※この作品はR-18です。

俺がハーレムを作る話   作:どろんぱ(仮)

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第40話 浜木ひらりの場合~その3

楓香さんは、権藤様のコーヒーを淹れにキッチンに行ってしまった。権藤様はリビングに残り、ソファに腰掛ける。んー、気まずい雰囲気。初めて会うオーナー様とどう接していいかわからん。乃亜を見れば、完全にフリーズしてる。ここは私が話しかけるしかないかと、意を決する。

 

「えっと…お話してもよろしいでしょうか?」

「だから、そんなに畏まらなくていいから」

「ハイッ、ありがとうございます。権藤様は…大学教授をされてるんですか?」

「正確には、准教授ね」

「ジュン教授…?」

 

大学教授というのがそんなに稼げるとは思えない。ジュン教授は尚更だ。私の疑念が表情に出てしまったのか、権藤様は苦笑しながら口を開いた。

 

「家が金持ちなものでね。それでオーナーにならせてもらってるんだよ。楓香を入れて3人の慎ましいものだけどね」

 

なるほど……あれ、そう言えば、ゴンドウって最近ほかでも聞いたような…。

 

「あのぉ、権藤様が、楓香さんを選ばれた理由って…お聞きしてもよろしいでしょうか」

 

乃亜がおずおずと質問すると、ちょうどそのタイミングで、コーヒーとハーブティーのポットを乗せたトレイを両手で持った楓香さんが戻ってきた。

 

「乃亜、そんなこと、ご主人様に聞かないの」

「いいじゃないか。風佳には何度も言っているけど、一番は好奇心旺盛なところだね。頭がいい人間はたくさん…たくさんはいないか、少しはいるけど、色んな事に好奇心を持てるのは才能だよ。おかけで、僕も知識の範囲を広げてもらえたよ。珈琲ありがとう」

「そんな、私なんて全然。ご主人様の深い教養に比べたら……何にも知らないから、逆に色々知りたくなるんだと思います」

 

楓香さんはコーヒーカップを差し出すと権藤様はお礼を言い、楓香さんははにかんだ笑みを零す。二人が惚気合うのを見ていると、微笑ましく思えるのと同時に羨ましくなる。もし、私が誰かのハーレムに入れたとして、私もこんな風にご主人様と笑い合えるのだろうか。やっぱり、あのサプリをちゃんと飲まなきゃいけないのかな。――いかんいかん、今そんなこと考えても仕方ない。私は軽く頭を振って、話を変えようと試みた。

 

「権藤様は他のオーナー様とも交流されたりはするんですか?」

「うーん、僕はそんなにないかな。さっきも言った通り、親が金持ちなだけで、僕自身はしがない准教授だからね。生活レベルが合わないんだよ。――強いて言うなら、鏑木臣人かな、作家の」

「カブラキオミト……?乃亜、知ってる?」

「名前くらいは…本は読んだことないけど。ドラマの原作してますよね?」

 

こうゆう場にいると、いちいち自分の無知さがさらけ出されて嫌になる。小声で乃亜に聞くと、乃亜でさえ名前を知っているとは。私はほとんどテレビも見ないし字の本も読まんし…あっ、その顔、楓香さん、ひょっとして呆れてる?

 

「昔からハーレムオーナーをされているとは知っていたんだけどね。楓香が鏑木臣人の大ファンっていうから、連絡して、それで、4人で会ったんですよ」

「はい。ご無理を言ってしまって…まさか、鏑木臣人先生と直接お話しできるなんて…緊張しすぎて何話したか覚えてないくらいでした」

 

楓香さんの話し方は、すごく可愛くて、それを見てる権藤様もにやけてる。そりゃあ、写真集10万部売れた女の子をそんなに間近で見れたらそんな顔にもなるよね。

 

「4人ということは、あともう一方いらっしゃったんですか?」

「うん。えっと、何だっけ、あの子、女優の……」

「源川まどかです」

「あぁ、そうだそうだ。楓香は、あの子のファンでもあるんだよな」

「だって、すっごく素敵なんですもん。お会いして、ますますファンになりました」

「確かに美人ではあったな。あと、頭も女優にしては悪くない」

「ご主人様、今のお言葉は、偏見が入っていらっしゃいます」

「悪い悪い。いつもこんな風に楓香には叱られているんですよ。年は10も離れているというのにね」

 

楓香さんが頬を膨らませてわざとらしく言うと、権藤様はお手上げのポーズ。それから、楓香さんの顔に手を伸ばし頬を触ると、楓香さんは嬉しそうに目を瞑る。――ちょっと油断すると惚気るな、この二人。てゆーか、4人で会ったってことは4Pしたってこと…だよね?あっ、乃亜のあの感じは、私と同じこと考えてるな。ちなみに、私は、そのなんとかまどかって子も全く知らない。

 

「あっ!」

 

私の頭に天啓が閃く。ゴンドウって、確か、祥子をハーレムに呼んだオーナーも確か、ゴンドウだったような。上半身を乃亜に寄せて、小声で囁く。

 

「ねぇ、祥子のオーナー様って誰だっけ?名前聞いた?」

「えっ?何、名前までは覚えてないけど」

 

ちっ、使えん。すっかり私たちのことを気にせず二人の世界に入っている二人をこちらに引き戻そうと、えへんと咳ばらいをしてから、質問する。

 

「実は、ウチと乃亜と研修が一緒だった祥子という子が、最近、ハーレムに呼んで頂きまして。確か、そのオーナー様の名字もゴンドウ…だった…ような」

「あぁ、それなら、多分、僕の兄弟だと思うよ」

「へぇーご兄弟もオーナー様なんですね、すごい」

「ただ、僕入れて、5人いるからな…誰だろう。蔵之介は違うとして、龍之介か、寅之助か、和之介か」

「カズノスケだ。カズノスケって言ってました――すいません、カズノスケ様です」

 

楓香さんの窘める視線に気づいて、慌て気味に言いなおす。

 

「和之介は弟です。まだやんちゃなところのある奴ですが、しっかりした姫が付いてますから。祥子さんという子も安心してもらっていいと思いますよ」

 

弟ということは、権藤様よりも年下なのか。それじゃあ結構若いご主人様なのね。処女選んでるしもっとおじさんかと思ったけど、処女好きに年齢は関係ないのか。

 

「ひらりん、私と乃亜はこの後、仕事なの。そろそろお開きでいいかしら?」

「もちろんデス。すいません、長居してしまって。そだ、最後に、権藤様にお願いしてもよろしいですか?」

「なにかな?」

「あのぉ、鏑木様でも、権藤様のご兄弟でもいいんですケド、新しい姫探している方がいらっしゃいましたら、ウチのこと紹介して頂けないかな、なんて。全然、紹介して頂くだけでいいんで、ゼヒ、お願いしますっ」

 

私は深々頭を下げた。――あれ、沈黙が続いてる。私はゆっくり顔を上げると、さっきまで優しく笑っていた権藤様も楓香さんも表情から笑みが消えてる。

 

「ひらりさん、あのね――」

「楓香、いいよ、僕が話すから。えっと、浜木さんだったね。結論から言うと、それは出来ない」

「すっ、すいません。ウチ、出過ぎたコト――」

「そうだね。くれぐれも他のオーナーに会ったときは今みたいなことは言わない方がいい。オーナーは高い金を払って姫を選ぶ。それは、オーナーの自由な判断に基づくものなんだ。僕が、他のオーナーに浜木さんのことを紹介するということは、それは出過ぎたことなんだよ」

 

~~~~~~~~

 

あーーーやらかしたーーー。最後はものすごく気まずい雰囲気のまま、私は、仕事に行く楓香さんと乃亜と一緒に部屋を出た。楓香さんが私に何も言わないこともかえって辛かった。怒ってくれた方が気が楽だ。乃亜も私と視線合わせてくれんし。マンションのエントランスを出たところで、私は楓香さんにもう一度深く頭を下げた。

 

「楓香さん、せっかくお時間いだたいたのに、最後、ウチがあんな失礼なことをしてしまって…権藤様、楓香さん、それに今日呼んでくれた乃亜にも…ホント、申し訳ありませんでした」

 

頭を下げ続けていた私の肩に手が置かれた。顔を上げる。楓香さんだ。

 

「ひらりん、あなたの魅力は物怖じしない積極的なところだと思うの。でも、その魅力を、例えば、ご主人様から他のオーナーに伝えたとして、伝わるかしら」

「……」

「自分の魅力はあなた自身が伝えなきゃ。確かにチャンスはそんなにないかもしれない。でも、チャンスが来たら、悔いないようにひらりんの魅力を伝えてみて。魅力が伝わらなかったら、それはひらりんに合ったご主人様じゃなかったということだと思うの。でも、きっとひらりんの魅力が分かるご主人様はいるはず。自信持って」

 

――こうゆう時、人って泣くのかな。私は血も涙もない人間だから、涙は出ないけど。でも、感謝の気持ちはある。私は、笑顔を作って、「はい」と元気よく返事をした。

 

 

++++++++++++++++++

 

 

はぁー楓香さんはああ言ってたけど、でも、結局、チャンスがなきゃダメやん。あれから一週間経ったものの、オーナー様からの私をハーレムに招待するという連絡はないのはもちろん、オーナー様主催の遊女募集もなく、一向にハーレムに入るためのチャンスは訪れていない。そんな中でも配信者の日常に休みはない。今日は、事務所宛に(結局まだ辞めていない)私ご指名のコラボ依頼があり、その動画撮影。お相手は、ピンのお笑い芸人のタツヤさん。テレビはあまり見ない私でも、この芸人は最近配信に力を入れているみたいなので、ちょっとだけ知っている。30代後半、背が低く、ブサイク、いかにも関西人といった感じの外見。登録者数は私の半分くらい。私が普段コラボするのは大体同年代の配信者で年上でも30代はほとんどいない。こんなコラボするなら、やっぱ、早く事務所辞めとけば良かったと思いつつも、コラボ自体は成功させなくてはいけない。私は、テンションを上げて現場に向かった。

 

……と思っていたのだが、コラボは私が思っていた以上にうまくいったし、何より楽しかった。まず、最初に挨拶したとき、タツヤさんは意外にも腰が低くかった。配信者としては、自分は後輩と言っていたが、自分の半分くらいの年の小娘にこんな態度はなかなか取れない。配信が始まってからは、テンションがガラッと変わって、話は面白いし、私のつまらない話もツッコミで面白くしてくれる。それでいて、自分を落として、私を上げてくれて、全然嫌な気持ちにならない。タツヤさんが相槌やリアクションしてくれるだけで、私の話も面白く聞こえる。やっぱ、売れてる芸人さんってすごいんだーということを実感した。そして、撮影が終わった瞬間、私は、この動画はバズるな、ということを配信者の勘で確信した。

 

~~~~~~~~

 

私が撮影したハウススタジオの入り口でタクシーを待っていると、タツヤさんが出てきた。私は立ち上がって「お疲れさまでした」と挨拶する。タツヤさんは愛想よく挨拶を返し、そのまま出て行くと思っていたら、私の近くで立ち止まった。

 

「お疲れさん。今日、ホンマありがとな。ひらりんとコラボしたら俺のチャンネルもまた登録者数増えそうや」

「そんなことないですって。ウチもむっちゃ楽しかったデス」

「ホンマかぁ。ところで、ひらりん、この後、暇?」

「えっ――配信者にヒマの二文字はないんですケド」

 

これ誘ってるってこと?この関西人、初対面で声かけてくるなんて、やっぱ私、舐められてんのかーと思い、ちょっと塩対応で返すと、タツヤさんはにやにや笑みを浮かべたまま、顔を近づけて小声で言った。

 

「俺、組織のメンバーやねん。ひらりん、まだ、入りたてなんやろ、ちょっと話せーへんか?」

 

メンバーなんかに用はない、と思わず舌打ちしそうになったところだったけど、私は思いとどまった。話くらいは聞いてやってもいいかもしれん、私はしばらく黙ったまま、タツヤさんの視線から逃れず、見つめ合った。

 

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