうし」
そのひと言で、愛花の身に緊張が戻った。
だがキリエは、
「え? りょ――師藤は、友達と食べる約束だって言ってたけど」
「そうなんです?……なんだ兄さん、私には言わなかったくせに。しかし、さすが彼女サンですね」
「だ、だからそういうことを――! わ、私は、夕飯家で食べないと怒られるから……ご、ごめんね2人とも」
そう言うと、キリエはそそくさと帰り支度を始めてしまう。
立ち上がり、
「……志乃原さん」
と、居住まいを正して愛花に向き合った。
「その、今度の旅行、よろしくね」
改めて見ると、
(可愛い子だな――)
と思った。
愛花とはタイプの違う女の子。少し気が強そうだけど、そのぶん、屈託なく笑ったときは、より愛らしく見える。初めは警戒の色が強かったが、気を許すと人懐っこい雰囲気を醸し出している。
なんだかまぶしく感じて、愛花はやや視線を逸らしながら、
「……うん。こちらこそ……」
と、答えるので精一杯だった。
■ ■ ■
「真凛ちゃん、どういうつもりだったの」
キリエが帰宅したあと、2人きりになったリビングで真凛に詰め寄る。
が、彼女がそのくらいで怯むわけもなく。
「どう、とは? 言ったじゃないですか。仲良くなるためです。楽しかったですね」
「…………」
「ふふ、そんな目で見ないでくださいよ。お茶、飲みますか? ジュース温くなっちゃいましたからね。ソファに座っててください」
有無を言わさない真凛に、やはり押し負けて言うとおりにする。
愛花はキッチンに向かった真凛に向かって、背中越しに話しかける。
「……私に、霧崎さんのことを見せつけたかったの? 私が苦しむのが、そんなに楽しい?」
返答はない。
愛花はうつむき、スカートを握りしめながら、
「霧崎さんはいい人だけど……でも、私。色々我慢して――」
「嘘つき」
はっとする。
いつの間にか真凛はソファのすぐ後ろに立っていて、その細い腕で愛花の首に抱きついてきた。
「な、なにを」
「愛花さんは嘘つきです。我慢? 苦しかった?……ふふ、嘘ですよね」
「真凛ちゃんに、何が分かるの――」
「分かりますよ? ずぅっと、見てましたから」
耳元で囁かれる少女の声に、体の芯まで震わされる。ただしそれは、不快なものではなく、むしろ――
「愛花さんは、興奮してたんです。キリエさんと一緒にいることに」
「ど、どういう」
「今だって、そんな顔して――」
真凛は片手に持っていたスマートフォンのロックを外し、カメラを起動させた。内側のレンズが作動し、液晶に愛花と真凛の顔が映し出される。
「興奮して、火照った顔です。いつも、兄さんの部屋から出てくるときの愛花さんの顔……こんなですよ?」
「なっ」
「ああ、ごめんなさい。それは私の嘘です。ああいうときには、もっともっと、はしたない顔してますから」
「――――っ」
狼狽する愛花と対照的に、真凛は液晶画面の中で蠱惑的に微笑みながら、
「愛花さんは、自分の醜いところを見つけてくれる相手が好きなんですよね? だから、私のことも大好き」
「か、勝手なこと言わないで」
「キリエさんと兄さんがセックスするところを想像して、興奮しませんでしたか? あの人たち、兄さんの部屋でももうセックスしてますよ。……きっと、愛花さんとするより、ずっとずっと愛情の籠もった、長いセックスを」
「や、やめてっ――!」
思わず叫んだのは、胸が痛んだからではない。
そうではなくて――
「疼いちゃいますか? 欲望で、体が震えちゃいますか?……いいんですよ、私の前では。兄さんといる時のように、素直になってください」
「そ、そんなの……っ」
じゅく、と太腿のあいだが潤うのを愛花は自覚した。
「愛花さんは、とても可愛いです。……ああ、見た目は当然ですけど。そうじゃなくて。とてもとても、欲望に素直なところです。本当は誰よりも淫乱なくせに、それを隠そうとしているところです。……でも、私は見てあげます。ほら――」
避けようとしても、真凛はスマートフォンを見せつけてくる。
さっきよりずっと酷くなった自分の顔。言葉でなじられただけで瞳を潤ませている。それも、悔しさからではなく、嬉しさで。
そして、そんな愛花のことを熱っぽい視線で見つめてくる真凛の顔も。
「あ、あ……」
「興奮しますよね? 録画してあげましょうか?」
「い、いらないっ」
「私は欲しいんですけど……って、あれ? ホントに感じちゃってます? そんなところ押さえて」
「え――」
無意識だった。
愛花の手は、スカートの上から自身の下腹部を圧迫して――事もあろうか、快感を得ようと蠢いていた。
「なんだ、やっぱり。……ねえ、愛花さん」
ピコン、と小さな電子音。
「ま、真凛ちゃ――」
「録画開始です。愛花さんの情けないところ、いっぱい撮ってあげますからね」
「やっ、いやッ!!」
「大丈夫ですよ。誰にも見せたりしませんし、これをネタに愛花さんをゆすったりもしません。そんなの、面白くないですしね。兄さんにも見せませんから――って、そこはシェアしたほうがいいですか? ねえ、どっちですか?」
「やッ、あっ、あっ……!」
信じられない――信じられないくらい、気持ちが良かった。
画面には、あえぐ自分の顔が映し出されている。とてつもなく恥ずかしくて、屈辱的なのに。
「オナニーお上手ですね、愛花さん。もしかして、しょっちゅうしてます?〝彼氏〟のこと考えたりとかは?」
「し、してないっ……、か、和樹くんのこと考えてしたことは……ないっ」
「じゃあ他の人で? 兄さんですよね。いつですか? 夜ですか? お部屋でですか、お風呂ですか?」
「んッう、うぅッ――!」
「まさか……彼氏といるときには、したことないですよね?」
「ッッッ!?」
腰がビクンと跳ね上がってしまう。
自分の顔は、さらに情けなくなっている。涙を滲ませ、唇をわななかせて――切なすぎる快楽に、恍惚として歪んでいる。
「嘘……もしかして、彼とデートしてるときにもオナニーしてるんですか? デートですよ? しかも他の男の人を想って――家まで我慢できないんですか?……できないんですね。今、ココでもしちゃってますもんね。エッチな顔を撮られながら、エッチな声を録音されながら――エッチなところ、びしょびしょにしてるんですもんね」
「いやっ、いやぁッ!――あっ、あっ、あぁッ!?」
指先が、ショーツの中で膨らんだ陰核を捉えて激しく擦る。ビリビリと背徳的な快感が腰奥を貫いて、頭までチカチカしてきた。
「果てますか? いいですよ……撮っててあげます。見ててあげますから。ねえ、ちゃんとカメラを見て。見なさい。そう……そうです。カメラを見つめて、愛花さんの醜いところを全部見せてください」
「んぁあッ!? あっ、おッ――」
涼介以外の人間の前で絶頂したことなんてない。それはこれからもずっとそうだと思っていたのに――
「愛花さんは、見てもらいたいんですよね? 上っ面の可愛さだけじゃなくて、醜い中身も、全部。気づいて欲しくてたまらなくて、咎めて欲しくて疼くんですよね?」
違う、と首を振っても、性感帯を刺激する指は一向に止まる気配がない。
「いいですよ。兄さんも、私も見てますから。ちゃんと汚いところまで見ててあげますから。だから、愛花さんも正直になって。なってください――っ」
「あっ、はッ、はッ――、わ、私はっ……」
とうとうスカートを自分でたくし上げ、下着の隙間から指を入れた愛花は、濡れた蜜肉を指で嬲りながら、
「私はッ――、涼介くんの家で、涼介くんと霧崎さんのセックスを想像して、興奮して、オナニーしてますっ! あッは、ま、真凛ちゃんにもイジメてもらって、恥ずかしいところを撮影されて――っ、あっ!? おッ、い、イクっ、イクのッ、んぅうううッ――おっ、ぉほッ!?……ふぅうッ、んううううぅッッ――!?」
ソファで大きくのけ反り、最高の快楽に身を委ねて、愛花は果てた。
「……すごぉい。愛花さんって、イクときこんなに激しいんですね。下品な声出して」
「んぉッ、ぉ、ふぅッ、うッ――」
「ふふ。ますます気に入っちゃいました。愛花さんにも、幸せになって欲しいなぁ……って、もう十分ですかね?」
「あ、ふ――、んぇ、えっ……、あっ、あ」
録画マークが表示された画面の中で愛花は、涙とよだれを垂れ流しながら幸せそうに笑っていた。