第9話 打ち合わせ~その7
――――翌朝
何やら股間の辺りが温かく柔らかな感触に包まれている。誰かが俺の固くなった愚息をしゃぶっているのか……しかし瞼が重くて目を開けることが出来ない。俺は身じろぎをしようと腰を捻る。そして、「んー」と呻き声を上げると
「ようやくお目覚めですか、ご主人様」
ゆっくりと瞼を開く。寝室の中には朝の陽射しが入り込み眩しさでなかなかすぐには目を開けることは出来ない。それでも、目を擦りながら目を開くと、俺の愚息を顔を横向きにして舐めている黒鉄の姿が――――
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「ご主人様。お目覚めですか」
「ヒィイイィーーーーやめろーーー」
がばっと掛け布を剥ぐと、体を丸めて股間に這い蹲る黒鉄から逃れようとベッドサイドに後ずさると、いくら広いベッドも限りはあるもので、ベッドの端からどすんと転げ落ちる。もろに後頭部から床に落ちて、頭を擦りながら声の主に顔を向ければ……黒鉄は寝室の入り口に立っていた。
「っ痛……あれ、さっきまでベッドの上に……」
「何言ってるんですか?フフ…朝からお元気のようですね。まずは、シャワーでも浴びてきたらどうですか?」
自分の体を見れば、俺は昨日裸で寝ていた。そして、掛け布を剥いでベッドに落ちたということは、俺は全裸姿を黒鉄に見られていた。そうであれば、黒鉄の視線の先には、朝からいきり立って天井を向いている股間の愚息があった。昨日の味見の後のように、女とベッドにいる時であれば、そんなに恥ずかしいという気もしなかったのだが、今は身の危険を感じるせいか、なぜか異常に恥ずかしい。
俺は掛け布を引き寄せて腰に巻きつけて、そのまま黒鉄の脇を通ってバスルームに行こうとすると、黒鉄が手に持ったバスローブを渡してくれる。シャワーを浴びに行く俺の背中に黒鉄が「朝食頼んでおきますよ」と告げたので、俺は後ろを振り向かずに「了解」と答えた。
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冷たい水と熱いお湯のシャワーを交互に浴びると大分頭がスッキリした。下半身の方も小用を足せば途端に大人しくなってくれた。バスローブを羽織り、頭をタオルで拭きながらリビングに入ると、ちょうどホテルの給仕がワゴンでルームサービスの朝食を運んでくるところだった。若い給仕は俺の方を見ると、見てはいけないものを見てしまったというように顔を伏せて、ワゴンの上の皿をテーブルに乗せていく。黒鉄はと言えば、昨日とは違うスーツをすでにきっちりと着こなし、リラックスした様子でコーヒーを飲んでいた。
……まさか、俺たちの関係を誤解されたか?高級ホテルのプレジデンシャルスィートで土曜の夜を過ごした若いイケメンと腹の出始めた中年の男。2人が親密な関係と疑うには十分すぎるシチュエーションだろう。俺は、黙ったまま席に付き、給仕が食事のセッティングを終えるのを静かに待った。
給仕が一礼して部屋から出ようとすると、黒鉄は立ち上がり、給仕の肩を抱くと「そうゆうんじゃないからね」と言って、給仕の手に1万円札を握らせるのを俺は見た。余計誤解されるだろっ、と目と表情で黒鉄に伝えると、黒鉄は涼しい顔で若い給仕のケツを軽く叩いて、リビングから送り出した。
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「機嫌直して頂けませんか」
「別に……」
俺は大人気なく、朝食の間、黒鉄の方を一度も見ぬまま朝食を食べ終えた。本来の俺は、常に沈着冷静で感情の起伏は少ない方だ。しかし、昨日から何故か感情がそのまま態度に出てしまっているような気がする。俺は黒鉄に「ご主人様」と呼ばれているうちに、いつの間にか本当に「ご主人様」気分になっているのかもしれなかった。
ハーレムの主になれば、いつもこんな気持ちでいられるのだろうか。ファンドマネージャーとして、数十億の金を動かしているといっても、俺の仕事は所詮顧客の顔色を伺いながら、慎重にリスクマネージメントをしてちまちまと他人の金を動かしているに過ぎない。やっぱり俺はどこかで自分が王様になれる場所を探していたのかもしれない、俺はなぜ自分がハーレムを持ちたいのかを実感したのだった。
「ご主人様…どうかなさいましたか?」
「いや、何でもない……そうじゃなくて、何でもなくはないんだ。……さん付け止めてもいいかな?」
俺は唐突に言った。黒鉄は白い歯をきらりと見せて「もちろん、お好きなように」と言うと、小言を返した。
「それとですね。姫達に対しても、ちゃん付けはよしましょう。ご主人様としての威厳が保てませんので」
「そうだな。これからは呼び捨てにする。黒鉄、それでいいな?」
「オッケーです」
……黒鉄の返しに、お前はそれでいいのかよっ、と思いつつ、突っ込んだら負けなような気がして、主としての威厳を守り深く頷いた。やっぱり黒鉄は黒鉄でなかなかいいプランナーなのかもしれない……。
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「それで、桐野さんは来られるのか?」
「ご主人様……」
「あぁ、すまん。夏美は来るのか?」
「13時に部屋に呼んでいます」
「そうか」
ゆっくり起きて遅い朝食を取ったとはいえ、まだ11時前。2時間以上待つことになる。俺はもっと早く呼んでくれればいいのに、と表情に出すと、黒鉄はすぐにそれを察して答えた。
「此方にも準備があるんですよ。夏美をご主人様に会わせる前にマインドコントロールを施さないとなりませんので」
「今やんのかよっ」
「夏美はマインドコントロールがまだ浅いですし、ご主人様が決まりましたので、最終段階のものを行なわなくてはなりません」
俺はどんなことをするんだろうと思い、黒鉄を見る。黒鉄は、すぐに察して答える。――こいつ本当に人の心が読めるのかもしれない。
「マインドコントロールは極めて科学的なものなので、簡単に言うことは難しいんですが、ものすごく分かりやすく言うと、これから会う人が夏美のご主人様になるかもしれないこと、もし気に入られて夏美がハーレムに迎え入れられれば、夏美もその家族もみんな幸せになれること。そして、夏美が今苦しんでいる状況から救い出すことが出来るのはご主人様ただ1人であること。これらのことが深く深く心の奥底に刷り込まれます」
「……そうか。やっぱり夏美も毎回別の男に体を売るのはイヤなんだな」
「いや、そんなことはないですよ。その時はその時で別のマインドコントロールをしてますから。ただ、今回のマインドコントロールで過去の記憶……記憶というより、過去の感情の記憶ですね、それを書き換えるんです。分かりやすく言えば、夏美は過去の客に付いていた時はそれなりに楽しくやっていましたが、それがものすごく辛かったという記憶に変わるわけです」
「そんなことできるの?……いや、できるんだよな」
黒鉄は大きく頷く。マインドコントロール恐るべし。
「ただ一つ。ご主人様に言って欲しいことがあります」
「何?」
「夏美は今回のマインドコントロールの際に、ハーレムに入ったら大学を辞めなくてはならないと言われます。夏美はそのことだけが唯一のひっかかりとなってこの部屋に来ます。ハーレムに入るのは納得したけど、大学には出来れば行きたいと思っているわけです」
「俺は別に大学行ってもいいと思うんだけど……ダメなのか?」
「いや、いいんです。だから、それをご主人様の口から夏美に言うのです。大学の費用は卒業するまで自分が持つと。そうすれば、マインドコントロールは完成します」
「わかった」
なるほどーと俺は黒鉄のやり口に感心した。マインドコントロールと大げさに言っても、要は心理学の応用だ。
「それで、どうしますか?大学は?」
「はっ?行かせるんじゃないの?」
「イヤなら別にいいですよ、行かせなくても」
「いやいや、そしたら約束が違うってなるでしょ」
「ならないです。夏美の気持ちに恩を受けたという気持ちだけがインプットされれば、後は実際に大学に行かせなくても、そのことを忘れさせる……正確には記憶から無くせば大丈夫です」
「そこまでしなくてもいいよ。大学生として活き活きしている夏美がいいんだ。男と接する機会が多いのは不安もあるけど……」
「そこは大丈夫です。ご主人様以外の男には全く興味がなくなりますから。……正確には興味と言うより……」
「いや、いいよ、正確に言わなくても。何となく分かったから」
「わかりました。バイトはどうしますか?」
「そっちは辞めてもらうかな。大学の他にバイトもあったら、忙し過ぎるからな」
それに生活面は俺が面倒を見るわけだから、バイトをする必要はなくなるはずだ。俺は夏美を早く味見したくてそわそわするが、あと2時間待たなくてならない。もうひと眠りという気分でもないし、姫選抜の続きをすることにした。
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黒鉄にタブレットを要求すると、黒鉄は検索画面を呼び出そうとタブレットにタッチを始める。
「おっ、新しい姫がリストに載っていますね」
「見せて見せて。どんな子」
タブレットの画面を見ると、白いキャップを被りポニーテールの美女が微笑みかけてくる。少し日に焼けた健康そうな肌、凛とした眼差しに爽やかな笑顔。ポロシャツにミニスカート姿で後ろには緑の木々。
「いいね、こうゆう子も」
「この子はちょっと変り種ですね。通いのスポンサー系です」
「何それ?」
画面を見ると「通」と「仮」というマークが付いている。
「このマークどういう意味?」
「まずですね、『通』というのは、通いという意味です。つまり、ハーレムに常時住むことは出来ず、通いで時々住むということになります」
「ふぅむ……『仮』というのは?」
「まだ客を取ったことがないという意味です」
「マジで!それいいじゃん。何でもっと早く説明してくれないんだよ」
「だから、最初から……」
「全て説明することはできないって言うんだろ。それはもう分かったから」
「ご理解いただけて何よりです」
俺はタブレットを受け取ってその姫のページをめくっていく。
「プロゴルファーなの?」
「そのようですね」
「何でそんな子がハーレムに?」
「意外と多いんですよ。こういったスポーツ系の姫は。日本の女子スポーツというのは、どれも経済的にはかなり厳しいですからね。スポンサー探しの一環で私どもの組織にピックアップされるケースは多々あります」
「よくある美しすぎる○○なんてやつか。でも、この子……花村加菜か。この子も美しすぎるプロゴルファーなんて騒がれるんじゃないか」
「もうすでに一部雑誌なんかで取り上げられていますね」
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俺はタブレットで加菜の画像を見る。身体のラインがはっきりと分かるポロシャツの胸の膨らみ、ミニスカートから伸びるむっちりした太腿、男好きするぽってりした唇。ゴルフをプレーしている動画もあり、集中している表情もまたそそるものがあった。年齢は19才。ついこの間まで高校生でプロデビューしたばかりのようだ。身長は158cm、体重は55kg、スリーサイズはB86E64H90。小柄ながら肉感的な体型のようだ。こういうスポーツ少女のようなタイプを俺はこれまであまり意識したことはなかったが、見れば見るほど、今まで押されたことのない自分のツボを押されているようだった。
「経験人数は6人か……19才でゴルフに打ち込んでいた割には多くないか。客はまだ取ったことないんだろ」
「体育会系の女というのは、意外と真面目そうな子でも経験人数は多かったりしますよ。合宿とかで男と一緒になることも多いですし。性欲が強くて、割り切ったスポーツのようなセックスをする子が多いですね」
……なるほどな。それはずっと文化系で来た俺の知らない世界だ。だったら、こっちは文化系のねちっこく羞恥心をくすぐるような責めで新しい世界を見せてやるだけだ。加菜のドライバーを構える後姿の動画を見ながら、その体勢のまま立ちバックで犯すことを想像していると、俺の顔にはにやけた笑みが浮かび、エロい顔になっているのが自分でも分かる。
俺も30過ぎてからゴルフを始めたのだが、なかなか練習に行けていない。ハーレムにプロゴルファーが居たら一緒に練習に行ったりして俺も上達するかもしれない。そういう意味で言えば、一石二鳥ということになる。
「味見できる?」
「この子は、今日はムリですね。今週は予選通過して、もう試合に出ていますから」
「そうか。そうすると、本当にハーレムに入ってもあんまりうちには住めないんだな」
「そうなります。基本、遠征ですからね。せいぜい戻れるのは週に1~2日じゃないですか」
「……そうかぁ」
「でも、ご主人様が加菜の遠征先に行くということは出来ますよ。もちろん、試合の邪魔にならないことが前提でしょうけど、試合の後は昂ぶっているとも聞きますからね、なかなか楽しい夜が過ごせるかもしれませんよ」
「なるほど。いいな、それも」
思わずグフフという笑い声が唇から漏れてしまう。いかんいかん、どんどん俺のキャラが崩壊していく。この子も是非ハーレムに入れたい。黒鉄が言っていた色んな種類の姫がいた方がいいという意味でも、スポーツ系というのは盲点だった。それに、プロゴルファーのスポンサーとして夢を応援するというのもいいじゃないか。金額は2000万。安くはないが、決してムリな数字というわけでもない。
「味見はいつできる?」
「申し訳ありませんが、加菜はまだ客を取らせておりませんから、最初の客というのはプレミアムがありますので、正式に契約するまでは味見は出来ません。したがいまして、面談という形で食事でも一緒にするのはどうでしょうか」
「わかった。それでいいよ」
「では、加菜のアポイントを取っておきます。今週時間取れる日を教えて頂けますか」
急に事務的な口調になる黒鉄。俺も自分のスマートフォンを取り出してスケジュールを確認する。だんだんハーレムの候補者も決まりつつあるし、この後は、夏美を味見できる。果たして、今日中に姫5人を選ぶことは出来るのだろうか。そんなことを思い、両手を擦り合わせながら、俺は楽しくて仕方がなかった。