※この作品はR-18です。

俺がハーレムを作る話   作:どろんぱ(仮)

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序章
第1話 導入


「ハーレム?」

 

俺が、その話を聞いたのは、顧客の一人とキャバクラに行った帰りだった。顧客の名を姉河原という。俺がファンドマネージャーを務める個人ファンドの大口客の一人で、明治以前からの大金持ちで我が国の0.001パーセントの富裕層にいる。

 

姉河原は帰りの車に乗り込むと、上機嫌で運転手に「いつものところ」と伝えた。俺は、「女のところですか?」と聞くと、姉河原は「まぁ、そうやな」と言ってから、俺の方を見て「今から行くところは、わてのハーレムや」と秘密を打ち明けるように小声で囁いた。

 

「あんさんにはずいぶん儲けさせてもろてるから、特別に招待してやるわ。どないする、来るか?」

 

「いや、遠慮します」と言うと、姉河原は「そないなこと言いなさんな」と言って、しつこく誘ってきた。先に言っておくが、俺は女が嫌いというわけではない。むしろ好きな部類と言えるだろう。この時も、キャバクラで酒と女の色気にあてられて性欲は高まり、自宅に戻ったらいつも使うデリヘルで女でも呼ぼうと考えていたところで、姉河原に愛人を自慢されるくらいであれば、早く帰りたいというのが本音だった。

 

「あんさん、ハーレムの意味分かってまっか?」

「えぇまぁ。中東とかの王様が女を侍らすところですよね」

「そやそや。わてが言ってるハーレムもそれや」

「姉河原さんがそんなハーレム持ってるんですか?」

「そうや。さすがに、中東の王様には負けるけど、そこそこのもんやで」

「何人ですか?」

「今は18人や」

「はぁ……」

 

18人というのは、正直ピンと来ない数字だった。ハーレムと言えば、100人くらいいるイメージだが、それから考えると少ない。しかし、この18人というのが、愛人の数だと聞けば、それはとても多いと思う。

 

「なんや、思ったより少なって顔しとるな。言うとくがな、選りすぐりの美女を18人維持するっつうのはめっちゃ大変なんやで」

「分かりました分かりました。それで、今日は誰に会いに行くんですか。俺もお誘いして頂けるということは、1人じゃなくて何人かいるってことですか?」

 

姉河原は「ちゃうちゃう」と言って太い指を揺らした。

 

「ハーレムって言うたろ。今からいくところに18人おるんや」

「えっ!」

「もしかしたら、仕事や休みとっておらん子もおるかもしれんが、それでも15人は下らんはずや」

「その18人はそこに住んでるんですか」

「もちろんや。ただし、仕事してる子もおるから、中には通いの子もおるけどな」

「通いの子もいるんですか?」

「あぁ。今のメンバーだと4人やな。○○って知っとるやろ」

 

姉河原は誰もが知ってるであろう映画女優の名を上げた。

 

「あの子はちょうどこの前映画の撮影が終わって、今日はうちにおるはずや」

「はっ?それじゃまるで、○○がハーレムの一員みたいじゃないですか」

「だから、ハーレムの一員って言っとるやろ」

 

「またまたぁ」と思わず俺は言った。完全に担がれているとしか思えなかった。百歩譲って○○が姉河原の愛人だとしても、ハーレムの一員というのはぶっ飛びすぎてる。とゆうか、○○を愛人に出来るなら、その1人で十分満足できるのではないかとも。そんな風に思う俺の顔に気付いたのか、姉河原は俺を哀れむようにしみじみと言った。

 

「……違うんやなぁ。ハーレムっちゅうのはな、男のロマンなんや」

 

~~~~~~~~

 

――いつしか車は高速に乗り、俺は半信半疑のまま、姉河原の言うハーレムへと向かっていた。着いた場所は広大な庭園を備えた重厚な日本家屋の屋敷だった。車が停まり、石畳の上を姉河原に付いて進んでいくと、玄関が開かれる。

 

その光景はまさに壮観と言えた。玄関ホールで着物を身に纏った女性達が三つ指を付いて姉河原を出迎え、一斉に「お帰りなさいませ、旦那様」と唱和した。奥を見遣れば玄関ホールに入りきらなかった女性達は廊下にまで連なっている。さらに衝撃を受けたのは、顔を上げた女達がいずれもとてつもなく魅力的であること。ついさっきまでいたキャバクラも粒ぞろいと言えたが、そのキャバクラのナンバーワンをここに連れて来たとしても、ここでは見劣りするであろう。そして、中には芸能界に疎い自分でさえ知る顔が2~3人ほどおり、そのうちの1人は映画のスクリーンの中でしか見たことのないあの映画女優であり、満面の笑みを姉河原に向けていた。俺は、隣に立つ姉河原の自慢げに此方を見る視線にも気付かぬまま、呆けたように居並ぶ女達を見詰め続けていた。

 

 

++++++++++++++++++

 

 

――――……翌日の昼過ぎ。姉河原の車で自宅マンションにまで送り届けられ、部屋に入ると、急に現実に引き戻され、昨晩から今朝にかけての出来事がまるで夢であったかのような心地がしていた。……あれは、まさにハーレムだった。俺はソファに座ると、スーツのポケットに入った名刺を取り出し、両手で捧げるように持ってまじまじと見詰める。

 

「ハーレムプランナー 黒鉄泰富」

 

その名刺の上部には「ハーレムは男のロマン」と印字されていた。いつしか俺はその名刺に書かれた電話番号を押していた。俺もハーレムを作る、その決心はもはや揺るがなかった。名刺の電話番号に連絡すると、女が出た。

 

「もしもし、私は、えぇと……姉河原さんから名刺を頂いて、こちらにお電話させて頂いたものですが……」

「はい」

「黒鉄さんの番号でよろしいですか」

「はい。私は秘書の松柄と申します。どのようなご用件でしょうか」

「えぇと、そのぉ……ハーレムを作りたいな…と思って、お電話させて頂いたんですが……」

 

言った瞬間、「何言ってるんだ、俺は」と思いながらも思い切って言ってみると、松柄と名乗る秘書は驚く様子もなく「それでは事前審査に必要な書類を送付いたしますので、ご住所を」と事務的に告げた。住所を告げると、電話は終わった。

 

次の日、分厚い封筒が届いた。届けに来たのはスーツを着た男で、郵便を使わず直接手渡しするのが決まりのようだ。記入しなければならない書類や必要な書類は多岐にわたっており、やる気を削がれそうになるも、ハーレムへの熱意はあの日以来ますます燃え滾っていた。必要書類の内容は、履歴書の他、卒業証明書、出生から現在までの戸籍謄本、過去10年の課税証明書、預貯金通帳の写し…etc。健康診断と性病検査を受けることも必須とされていた。さらに、紹介者3名の署名・押印も必要とされており、そこには紹介者は自分が紹介した者の連帯保証人になることも定められていた。俺には姉河原しか頼る者はなく、姉河原に相談すると、他の2名の紹介者を探すことも快く了解してくれた。

 

ここで、俺の自己紹介もしておこう。俺は現在34才。大学卒業後、国内の某金融機関に入社し、数年後、ニューヨークの格付会社に転職、そこを辞めてニューヨークの大学でMBAを取得し、ボストンに本拠を置く投資ファンドにパートナーとして入社。さらに、数年後、東京に戻り、独立して個人ファンドを設立。個人資産は約5億、現在の年収は、税抜きで1億5000万といったところか。

 

女性関係は婚姻歴はなし。もてないというわけではないが、恋愛体質ではないようで、女性関係に時間を取られることは嫌いだが、そのくせ性欲過多のため、専らプロの女性か金と欲に釣られるセフレを作りであり余る性欲を処理してきた。34にもなったが、性欲は未だ衰えを知らず、むしろ強くなってきている気さえするほどであった。そんな時、金さえあれば個人でハーレムを作れるということを知った俺は、精力的に事前審査の資料を集めていった。

 

しかし、不安があるとすれば、果たしてどれくらい金がかかるかということであった。姉河原からは「ぎょうさん金かかりまっせ」と脅かされていた。個人資産100億を越える姉河原と比べれば俺には金はない。果たして俺にハーレムは作れるのか。事前審査の書類を出してからしばらくは、仕事の間もそのことばかり気になって仕方なかった。

 

 

++++++++++++++++++

 

 

――1ヵ月後。ようやく連絡が来た。この間、何度か俺がこの手続きをするに当たり唯一知っている電話番号である黒鉄宛に連絡をしたが、いつも松柄が出て、「現在、審査中ですのでもうしばらくお待ち下さい」と慇懃に言われるだけであった。姉河原に聞けば、「わての時は1週間もしないうちに返事は来よったけどな」などと言うので、審査に落ちたのではないかとますます不安になる。以前と同じく、スーツを着た男がやって来て、今度はずいぶん薄い封筒を俺に手渡した。中に入っていたのは紙1枚だった。

 

「審査に合格しました。つきましては、保証金100,000,000円を3日以内に下記口座にお振込み下さい。」

 

……0の数は間違いなく8個。これは詐欺でないだろうかと疑わなかったわけではないが、この時には俺はもう開き直り、松柄に問い合わせることもなく、姉河原に確認することなく、すぐに1億円を振り込んだ。

 

――振り込んだ次の日、俺の電話が鳴った。

 

「もしもし、黒鉄と申しますが、ハーレムの件でお電話させて頂きました。お打ち合わせの日時を決めたいのですが、いつ頃がご都合よろしいでしょうか。」

 

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