※この作品はR-18です。

俺がハーレムを作る話   作:どろんぱ(仮)

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とある組織の現在、そして、過去~その2

――家に着いたのは、0時過ぎだった。玄関を開けて、家の中に入ると、リビングに明かりが点いていて、賑やかな声が聞こえてくる。まだ、飲み会は続いてるのかと思い、廊下を進み、リビングに入ると、僕の方を振り向いたのは、2人だった。

 

「ただいま。菊乃さんとソアさんは?」

「もう寝た。今日は最初から飛ばし気味だったから」

 

 和葉さんがロックグラスを掲げて答えた。普段はクールな印象だけど、お酒が入ると、少しだけ明るくなる。相当お酒が強いはずだけど、ホロ酔い口調ということは、結構飲んでいるんだろう。そして、もう一人のウェーブのかかった黒髪に黒ぶち眼鏡の男性は、湯のみで何かを飲んでいる。僕の視線に気づくと、やや辛そうな表情で言った。

 

「今は、お茶。和葉のペースに合わせてたら潰れちゃうから。あっ、ちゃんと挨拶したことなかったっけ?奥寺です。管理部の調査課で菊乃の同僚」

「どうも、徳斗です。CSです」

 

 僕たちがぎこちなく挨拶を交わしていると、和葉さんが、来い来いというように手招きしてる。やっぱり、酔ってるみたい。これまで、菊乃さんやソアさん抜きで和葉さんと飲むことはあまりなく、ましてや、ほぼ初対面の年配の相手もいる状況は、普段なら、誘いを断って、自分の部屋に行くところだった。ただでさえ、仮眠のみの60時間勤務を終えたばかりで疲れてるし、正直眠い。ただ、さっきまで、黄鐘さんの家でかなり緊張してたこともあり、少し飲みたい気分だった。

 

「それじゃ、一杯だけ。ハイボール…ソーダないな」

 

 酒のボトルや酒の肴やお菓子のお皿が置かれた散乱しているテーブルにはソーダがなかった。キッチンにソーダを取りに行こうとすると、和葉さんに引き止められる。

 

「ソーダで割るなんて、そんな飲み方じゃ、ウイスキーの味わからないから。ほら、ロックで飲んでみって」

 

 和葉さんが持っているボトルは、味を楽しむ程、高いウイスキーじゃないけど、僕は、どうせ一杯だけならと思い、「はい」と言うと、和葉さんは嬉しそうに、まだ使われていないロックグラスに氷を入れて、ウイスキーを注ぎ入れ、それをマドラーで混ぜる。僕は、和葉さんの隣、奥寺さんの向かいに座ると、グラスを受け取り、グラスを掲げて乾杯する。一口飲む…げぇ、濃い。氷が溶けないと、とても飲めそうにない。僕は、指で氷を混ぜて、ウイスキーが薄くなるのを待ちつつ、顔を上げて二人を見遣る。

 

「さっき、どんな話してたんですか?盛り上がってたみたいですけど」

 

 和葉さんと奥寺さんは顔を見合わせて、含み笑いする。僕は、気になって「もったいぶらないで教えてくださいよ」と少し笑いながら聞くと、突然、奥寺さんが「問題っ」と言って、背筋を伸ばした。

 

「えっ?問題って…」

「組織の最高顧問、順番に全て答えよ」

「最高顧問…?えっと、今のからでいいですか?」

 

 奥寺さんは重々しく頷き、和葉さんはロックグラスを傾けてウイスキーを飲みながら、楽しそうに僕を見ている。

 

「えー…と、今が、二代金剛さん、その前が、初代鶯谷さん、その前は…二代黄鐘さんで、二代白石さん――」

「「ブーッ」」

 

 奥寺さんと和葉さんが同時に言う。

 

「徳斗くん、そこで間違う?最高顧問は、大体、黄鐘と白石が順繰りだから間違いやすい、けどさ」

「正解は、二代黄鐘さんの前は、二代藍川ね」

「はぁ…」

 

 二人は顔を見合わせて笑って、ハイタッチまでしている。そんな面白いかな。ちなみに、最高顧問というのは、組織のリーダーのことで、創設者の紫緒野から始まって、確か…10人くらいだったか。これ全員答えられる人って組織に何人もいないと思うけど。

 

「さっきまでもこうゆうクイズしてたんですか?」

「こんなのクイズにならないならない。私たちはもっとレベルの高い議論してたんだけどね」

 

 和葉さんは手を振った。和葉さん、こうゆう話が好きなのかな?

 

「例えば、過去、オーナーと姫の結婚は何例あったのか、とか」

「本当は、紫緒野さんは、初代黄鐘さんではなく、飴島さんを後継者にしたかったんじゃないか、とか」

「逮捕後、復活した初代茶林さん、別人説、とか」

「へぇ……そうなんですね」

 

 二人は、何が面白いのか笑いあっているけど、僕は思ってたのと違った。早めに引き上げて、自分の部屋に行きたいけど、グラスの中のお酒はまだ全然減ってない。せめて、これを飲み干すまでは付き合わないと。僕は、もう一口、ウイスキーを口に含む――喉が熱い。僕は、話題を変えようと口を開いた。

 

「あっ、そう言えば……やっぱいいかな」

「なになに、言いかけたなら言いなさいよ」

 

 和葉さんが肘で僕の二の腕をつつく。…力加減できてなくて、結構痛い。

 

「組織トリビア系の話?」

「いえ、そうゆうんじゃないんですけど。さっきまで、黄鐘さんのところにいて、オーナー審査の相談してて。それで、黒鉄さんに相談したらどうかって言われたんですけど……お二人はお付き合いありますか?黒鉄さんと」

 

 さっきまでテーブルに身を乗り出していた奥寺さんと和葉さんは、すっと、同時に、身を引いた。揃いすぎていて怖いくらいに。表情からも笑みが消えた。あれ、僕、そんな変なこと言った?

 

「黒鉄氏ね。彼は面白い男だよ。うん」

「――奥寺君は、彼のこと知ってるのか、オトコ時代に」

 

 奥寺さんは黙って頷いた。そっか、奥寺さんもオトコ出身なのか。

 

「私は、組織に引っ張られたのが3年前だから、黒鉄君はプランナーなって…4年目くらい?もうバリバリやってたから、彼はこうゆう人なんだって思ったけど、他の人とは違うもんね、やり方が」

「そりゃそうだよ。昔から利益重視のプランナーはいたって言うけどさ、今で言えば、紺野さんとか、あとは断絶したけど、藍川さんとかさ。ただ、その人たちと比べても極端だよね」

「藍川さん、私はプランナーしてた頃は知らないけど、黒鉄さんのことを買ってるって話は良く聞くよね」

 

 和葉さんの説明をしておこう。勝呂和葉さんは、管理部に勤務してて、元々は金融機関で働いてたけど、数年前に組織にヘッドハンティングで入ってきた。元の職場を辞めた原因はセクハラ。確かに、元姫と言ってもおかしくないくらい美人だ。和葉さんは管理部の中でも、オーナーやメンバーの信用調査をする審査課という部署にいて、オーナーやメンバーから提出される収入や資産の資料を調べて、信用度を付ける仕事もしているそうだ。

 

「買ってたも何も、黒鉄氏が26才でプランナーになれたのも、藍川さんの後押しがなかったら絶対ムリだから」

「そっか、姉河原さんって、元々は藍川さんの担当だもんね。確かに、姉河原さんが黒鉄君の担当じゃなかったら、審査全滅だわ」

 

 うーんと難しい話になってきた。僕はグラスの中のウイスキーをちびりと舐めながら今の話を頭の中で整理する。黒鉄さんがプランナーになったのは今から6年前。僕はまだ営業部のアシスタントの頃で、当時のことはそこまで詳しいわけではないけど、僕の知識と今の話を総合して、わかりやすく説明するとこうだ。

 

 黒鉄さんは26才の時、自ら、新規オーナーを見つけて来て、オーナー審査を通した。オーナー審査を通すためには、既存オーナー3名からの紹介状が必要。これが新規オーナーには難しい。これに協力したのが藍川さんであり、紹介状を書いたオーナーが姉河原様ということになる。そして、現在の姉河原様の担当プランナーは黒鉄さんで、黒鉄さんが6年間で16人!(これはこの期間に増えたオーナーの約2割にあたる。)もの新規オーナーの審査を通せたのは、姉河原様に紹介状を書いてもらっているから、ということか。

 

「最近、オーナーになった城宮さんってわかる?ファンドマネージャーの。彼は業界ではすごい人なんだけど、まだ若いし、個人資産も収入も全然なの。しかも、メンバー経験もないし。こんなの普通絶対審査通さないのよ。でも、いつもみたいに姉河原さん他2名の紹介状あるから、通さざるを得なかったんだけどさ」

「紹介状あったら組織が損害被ることは普通ないから、仕方ないわな」

「でも、私、言ったんだよ、黒鉄さんに。ハーレムの姫は、2人か3人からにしてくださいね、って。そしたら、蓋開けてみたら、5人よ、5人。管理費・人件費・居住費だけで、年収の9割超えてんの。マジで、何考えてるんだか」

「黒鉄氏はまた潰すつもりかね。何しろついたあだ名が――」

「……ハーレムクラッシャー」

 

 僕は思わず呟いていた。ただ、逆に言えば、普通なら審査を通せない新規オーナーでも、黒鉄さんの力を借りれば、通せる可能性もあるのか。だから、黄鐘さんは、黒鉄さんに相談することを薦めたのだろう。

 

「でも、組織に損はさせてないんだろ?」

「……そうね、彼、渉外部の法務の若手なんかとつるんで、相当悪どいスキーム作ってるみたいだから。お金はしっかりオーナーから巻き上げて、オーナーが沈むころには、泥船から手は引いてるってことみたいね。だから、姉河原さんも損は被ってないんだと思う。じゃなきゃ、新規オーナー16人中もう8人がハーレム解散してるのに、紹介状出したりしないでしょ」

「むしろ、組織に利益を与えてるって……前、黄鐘さんが言ってました。まるで、火事場泥棒だって」

 

 黄鐘さんは育ちの良さなのか、自分よりも10才以上若い黒鉄さんに対しても、ニュートラルな物言いしかしない。ただ、表情は、いつも苦笑いのような気がするけど、その笑みの意味までは僕には分からない。

 

「去年の袋井さんの時はすごかったんだから。もう審査部もひっちゃかめっちゃかで」

「秒速でハーレムを潰した男ね。俺も知る限り、こんなに早くハーレム潰したオーナーは今までいなかったなー」

「いくらゴールドランクのメンバー経験あったとはいっても、いきなり15人のハーレムはないでしょ、今時」

「しかも、組織所有の不動産現金一括で買わせてるからね。抵当権付けてたから、また戻って来たみたい」

「あの半年…8ヶ月だっけ、組織に20億儲けさせたって言うからね。利益重視の考え方から言ったら、仕事は出来るよね、確かに」

 

 黒鉄さんの話を出しただけで、こんなに二人から話しが出てくるとは。CS同士では、ここまで開けっぴろげにプランナーの話はしないし、黒鉄さんはCSの中でもオトコ出身のCSをよく使っているので、僕はほとんど接点はなかった。和葉さんは、自分のロックグラスにウイスキーを注ぎ足す。奥寺さんも、飲み干した湯のみをすっと差し出し、それを見てにんまりと笑った和葉さんが嬉しそうにウイスキーをどほどぼと注ぐと、自分で氷を入れた。和葉さんは、次に、僕を見たので、ロックグラスをすっと自分の方に引いて、注がれるのを防ぎつつ、和葉さんの意識を反らそうと質問した。

 

「――でも、何で、黒鉄さんはプランナーになれたんですかね?」

「そりゃあ、さっきも話に出たけど、藍川さんって後ろ盾があって、姉河原さんの紹介状貰えたからでしょ。審査課なんて、偉そうに言ってても、紹介状3通あったら、ハンコ押すしかないんだから」

「既存プランナーが審査通す時はそうかもしれませんけど、新規プランナーが最初にプランナーになる時って、オーナー審査とは別に、プランナー会議でも審査があるんじゃなかったでしたっけ?」

 

 僕はそう言ってから、2人を見る。和葉さんは、「そっちね」とつぶやくとにやりと笑みを浮かべ、奥寺さんは頷きながら答えた。奥寺さんは頷いた。

 

「そう。新規プランナーがプランナーと認められるためには、プランナー会議の過半数の賛成を得ないとならない。得られない場合は、既存プランナーが、新規オーナーの担当になる。でも、この審査が通らないということはまずない、普通ならね」

「でも、黒鉄さんの時は違ったんじゃないんですか。まず、そもそも若すぎます。しかも、黒鉄さんは『黒鉄』の名跡を襲名することを希望していた。何で、新しい名跡じゃなくて、断絶した名跡、それも『黒鉄』なんて名跡を継ごうとしたんですか?」

 

 三人の間に沈黙が降りる。それぞれが、『黒鉄』という、忌み名とも呼ばれる名跡について思いを巡らせているのだろう。最初に口を開いたのは、奥寺さんだった。

 

「この辺の話に一番詳しいのは、俺かな。――和葉、対抗しようとしなくていいって。まずは、俺に話をさせてくれ。補足があったら、終わってからどうぞ」

 

 奥寺さんは、軽く咳ばらいをして、湯呑みのウイスキーを一口飲んだ。掛け時計の時間はもう1時を回っている。僕はこれから話される話への期待感で、いつの間にか眠気は覚めていた。

 

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