※この作品はR-18です。

【書籍化&コミカライズ】ツンデレ女子が幼馴染の鈍感男子に「ざまぁ」されていたので、寝取って教え込んであげた話   作:タイフーンの目

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番外編30 真凛ちゃんの観察日誌②

 あれは、師藤家に拓真が初めてやって来た日のことだった。

 

 姉の真南可が幼馴染である彼を連れてきて、その頃まだ冷めた関係だった涼介との橋渡しを頼んだのだ。

 

 リビングでビデオゲームに興じ、しばらく経った頃、2人は真凛と涼介を置いて2階へと上がってしまった。

 

 ゲームでは涼介を相手に負けが込んでいて、悔しかったのを覚えている。

 家庭でも学校でも、誰に何を負けようが気になんてならなかったのに、涼介にだけはなぜか負けたくなかった。

 

 だから、

 

「アナタは誰にも興味がないんですね」

 

 視線はテレビに向けたまま、ソファで離れて座る涼介へと語りかけた。

 

「寂しいひと」

 

 似た人種なのかもしれない。

 けれど、決定的に違うところがあった。

 

 真凛は幸せだった。

 大好きな姉が幸せそうで、義理の兄になるであろう拓真も、純真そのもので見ていて面白かった。

 

 涼介には――そんな相手はいない。

 それだけは確信があった。

 

 だからこそ、この一言で彼の感情を揺り動かせると、そう踏んでいた。

 しかし、この問いかけは失敗だった。

 

「興味か……確かにね。今、初めて湧いてきたかもな」

「――はい?」

 

 一区切りついたゲーム画面から目を逸らし、思わず彼のほうを振り返ってしまっていた。

 

 こちらを見ていた。

 自分よりも、底知れない黒い瞳が。

 

「寂しいんだよ。つまらない」

 

 整った顔は、微笑をたたえたままだった。

 感情にゆらぎが見えない。

 怖い。

 

 生まれて初めて、他人が自分に対してどんな感情を抱いていたのかを、本当の意味で知った気がした。

 

 触れてはいけない。

 踏み込んではいけない。

 

 あれは獲物を毒で侵す生き物だ。

 けれど、真凛が毒蜘蛛なら、彼は毒蛇だ。

 

 到底敵わない。

 これも直感だった。

 

「――――、初めて興味が湧いたとは、どういう意味ですか」

 

 耐えきれず目を逸らしながら問いただす。

 

「言葉どおりだよ。義理の妹が、想像していたより面白い相手だなと思ってさ」

「私が――」

「そう、真凛が」

 

 声も毒。

 冷たく乾いた響きなのに、耳奥まで伝ううちに甘く蕩けて変わる。

 

「嘘ですね」

 

 もはや無駄な抵抗に等しかったが、

 

「あと、姉さんには絶対に色目を使わないでください」

「使ってないだろ」

「アナタの色目は、普通の人と違う」

「というと?」

「ただセックスをしたい、という男性とは違うという意味です」

 

 先程まで、拓真が真南可に向けていたような。あるいは、真南可が拓真に。

 

「子どもがそんな言葉を」

「授業で習いましたから、子どもでも知ってます」

 

 確かに、と苦笑する声もまた、耳にジンジンと響いた。

 

「アナタは姉さんを壊してしまうかもしれない。そんなことは私が許しません」

「上の2人の邪魔をするなと?」

 

 無言でうなずき返す。

 

「兄さんと姉さんは、今日が『初体験』なのかな」

「知りません」

「真凛こそ、嘘つきじゃないか」

「…………」

 

 姉たちは、あれで隠しているつもりらしい。

 さっきだって、早く二人きりになりたくてウズウズしていた。真凛からしてみれば――そして、悔しいが涼介の目から見ても、それは明確だったろう。

 

「――知らないのは、事実です。まだ見ても聞いてもいませんから」

「それもそうか」

 

 またカラカラと笑いながら、涼介は淡々とゲームを進めていた。真凛も、コントローラーを手にしたまま彼のゲームに乗る。

 

「さっき真凛が言ったとおり、俺は誰にも興味なんてない――なかった。けど対等に話せる真凛とは、きょうだいになってみたいと思った」

「――――」

 

 悔しい。

 彼に認められて嬉しいだなんて、一瞬でもそう感じてしまった自分が、絞め殺したいほど憎らしかった。

 

「そのためには何をすればいいかな」

 

 こちらに問うでもなく、涼介が独りごちる。

 

「……姉さんとも、仲良くなればいい?」

「…………」

「安心していい、真凛の楽しみは奪わない。兄さん……拓真さんと姉さんの関係も壊さない」

「そんなことが――」

「出来たときは、俺ときょうだいになってくれるか?」

「――――っ」

 

 またも思わず振り返り、今度は涼介を睨みつける。

 彼は笑っていた。

 

「楽しいと思わないか? 姉さんと、俺と、真凛と。3人できょうだいになるんだ。俺の寂しさも、ちょっとは埋められそうじゃない?」

「――まるで、プロポーズですね」

「はは。そうかもな」

 

 軽薄そうに笑う涼介のことを、唇を噛んでよりきつく睨んだ。

 そうでもしないと、胸がバクバクが彼に聞こえてしまうかもしれない、と思った。

 

「どう? 考えておいてくれる?」

「…………」

 

 真凛の手はコントローラーを握ったまま凍りついていたが、涼介は会話中も粛々とゲームを進め、当然ながらあっさりと真凛が操作するキャラクターに勝利を収めていた。

 

「俺の勝ち。じゃあ、そういうことで」

 

 

 ――彼が姉の真南可を抱いたのは、それから数日後のことだった。

 

 




※次話は明日22時ごろ更新予定です。
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