※この作品はR-18です。

俺がハーレムを作る話   作:どろんぱ(仮)

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とある組織の現在、そして、過去~その3

 201x年6月。ホテルの会議室で、組織のプランナー会議が行われていた。プランナー会議とは、ハーレムプランナーのみが出席者となり、様々な報告や協議、時には活発な議論を行う組織の根幹事業であるハーレム運営のための会議体である。

 

 プランナーは各自が、独立の権限を有し、ハーレムオーナーのための運営業務を行っている。そのやり方は、オーナーごとに異なっているが、名跡襲名によって、次代に引き継がれていく。「プランナーの権利侵すべかざる」というのは、組織の不文律であり、過去においては、イリーガルな手法を用いて、逮捕者が出ることや、裏社会との軋轢で殺された者もいる。そのようなことが度重なれば組織の存立を危うくすることにもなりかねない。そこで、プランナーのやり方についての最低限のルールが、プランナー会議によって定められる。ただし、そのルールが成文化されることはなく、過去のプランナー会議の結果が慣習法としてルール化されていくこととなる。

 

 そして、90年代に組織として、メンバーへのサービスを組織的に開始すると、メンバーに対する取り扱いもプランナー会議によって定められることとなった。また、同じころに組織の人員拡大に伴い組織体制の管理強化が必要となると、その最終意思決定もプランナー会議に委ねられることとなった。

 

 プランナー会議は、組織の業務執行機関であり、ルールを定める立法機関であり、さらには、組織で問題が生じた場合の処分を定める司法機関であるという意味では、紛うことなき、組織の最高機関であった。形式上、組織のリーダーは最高顧問ではあるが、五代目最高顧問の二代白石によって、最高顧問はプランナー会議の任命によるとし、さらにその任期を一期五年、二期までと明確に定められたことにより、プランナー会議と最高顧問の力関係は、プランナー会議優位と定まった。

 

 しかし、近年においては、プランナー会議の権限の肥大化に伴い、プランナー会議は、最高機関としての役割こそあれ、実際の細かな意思決定は、その下部機関である予備会議に委ねられるこことなっていった。

 

青海「さて、報告事項は以上となりますが、今日は最後に決議事項があります」

 

 議長である青海はそう言って、テーブルに居座る面々を見回す。普段のプランナー会議は、予備会議での報告事項を確認するのみのことがほとんどで、忙しいプランナー達の出席率は低く、半数も集まれば、多い方というくらいであった。大昔から、代理出席を認めるべきという声もあるが、それを認めれば、ますますプランナー会議が形骸化するという声もあり、現在まで、本人出席しか認められていなかった。

 

 しかし、この日は、20人中13人もの出席者を数えていた。議長である青海から名跡番号順に時計回りに12人が座っており、この日の出席者は以下のとおりである。

 

名跡番号12、三代青海(47才、プランナー歴15年目)…保守派

名跡番号2、四代赤星(40才、プランナー歴9年目)…赤星派

名跡番号5、三代黄鐘(38才、プランナー歴12年目)…穏健派

名跡番号7、三代藍川(55才、プランナー歴20年目)…革新派

名跡番号9、四代桃井(31才、プランナー歴4年目)…保守派

名跡番号11、三代紺野(52才、プランナー歴13年目)…革新派

名跡番号13、四代緑谷(48才、プランナー歴7年目)…保守派

名跡番号15、三代銀河(34才、プランナー歴4年目)…無派閥

名跡番号16、二代銅元(44才、プランナー歴9年目)…穏健派

名跡番号18、二代紅花(42才、プランナー歴11年目)…赤星派

名跡番号19、二代栗栖(37才、プランナー歴10年目)…保守派

名跡番号22、二代藤ヶ谷(52才、プランナー歴12年目)…無派閥

名跡番号28、初代桜庭(34才、プランナー歴6年目)…革新派

 

 そして、欠席者は、7人。

名跡番号3、四代白石(41才、プランナー歴6年目)…無派閥

名跡番号14、二代金剛(48才、プランナー歴13年目)…無派閥

名跡番号17、三代朱里(48才、プランナー歴1年目)…穏健派

名跡番号20、二代土門(51才、プランナー歴10年目)…無派閥

名跡番号25、二代茜部(57才、プランナー歴18年目)…保守派

名跡番号26、二代小豆沢(35才、プランナー歴8年目)…無派閥

名跡番号27、二代鶯谷(47才、プランナー歴8年目)…無派閥

 

 1993年のバブル崩壊以降、集団指導体制に移行してからは、プランナー間に上下関係はなく、プランナー各人は、単独でプランナーとしての業務を遂行できるため派閥を構成する必要性は少ない。しかし、組織に対する考え方や過去の歴史から、派閥というものがないわけではなく、緩やかな派閥が成立するに至った。

 

 保守派は、組織の従来からのやり方を出来るだけ変えずに行こうという考え方のプランナーの派閥で、常に一定の勢力を持っている。当代の保守派筆頭として、衆目の一致するところは、青海である。初代青海は、創設者紫緒野の側近であったが、紫緒野がプランナーを引退する際に、西日本のオーナーを一括して任された際にプランナーとなり初代青海を襲名した。以降、一貫して、西日本に住むオーナーの担当プランナーを務めており、四皇(五皇と数えられる場合もあるが)の一角、権藤家の担当プランナーも務めている。

 

 赤星派は、初代赤星が、初代黄鐘の権力掌握後、組織の主流派と一線を画すようになってから、赤星をリーダーとして仰ぐ派閥である。90年代以降は勢力を失い、ポジションとしては、保守派と足並みを揃えることが多い。ちなみに、当代赤星と当代紅花は法律上の夫婦である。

 

 革新派は、保守派と相対立する意味で、組織の変革を求める考え方のプランナーの派閥である。派閥とは言うものの、保守派とは異なり、意見の異なることも多く、結束力は弱く、藍川と紺野の仲は良くない。

 

 穏健派は、元々は黄鐘派であったが、集団指導体制に移行してから、黄鐘派が穏健派と革新派に分離し、出来た派閥で、プランナー会議においては、常に主流派である。

 

 そして、最大派閥なのが、無派閥である。またの名を白石派、実務派と呼ばれることもあり、歴史的に渉外部に強い影響力を持つ白石の意見に従うことが多い。穏健派が主流派でいられるのは、常に、無派閥の実質的な長である白石の支持があるからであり、その意味では、組織における与党は、穏健派と無派閥の連立政権とも言えた。

 

青海「すでにご存じのことと思いますが、決議事項は、CSの灰谷富雄、オトコ出身で現在26才のプランナー就任及び四番名跡である四代黒鉄襲名についての賛否です。今日は、普段お見えにならない方もずいぶんいらっしゃる。ここは、みなさんの意見を聞いて、活発な議論をしてもらおうと思いますが、いかがですか?まずは、これを発議した、藍川さんに発議理由を伺いましょうか」

 

 青海は、余裕の笑みで、藍川に手を向けて意見を求めた。青海の鷹揚な態度には理由があった。事前の票読みの段階で、藍川が賛成票で固めているのは革新派のわずか3票のみ。紺野が藍川への嫌がらせで棄権でもすれば、2票しかない。穏健派の3票が賛成したとしても、最大6票。決議を通すためには、有効投票の過半数を取らなければならない。青海は自分を含め出席している保守派4人の票を固めたうえ、赤星派の2票、欠席者のうち保守派の茜部、無派閥の小豆沢から委任状を取り付けており、反対派の票数は8となる。欠席している無派閥の残り4人が棄権すれば、有効投票数は最大でも16、どう転んでも賛成派が有効投票数の過半数をとることは不可能だ。

 

 賛成派はどうするつもりなのか、保守派の面々はお手並み拝見といった表情で、藍川の言葉を待った。

 

 

++++++++++++++++++

[奥寺の話おわり]

 

「――とまぁ、当時の状況はこんな感じだったんだと思うぞ」

 

 奥寺さんは、話し終えると、湯呑みに残っていた氷が溶けて薄くなったウイスキーを一気に飲み干した。そして、ボトルを自ら取って、湯呑みに注ぎ、氷を足す。

 

「すごくわかりやすかったです。派閥とかって、やっぱりあるんですね」

「言っとっけど、今の派閥の説明って、うちら仲間内の創作よ。どのプランナーだって、自分が『保守派』だとか『穏健派』だなんて名乗ってないんだから」

「そうなんですか?」

 

 和葉さんの言葉に、奥寺さんは目を伏せて気まずそうに言った。

 

「でも、この用語は俺たちの中ではもう当たり前に使ってるからね。むしろ、今更違う言葉使う方が違和感あるわ」

「さっきから、『うちら』とか『俺たち』ってなんですか?お二人以外にもこんな話するお仲間がいるんですか?」

 

 僕が自然な疑問を投げかけると、二人は照れたような笑みを浮かべる。

 

「私達、組織の社史を作ってるのよ。完全に非公認だし、非承諾なんだけど。まぁ二次創作みたいなもんね」

「ヒミツケッシャだから、誰にも言うなよ。ここまで話を聞いた以上、もう君も俺たちの仲間だ」

 

 奥寺さんは脅かすように身を乗り出し、口元に人差し指を立てる。

 

「あっ、もし、徳斗君が、プランナーになったら、私達、プランナー会議の内容とか教えてもらえるじゃん」

「いや、まだそのヒミツケッシャに、僕入ってませんから。――それで、さっきの状況から、どうしてこの結果になったんですか」

「じゃあ、続きは私が話そうか。私たちの考察の成果ね」

 

 今度は和葉さんが話すようだ。僕は先ほど開いたノートパソコンの画面に映した黒鉄さんがプランナーになった時のプランナー会議の議事録を映し出す。どのような話がされたかは書かれていないが、決議事項と結果は示されている。

 

 

「灰谷富雄のプランナー就任及び四代黒鉄の襲名の件…賛成9、反対8、棄権3。賛成多数により可決」

 

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