【書籍化&コミカライズ】ツンデレ女子が幼馴染の鈍感男子に「ざまぁ」されていたので、寝取って教え込んであげた話 作:タイフーンの目
7時、17時、23時ごろ予定。
■ ■ ■
「お? いいじゃん、楽しそう。涼介くんか――」
翌日の休み時間、拓真の教室に行って相談したところ、彼は二つ返事でOKしてくれた。
「ほんと? けっこう手強そうな子だよ?」
「真凛ちゃんより?」
「うーん、同じくらい……」
「はは、じゃあ相当だな」
よく日に焼けた顔でカラカラと笑う。拓真の所属する野球部では髪型は自由だ。伸ばす部員もいるが、坊主頭とまではいかないまでも拓真は短くしている。
野球には真面目に取り組みたいけど、ちょっと格好良くも見られたい――そんな彼の決意表明みたいで、真南可は微笑ましく見ている。
保育園からの腐れ縁。子どもの頃から変わらない性格。
家が近かったというだけの理由で仲良くなって、男子と女子なんて垣根はまったく感じなくて。いるのが当たり前で。
2人の関係は、ずっと変わらないと思っていた――。
粗雑そうに見えて誰にでも優しく、野球だけじゃなく苦手な勉強にも一生懸命で。ただでさえ人間として好きだったのに――『男の子だ』と意識してからはもうダメだった。
それは野球部の合宿で、練習後に男子たちが上裸になってホースで水浴びをしていたときのこと。女子マネージャーとしては日常的な光景だ。最初は真南可だって何とも思わなかった。
けれど。
びしょ濡れの拓真にタオルを渡したとき、いつもと変わらない笑顔で受け取った彼の、その身体を初めてマジマジと見てしてしまった。服を着ていると細く見えるのに、本当はたくましい骨格と、野球のために鍛えられた筋肉。長い腕。大きな手。タオルをギュッと掴む力強い指――。
――拓真は、女の自分とは違う生き物なのだと本能で理解した。
それからしばらくは、彼をまともに直視できなくなってしまった。それでも何とか距離を縮め、真南可のほうから告白して――めでたく交際がはじまった。
拓真と付き合い出して、手も繋いだし、部活の帰り道にキスも済ませた。その先は……少しだけ。まだ一線は越えられていなくて。でも何かきっかけさえあれば……。
「――真南可、どうした?」
「えっ、なんでもないけど!?」
頭を切り換えて妄想を振りはらう。いつもの自分に戻らないと。
「部活ない日なら大丈夫かな」
「だな。日曜なら練習休みだし――あ、でもおばさんたち居る? 俺、邪魔じゃないか?」
「ううん。お母さんたちはデートだって」
息子と娘たちを置いて出かける予定だ。幸せそうでいいことだ――それが標準的な大人の振るまいかはともかく。
「真凛ちゃんもしっかりしてるし、真南可もいるし心配してないんだろ」
「まあね」
「……つっても、その『お姉ちゃん』は男を連れ込もうとしてるんだけどな」
「男って、拓真でしょ。男のカウントに入らないし」
「えー、酷くね? 俺、意識されてないの? 恋人だよ恋人!」
わざとらしく傷ついたような顔をするから、つい吹き出しそうになってしまう。
これだ。
この軽口をたたき合える空気がたまらなく愛おしいんだ。恋人同士になってもこの幼馴染みとは変わらない関係でいられる。それがとても心地良かった。
(やっぱり好きだな……)
恋人の笑顔を前に、真南可もにっこりと顔をほころばせた。
■ ■ ■
「お邪魔しまーっす!」
そしてよく晴れた日曜日の午後、拓真がやって来た。
部活は休みだったとはいえ、彼は自主的に朝からトレーニングに励み午前中を過ごしていたらしい。
さて、問題はこれからだ――涼介と真凛、そして真南可の関係を円滑なものにする。果たしてうまくいくだろうか?
「へぇ、メッチャいい家じゃん。うちと大違い」
「拓真。あがって」
不安を抱えつつ玄関で彼を迎えていると、背後から声がかかった。
「――その人が拓真さん?」
真南可は思わず声を上げそうになった。
涼介がそこに立っていること、それ自体は驚くことじゃない。家にいるのは当然だ。ただ――
「はじめまして。いつも
爽やかな笑顔で拓真に接する涼介。
(誰…………っ!?)
見たことのない義弟の様子に、理解が追いつかない。
拓真も一瞬目を見張っていたが、
「そ。よろしく――涼介くん、だよな。真南可から聞いてるよ。悪いな、家族水入らずのところ」
「いえ。こちらこそ姉さんが無理やり誘ったらしくて。どうぞリビングに。
ごく自然な振る舞い。そつのない態度。
真南可があっけに取られているうちに、彼はまたリビングへと引っ込んでいった。
靴を脱いだ拓真が耳打ちしてくる。
「聞いてた話とちがくない? メッチャいい奴じゃん」
「い、いつもはあんなじゃないんだけど……」
考えていたとおり、女ばかりに挟まれて居心地悪く感じていたのだろうか? だから同性相手なら気兼ねなく話せるとか。
それとも単に真南可や真凛の性格を気に入らなかったから? あるいは親の再婚そのものに強く反対していたとか――
いや。
真南可はなんとなく気づいた。
(もしかして、
涼介の態度はどうにも慣れているふうだった。素の性格というより『人当たりのいい人間』を演じるのが堂に入っているというか……。
(……考えすぎかな?)
さっきまでとは別の不安を感じつつ、遅れて真南可もリビングに入った。