※この作品はR-18です。

俺がハーレムを作る話   作:どろんぱ(仮)

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時期的には、第1話の半年くらい前です。

浜木ひらりが組織の姫になるまでのお話。


第3章の1 浜木ひらりの場合
第38話 浜木ひらりの場合~その1


私は、高校在学中に動画投稿を始め、踊ってみた動画がバズって、それから配信なんかも始めて、歌ったり食べたりモーニングルーティンなんかをしているうちに、20才になるころには人気配信者になっていた。分析と実践、パクリと自分なりのアレンジとそこからのブラッシュアップ。時間は有限だけど、一つのことに全振りしてそれを毎日続ければ、一日をただ漠然と過ごしている人との差は広がっていく。

 

得たお金は全て自分への投資に回した。機材購入に美容整形、豊胸手術、編集作業のアウトソーシング。お金は貯まらないけど、毎月振り込まれる金額は少しずつ大きくなっていった。自分という人間(キャラクター)を世界に向けて売り出すプラットフォームがある時代にマネタリング出来る環境が整っている今この瞬間に稼げるだけ稼いでやる、個人で戦える瞬間はそう長くは続かないはずだから――。毎日配信を続けながら、私はこのゴールドラッシュの時代が終わる前にすべきことを探していた。

 

 

++++++++++++++++++

 

 

有名になった若くてカワイイ女の子は金を持った男に食い物にされる。それはいつの時代も変わらない。配信者の業界でも同じこと。一晩いくらの値札が付けられ、夜な夜な成功者たちだけが集まるパーティーが行われ、声がかかる。パーティーにいるのは小金持ちの俗物ばかりで、下らないし詰まらないけど、人生何事も経験と思い、参加してみる。配信者に休日はないし、出会いの機会もない。他人と接する機会としては、同世代の合コンに行くよりはよっぽどましだ。ただ、私のような何の後ろ盾もない小娘が立ち入れるのは、天空闘技場の下の階まで。そこから時間をかけて少しずつ上がっていくのは、正直しんどいし面倒くさい。私にもっと他人とは違う才能や他を圧する美貌があれば、すぐに200階にまで到達できるけど、残念ながら私はそんな器ではない。こんなことで地道な努力なんてまっぴら、すっ飛ばして雲の上に行ってみたい。そんな時知ったのが、実しやかに囁かれるあの組織のことだった。

 

ごく一部の超富裕層にハーレムを提供するというその組織は、戦後間もない頃(ショウワ?何それ、江戸時代の次くらい?)から存在し、お金持ちのためのハーレムに送り込むための美女を集めているらしい。組織が一から育てる子や借金のかたに売り飛ばされた子のほか、有名芸能人やモデル、アスリート達も自分自身へのサポートや援助と引き換えに組織に自ら望んで入るという。残念ながら配信者の女の子の中でその組織に入っているという子の話は聞かず、組織につながる伝手もなかった。配信者の世界には、芸能界のようなしがらみはなく、成功するかどうかは自分次第、配信者業界自体がまだ出来たばかりの未開拓の荒れ地故に組織がサポートするノウハウもなければ、組織が関わる旨味もないのだろう。でも、だからこそチャンスがあるかも……それは私の勘だった。私は、自分の勘を信じて、組織につながる伝手を探した。

 

~~~~~~~~

 

久良木歩美は、友人と呼べるかは微妙だけど、同じ中学の同級生で、売れないアイドルをしている。歩美は一応、芸能事務所に所属してるし、組織に繋がる伝手になるかも知れないと思い、SNSを通じて、数年ぶりに連絡し、会うことにした。

 

「お~、生ひらりんだ~。むっちゃ可愛くなったよね~。登録者数100万人でしょ?すごくない?私もアイドルなんかじゃなくてそっちに行けば良かったかな~~」

 

数年ぶりに会った歩美は、昔と変わらず可愛かった。向こうは私を見てちょっとびっくりしてたのできっと私が整形したことに気付いているだろう。

 

「そんなことないって、ウチは整形だし動画は基本加工だから。歩美の方がカワイイって、絶対。でさでさ、歩美は、あの、組織……って言えばいいのかな、分かる?」

「うん…まぁ、ね。私も売れないアイドルやってると聞くよね、たまに。組織に入れば売れるよ、みたいな」

「やっぱそなんだね。どうやって入るの?」

「う~ん、私もよくわかんないけど、見どころある子はスカウトされるらしいよ。あとは、事務所の人に言って面接みたいの受けさせてもらうとか?詳しくは知らんけど。えっまさか、ひらり、興味あんの?」

「うん、ちょっとだけ。すっごいお金持ちいるんでしょ。ワンチャン会ってみたいし。歩美はないの?キョーミとか?」

「ないない。やっぱ実力で売れたいし、それに私だけ入ってもね、うちはグループだからさ。みんなで売れたいじゃん」

「そだよねぇ、歩美なら大丈夫だよ、そんな組織なんかの力なんか借りなくたって、絶対。でもさ、ウチはやっぱキョーミあるんよねぇ。悪いんだけど、ちょっと事務所の人に聞いてみてくんないかな。面接みたいの受けれないか。お願いっ」

「う~ん、いいけどうまくいくか分かんないよ。まぁひらりの頼みなら聞くだけ聞いてみるけどさ。その代わりにさぁ……」

「もちろんっ、私の配信出てよっ。コラボしよっ」

 

――という感じで歩美に頼んでみたら、面接を受けれることになった。でもその前提として、歩美の事務所が私の身元引受をする必要があるみたいで、私は業務提携という形で事務所に所属する形となった。まぁ組織に入れたら、即辞めたらいいし、事務所と契約を取り交わす時にもそこだけ拘った。そもそも契約書を欲しいと言っただけで、事務所の人は嫌な顔したけどね。古い業界だわ。そして、数日後、私は面接に行った。

 

面接の場所は、意外にも雑居ビルにある貸会議室だった。もっと、何かすごいところを想像してたんだけど。そこにいたのは、40代くらいの白衣を着た女性で、狭い部屋に一人だけ。私は、履歴書を出して、挨拶をすると、おそらく貸し会議室の備え付けではない、大きなリクライニングシートに座るよう促された。

 

「面接は、催眠面接となります」

「えっ、何それ?」

「あなたはそこに寝て、リラックスしてればいいです。こちらのドリンクを飲んでください。身体に害はありません。それでは、目を瞑って……1.2.3.4.5――」

 

――5までは意識があったけど、6を聞く前に、私の意識は途切れた。

 

~~~~~~~~

 

目が覚めた時に時計を見ると、1時間も経過していた。よく寝たような気はするけど、体感は数分。この日は、これで終わりだった。一体どのような面接が行われ、私は何を答えたのだろうか。それから、しばらくは何の連絡もなかった。事務所の私担当のマネージャーの天宮さんに聞いても、何も連絡はないらしく、私は自分の動画投稿や配信の他に、事務所からの案件仕事もこなす日々が続いた。もしかすると、このまま何も起きないのではないかと思い始めていたら、面接の日から約6週間後、ようやく連絡の封筒が来た。――結果は合格だった。実感は全くなかったけど。ただ、封筒の中に合格通知と一緒に入っていた誓約書を見た時には、さすがにゾッとした。

 

誓約書 

1.私は、組織の命令にどんな内容であっても従います。

2.私は、組織に対し一切の請求・異議を行いません。

3.私に何があっても組織には何の責任もありません。

 

ここまで来たら今更後には引き返せない。誓約書に署名して返信用封筒に入れて送ると、今度はすぐ分厚い封筒が届いた。中に入っていたのは、研修のお知らせと、研修資料だった。研修期間は、何と1週間。都心から離れた場所にある研修施設で行うとのことだった。配信者になってから、1週間もの長期間、配信や動画撮影をしなかったことはない。私は、研修前日、プライベートな事情でしばらく配信をお休みします、という内容の動画を撮影し、予約投稿してから、研修に行く準備を始めた。迎えの車が来た時は、ほとんど寝ておらず、車の中では爆睡だった。

 

車は約2時間ほど走り、山の中の周囲に何もない建物の前で下ろされた。スマホは没収され、到着してから少し休んだだけで、面談が行われた。広めのペンションのような建物の1階の日当たりのいい部屋で、2人の人間にこれまでの人生を根掘り葉掘り聞かれた。どうやら合格通知までの期間が長かったのは私の身辺調査のための時間だったようで、組織によって、私の短い人生は隅々まで調べ尽くされていた。面談の担当者から、私はその内容があってるかどうか確認されたり、調査では分からなかったことを質問責めにされた。

 

経験人数を聞かれた時には、私は適当に20人くらいと答えたんだけど、1時間以上かけて記憶を掘り起こされ、最終的には、18~19人ということで落ち着いた。質問はしつこく細かいけど、私が疲れた様子を見せると休憩をさせてくれるし、飲み物やお菓子はたくさん用意されてて自由に飲み食いできた。面談の担当者は若い2人でリラックスできる雰囲気を作ってくれたので、疲れたけど、それほど苦ではなかった。夕食は和食で、玄米にお魚、野菜、どれもヘルシーで美容にも良さそうな食材ばかりで味も美味しく、普段ロクな食生活を送っていない私にとってはそれだけでありがたかった。食後、美容のためのサプリといって錠剤を渡された。渡したスタッフが私が飲むのをそれとなく確認しており、私は錠剤を口に含み水を飲んだ。スタッフの視線が外れると、口の中に含んだままで呑み込まなかった錠剤を吐き出した。

 

2日目は、写真撮影に動画撮影、何度も着替えさせられ、水着に下着、裸にもなった。インタビュー動画は本業だけに我ながらうまく出来たのではないかと思う。3日目はお休み。スマホないしすることないんだけど。ちなみに、この別荘には、組織のスタッフの他に私のような姫候補生が2人いた。2人とも私より年下みたいで、食事の時に顔を合わせると、少し話をした。休みの日には、午前中は建物にあったDVDを借りて見たりして時間を潰したけど、ランチでは2人と一緒になったので、その後2時間くらいおしゃべりをして過ごした。2人とも明るく前向きで、よく笑った。でも纏っている雰囲気が似過ぎていると思い、私は疑念が確信に変わった。今後もあの錠剤は飲まないようにしよう、と。

 

4日目~6日目はマナーや礼儀作法、姫としての心得を徹底的に教え込まれた。今までのリラックスした空気は一変し、怒鳴られたりまではしないものの、覚えが悪いと、何度でも繰り返し指導が続き、夕食後にまで研修が続くこともあった。この時は、ちょっと組織に入ったことを後悔しそうになったけど、社会で成功するには、このような知識はないよりはあった方がいい。ただ、一緒に研修を受けている2人の熱心さを見ていると、やはり、あの錠剤が何か効果を及ぼしているとしか思えなかった。私も、あれを飲んでいたら、今とは違う気持ちだったのだろうか。

 

7日目は、組織の成り立ちからこれまでの歴史についての話があり、他の2人は退屈そうで半分寝ていたけど(この授業はこれまでと違って厳しくなかった)、私は興味深々だった。ランチを挟んで、その後は姫候補生の今後についてのオリエンテーションだった。この話をしてくれたのは、白石さんという女性で、私達の研修期間中、ずっと一緒にいた人だった。ただ、肩書を言うことはなく、下の名前すら名乗らないので、彼女が組織の中で一体どのようなポジションなのかは全く分からなかった。白石さんは私達3人を前にして話し始めた。

 

「本日で研修は終了です。みなさんは、組織の姫として、正式に採用されました。これからは常に組織の姫であることを自覚し、組織の名前と品位を汚さぬようしてください。絶対にです。みなさんのスマホをお返しします。専用アプリをインストールしたので、確認してください。みなさんの情報管理や組織からの連絡はすべてこのアプリを通じて行います。72時間の間、一度もこのアプリを見ないと、ペナルティが課されます。スマホを3日間見られない環境が想定される場合には、事前に申請をしてください」

 

1週間ぶりに見るスマホは通知が山のように来ていたが、まずはインストールされたアプリを確認する。アプリには、既に私のパーソナルデータが入力されていて、生理周期や日々の体重、食べた物なんかを入力するページもあった。さらには、食事管理や必要な運動、美容・コスメに関するデータまで充実していて、全てを確認しようと思ったらすごく時間が掛かりそうだ。

 

「まず、一番重要なのは、ご自身をハーレムのリストに載せるかどうかです。ハーレムに入った場合、特殊な事情がない限りは、ハーレムオーナーの指定する家に住むことになります。生活はすべてハーレムオーナーやハーレムの姫の中のリーダーに従うことになります。ハーレムの姫でいる間は、オーナー以外のお相手をすることは原則ありません。ただし、オーナーからの命令があれば、お相手をすることがあります。姫は組織の指示に従ってもらいますが、ハーレムに入っている間は、オーナーの意思が組織の指示に優越します」

「あのぉ…リストに載せて頂こうと思うのですが……、でも、ハーレムにはなかなか入れないと聞いたことがあるんですけど、実際はどうなんでしょうか?」

 

一緒に研修を受けていた子の1人が質問する。それは私も気になっていた。

 

「1年間でオーナーになるのは、10人前後。ハーレムの平均人数は7人。そうすると、1年間でハーレムに入れるのは、単純計算で約70人です。従来のオーナーが新たに姫を迎える人数を入れても1年間で100人もいません。一方で、組織のハーレムのリストには、常時約300人の姫がいますから、3人に1人といったところでしょう」

 

この数字は多いのだろうか少ないのだろうか。オーナーになる人数は年間10人ということは、ハーレムガチャは年10回。ハーレムに入れる確率が1/3ということであれば、確率的には、ほぼ確実にハーレムに入れる気がする。しかし、話はそう単純ではないはずだ。つまり、オーナーは300人のリストから7人を選ぶ。『常時約300人』ということは、随時補充されているということだ。そうするとその確率は、常に300分の7。確率はわずか2%。10回のガチャで2%の当たりを引く確率は20%……そこまで高くはない。しかも、オーナーはランダムに選ぶわけではなく、300人の中から好みの女性を選ぶから、確率論はそのまま当てはまらない。好みが極端でなければ、イイ女から選ばれる。とすると、下層の姫達は永遠に選ばれないことになる。私はこの計算を数秒で行うと、現実の厳しさに微かに首を振った。そして、白石さんと目が合うと私は手を上げた。

 

「リストに載せないという姫は何人くらいいますか?」

「約200人です」

 

そう言っただけで追加の説明はなかった。白石さんの表情は、この数字を貴方はどう評価するの?と言っているみたいで、私は「ありがとうございます」とだけ言って黙った。リストに載っている姫は300人、リストに載らない姫の人数はその3分の2。それだけの人数がリストに載せないということは、リストに載せないことのメリット、載ることのデメリットがあるのだろう。しかし、今、何の知識もなしに質問しても、求める答えは返ってこなそうだ。

 

「それでは、続いてですがハーレムの姫は3つのランクに分かれます。シングルスター、ダブルスター、トリプルスターと言います。割合は、シングルが90%、ダブルが8%、トリプルが2%です。このランクもアプリに表示されています。そして、ハーレムに入っていない姫は、遊女(あそびめ)とも呼ばれます。遊女は組織やオーナーからのオファーでお仕事をします。参加は任意で、参加せず、ハーレムに入るのを待っていても構いません。ただ、オファーを受ければ、お手当が都度発生します」

 

アプリで自分のランクを見る。星は一つ。他の2人もおそらくそうだろう。白石さんの話は淀みなく続く。

 

「組織の会員はオーナーとメンバーに分かれます。オーナーはこれまでもお話してきたハーレムを所有する方のことです。メンバーは会費を払って組織の姫を買うことができます。オーナーランクは2つ、ゴールドとシルバー。メンバーランクは3つ、ゴールドとシルバーとブロンズです。ゴールドのオーナーは、シングルとダブルの姫の中から自分のハーレムの姫として選ぶことができて、シルバーのオーナーはシングルの姫から選ぶことができます。ゴールドランクのオーナーというのは、一定の条件を満たすとシルバーからランクアップします。ブロンズのメンバーはシングルの一部の姫の中から選ぶことかできて一晩買うことができます。シルバーのメンバーはシングルの全部の姫の中から選ぶことができて一晩買うまたは愛人として買うことができます。ゴールドのメンバーはシングルまたはダブルのメンバーを一晩買うまたは愛人として買うことができます。ランクの違いは年会費の違いです」

「トリプルの姫は……」

「ゴールドのオーナーまたはメンバーの中から組織が特別に認めた方に提供されます。これらのオーナーまたはメンバーはブラックと呼ばれることもありますが詳細はシークレットです」

 

それから、お金の説明、姫の契約期間、さまざまなルールの話になった。話を聞けば聞くほど、ハーレムに入るだけでなくそれ以外のお金を稼ぐための立ち回り方はいくつもありそうだ。お金だけの話で言えば、ハーレムに入らず遊女として複数の愛人になる方が稼げるかもしれない。でも、ハーレムに入らなければ、基本的にオーナーには近づけない。メンバーは所詮私が今まで会ってきたような小金持ちと変わらない。超富裕層に会うためにはハーレムに入る必要がありそうだ。誰かのハーレムに入れさえすれば、スワップで他のオーナーとの接点も生まれるかもしれない。それに、現実問題として、配信者を続けるのであれば、遊女としてフル活動する時間は取れない。ハーレムに入れば、生活の拠点は指定されるものの、何をするかはオーナーの了解さえ得られれば自由だ。私の頭は白石さんの言葉を一言一句漏らさらぬよう聞きながらも、最適解を探るべくフル回転していた。

 

~~~~~~~~

 

オリエンテーションが終わると、白石さんは私に残るように言った。後の2人が私のことを気にしつつ部屋から出て行くと、白石さんと2人きりになった。

 

「浜木さんはサプリを飲んでませんね」

「……」

「答えを聞かなくても貴方の目を見ればわかります」

「――ウチ、どうなりますか?」

「セックスは好き?」

「はい」

「好きでない相手でも?」

「……相手によりますけど」

「貴方が素面でも組織の求める姫になりれきるのなら飲まなくてもいいのよ。でも貴方は買われる相手を選ぶことはできない。それでも素面で大丈夫?」

「……はい。大丈夫です」

 

白石さんは心配そうに私を見詰めた。しばらくの間沈黙が続き、白井さんの方が口を開いた。

 

「貴方がなぜ組織に入ったのか私にはよくわからないの。貴方の業界に組織の影響力はないでしょ、賢い貴方は分かっているはず。それなら、貴方は組織に何を求めるの?」

「人脈――面接ではそう答えていましたが、本当は組織のビジネスパートナーになることです」

 

私はひらりんとしてのキャラを止めて素の自分に戻って話した。私の口調が変わっても、白石さんの表情は変わらなかった。

 

「……」

「私なら配信者業界と組織の橋渡しができます。配信者や投稿者の女の子が組織に入ることでメリットを得られる仕組みを作ります。今後、人気配信者が組織の姫になることで、組織のブランドイメージは上がります、絶対。海外の富裕層は、日本のアイドルは知らなくても、配信者は知ってる、そんな時代はもう来ています。そしたら、組織にとっても新たな顧客を得るチャンスが生まれます。それと引き換えに、私は自分のビジネスのために組織を利用します」

「そう。頑張りなさい。……何か相談あったら私に連絡してきなさい」

 

白石さんは私に連絡先の書かれた名刺をくれた。そこにはやっぱり肩書も下の名前もなかった。私は深くお辞儀をして、部屋を出た。家に帰ったら、すぐに配信活動と動画撮影を再開しなくては。SNSも全く更新していないし、1週間たまりにたまった連絡の返事もしなくちゃいけない。早くこの一週間分を取り戻さなくては。それから遊女としての活動を始めたいし、他の姫とも知り合って、情報交換をしたかった。手始めに、一緒に研修を受けた2人と連絡先を交換しよう。しばらくは、配信者と遊女の二足の草鞋の生活になりそうだけど、時間を最大限有意義に使う術は心得ている。どのくらい時間が掛かるはわからないけど、誰かのハーレムに入るための最短距離を走り抜けて見せる、心に固く誓った。

 

――ただ、実際は、私は意外と早く、簡単に、鏑木臣人のハーレムに迎え入れられることになるのだが、それはまた、別の話。

 

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