救世の旅は終わり、始まるは淫獄。信じていたボクっ娘勇者様に裏切られ、キレ散らかしても助からない天才美少女魔術師なあたしの憤怒とドスケベまみれのハートフル炎上ストーリー♡ 作:デイジー亭
「オラァッ!!」
「神の加護をセイッ!!」
「ははっ、二人ともノリノリだね」
「野蛮ってのよ、ああ言うのは」
唸りを上げて振るわれるは、
「ミリィ、早く」
「急かすんじゃないわよ、アンタも仕事しときなさいっ!」
「わたしは任務を果たした」
「うんうん、ありがとうルイ」
「むふ~」
だがそんな自分のスカートの裾を引いて、妨害を試みるのはどういう心づもりなのだろうか……思わず文句を言うと、えへんとばかりにピコらせる獣耳。それをヨシヨシされてご機嫌なそやつに、少々ムカッ腹は立つが致し方なし。意識の『スイッチ』を入れると、戦場の色が変わる──或るいは/切り替わる/セカイ。
「すぅぅ……」
「お、やる気になってくれたみたいだ」
「スロースタート」
「まだかよオイッ!!」
「勤勉は美徳ですよっ!!」
ぼんやりと漂う暗き雲たちを、肺に取り込み下に下に沈めてゆく。ドロドロと濁ったそれが沈殿していく先には、『魔素』を変換する器官。仄かに熱が入ったと思った途端、感じるは灼熱。ぼうぼうと燃え上がるそれと、クソうるせぇ煽りに我が身のボルテージは天井を知ることなく昂り続ける。
「燃えよ我が怒り、クソどもと共に……」
「やっぱ無差別かよっ!?」
「友愛と言う物を知らないのでしょうかっ!!」
「うっさいのよ、諸共灼けなさいっ!! 【
『『『GYAAAAAAAAAッ!!』』』
「うん、素晴らしい連携だねみんな」
「嫌でもタイミングは覚える」
満を持して解き放つは、昇華した『魔力』……それが覆う範囲を確認し、逃げ惑う時間稼ぎ担当ども。その焦った表情に気を良くしつつも、かざす手から放つ爆炎で全てを焼き尽くすのはいつだって胸が躍る。龍の吐息を模したそれが薙ぎ払った、『鎧魔』どもが叫ぶ断末魔も非常に耳に心地よいヒャッハァッ!!
「あははははははっ!! 燃えろ燃えろォッ!!」
「これが最年少宮廷魔術士サマの浮かべていいツラかよ」
「『
「そこがミリィの良いところさ、お疲れ二人とも」
「索敵は任せて」
だが気に入らない、まだこの熱情は発散しきれないっ!! 形を保っているのがナマイキ、融解速度が遅いのが増上慢。我が前では全てが焼け爛れ、鉄の靴を履いてフライパンの上で舞う踊り子のようなダンスを踊らねばならない。確たる信念を基に汚物の焼却に励むあたしは、今日もとっても焼夷ニングだった。
◇◇◇◇◇
「はぁ。とっても大満足ぅ……♡」
「お疲れ放火魔、あちぃから離れろ」
「もっと早く鎮火して頂けませんか?」
「ええい、うっさい。そんなに言うなら、アンタらがド突き倒せば良かったのよ」
「無茶言うなよ、オレにだって出来ないことはある」
「ゴリラの癖にね」
未だウズく魔力生成器官を抑え、世界からまた汚物を半ダースほど消し去ったことを喜ぶ稀代の魔術士。だがそんな自分に浴びせられたのは、冷や水のような罵声であった……納得がいかないため、まずは馬鹿を黙らせることにする。クソデカい身体を包みきれぬ、まばらに繋がれた金属片たち……俗にビキニアーマーと呼ばれるそれは、バッキバキの褐色腹筋を隠せぬ痴女の如き装い。
「おいおい、自慢のシックスパックを眺めすぎだぜ」
「しょうがないでしょ、その上は気に喰わないのが二段重ねなんだもの」
「オレの乳と美貌はアイスかよ」
「調子に乗るんじゃないわよ、そうね……言ってみればクソだるまよ」
「お前王宮でうまくやれてる? あのうるさそうなメイド長とかに怒られねぇ?」
ボヤき気味の声に目線を渋々……上げない。何故ならば自分のチャームポイントな八重歯とは次元の違う鋭さを魅せる牙の生え揃った口も、鬼の象徴たる額うより伸びる一角も紅い瞳も白い散切り髪も見ること叶わぬから。映るのはただ、自分には無い物の南半球だけである……乳を竦めるんじゃないわよ、目障りだっつってんのよっ!!
「そうですよミリィさん」
「殺すわよ」
「何をそんなに、怒っていらっしゃるのです?」
「あたしの頭を乳置きにすんなって、何回言えばわかんのよボケッ!!」
「あ、あらあら。これは申し訳ありません」
あまりの怒りに黙り込むと、今度は後ろから掛かるおっとり声と頭に掛かるクソバカ重量。馬鹿と天然にサンドイッチされた挙句、身長と体型の差を身振りだけで猛アピールされる今の自分の気持ちは殺人鬼。いや……もうブッ放しても許されるのではなかろうか。荒げる息で『魔素』を吸引しつつ、脱出して距離を取り睨むは困り顔の長耳天然。
「アンタは知らないと思うけど、あたしの堪忍袋にも限界はあるわ」
「ええ、ええ。存じております。ですがわたくし、本当は優しい心の持ち主だと信じたいと常々」
「祈ってるんだろ」
「もちろん、我らが主に不可能は無いのですっ!!」
「フォローになってないのよ、神頼みが必要だってことォ!?」
トリガーの軽さを強調しつつ、差し伸べた手の先。傾げてさらりと揺らした金髪と、それに連動してだっぽんっ! と上下するエルフらしからぬ母性の象徴……それを隠す暖簾みたいな布に刻まれたシンボルに手を添え、余計な茶々に対して感極まったように叫ぶ顔は狂信に満ちて。めくるわよ、その股間の前垂れッ! 恥ずかしい目に遭わせてやるわカスッ!
「落ち着いて」
「すごく落ち着いたわ」
「腑に落ちない」
「良いのよ、アンタはそのままで居て?」
「おかしい、好意的なはずなのにしっぽがイラ立つ」
「気のせいじゃないかしら」
ヒートアップを続ける脳を冷やすは、平坦な声とぺったんこ。さらには同じ位置にある黒曜石も自分のクールの役に立ち、ピンと天指すふさふさ毛並みも心を穏やかにしてくれる。物騒な前職に似合わぬ、とびっきりの精神安定剤は今日も大活躍である。やはり猫、猫は良い……あとでじゃらしてやるべきだろう。
「よし、ミリィの癇癪も治まったところで」
「誰がキレ散らかしたってのよっ!?」
「これが最後の休憩だ、チェックを怠らずに」
「……フンッ」
「よろしい、ボクは良い仲間に恵まれたようだ」
「さすがはオレらのリーダー」
「勇者の貫禄を見た想いです」
「猛獣使い」
そして自分のクールダウンが終わった所を見計らい、跪いた姿勢から立ち上がるは自分とは真逆の蒼い髪の麗人。また余計なことを言ったため、文句を言おうとするが金と銀の色彩に見つめられると失速する怒り。そこに宿る静謐は、有無を言わさぬ胆力と微かな哀しみに満ちていて……溶け残った鎧の残骸を撫でる手は、どこまでも優し気で。コイツはいつもこうだ。
「ちょうど、ボクのルーティンも終わったことだしね」
「『鎧魔』なんかに、情けを掛ける必要ある?」
「さぁ……でも、ボクがこうしたいからね」
「あまり褒められたことじゃねぇけどな」
「ですがその心優しさこそが、世界を救うのでしょう」
『鎧魔』……世界に一定の周期で現れ、世を乱す魔獣とは異なる魔の化身たち。あらゆる国の勇士たちの誇りを剥ぎ取り、我が物として身に纏い民草を蹂躙するバケモノども。その終わりを悼む行為は、何度見ても納得できない。だが、コイツは決してそれを止めないし……長い旅の間に受け入れさせられてしまった。それは、その身が積んだ実績と身に刻まれた『証』故に。
「ああ、ボクは責務を果たす。頼れる仲間と共に」
「居るのね、あの扉の向こうに」
「間違いないさ、紋章がそう言っている」
「頼りにしてるぜ、勇者サマ」
「あなただけが、世界を救う資格を持つのですから」
「着いていく」
「レクシオン」
「ほいよ、オレは殴り掛かることしかできねぇけどな」
ゴリ……戦士。恵まれた体躯と鬼の膂力を以て『鎧魔』と打ち合う、産まれついての戦狂い。
「アルティミレイ」
「ええ、あなたの歩む道が我が信じる未来へ通ずると信じて」
天ね……神官。森の精たる身でありながら、弓と精霊より
「ルイ」
「きっと、このために産まれてきた」
にゃん……暗殺者。這いずっていた暗い闇の世界から、光輝に魂を焼かれ連れ出された迷い子。
「ミリアム」
「最後に、とびっきりの花火を打ち上げてやるわ……そしてうへっ、うへへへへへっ!!」
そしてこの天才美少女魔術士ッ!! スラム街の出でありながら、その明晰な頭脳と類稀なる魔道的センス。そして美貌で以て積み上げたサクセスストーリーは、魔王を倒しても終わらぬどころか世界に轟き続けることは確実。まずは宮廷魔術士長の座を奪取し、続いて自らを頂点とする新たな魔術連盟を発足。その歴史に永遠に消えぬ足跡を刻み、後進たちの髪型はきっとツインテールで統一されることだろうっ!! あとニーソと短めスカート、絶対領域は形成しないと承知しないんだからねっ♡
「う~ん、締まらないね。まぁ、ボクたちらしいや」
「アンタに全賭けしてんのよコッチは! もっとシャンとしなさいよっ!!」
「原因お前だろ……」
「この生命力こそが、未来を切り開くと思い込みます」
「我欲の化身」
我が野望を叶えるには、魔王とか言う雑魚を滅ぼす第一歩をしくじる訳にはいかない。この頼りないナヨナヨ勇者を支え、戦後もお飾りとして大活用。選ばれた者しか着用すること許されぬ、唯一『鎧魔』に奪われること無き聖なる全身鎧を揺さぶり檄を入れねば。行くわよ行くわよイくわよ踏み台ッ!!
「さぁ、決戦の時だ。みんな、覚悟は良いかい?」
「さっさと開けなさい、初手でブチ殺すわ」
「猪が待ちきれねぇみてぇだ」
「では、参りましょうシオンさん」
「おう、行くぜアルティ! せ~のっ!!」
「「ヌゥンッ!!」」
「……ッ!」
そして栄光への扉は開く……聞かんでも良いことを呟く、のんびり屋の言葉を途中でキャンセルして。筆頭ゴリラと次点ゴリラの腕力の二重奏の前に、邪悪な荘厳さを漂わせる城門はやたらと滑り良く動いて。獲物を視認した黒い影が疾駆する先には、今までとは比べ物にならぬほどに雄偉かつ濃厚なる魔の香りを漂わせる大鎧。
『よくぞ来た、勇者たちよ』
「
『ぬぅっ!?』
「オラッ、気分出してんじゃねぇぞボケッ!!」
「聖なる力を皆にッ! 【
『ぐぉぉ、展開が今までに無く早いッ!?』
その胸に刻印された、黒い太陽と取り巻く焔。『鎧魔』の象徴にして力の源と言われる、邪悪なシンボルに突き立てられる短剣とバラ撒かれる爆薬。だがやはり徹せなかったらしく、跳び退がる猫と入れ違いに走り寄るデカいの二人。連続する炸裂のセレナーデを金属音で掻き消して、『魔素』を『聖力』に変換して解き放たれる光と共に発揮されるダブルゴリラパワー。
「胸がデカいのは伊達じゃないわねっ!!」
「母なる主のお恵みですっ!」
「誰が神に見捨てられたってっ!?」
「良いぞぺちゃパイ、もっとムカつけっ!!」
「……未来がある」
「ふぬぁ゛ァ゛ァ゛ッ!!」
神は人を二つに分けた……もちろん男などハナから土台に立っちゃいない。万能元素たる『魔素』の運用方法は二通り、母性の象徴たる乳房で『聖成』する『神術』ともう一つ。女ならば誰でも持っている器官で文字通り『産む』、子宮を炉心とする『魔術』である。つまりは乳がデカけりゃ神官になれるし、脳筋だって自動的に溢れる力を本能的に運用できる。だが……持たざる者が抱える憎悪こそが極上を産むのだ。御同類に肩をポンと叩かれ膨らんでいくそれは、闇に傾いているため変換効率が段違い。そしてそれを暴発させずに練り上げて放つことこそが、天才魔術師たる真骨頂である……!
『と、当世の若者はキレやすすぎではあるまいかっ!?』
「うるさいわこのスタート地点ッ! とっとと焼滅させてやるわっ!!」
『確かに余は始まりにして終わりだが、少々意味が違うと思うのだがっ!?』
「あたしの怒りよ、全てを呑み込めッ!!【
『ぬわぁぁぁぁっ!!』
そしてあたし、ミリアム・フォン・ゲヘナフレムには天より与えられた才能がある。それは森羅万象に対し怒りを覚え、それを冷めさせることなく万物にブツけられること……そしてこの魔王、デカくて生意気だし声もくぐもっててムカつく。こんな辺鄙な所に引きこもっていたことも気に喰わないし、脚が痛いし腹立たしさが無限に湧いてくる……! 何よりもこのあたしの前で、敵が生きているだけで大罪なのだ。という訳でサクッと火葬、いつもより激しく
「あははっ、ザァコッ! ざぁぁぁぁっこっ!! 何一撃で着火してんのよもっともっと燃やさせなさいッ!!」
『理不尽の化身か貴様ッ!? ぐっ、鎧がッ……!』
「本体シンボルそのまんまっ!? キモい、プラス一億度ッ!!」
『グォ死ぬぅっ!!』
「手ごたえが無い、火力倍ッ!!」
『ぬわッぢぃ゛ぃ゛ぃ゛~~~~~~~ッ!!』
幾らデカかろうと、金属の塊には違いが無い。そして我が
「パターン入ったな」
「さすがは八つ当たりの権化です」
「わたしが最初に覚えた感情は恐怖」
「う、ううん。これはちょっと想定外かなぁ」
「火ィアッハッハッハッハッハァ~ッ!!」
この世界は、怒りの火種に満ちている。つまりあたしこそが最強であり、不愉快な仲間たちも本質的にはステーキについてくるポテトのような物。何故肉を喰らうのに芋など食べねばならぬのか、栄養バランスなどクソ喰らえ。でもガーリック、アンタだけは許してあげる……思いつつ、プスプス煙を上げる燃えカスを油断なくウェルダンし続ける。
『……』
「そろそろ可哀想になってきたな……」
「慈悲を与えるべき頃合いかと」
「死が救いになることもある、わたし知ってる」
「ほらほらッ、さっさとトドメ刺しなさいッ! 何してんの、早くしないとアンタも
「わかった、じゃあ終わらせようか」
ついに元の十分の一の体積になり、黙り込んだ『鎧魔』ならぬ触手ボール。だがまだ濃厚なる『魔素』はその周りにしつこく漂っており、それ故に無限に焼き放題を続けられる。やはり伝承通り、勇者の手によってしか葬れぬ戯けたゴキブリ以下であるらしい。そろそろ疲れてきたので火力をさらにムカ着火でファイアーしつつ、剣を振り上げる執行人を急かしていざエンディング&新しきサクセスストーリーが始まる時。
「全員ちゃんと証言しなさいよ、ミリアム・フォン・ゲヘナフレム武勲一番」
「へいへい、オレたちも焼かれたくねぇからな」
「信仰も命あっての物種ですからね」
「わたしは戦後もリュカの側に居られればそれで良い」
「ははは、ボクは本当に仲間に恵まれたよ……本当に、本当に……素晴らしい
「「「「えっ?」」」」
ああ、なんて素晴らしい……もちろん優しいミリィちゃんは、いくら役にも立たぬカスどもと言えどこやつらも決して見捨てない。長い旅を共にした労をねぎらい、老後まで端女として面倒を見て己が手で火葬してやるつもりである。明るい未来を夢想して、振り下ろされる剣を見守り……鎧から噴出した闇に、黒く染まる視界。
「ねぇみんな、考えたことは無い? 勇者が魔王を終わらせられるなら、何故歴史は繰り返されるのか」
「あ、アンタッ! あたしたちを、いつから裏切って……!」
「決まってるだろう? 最初からさ。ボクは言ったよね、君たちに最高の栄誉を約束するって」
「テメェッ! その勇者の証は、ニセモンだったっつーのかっ!?」
「いやぁ、本物だよぉ?」
身に纏う鎧がガシャガシャと堕ちて、明らかになるはその正体。爽やかは淫靡に、煌めきはドロついた情欲にすり替わり……現れるは二律背反の化身。輝く金銀妖瞳はそのままに、愛おし気に撫でる下腹部に刻まれていたのは黒き太陽の刻印。そして我らを捕えるヌメついた鎖の奔流は、嬉し気な言葉を吐く光輝であったはずの存在。その全身から伸びていた……