※この作品はR-18です。

俺がハーレムを作る話   作:どろんぱ(仮)

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第23話 金曜日~その6

[回想シーンの続き]

 

「カレンを知らないってヤバいと思いますけどね。まぁ流行に疎いご主人様ような方は知らなくても仕方ないと思いますが」

「そうか…いやぁ、そうと知ってたらなぁ」

「どうしました?」

「いや――特に何も違わないんだが、有難みとゆうか、レア感とゆうか味わいたかったなってさ」

 

有名K-POPアイドルを抱いているということを実感しながら抱きたかったというのがやはり正直なところだった。にしても、優衣のようなマイナーアイドルだけでなく、ドーム公演までするようなスーパーアイドルまでいるなんて、この組織の力の巨大さというものを今更ながらに思い知らされる。

 

「と言うよりも、リャン様の意向というのが大きいですね」

「やっぱりそうかぁ…ん?俺何か言ったっけ?」

 

黒鉄に心の声を読まれると、俺はバックミラー越しに黒鉄を見た。俺は今、通勤のため、晶子の運転する車に乗っており、黒鉄は助手席に座っていた。黒鉄は後ろを振り向くと、長い説明台詞が始まる予感がした。

 

「すでにお話を聞いているかもしれませんが、リャン様はあちらのお国の革命の時からの幹部の末裔です。その権力は、想像を絶します。例えていうなら、東から登る太陽を西から登らせることができるくらいです。まあそれはあちらのお国に特有の大げさな表現ですけど、そのような方の末裔であらせられれば、組織においても、スーパーVIPの待遇ということです」

「そうか…でも、失礼かもしれんが、それにしてはハーレムの姫…じゃなくて、オトコの人数は控え目なんだな」

 

今回改めて知ったことだが、組織が運営するハーレムの顧客の中には当然のことながら、異性愛者の男女だけでなく、同性愛者も含まれており、そのニーズに応えるべく、組織はオトコも用意しているのだった。リャンさんなら、それこそ大奥みたいなハーレムも作れるのではないかと思うのだが。

 

「これは公開情報なのでお伝えしておきますが、組織がリャン様に提供しているオトコは4人だけです。昨日ご主人様が見たのは、そのうちの2人、澤崎とティエンです」

「そうなのか?じゃあリンは違うの?」

「リンはリャン様が雇っている者で、ボディガードや料理人たちと同じ立場です。リャン様のハーレムは、来日される際にハーレムの側から申し出たもので、言わば、一種の外交関係ということですね」

 

何と、俺のように申し込むだけでなく、組織から提供される人もいるのか。

 

「ですので、正直言えば、リンは組織の姫として見れば、及第点に達しているとは言えません。普段は接待用にも使っているのでしょうが、ハーレムオーナーの接待には使えないと思って、梨香とカレンを呼んだのでしょう」

 

なるほど、いやでもリンちゃん可愛かったけどなーと思いつつ、それにしても、いくら来日中とはいえ、カレンのようなスーパーアイドルを呼んでもらえるとは、俺の方こそVIP待遇じゃないか。梨香を呼んだのも、俺と顔見知りということを知っていたのかもしれない。そうすると、リャンさんにも、かなりやり手のパーレムプランナーが付いているのかもしれない。

 

「すごいな、この組織って言うのは。俺も姫探ししてた時、よく見てたらカレンもいたのかな?」

 

きっと手が出ない金額だったとしても、もっとよく見ておけば良かったと思い、興味本位で聞いてみると、黒鉄はゆっくりと首を振る。

 

「あの時もお伝えしましたがご主人様がご覧になったのは、組織が抱える全ての姫ではありません。ご自身の資金力に応じた姫しかリストには載りませんので、当然、あの時のリストには、カレンも載っていませんでした」

「そっか、そうだよな」

 

逆に言えば、俺がもっとビッグになれば、さらにランクの高い姫をハーレムに招くことができるのか、と一瞬頭に浮かぶが、正直、今のハーレム姫達に満足しきっているというのが正直なところだ。今は、少しでもこの幸福かつ平穏な時間が続いてほしかった。車は最寄り駅に着いて、ゆっくりと停車する。黒鉄が無言で晶子に視線を送ると、晶子は黙礼し、運転席から出て、助手席のドアを開けた。

 

「あっ、そうだ。リャン様からこれをご主人様に渡すようにと。危うく忘れるところでした。私としたことが、いけないいけない」

 

晶子がドアを開けて待っているのに、黒鉄はもったいぶった態度で、胸のポケットから和紙の封筒を取り出すと、捧げるようにして俺に渡した。

 

「ん?なにこれ。中国語じゃん」

 

封筒から出した紙は、契約書らしきものだが、中国語で書かれていて、俺に分かるのは、達筆な文字で書かれた「梁皓宇」という名とおそらく俺が酔っ払って書いたであろう、蚯蚓ののたくったような俺の名前、そして、二つの名前の横に押された指印。俺はそれを見て、右手親指の絆創膏の理由が分かったが、この紙に署名したことは全く覚えていない。

 

「これ何て書いてあるんだ……ん、義兄弟って書いてあるな」

「義兄弟の契りを交わした書面でしょう。『生まれた日は違っても、同じ日に死にましょう』みたいなことが書いてますね」

 

 

++++++++++++++++++

[金曜日の続き]

 

「俺、反社と義兄弟になってるやん!!!」

 

 

ようやく回想シーンが終わると、俺は事の重大さに押しつぶされそうになっていた。反社から金を預かるだけでなく、反社と義兄弟になったら、俺も反社になってしまう。幸い、契約書に、俺はまだサインはしていないし、金も預かっていない。リャンさんに事情を説明して、平謝りに謝れば、契約はなかったことにしてもらえるかもしれない。でも、許してもらえるのだろうか、反社だし……そう思っていると、部屋のドアが開き、山岸君が澤崎さん達が帰ったことを伝えてくれる。

 

「わかった。ちょっと、私はこれから出てくる。――リャンさんが家にいてくれたらいいんだが……」

「わかりました。先ほどの方たちが置いていかれたこのトランクどうしますか?何が入ってるんでしょう?」

「ん、トランク?またなんかお土産かな……ったく、こっちからすれば、いちいちお返しが面倒なんだよなぁ」

 

俺は部屋を出て、隣の部屋に置かれたトランクの一つを試しに開けてみた。すると、中に入っていたのは……大量の100万円札の束だった。

 

――黒鉄、呼ぼ。

 

~~~~~~~~

 

黒鉄が来るまで、俺は仕事が全く手につかず、狭い部屋の中を早足に歩き回る。バックグラウンドチェックによれば、リャンさんはチャイニーズマフィアとつながっており、リャンさんの会社はマネーロンダリングのためのフロント企業ということだった。いくら20億円預けてくれるとしても、リスクが大きすぎる。あとは、どうやったらリャンさんを怒らせずに契約を止められるか、もしかして殺されたりするんじゃなかろうか。俺は、救世主の到着を待った。

 

「こんにちは。…城宮さん。一体、どうされたんですか?」

「わざわざ来てもらってすまん。早速だが……、こっちで話そう」

 

電話で概要は話したのに、落ち着いた様子の黒鉄にイラつきながらも、黒鉄の肘を取って、会議室に連れて行こうとするも――

 

「ちょっと待ってくださいって。はじめまして、黒鉄と申します。秘書さんですか?――山岸さん。では、お寿司を注文してもらってもいいですか?えぇ、一番高いところで。もちろん山岸さんの分も注文して頂いて構いません」

 

黒鉄は、山岸君に近づくと、ホスト風の笑みを浮かべて山岸君に愛想よく挨拶する。俺には向けたことのないぽぉっとした表情で黒鉄を見ている山岸君に、黒鉄は無造作に財布から数万円を出して渡した。

 

「山岸君、一応言っとくけどそれ俺の金だからね。黒鉄、早くっ」

 

俺は山岸君に向かって早口に言うと、受付台に寄りかかる黒鉄を会議室に強引に引っ張って行き部屋に入るとドアを閉めた。

 

「おい、リャンさんが反社って知ってたのか?」

「はい。もちろんです」

「じゃあ何で言わないんだよ。そんなところから金引っ張ったらまずいってわかるだろ」

 

俺は、会議室の外に漏れないように声を抑えながらも、感情を抑えきれずに黒鉄にぶつけた。しかし、黒鉄の表情は変わらず、優雅に椅子に腰かけると背もたれに寄りかかる。

 

「ご主人様は、うちの組織が反社とは思っていなかったんですか?」

「――えっ?」

「だって、金をもらって女性を提供しているんですよ。どう考えても法に触れていると思いますよね。それでも、うちの組織が法律に違反しないで、運営されていると思っていたんですか?」

「それは…何となくセーフなのかなって…」

「そんなわけないでしょ。私どもの組織は裏社会とはガッチリスクラム組んで、切っても切れない関係なのです」

 

黒鉄は破顔一笑する。そう言われてみれば、そうなのだが、そこは都合よくファンタジー設定というか、超法規的何たらとかで大丈夫かなと思っていて、深くは考えていなかったし、姉河原の紹介というのも、大丈夫なんじゃないかなぁと考えてしまった一因だった。そんなに俺に対し、黒鉄は身を乗り出してテーブルに両肘を付くと、さらに問いただす。

 

「ちなみに、ご主人様はハーレムオーナーの申し込みをする時、うちの組織のバックグラウンドチェックはしましたか?」

「……いや、してないが…それは――」

「ほらね。薄々こんなことは違法だし、組織は反社だと気づいていたけど、ハーレムを作りたいがために、申し込んだんですよ、ご主人様は」

 

俺の方を軽く指さしながら、いつもと変わらぬ冷静な口調で言う黒鉄の言葉に説得力があり、俺はいつものように言いくるめられそうになっていた。だが、しかし、ここで言い返さないわけにはいかないと気持ちと言葉を振り絞る。

 

「いや、違う。俺は組織から金を預かってはいない。反社から金を預かるのはまずいって。マネーロンダリングに利用されたら、ファンドの信用はガタ落ちだし、この仕事続けられなくなるんだぞ」

「じゃあ、バレなきゃいいんじゃないですか?」

「……どうやって?」

「だから、リャン様は振り込みではなく現金で金を渡してきたんじゃないですか?」

「……なるほどな」

「おそらく金の名義人や預け入れの方法は、もうすぐ指示があると思いますよ。大丈夫です、何の問題もありません」

 

黒鉄の言葉はいつも俺を落ち着かせる。これは組織特有の洗脳方法を用いてるのかもしれないが、俺はさらに安心を求めるために、問いを重ねる。

 

「でも、義兄弟はまずくないか?それこそやってることヤクザじゃないか」

「リャン様は義兄弟の契りをとても大事にしていますが、そこまで重く感じる必要はないと思いますよ。権藤様も確か義兄弟の契りを交わしていたはずです」

「えっ、カズさんも」

「えぇ。あと、そうだ。ご主人様の前に3階を借りていた主様も義兄弟でしたね」

「そうなのか。……で、その人は、今はどうしてるんだ?」

「リャン様の信用を裏切ったみたいでして……もうリャン様と同じ日に死ぬことは出来なくなったと聞いています」

 

――そいつ、死んでるやん。

 

~~~~~~~~

 

結局、黒鉄の口車に乗せられただけのようにも思えたが、安心したのもまた事実だった。俺はその場で、澤崎さんに電話し、預け入れの方法を教えてくださいと伝えたら、後ほど、弁護士から連絡が行くと伝えられた。後は、細かいことは考えず、リャンさんの指示のままに動こうと、完全になるようななれという気分だった。リャンさんの本国にいる父親の力が太陽を西から登らせることができるものであれば、何んとかなるだろう。それに考えてみれば、黒鉄の言うとおり、今現在、俺自身も法律に触れてるようなことしてるもんな、てへっ。もうとっくに、賽は投げられ、俺はルビコンを渡っているのだ。

 

デリバリーの寿司が来て、会議室に運び込まれる。山岸君は、ちらちらと黒鉄を見て、一緒に寿司を食べたそうにしていたが、俺は、「まだ打ち合わせは終わっていなから下がってくれ」とビシッと言って、山岸君を部屋から追い出しつつ、ついでにお茶を淹れるよう頼む。

 

「いけませんね~今は、自分で飲むお茶は自分で淹れる時代ですよ」

「……それもそうだな」

 

俺は、ウニから食べ始めている黒鉄を残し、給湯室に向かう。

 

「山岸君、すまん。お茶は私が淹れるから。君もお寿司食べてなさい」

「いえ、お茶くらい淹れます。ボスのおごりみたいですし。……ところで、黒鉄さんって何してる人なんですか?ずいぶん、ボスとも親しいみたいですけど?」

「あっ…あぁ、コンサルみたいなもんかな。色々相談乗ってもらってるんだ。とっ、とにかく、お茶は私が淹れるから。席に戻って」

 

さらに深く聞いてきそうな山岸君を給湯室から追い出して、お茶を淹れようとしたのだが……面倒になって、冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出して、会議室に戻った。

 

~~~~~~~~

 

思いがけぬトラブルのせいで仕事は片付かず、残業は確定だった。さやかにメッセージアプリで遅くなることを連絡し、迎えは寄越さなくていいと伝えた。優衣に夜伽してもらうのはムリそうと思えば、テンションが下がる。今まで、俺の仕事のモチベーションは金だけで、性欲処理は単に欲求の発散に過ぎなかった。だが、ハーレムを作ってからは、ハーレムの姫達と一緒に過ごす時間(性欲処理含む)が、働くモチベーションになっていた。まぁ、金を稼がなくてはハーレムを維持できないというのも事実なのだが。

 

……そう言えば、今夜は優衣は配信ライブをすると言ってたな。スマホを取り出し、配信プラットフォームを開くと、優衣の配信は既に始まっているようだった――。

 

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