――ドアを開くと、広さにして約40平米のリビングとダイニングキッチンが広がる。この建物自体は3階ではあるが、高台にあり太陽の光を遮る建物がないため、日当りはすこぶる良い。リビングは位置で言うと建物の南西の角にあり、バルコニーに続く掃き出し窓から陽光が降り注ぐ。
「おはようございますっ、ご主人様」
キッチンカウンターから顔を覗かせて挨拶をするのはさやか。白いエプロンをした姿は、一見すると裸エプロンに見えないこともないが、よくよく見ると肩にはタンクトップが見えるし、後ろを振り向けば、お尻を申し訳程度に隠しているスウェット地のショートパンツを履いているのが分かる。
「おはようございます。」
ダイニングの椅子に座っていた夏美はコーヒーカップを置いて立ち上がり俺に笑顔で挨拶をする。夏美はスキニージーンズに男性もののネルシャツを着ている。普段の夏美は大学に行く時などはこんなラフな格好が多く、よく似合っている。ダイニングテーブルは6人がゆったりと食事のできる大きさの長方形のテーブルで、長い方の辺の片側は3人が座れる長椅子になっている。その向かいには三つ、短い方の辺の両側に一つずつ、それぞれ一人掛けの椅子が置かれている。俺が長椅子の真ん中に座ると、椅子の一つに座っていた夏美が俺の座る長椅子の隣に移動してきて、顔を寄せてくる。
「おはよう、夏美」
俺はその唇に軽くキスをする。顔を離すと短すぎたせいか少し名残惜しそうな顔をした後、にっこりと微笑む夏美。夏美がスタバで働いていた頃に俺が見た笑顔はそれはそれで目を惹くものだったが、今の笑顔はその何倍も輝いている。贔屓目なしで言って、ただ一人の好きな男に向ける笑顔だ。そんな笑顔に見蕩れている暇もなく、今度は長椅子の後ろから腰を折って顔を寄せて唇を突き出すさやかとキスをする。さやかは顔を離すと、テーブルの上の俺のコーヒーカップにコーヒーを注いでから、「朝ごはん用意しますね」と言って、パタパタとスリッパを鳴らしてキッチンに戻る。俺はショートパンツから伸びる太腿を見遣り、コーヒーを一口飲む。
毎朝の挨拶の時にキスをするのは習慣になっている。朝のキスは軽く触れるだけにしてるのだが、それには理由がある。俺が少しでもそうゆう雰囲気を出すと、姫達もその気になってしまうのだ。ハーレム開設当初などは、朝から2発、3発と撃ちまくって、仕事に支障が出るほどだった。これまでの俺は据え膳食わぬは男の恥と思っていたが、ハーレムの主たる者は、いつでもやれる状況なだけにやるタイミングややる相手を考えながらやらなければならないのだ。ムダ撃ちは禁物。それでも、一日平均3~4回は出しているのだから、我ながらすごい精力だと感心する。いや、むしろ、ハーレムを開設してから、俺自身、リミッターが外れ、何かが目覚めたような感があった。
俺がコーヒーを飲んでいるうちに、隣に座った夏美は、サラダを取分けてくれるが、心なしかさっきよりも俺の近くににじり寄っている気がしないでもない。夏美の柔らかな胸の感触が俺の二の腕に当たっている。さやかは手際よくスクランブルエッグを作り、炒めたベーコンと一緒に皿に盛る。そして、焼きたてのトーストと一緒に運んでくる。俺からすれば、一人暮らしの頃には考えられないような豪華な朝食だ。しかも、今日はたまたま洋風な朝食だが、味噌汁にご飯に焼き魚の和風の朝食の時もあれば、前の日に飲みすぎた後などには中華粥なんて時もある。そして、どれもうまい。さやかの料理の腕は抜群だった。おかけで朝食はしっかり食べられるし、夜もほとんど毎日家で食べるようになった。外食ばかりだった一人暮らしの頃よりも6人分の食事を作る今の方が食費が安いのだから驚きだ。健康面もすこぶるいいし、30を超えてから微増を続けていた外食が減ったせいか、特に食事制限をしているわけでもないのに体重も少し落ちたほどだ。さやかの料理の栄養バランスがいいのだろう。俺がばくばくと食べていると、全員分の食事の準備を終えたさやかもようやく椅子に座る。さやかが座るのはキッチンに近いテーブルの短い辺の椅子だ。さやかは俺の顔をじっと見ているので、俺は「うまいよ」と一言返す。さやかは安心したように「ありがとうございます。それじゃ私もいただきます」と言って、トーストにかぶりついた。
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俺が食事を終えると、それを見計らってさやかが冷蔵庫にあるヨーグルトを取りに行こうとする。
「私が取り行くから、サヤカは食べてて」
まだ食事中のさやかを制して、夏美が取りに行く。冷蔵庫からヨーグルトとブルーベリージャムを持ってきた夏美はヨーグルトをガラス皿に入れてブルーベリージャムをたっぷり乗せる。そして、それをスプーンでぐちゃぐちゃと掻き混ぜる。俺が一番好きな食べ方だ。今思えば、これを一人でしていたのはとても空しく思う。こんな美人が俺のために掻き混ぜてくれているのを見ればこそ、そう思うのだ。しかも、夏美は大きくスプーンでヨーグルトをすくって「アーン」と言って、食べさせてくれるのだからたまらない。これが幸せってやつなのだ。ハーレム生活をしていると、こんな幸せな瞬間が際限なく繰り返されるのだから、このために払ったお金は全く惜くはない。今の生活がオアシスならば、この間までの俺の生活は砂漠だった。
夏美がスプーンを俺の口元に近づけて、俺が口を開くと、夏美はスプーンを持った手を翻して自分で食べたりもする。そんな時の夏美の笑顔はむちゃくちゃ可愛いのだ。しかも、俺がしっかり舐めたスプーンを夏美も口に全部含んで舐める。間接キスどころの騒ぎじゃないのだが、夏美は全く意に介す様子はない。しかし、それも当然だ。
「そんなことするなら自分で食べる」
「ごめんなさい、ご主人様。もうしませんから、ご主人様は口を開けて待ってて下さい」
俺が不貞腐れた振りをして言うと、すぐに甘えてくる夏美。……そして、また同じことが繰り返され、笑い合う俺と夏美。
「夏美は悪い子だな、今食べたヨーグルト取り返してやる」
俺はヨーグルトを口に入れたばかりの夏美を抱き寄せて唇を押し付ける。そして、夏美の中に入ったヨーグルトを吸い上げる。夏美の唾液混じりのヨーグルトの味はまた格別なのだが、ここぞとばかりに夏美は両手を俺の首に回して、キスを求めてくる。どうやら俺は夏美の思惑に嵌ってしまったようだと、心の中で苦笑いする。少しの間だけ舌を絡め合い、夏美の顔を離す。朝のキスの時以上に残念そうな顔をする夏美。俺は夏美のおでこにおでこを当てて囁く。
「昨日の夜、たっぷりしたのに、夏美はまだし足りないのか?」
基本的に平日の夜伽は月・水・金となっていて、火・木は夜伽を付けず一人で寝ることになっている。ハーレム開設時は毎日にしていたのだが、さすがに毎晩するのは体力的にもきついし、睡眠時間も減るため仕事に影響が出てしまうからだ。……だったはずなのだが、これもまた必ずしも守られるわけではない。昨日、俺が帰って来たのは12時過ぎ。いつものように晶子に車で迎えに来てもらい、家に着くとさやかに夜食を作ってもらった。晶子は家に着くと先に休むと言って部屋に下がり、さやかも夜食を作り終えると部屋に下がった。俺は夜食を食べ終わった後、リビングで録画していたドラマを見ながら寝酒を飲んでいた。そこにやって来たのが夏美だった。最初は一緒にドラマを見ていたのだが、ソファの隣に座った夏美が奉仕させて欲しいと強請って来た。俺は、「いいよ」と言って、夏美の奉仕を受けながらドラマを見ていた。最初は好きなようにさせていたが、夏美の熱のこもった奉仕で、俺の方も興味の対象がドラマから夏美へと移り、結局、ドラマそっちのけでシックスナインへと移行した。それから、リビングで一回、俺の寝室で一回というのが昨日の夜の出来事。
「ごめんなさい。……でも、たっぷりってほどではなかったから」
顔を伏せて上目に俺を見詰める夏美。俺は「ったく」と言って苦笑しながら夏美の頭を撫でる。ハーレム生活が始ってから何かが目覚めたという意味では、夏美が一番変化があったかもしれない。優衣の場合は、セックス覚えたて特有の好奇心やら探究心でしたがりになるのは分かる。しかし、夏美はかつては交際していた彼氏とのセックスも乗り気ではなく性に対し淡白だったそうだが、ハーレムに入り女としての歓びを覚え、セックスに対する気持ち変わっていったように思う。今では、セックスに対し積極的で貪欲になっていて、俺にとっても夏美の変化、と言うよりも成長は嬉しい限りだ。これも黒鉄の言っていたマインドコントロールや薬の効果と思えば、全面的にこれでよしと頷いてばかりもいられないが、今はその辺りは割り切っている。どんな理由があるにせよ、ハーレムの主として夏美の身体を開発し、女として開花させたのは自分なのだから。
「わかったよ。明日は休みだから、今度こそたっぷり可愛がることにしよう」
「ありがとうございます」
抱きついてきてキスを求めてくる夏美。俺は仕方ないなと思いつつキスに応える。しかし、今度は舌は絡めず唇だけで啄ばむようなキス。こんな状況であっても、欲望を抑えることの出来る俺ってかっこいいと思ったり、勃起はしてるけど。それこそ、最初の頃はこんなことのある度、押し倒していたのだから、時間がいくらあっても足りるわけがない。
「夏美さん、ご主人様はまだシャワーも浴びてないんだから。その辺にしておかないと。ご主人様の朝の支度が遅れちゃいますよ」
「そうですよね、すいません、ご主人様。じゃあ私、洗物します。サヤカはゆっくり食べててね」
ようやく俺から離れた夏美はキッチンに行き腕まくりをして洗い物を始める。俺はさやかとアイコンタクトを取り、「助かったよ」と目で伝える。含み笑いをして頷きを返すさやか。頼りないなんて思っていたさやかが今では頼もしい。俺は「ご馳走様」と言って立ち上がり、部屋を出てシャワーを浴びに行くことにした。
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この6LDKのマンションにはリビング、ダイニングキッチンのほかに約6畳から8畳の広さの部屋が5部屋、約15畳の広さの部屋が1部屋、バスルームが一つ、シャワールームが一つ、トイレが二つある。一番広い部屋が俺の寝室で残りの5部屋が姫達の部屋になっている。俺は用を足してからシャワールームに。朝はシャワーだけで済ますことが多い。シャワーの手伝いを頼もうと思えば、夏美でもさやかでも喜んでしてはくれるが、ハーレム暮らしはメリハリが大事だ。夏美は既に外出用の服に着替えているし、今は俺の方の手伝いよりもさやかの手伝いをしてもらった方がいい。夏美もきちんとそれを弁えて、率先して洗い物をしてくれている。俺とのセックスの快楽に溺れてはいても賢い子なのだ。
シャワーを浴び終えて、シャワールームを出ると、シャワールームの前でさやかが新しいバスローブとバスタオルを用意して待っている。俺はバスローブを着てバスタオルで頭を拭きながら、さやかと一緒に自分の部屋に戻り、ドレッサーの椅子に座る。さやかが背後からドライヤーで頭を乾かしてくれる。時々、さやかの胸が俺の後頭部に当たる…やっぱりでかい。鏡越しにさやかと目を合わせようとすると、さやかも「何ですか?」と言って、すぐに視線が合う。
「今日の夜伽なんだけど、優衣にするって言っちゃったんだけどよかったかな?」
「わかりました。もちろん大丈夫ですよ」
「あと、さやかとのミーティングは日曜日でいい?」
「……わかりしました。でも、みなさんにナイショにするっていうのは――」
ノックの音と共に夏美が入ってきて、俺とさやかは口をつぐむ。
「ご主人様、お着替えお手伝いします」
「洗い物は終わったのか?」
「もちろん」
「夏美さん、大学に行く準備は?」
「もう準備万端。……あれ、ひょっとして、私、お邪魔でした?」
さやかは黙り、俺は「そんなことあるわけないだろ」と否定する。さやかは動揺が顔に出やすいし、何か喋るとボロが出る。俺はさやかに「服選んできて」と言ってウォークインクローゼットに行かせる。しばし部屋に沈黙が流れるが、部屋の電話が鳴った。さやかがウォークインクローゼットから出て来て電話に出ようとしたが、夏美がそれを制して電話に出た。
「もしもし。――アキコさん。――わかりました。私たちもあと少しで降りて行きます。」
「晶子、もう下にいるって?」
電話を切った夏美が頷く。どうやら、優衣を駅まで車で送っていた晶子が戻って来たようだ。
「はい。車で待ってるそうです」
朝は、大抵、俺と夏美が一緒に出ることが多いが、優衣はそれよりも少し早いので、晶子は車で優衣を駅まで送った後、家に戻って来て、俺と夏美を車に乗せて、再び駅を目指すことになる。2往復することになるので、面倒かけて悪いと思いつつも、晶子は苦にする様子はなく、とても助かっている。優衣も駅まではバスで行くと言うのだが、晶子は晶子で自分が送ると言って譲らないのだ。俺はさやかが用意した下着を履き(俺は家にいる間は下着は付けないのだ)、服を着る。そして、さやかに玄関まで見送られ、「いってらっしゃいませ、ご主人様。」の声を背に、夏美と一緒に玄関のドアを開いた。