[前話回想シーン続き]
優衣のグループの解散の話は驚きはしたものの、俺は、優衣と知り合うまではそのグループの存在自体知らなかったし、優衣を応援はしていたものの、箱推しはしておらず、実のところ、思い入れがそこまであるわけではなかった。曲も、全部聞いたわけではないが、よくあるアイドルソングといった感じで、俺としては、ライブDVDを最初から最後まで見ることすらきついというのが正直なところだった。ただ、解散のことは絶対に他の人に言ってはいけないというのは、俺でも分かることで、仕事柄機密情報には敏感だが、グループの解散みたいな秘密を知っているということが、何だか業界の人間になったようで、不思議な気持ちだった。ってゆうか、優衣は俺に言ってもよかったのだろうか、秘密保持契約とか締結しなくていいのか。
そんなある日のこと、優衣の所属する事務所が主催するファンミーティングと称するイベントがあり、元々行くつもりなんていうのは、全くなかったのだが、仕事が休みということもあり、ちょっと顔を出してみようかと思い、優衣に同行することとなった。晶子の運転する車で向かい、イベント会場に到着すると、優衣は俺に軽く口づけして車から下り、軽やかな足取りで駆けて行った。
「晶子はどうする?」
「ご主人様がイベントに参加されるのであれば、こちらでお待ちしております」
「そっか。でもここで待ってても退屈だろ。どこかで適当に買い物とかお茶でもしてきたらどうだ。俺もそんなに長居するつもりはないから、俺が連絡したら迎えに来てくれ」
「わかりました」
俺は晶子に軽く口づけ…するつもりが、つい、それだけでは収まらず、晶子の口で処理する羽目となってしまった。ハーレム性活が始まってからというものの、射精しなかった日は数えるほどしかなく、自分でも性欲と精力は強いと自覚していたが、このところは一日一回ではとても足らず、性欲も精力も日々増しているとすら思えるから恐ろしい。晶子が艶っぽく唇をハンドタオルで拭い(俺の肉竿は晶子がお口で丁寧に掃除してくれた)、「ごちそうさまでした」という言葉を背に、車から下りた。
イベント会場のエントランスに入ると、中には数百人の(ほとんど)男達がいて、楽し気に騒いでいた。今回のイベントは、優衣のグループの他にも4つのグループが出演することになっており(どのグループも俺は知らない)、かなり抽選確率が高かったらしく、皆のテンションは高い。来る前に、優衣が関係者枠で入れるように手配してくれると言っていたので、関係者用の受付に行き、声を掛ける。
「すいません、本谷優衣の関係者なんですが」
「あっ、城宮さんですね。お待ちしておりました。こちらにどうぞ」
受付の担当ではなく、その近くでスタッフに指示を出していた女性が声を掛けてきた。この顔には見覚えがある。確か、優衣のグループのマネージャーの天宮さんだ。すらっとした体型に迫力あるバスト、明るい笑顔が印象的で俺は思わず、頬が緩みそうになる。優衣の話では、元々は本人もアイドルだったそうだが、鳴かず飛ばずで裏方に回ったそうだ。確かに、他のスタッフに比べて垢抜けている。
「すいません、突然、来てしまって。後ろの方で見るだけですから、お構いなく」
「えっ、そうなんですか?一応、VIPの方のお部屋がありますので、そちらにお越し頂けますか」
「はぁ…そうゆうことなら、はい、わかりました」
俺は天宮さんに連れられて、エレベーターに乗り、3階のフロアに行くと、『関係者以外立ち入り禁止』との紙の貼られたドアの前で、2人の係員の確認を受けて、さらに、ドアの前で警備服を着た警備員のチェックを受けてから、ようやくVIP用の部屋に入った。
そこは、ちょっとしたホテルのラウンジのような作りになっていた。壁の一面は、ガラス窓になっていて、どうやらそこからイベント会場が見下ろせるようになっていた。さらにはバーカウンターに、イベント会場を映しだすモニターもいくつも置かれていた。その部屋の中にいるのは、10人前後の男達がいて、その中に見知った顔も――
――あっ、黒鉄だ。
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イベントが開始すると、イベント会場では、5つのグループがそれぞれトークイベントだったり、握手会やツーショット撮影会を行っていた。抽選倍率の高いイベントということもあり、かなりファンとの距離は近いイベントのようだ。俺は優衣を探し視線を彷徨わせると、優衣のグループは、5人のメンバーが椅子に座って、トークライブをしていた。よく見れば、天宮さんが司会を務めていて、質問コーナーなのか何なのかファン達がすごい勢いで挙手している。イベント会場の声はここまで聞こえてはこないが、アイドル達はピンマイクを付けていて、後ろに置かれたテレビ画面から声が聞こえてくる。ふと横を見れば、さっきまで手持ち無沙汰にしていた男達が、ガラス窓に貼り付いて、熱心にイベントの様子を見ている。
俺が飽きてきて、イベント会場を見下ろす位置から離れて、優衣のグループが映るモニター近くのソファに腰掛ける。すると、黒鉄がグラスを持って近づいて、俺の隣に腰掛けた。
「ハイボールとワインどちらがいいですか?」
「それじゃ、ハイボールをもらおうか」
服装とこの場の雰囲気からホストのような振る舞いの黒鉄からグラスを受け取ると、一口飲む。黒鉄は俺が来たことに驚いている様子はなかった。いつも冷静な奴だ。
「黒鉄がここにいるってことは、ここは俺みたいなハーレムオーナーの部屋なのか?」
「いえ、ここにいるオーナーは、ご主人様以外はお一人だけで、あとはメンバーです」
「――すまん、メンバーってなんだっけ?」
俺は聞いた瞬間、長台詞の予感を感じて、黒鉄の方に身を乗り出して、身構える。
「私どもの組織は、ハーレムを提供していますが、基本的には女衒です。組織が抱える商品を金と引き換えに提供する。その商品の提供を受ける資格のある人がメンバーです。ハーレムを作るには、かなりの資金が要りますから、オーナーになれるのは一握りです。ご主人様の場合は、いきなりハーレムオーナーになりましたが、大抵の人はオーナーになるというのは夢のまた夢で、メンバーとして、組織の提供する商品を買い、一夜の享楽のために私どもの組織に金を払うのです」
「とすると、この今日のイベントというのは、もしかして……」
「そうです。メンバーのための品評会ですね。よく見てください。アイドル達は名札を付けていますが、ピンク色で縁取りされている子は組織の商品で、それ以外の色の子は商品ではありません」
俺は、思わず、ガラス窓に駆け寄って、イベント会場を見下ろし目を凝らす。ピンクの縁取りをしているのは、全部で……7人。多いのか少ないのか、全体の4分の1くらいだろうか。念のため優衣を見ると、名札の縁取りは水色だった。優衣のグループを見れば、ピンクの縁取りは、真ん中に座っている星羅だけだ。まさか、このイベントにそんな意味があったとは――俺がそんな思いに耽っていると、部屋のドアが開き、さっきまで下にいたアイドルが入ってきて、組織の男の案内でその子を呼び出したであろう男の傍に近づいていく。そして、またイベント会場を見下ろせば、星羅も呼び出しを受けたのか、ファン達に手を振って、席を立っていく。
「メンバーの方にとっては、このような場で選ぶことによって優越感に浸れるようです。俺はお前たちが触れることも出来ない人気アイドルを抱けるのだと。また、アイドルにとっても、今後、どちらを大事にすべきを思い知らせる場にもなるということです」
「もしかして、この後は……」
「はい。イベントが終了してからとなりますが、一晩過ごすことができます。もしよろしければ、ご主人様もどなたか指名されますか?早い者勝ちですよ」
そういって、黒鉄はどこに持っていたのか、背後からタブレットを差し出す。懐かしい―――、あの時のやつじゃん。そこには、今日売り出されている7人が映っていた。俺は、思わず、星羅の顔画像をクリックした。
宮坂星羅 19才163cm46kgB84W54H78…50万円
「一晩50万円もするのか!!!」
「それはしますよ。現役アイドルでなおかつ、組織に所属してからの年月も浅いですからね。星羅はまだ、一人しか客は取っていません
「ハーレムに入れる場合の金額は書いてないのか?」
「今日のメンバーの方の中にはそれだけの資力のある方はいらっしゃいませんので。まぁ、いらっしゃるとすれば、ご主人様か、小松原様……あちらにいるハーレムオーナーです。今日はご主人様と同じく自分の姫を見学に来たそうです。後で、ご挨拶されますか?」
俺が視線を向けると、かなり年齢のいってそうなロマンスグレーの渋い男性がいた。あの年になっても、性欲は衰えないのか……俺は後何年、この組織に金を支払い続けるのだろうか、と思えば空恐ろしくなる。視線を移せば、さっき呼び出されたアイドルが部屋から出て行き、それと入れ替わりに、星羅が入ってきた。緊張しているのか、足取りが覚束ない。俺は、思わず、『頑張れ』と心の中で声を掛けた。
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10分程すると、星羅はお辞儀をして、部屋から出て行った。どうなったのかと思っていると、さっきまで星羅と話していた男が黒鉄に話しかけている。俺はイベント会場を見ていると、星羅が戻ってきた。俺は「あっ」と声を漏らす。名札の縁取りがピンク色から黄色になっている。とすると、売れたということか。さっき、ここに上がってきていた別のアイドルは、と見れば、ピンク色のまま。そうこうしているうちに、VIPルームにはさらに数人のアイドルが出たり入ったりしており、その空気に当てられて、そろそろお暇しようかと思っていると、黒鉄が声を掛けてきた。
「ご主人様。こちらのメンバー様がご挨拶したいとのことです。衣川様です。此方は、オーナーの城宮様です」
心なしか『オーナー』と大き目の声量で言われると、アイドルを品定めしていた男達が一斉に俺の方を見る。えっ、何これと思っていると、目の前の衣川という男も俺を緊張気味に見ている。
「初めてご挨拶させていただきます。衣川と申します。この度はお近づきになれればと思い、黒鉄さんにお願いしてお声がけさせていただきました。」
「あぁ、こちらこそはじめまして。城宮です。」
相手は俺より年上のようだが、へりくだっている相手には強く出るのが俺と言う男。名刺交換をしてみれば、不動産会社の社長のようだ。今まで、ハーレムオーナーとの交流は若干あったが、メンバーと会って話をしたことはなかった。会社の住所を見れば、地方の地名で、田舎の不動産屋といったところだろう。
「さっきは星羅と話してましたね。なかなか、お目が高い。優衣からは、性格もいいと聞いてますよ」
「そうですね。それにスタイルも抜群ですね。この後のことを思うとたまりません」
衣川は見ていられないほどに頬が緩み、鼻の下を伸ばしている。スケベな顔をしている中年男というのは、傍から見ていると、とても見てられないということに気付かされる。
「それにしても、ハーレムオーナーとは羨ましい。私はメンバーになってからは1年ほどですが、こうしてオーナー様にお目にかかることも初めてでして…ちなみに、何人所有されているのですか?」
「今は、5人…かな」
「5人も!!!それはすごい。いやーお若いのに、大したものです」
5人だけと舐められないかと思ったが、それは杞憂だったようだ。俺はおだてられると弱い。少しだけふんぞり返ると、いきりトークをかます。
「まぁ、それほどでも。来年くらいにはもう少し増やそうかとも思ってるんですよ。なぁ、黒鉄」
「そうですね。ご主人様はファンドマネージャーとしてその世界では知らない人はいない高名な方ですし、収入や資産状況からしたら5人というのは堅実なご性格の表れかと」
5人と言うのが、俺の収入から言えば、ギリギリマックスどころか予算の天井をぶち破っていると知っていながら、俺を持ち上げてくれる黒鉄に、感謝の気持ちを込めて衣川に隠れて親指を立てる。
「衣川さんもよろしければ、私のファンドに出資しませんか。一口2000万円からご案内しておりますがいかがですか?」
「2000万!?はぁ…検討させていただきます」
名刺の住所に資料を送ります、と言いながらも、こいつにはそんな金の余裕はなさそうだと思いつつも、鷹揚に構える。そして、黒鉄の「そろそろ」という言葉に、衣川は安心した表情で、俺に何度もお辞儀をして、立ち去って行った。――いい気分だわ。
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それからしばらくして、晶子に迎えに来てもらおうとメッセージを飛ばす。帰る前に、優衣に挨拶して行こうと思って、部屋を出る。1階に降りて、改めて受付に寄ると、天宮さんがそこにいた。
「そろそろ帰ろうと思うんですが、……ちょっと挨拶できますか?」
「――はい、わかりました。お部屋用意するので…ご案内します」
周囲の視線もあるので、声を落とし、名前を出さずに言うと、天宮さんも察したように、声を潜めて話す。俺の耳元に顔を近づけた瞬間、汗と香水の混じった香りがふんわりと匂う。うん、美人からはいい匂いがする。天宮さんに付いてバックステージの控室に行き、しばらく待っていると、メイド服に似たアイドル衣装を着た優衣がやって来た。
「ご主人様ぁ、来てくれてありがとうございます。どこで見てらっしゃったんですか?」
俺に抱き付いてから、顔を離し、頭をちょっと傾げて聞く優衣は…率直に言ってむちゃくちゃカワイイ。
「あぁ…うん、VIPルームで見てたよ」
「そうなんだぁ。ユイがアイドルしてるとこ見られるの、ちょっと恥ずかしいな」
照れる優衣もカワイイ。普段は「私」なのに、一人称を「ユイ」とするのもカワイイ。俺は思わず抱きしめる腕に力がこもり、優衣にキスをする。優衣も背伸びをして俺の唇に自分から唇を押し付けると同じタイミングで舌を絡ませる。処女だけでなくファーストキスも奪っているのだが、今後、女優仕事でキスすることもあるかもしれないと思えば、嫉妬の炎が疼く。キスシーン禁止とかダメかな。夢中になってキスしてから唇を離すと、優衣の背後で咳払いする天宮さんに気付いた。まだいたんだ。
「優衣さん、ライブパートが始まるので…そろそろ」
「えぇー。でも、もうちょっとだけ…」
「優衣、天宮さんの言うこと聞かないとな」
「ぅん…わかった」
優衣は、もう一度俺に口づけすると、名残惜しそうに俺の方を見ながら部屋から出て行った。優衣を見送り、俺も部屋を出ようとすると、天宮さんが俺の服の袖を掴んだ。「ん?」と天宮さんを見ると、思いつめた表情で俺を見詰めてくる。
「あのぉ…少しお時間いただけませんか?お話したいことが」
「はい。なんでしょう?」
「ここではなく…どこか静かなところがいいんですけど……」
――シズカナトコロ……これってもしかしてフラグ立った?