某外資系ホテルの最上階、プレジデンシャルスイートのベッドルーム。キングサイズのベッドの上には、1人の男と3人の女。……その1人の男というのが俺なわけで。3回の射精をそれぞれ別の女性の膣内に行い、俺の果てのない性欲も心地よい疲労感が染み出すのと同時に薄れていった。それぞれの姫と目が合えば、俺を見る目はうっとりと今にも蕩けそうで、顔を近づけようとすれば、その瞳を閉じて唇を突き出してキスを求めてくる。両手に抱く亜里沙とさやかの唇をそれぞれ奪うと、梨香の口に含まれた肉槍がまたぴくんと震える。いくら精力旺盛であっても、2時間足らずのうちに、4回戦への突入はちと厳しい。が、しかし、梨香の口の中の愚息は反応し始めてしまいそうだった。
「ご主人様。そろそろ夕食にしませんか?」
甘く爛れた空間を破ったのは無粋な黒鉄の声だった。俺は亜里沙の唇にむしゃぶりついていた顔を離し、視線だけをベッドルームのドアから聞こえる声の主に向ける。俺の視線と黒鉄の間には俺の左手の指を愚息にするようにしゃぶるさやかの顔があり、俺と目が合うとさやかは童顔に似合わぬ色っぽい表情で俺を見詰めた。
「んー……飯か……」
「味見の時間は終わりです。お前たち、下がりなさい」
姫より卑しい身分などと言いながら、黒鉄は姫に命令口調で言うが、姫達は俺の体から離れようとしない。女達の甘い匂いと柔らかな肌の感触と温もりに包まれて、俺も黒鉄の言うことなど無視したい気分で、梨香の口の中の肉槍もすっかり回復していた。
「ご主人様、腹ごしらえはよろしいのですか?それにまだ姫の選抜は終わっておりませんが」
俺が目的を思い出したのは、元々俺が有する自制心が発揮されたことと3回出して性欲を十分に発散したこと、そして、そろそろ食欲を満たすことを求める腹の虫が鳴った故であった。俺が姫達に「下がっていいよ」と言うと、それでもまだ姫達はぐずるように俺の体に自分たちの身体を押し付けてきた。亜里沙はその魅力的な瞳で俺を見詰めたまま指を俺の耳元に這わせ、さやかはGカップの胸を俺の二の腕に押し付け、梨香は肉竿に細く長い指を絡ませながら顔を股下に潜り込ませて肉袋を口に含んでいた。
「……すまん、私はまだしなくてはいけないことがあるから。下がってくれないか」
仕事の時にしか使わない『私』という一人称をなぜか使い、姫達の身体を撫で擦りながら言うと、ようやく姫達は未練がましく手を俺の体に離れる間際まで触れながら少しずつ身体を起こしていき、やがて俺のことを見詰めたままベッドから降りていった。俺の方も遊び慣れない男のように姫達に「じゃあね、またね」などと言いながら手を振って女達を見送った。
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「お疲れ様です。ご主人様。3人全員に精を施したようですね」
「見てたのか?」
「まさか。ただ、部屋の外からでも姫達の声を聞いていれば分かりますよ」
「まあな。しかし……はぁー…っくそ、信じられん。夢みたいだ……」
それは正直な俺の感想だった。3人との行為はただ単に己の性器を女の性器に挿入したにとどまらない、気持ちの通い合った交わりだった。それが同時に3人も。俺の心と身体の両方が深く深く満ち足りていた。身体に疲労感は残るものの、心身には力が漲っていた。最高のセックスは疲労感にも増して男の肉体と精神に力を漲らせる、そんなことが自然と感じられるほど充実感を感じていた。
「もうすぐ22時ですね。この時間だとホテルのレストランはすぐに閉店になってしまいますが……ルームサービスにしますか?」
「いや、がっつり食いたいな」
「じゃあ、外に出ますか。鉄板焼きなんてどうですか?例えば、○○とか」
「あぁ○○か。確かに肉を食いたい気分だけど、あそこは予約しなくちゃムリだろ」
黒鉄が名前を出した鉄板焼きの店は俺も接待で使ったことがあるが、何日も前から予約をしないと入れないということで有名な店だった。しかし、俺の不安をよそに、黒鉄はスマートフォンで誰かに電話をすると、すぐに電話を切って「大丈夫です」と笑顔を俺に向けた。
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俺はバスルームに行き、シャワーを浴びた。ついさっき4人で戯れたバスルームはすでにその跡形もなく片付けられており、ベッドルームから出て行った姫達の姿もなかった。さっきは、肌触りのいいバスタオルで姫達が俺の身体を拭いてくれたのだが、今は自分で身体を拭く。シャワー浴びるまで姫に付いていて欲しかったと思うも、また一緒にバスルームに入ったりしたら、間違いなく4回戦がスタートしてしまっただろう。俺の肉竿は頼もしく武者震いしており、この後、また味見の機会があったとしても、2人くらいは問題なく相手できるだろう。
バスローブ姿で戻ると、新しい下着と服が用意されていた。服には恥ずかしくない程度にしか金をかけていないが、用意されたシャツとスーツは明らかに高そうだった。タグを見ると、「MADE IN ITALY」と書かれているが、ブランド名は知らなかった。服を着てみると、身体のサイズにぴったりで、生地の肌触りや動きやすさなど着心地の良さにも驚きながら、黒鉄と共に階下へ降り、タクシーで店に向かった。
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個室に案内され、俺はとりあえずビールを頼んだ。黒鉄は食事のメニューを見ながら、無造作に高い順に頼んでいるように見えたが黙っていた。この半日で俺の金銭感覚は一気に狂わされてしまったようだ。おまけに黒鉄はビールを申し訳程度に一口飲むと、シャトーラトゥールを注文していた。
「どうですか、あの3人の中からハーレムに入れる姫は決めましたか?」
「んー決められん。いっそのこと、あの3人にしちゃうかなぁ。3人合わせても6700万だし、ムリな金額じゃないしな」
「それもいいと思いますけど……」
「黒鉄さん、何か言いたそうだね?言ってみてよ、何でも」
俺は早速来た生ビールの喉越しに「ぷはーっ」と息を吐きながら上機嫌で言った。
「……これはハーレムを運営している多くのご主人様から聞いたことなんですが、やはりせっかくハーレムを作るからにはメンバーには色んな姫が居た方が楽しいと仰るんですよね」
「……」
「専属の姫はハーレムでご主人様に仕えるための教育を受けていますから、ハーレム自体を満喫するには一番適しているとは思いますが、逆に安定しすぎてしまうというきらいはあるようですね」
「むぅ……確かにそうかもな」
俺はA5ランクの和牛のシャトーブリアンと伊勢志摩のアワビを白ご飯と一緒に食べながら、シャトーラトゥールで流し込むというムチャクチャな食べ方をしつつ、黒鉄の話を聞いていた。
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「ところでさ……何でみんなあんなに俺に尽くしてくれるのか?」
「それはご主人様だからですよ」
黒鉄はもったいぶった手付きでグラスの中でワインを揺らしながら、俺を見て思わせぶりな言った。黒鉄は自分で頼んだ割に、食事にはほとんど手を付けていない。こんな高級食材も食べ慣れているのだろうか。
「いや、それはそうなのかもしれんが……でも、初めて抱いたのに、ものすごく相性が良かったというか……」
「ご主人様のテクニックとご自慢の逸物のおかけでしょ」
どうも黒鉄は俺を弄んでいるようにしか思えない。もちろん、俺も女を悦ばせる術については人後に落ちないという自負はあった。初めて抱いた女であっても、ヒィヒィ言わせた経験はいくでもある。……それにしてもだ。姫達の演技とは思えない乱れ方や、心底からとしか思えない尽くし方は、目の前のハーレムプランナーという胡散臭い存在以上に簡単には信じられないものだった。
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「そじゃあご説明しますか」
「やっぱり理由があるのかよ」
「だから、最初から全て説明することは出来ないと申し上げたはずです」
「わかったわかった。いいから教えてくれ」
「姫がご主人様に対し性奴として尽くすシステムは三本の柱によって成り立っています」
「三本の柱……?」
黒鉄が左手の親指と人差し指と中指を伸ばして、その手を目の前に掲げて、俺を見た。
「一つは、現世的な利益です。姫達はハーレムに所属し、主に尽くすことによって様々な利益を得ます。その得る利益はそれぞれの姫の属性によって異なります。二つ目は、性欲です」
「性欲といっても、人それぞれなんじゃないのかな」
「姫達はある薬を飲んでいます。化学薬品なんですが、効用は2つ。性欲と感度の増進です」
「媚薬か」
「それだげしゃありません。姫達が部屋に来る前に、私がご主人様に香水をかけたことを覚えていますか」
「もちろん。身だしなみだからってことだろ。ほとんど香りはしないみたいだったけどな」
「実はですね、その香りを嗅ぐことが媚薬の効果のトリガーとなっているんです。この香りを嗅ぐまでは、姫達は発情しながらもその性欲は抑えつけられています。自慰をすることには忌避感が植えつけられ、我慢しきれず自慰をしても絶頂感は得られません。それが、この香水の香りを嗅ぐと、抑えつけられていた性欲は解放され、それと共に感度も倍増するのです」
「……」
「そして、この薬と香水は、それぞれのハーレムの主の特有のものです。今回、姫達に飲ませた薬とご主人様が纏った香水は、言わばオートクチュールなわけです」
「……、それで、三つ目は何だ?」
「それは……マインドコントロールです。これが一番重要なんですが、ハーレムの主に仕えることが自分にとって一番幸せなこと、一番利益になること、一番気持ちいいこと、これを心の底から理解させることです」
「そんなことができるのか?」
「できます。むしろ、このマインドコントロールの技術が完成したから、私どもの組織が成り立つのです。このマインドコントロールは精神作用に直接働きかけます。1週間あれば、一定程度のマインドコントロールは完成しますが、長いに越したことはありません。専属の姫達は長年にわたりマインドコントロールを受けていますから、もはや人格形成にまでハーレムの姫としての役目と主への忠誠が浸透しています」
「それじゃ人格改造じゃないか」
「そう言ってもいいかもしれませんね」
俺は空恐ろしい心地になりながら、ワインを喉に流し込んだ。芳醇なワインの香りも今はよく分からなくなっていた。
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「でも、それだとご主人様っていうのは一体何なんだ?誰でもご主人様になれば、当然のように姫達の忠誠が得られるんだろ。俺じゃなくてもいいんじゃないか」
俺はつい言葉を荒げ、グラスをテーブルに置く音が耳障りな音が響いた。しかし、黒鉄は俺以上にワインを飲んでいるはずなのにも関わらず、全く酒精の影響を感じさせない顔色で表情をにやつかせたまま言葉を返した。
「ずいぶんときれいごとですね」
「何?」
「まず、ハーレムの主には誰でもなれるわけではありません。一握りの成功者のみです」
「……それはそうかもしれないが」
「かつて歴史上ハーレムの主となった者は個人的魅力のみでハーレムを築いたんですか?そうじゃありません。その地位は世襲によって受け継ぎ、歴史的権威や宗教的カリスマ性を纏うことによって姫達の忠誠を勝ち得たのです。私どもの組織が提供するハーレムと何ら変わりはありません」
……一体、黒鉄はいくつなんだろうか。諭すように話す黒鉄の言葉は、俺の心にすとんと染み入ってきた。掛け値なしに生き馬の目を抜くマーケットの荒波を生き抜いてきて、詐欺師顔負けのトレーダー達とやりあってきた俺をこんな風に容易く説得されてしまうのは、俺も黒鉄のマインドコントロール下にあるのではないかと疑わせるほどだった。
「それに、スタートこそ、ハーレムの姫達が持つのは作り物の忠誠なのかもしれません。しかし、その後、主の姫達への接し方によって、その忠誠は作り物ではなく、真実のものになるのではないでしょうか。私どもが姫達に与える利益や薬やマインドコントロールによっても姫達の心までを奪えるわけではありませんので」
「……そうなのか」
「そうですよ。自信を持って下さい、ご主人様。……少し湿っぽくなってしまいましたね。女でも呼びますか?」
「……誰呼ぶの?」
「さっき呼んだ3人のうち、ハーレムに呼びたい姫を呼びましょう。誰にしますか?」
せっかくうまい飯と酒が目の前にあるのに、一緒にいるのがゲイかもしれない色男というのでは、何の楽しみもない。さて、誰と飯を食いたいか……そう考えたとき、さっきまではあれだけ迷っていたのに、今、俺の頭の中には自然と1人の名前が浮かんでいた。