本作は、魔法科高校の劣等生を題材にした短編です。
彼は一人でその場に立っていた。どこか人を寄せ付けないその姿を見かけて、私は思わず声をかけていた。
「新入生ですね。何かお困りのことでもありますか?」
生徒会長である私は、入学式のリハーサルに参加する為に他の生徒より早く学校入りしていた。そしてふと見かけた彼の背中に、なぜかどうしようもなく心惹かれてしまったのだ。
他の2年生が私と同じように彼に気がつき、そして『ウィード』という単語を発していたからでもある。ウィードとは魔法実技の成績が悪いニ科生を蔑む言葉。この学校には一科生と二科生の間に、厳然たる壁がある。
それは偶々、私が彼に注目していたからこそ聞こえてしまった言葉だった。けれど、こうして聞いてしまった以上は生徒会長として私もフォローしなくてはならないだろう。
「いえ、何でもありません」
彼は礼儀正しい様子で、すぐに頭を下げた。何かの武道を習っていたかのような折り目の正しさを感じる。その人との距離の取り方は心の壁というよつな、何か手慣れたものさえ感じさせた。だが、私はそんな事では怯まなかった。2年間の生徒会での活動が、生来の引っ込み思案だった私を良い方向に変えてくれていた。
「そうですか。私は生徒会長を務めています。」
その時、風が吹いたので私は思わず左手で吹き上がる髪を押さえた。何だか失敗したようで照れ隠しのように相手に笑いかけてしまっていた。
「七草真由美です。『ななくさ』と書いて『さえぐさ』と読みます。よろしくね。」
「俺、いえ自分は司波達也です。」
「司波達也くん。そう、あなたが。」
その名前は学校からの資料で目にしていた。ただ、彼本人の資料ではなく、ある女生徒の添え物としてだ。彼は同学年の妹さんと同時に入学をしていて、妹さんの方が新入生総代なのだ。新入生総代は伝統的に生徒会に勧誘され、いずれ生徒会長の座を引き継ぐ事を期待される。
(妹さんを通じて、彼とはまた会う機会がありそうね。)
司波くんの事はどうしても目が追いかけてしまう。2歳も歳が離れているのに、とても気になる異性だった。一目見てこれほど誰かを好きになったのは、今まで生きてきた中でも経験がない。
「会長、リハーサル始まりますよー。ん?お話中でしたか?」
次に話しかける言葉を探している内に、生徒会書記のあーちゃんが心配して探しに来てくれたのだ。
「いえ、失礼します。」
せっかく捕まえた司波くんは、すぐそう言って逃げてしまった。
「あ。」
私はぼんやりとその背中を見送った。どうしてこの人に、こんなにも心惹かれるのだろうと考えながら。
入学式を終えた私は一年生の廊下に急いだ。私は彼を見つけ出す自信があった。今頃はきっと、生徒証の発行を受けている頃合いだろう。
「会長、どこに行くのですか?」
階段を慌てて降りていると、二年生の服部刑部少丞範蔵副会長が私に声をかけてくれる。私は信頼する服部副会長の事を、はんぞーくんと呼んでいる。
「あら、はんぞーくん。今から、新入生総代の司波深雪さんを生徒会に勧誘に行きます。」
「そういう事なら、自分もご一緒します。」
一年生の廊下で司波深雪さんと立ち話をするお目当ての姿を見かけた。司波達也くんだ。
「こんにちは、また会いましたね。」
私がそう挨拶すると、彼は会釈を返してくれた。ただ、立ち話をしている妹さんの方は少しだけ様子がおかしい。こちらに気がついてはいるようだが、達也くんの周囲にいる女生徒の姿に警戒感を募らせていたようだ。少し会話の様子を見守る事にする。
彼女達が単なる同級生と聞いて、少し神経質になった自分を深雪さんも自覚したようだ。その後は態度を軟化させて普通に挨拶をしていた。やはり、深雪さんも根は良い子なのだろう。
深雪さんの新入生総代としての立ち居振る舞いは完璧だった。普段は隙があるように見えないだけに、同級生の女子にまで神経を尖らせる様子は少し意外だった。あれだけ素敵なお兄さんがいると、変な虫がつかないように深雪さんとしては警戒し過ぎてしまうのかもしれない。
「深雪、生徒会の方々の用は済んだのか?」
じっと観察していると達也くんがそっと水を向けてくれた。生徒会の私達というより、妹さんの学内での立場を守る為の言葉なのだろう。
「あっ」
私達の姿を目にしていながら、兄のガールフレンド疑惑を追求していた深雪さんが慌てた素振りを見せる。
「大丈夫ですよ。」
私はそう言葉をかけて礼儀を守って話しかける順番を待っていましたよー、という顔をした。達也君と深雪さんの観察を優先した以外、概ねそれは事実なのだ。
「今日はご挨拶させていただいただけですから。」
「会長!」
私の言葉にはんぞーくんが憤りを見せる。服部副会長としては、わざわざ挨拶に出向いた生徒会長が蔑ろにされたと感じているのだ。はんぞーくんは彼らに抗議するつもりに違いない。しかし私は自分が話し続ける事で、彼の介入を阻止した。
(はんぞーくんは、私が十師族のお嬢さんだと思って少し過保護なところがあるのよね。)
「深雪さん」
「はい」
「詳しいお話はまた日を改めて」
そもそも生徒会の役職就任は立ち話で済ませるような話ではない。今回は、手続で忙しい中を押しかけたこちらも悪い。あちらはあちらで事情があって当然なのだ。今日のところは『生徒会が貴方に興味を持っていますよ』、とサインを出しておけば十分だろう。
今日のうちに司波深雪さんに軽く挨拶をしたかったのは本当だけれど、半分以上は私がまた司波達也君と会いたいだけの気持ちだった。深雪さんと達也君の関係も垣間見えたし、今はこれで十分だろう。
「司波君も。いずれまたゆっくりと。」
本当に言いたかった言葉を口にすると、その場を後にした。
「会長!」
ムッとした様子のはんぞーくんが、でもそれ以上は新入生達には何も言わずに私の後を追いかけて来た。
下校時刻、一年生が集団でいるのを見かけるとつい司波達也くんの姿を探してしまう。彼の事は内心ではもう司波くんから達也くんと名前呼びに昇格していた。彼は深雪さんのお兄さんなのだ。司波兄妹の区別のためにも、私が彼を達也くんと呼んでおかしくはないだろう。
「どうしたんだ、真由美?」
歩いていると同級生の渡辺摩利に声をかけられる。
「うふふ、ちょっとね。新入生達の様子を見て回わろうかなって」
「そういう事なら、風紀委員長として私もお供しよう。」
摩利と連れだって見回りをする事にする。実は私の目当ては達也くんなのだ。きっと深雪さんも一緒にいるだろうし、帰りにちょっと挨拶してもバチは当たらないだろう。
校門前の人だかりが気になった。達也くんに深雪さんの姿も見える。他の生徒も交えて、何か口論のようになっているようだ。喧嘩のようなやり取りにも見える。胸騒ぎがした。
「摩利!」
足を早めてそちらに向かった。一年生の女子が魔法式をほぼ構築しかけていた。学内での威力のある魔法の行使は看過出来ない。
私はCADを操作し、サイオン弾を放って魔法式構築を阻害する。サイオン弾の命中で魔法陣が壊れ、バランスを失った女子が倒れ込む。彼女はそのまま後ろの子に支えられる。
「やめなさい!」
私はトラブルを収める為にCADを誇示しながら、そのまま前に進み出た。
「自衛目的以外の魔法による対人攻撃は犯罪行為ですよ。」
私に続いて摩利も姿を現す。
「風紀委員長の渡辺摩利だ。」
今日の入学式で私の顔は新入生にも知られているのだろう。達也くんと深雪さんにちょっかいを出していた一年生達も、生徒会長と風紀委員長の揃い踏みに驚いている。
「事情を聞きます。全員ついてきなさい。」
摩利がそう宣言した。摩利のその声に、私の中の一時の熱狂が冷めていく。私は少し冷静になった。CADから手を離し、腕を下ろす。今回は司波達也くんが危ないと見て介入しただけだ。達也くんや新入生総代の深雪さん、他の一年生達の事も入学式早々大事にするつもりはなかった。
(私に釣られて摩利も気負いすぎてる。最初から見て見ぬふりをすればよかったのかしら、でもやはりあれは生徒会長としても見過ごせなかった)
摩利は融通が効かないところがある。新年度を風紀委員長として迎えて張り切っているのだ。私が始めてしまった事ではあるけれど、達也くんを助ける事に意識が行き過ぎていた。私は摩利が積極的に介入すると予想していなかったのだ。
これはどう処理するべきか悩んでいると、達也君が介入してくれた。
「すみません、悪ふざけが過ぎました。」
上手く全員の立場を守るいたわけで摩利を宥めてくれようとする。摩利は納得していないが、被害が発生しておらず未遂といえば未遂なので対応に悩んでいるようだ。
「ちょっとした行き違いだったんです。お手を煩わせてしまい申し訳ありませんでした。」
そう言って達也君の後ろから深雪さんが出て頭を下げる。そこでようやく摩利は、自分が新入生総代を含むグループを相手にしていたと気がついたようだ。その様子を見て私は勝利を確信した。
「もういいじゃない、摩利」
深雪さんの前に立って生徒会の先輩らしいところを見せる。彼女は事実上生徒会役員の内定者であり、摩利もその事は重々知っているはずなのだ。いわば深雪さんは、学内では私達の身内候補だ。
私も摩利も新入生総代を巻き込んだ大事にしたくない点で意見は一致している。こうなれば、後は話の収め方だけだ。
「達也くん。本当にただの見学だったのよね?」
ウインクで達也くんに『話を合わせて」と合図した。彼がすかさず私に話を合わせてくれる。やはり私達の相性はバッチリだ。
後は私が生徒会長らしく、全員に口頭で軽い注意を行う。『次はありませんよー』と釘をさしたのだ。注意するけれど、今回は実質的なお目溢しである。入学式早々というタイミングを考えれば、彼らも不自然に甘い措置とまでは考えない筈だ。
そしてこれは『もうこの話は軽い注意で終わらせましょう』という、摩利への合図でもある。
「会長がそう仰られている事でもあるし、今回は不問にします。以後このようなことのないように。」
最後に摩利が達也君に名前を聞いていた。彼女が達也君を気に留める要素が何かあっただろうか。魔法式の構築を見抜いたという彼の実力を、摩利も高く評価したのだろうか。
もしかしたら、私が司波達也くんに注目していると気取られてしまっただろうか。摩利は意外と鋭い。思わず後輩を名前で呼んでしまったのだ。
きっと付き合いの長い彼女は私の達也君への好意に勘づいてしまったに違いない。でも待って。1日のうちに3度も出会ってしまえば、そこに運命を感じずにはいられないじゃない。
翌朝、通学路を歩く彼を見かけて思わず私は駆け寄ってしまった。
「達也君おはよう。深雪さんもおはようございます。」
意中の相手に出会えて思わず笑みが溢れる。私はこういう運が良い。私は深雪さんの生徒会入りを打診する為に、2人と昼休みの約束を取り付けた。もちろん達也君も同行して貰う。後は仲良くお話ししながら、深雪さんの生徒会入りを実現させれば良い。
昼休み、生徒会室での役員との顔合わせは順調に進んだ。そして深雪さんの生徒会入りは無事に決まった。併せて達也君の風紀委員会入りも生徒会推薦で決まった。
生徒会は一科生でなければ入れないという校則がある。しかしながら風紀委員会にはそのような縛りは無く、二科生でも問題はない。この日は私にとって実に幸運な日だった。だが翌日、事件が起こった。
「そのニ科生を風紀委員に任命するのは反対です。」
副会長のはんぞーくんが突如叛旗を翻したのだ。兆候はずっとあった。そもそもの司波兄妹との出会い方からして、彼には不満だったのだ。
振り返ると、前日の昼食会にわざと口実を作って同席しなかったのもそうだ。彼としては『二科生の司波達也と顔を合わせなければそれで済む話』と考えていたのかもしれない。
それでも昨日の決定を知って、彼は私の元を抗議に訪れた。私が『生徒会長として司波君に約束したオファーを取り下げる事は出来ない。』と返すと、一旦は収まったような見えたのだ。だが、はんぞーくんは説得の標的を摩利に切り替えていただけだった。
生徒会長が一度口にした約束の重さ。私に撤回させれば生徒会長が嘘をついたことになる。であれば、風紀委員会が理由をつけて拒否すれば丸く収まると考えたらしい。
彼は見所のある後輩だと思っていたのだけれど、達也くんに対する態度を見ているとその考えも少し揺らいでしまう。二科生に対する差別とはどこまで根深いのだろう。
この頭の痛い問題は、『妹の言葉が正しいと証明する為に』達也くんがはんぞーくん相手に模擬戦を申し込むという大騒動になってしまった。
模擬戦は第3演習室で開催された。生徒会のメンバーしか知らせない内輪の催しである。私に差配できるのは外部にこの話を漏らさないようにする事だけだった。どちらが敗者になるにしろ、影響は最小限となるだろう。
風紀委員長の摩利が判定役を勤めるので達也くんの身に危険はない筈だ。私は押し黙って事態の推移を見守っていた。介入するタイミングを全力で測っていた。はんぞーくんは彼なりに良かれと思ってしているのだろうが、ここまで話をまとめた私の努力が全て踏み躙られようとしていた。
達也くんが敗北すれば、生徒会入りが決まったとは言え以後の生徒会での深雪さんの立場が微妙になる。それだけでも頭が痛いのに、達也くんは風紀委員会入りを阻まれ二度と生徒会室に近寄らなくなるだろう。それは達也くんに対する私の仄かな恋心にとどめを刺すに留まらず、生徒会長としての活動にも甚大な被害を及ぼしかねない。
達也くんに対する深雪さんの評価が正しいようにと祈りつつ、内心では私は服部副会長の処分を検討していた。達也くんが負ければ深雪さんが立つ瀬がなくなる。不要な争いを起こしたのははんぞーくんの責任だ。同学年で負けなしだからと言って、彼は最近調子に乗りすぎている。
深雪さんを次の次の生徒会長として正しく育て上げ、バトンを渡していくのが今生徒会の課せられた責務なのだ。そうである以上、私が指名しただけの副会長のはんぞーくんを罷免しても許されるだろう。
彼は暴走した結果、それだけの事をしてしまったのだから。後輩を罷免する決意を密かに抱いて、そんな展開とならないように私は達也君の勝利を願っていた。
恐らく摩利だけは、口数の減った私の怒りを理解していたと思う。或いは他の生徒会メンバーも私の放つ低気圧の様子に気がついていたかもしれない。はんぞーくんだけは勝負に集中していたからだろう。私の機嫌が氷点下まで冷え込んで言葉を発しなくなっている事に、彼は全く気がついていなかった。
模擬戦の勝敗は一瞬で決まった。達也君の素早い動きに、はんぞーくんが膝から崩れ落ちたのだ。摩利が達也くんを勝者として宣言してもまだなお、倒れているはんぞーくんを前に皆が何が起きたのか理解出来なかった。私には、達也くんの放ったのはサイオンの波動そのもので、それが服部君を攻撃して倒したように見えた。
「待て」
摩利が達也くんを呼び止めて問いただす。彼女はあまりに鮮やかな達也君の手並みに、どのような事が起きたのか。そこに不正はなかったかを疑っているのだ。
「正真正銘、身体的な技術ですよ」
「兄は忍術使い九重八雲先生の指導を受けているのです。」
兄の活躍に自信を得たのか、得意そうに深雪さんが告げる。
「あの九重先生の!?」
摩利の素振りで達也くんの師匠が凄い人なのだと分かった。私が知らないだけで、その道ではきっと有名な忍術使いなのだろう。
「じゃあ、あの攻撃に使った魔法も忍術ですか?」
今度は私が尋ねる。達也くんによると指を鳴らす際にサイオン派の合成で強い波動を作り出し、魔法師に身体が揺れたと錯覚させる技術らしい。
そんな時、司波君のCADに注目していたあーちゃんがそのCADをトーラス・シルバーの作品だと言い出した。忍術使いの名前は聞き覚えなかったけれど、私も魔法師である以上トーラス・シルバーの名は知っていた。謎の天才魔工師である。達也君のCADはループキャストに最適化された特化モデルらしい。
ループキャスト?その特化モデルの仕様に疑問を持つ私に、生徒会会計で二年の市原さんが解説してくれた。りんちゃんだ。達也君は忍術使いの技を使い、ループキャストに特化したトーラス・シルバーの名品のシルバーホーンを駆使して、振動数の多変数化処理まで実行したそうだ。
「なるほど、テストが本当の能力を示していないとはこういう事か。」
意識を取り戻したはんぞーくんが、私達の会話に参加する。
「はんぞーくん、大丈夫ですか?」
私は彼を気遣った。ここまで見事に達也君がはんぞーくんを倒した以上、私にもようやく余裕が出てきていた。先程より、表情がイキイキと動いているのを自覚していた。
それにはんぞー君の様子を見る限り、敗北して自らの失態を悟ったようだ。騒動を起こしたけれど、彼は責任を果たした。私の後輩を評価する目が丸っ切り曇っていた訳ではない。彼もちょっと特殊な状況にペースを乱されたのだろう。このまま全てが丸く収まるなら、これ以上彼らを刺激する必要はないだろう。
はんぞー君は深雪さんに謝罪した。達也君との確執が全て消滅した訳ではない。しかし達也君の実力が証明された事で、深雪さんの生徒会での活動は下地が整った。彼女は兄が有能であると証明する為にも、生徒会で自らの足場を築いていくのだろう。そう、私がかつてそうしたように。
深雪さんが生徒会室に、達也君が風紀委員会に移動した後で、私は密かに達也君に呼び出されていた。いえ、私が達也君を呼び出したのだろうか。
深雪さんへの指導を他の役員に任せると、私は『ちょっと様子を見てきます』と席を立った。達也君に謝らなくてはならない、というのは生徒会の皆も分かっているだろう。快く送り出してくれた。
「先程は服部副会長がごめんなさいね。」
達也くんを呼び出した生徒会の使っている準備室に入ると、中で急に達也君に抱きすくめられた。
「達也くん待って、私そんなつもりじゃ。」
私の弱々しい抵抗は、達也君に実力で排除される。気がつくと私は上下の下着を露わにされていた。この一体型の制服は体のラインを見せる反面、簡単には脱ぎ着できないようになっているのに。達也くんは妹さんの制服で構造を把握しているのだろうか。
私が驚き恥じらっている内に、達也くんのギラギラとした雄の目に私の身体が値踏みされる。
「俺は七草先輩が欲しいです。先輩は俺と深い仲になるのはお嫌ですか。」
私は達也君の基準に合格したのだ。その嬉しさが私の返事を誤らせる。
「嫌じゃないけれど、恥ずかしいわ。」
その言葉を発した後で、私はそれが肯定を意味すると気がついたがもう遅かった。
「なら大丈夫です。この場には誰も近づけません。ここには俺たち二人きりですから。」
いつもなら誰かと2人きりになる事はない。私も用心しているし、はんぞーくんが変な虫がつかないように見張っている。だから困る事はなかった。でも、達也くん相手にははんぞーくんは敵わない。それを私ももう知ってしまった。
達也君が私の胸に顔を埋める。きっと私の鼓動が煩いだろう。
「模擬戦とはいえ、試合をすると神経が昂ります。」
直接肌に触れられると、達也君の魅力には抗い難かった。私はもう彼に抵抗出来ないと悟った。
(なんで私は達也君にはこうなっちゃうんだろう。もしかして七草の血が望んでいるというの?)
七草家は魔法技能師開発研究所で生み出された家系だ。その血筋は、それぞれの研究テーマに有利な遺伝子に強く反応するように調整されている。『だから、対となる相手を見つけた時の執着は強い筈だ』と長女である私は父からそう聞かされていた。
(恐らく、あの発言はお父様の実体験から。)
父が昔、恋人だった少女と別れさせられたとは薄々聞いたことがある。相手は十師族の家系、達也くんとは関係ないはずだ。
(でも優秀な達也くんなら、お父様も間違いなく気にいる筈。私がこの体を使って彼をつなぎ止めようとしても、きっと許される。だって私は七草家を継ぐ立場では無いのだから。)
「達也くんは私の事、好き?」
「はい。愛や恋はよく分かりませんが、七草先輩の事を考えると身体が反応します。」
達也君の手に導かれる。服の上から握った達也君の強張りは間違いなく熱を帯びて硬くなっていた。
「もし達也くんが私の体に興味があるなら、好きにしていいのよ。お姉さんが鎮めてあげるわ。」
気がつくと私はとんでもない事を口走っていた。完全に空気に呑まれていたのだろう。慌てて言葉を付け足す。
「・・・私、初めてなの。」
「はい、きちんと責任を取ります。だから大丈夫ですから。」
責任を取る。言質を取った。その事に私の中の抵抗が緩む。
「あっ」
気がつくと、達也くんの舌が私の口の中に侵入していた。
(これがキス)
甘いとは感じなかった。でも情熱的で激しく座れる。私の顔が真っ赤になって心臓が破れそうになっても、達也くんの追求は止まらない。
キスが終わったら慌てて深呼吸をする。その隙に彼の指が動き、私の下着は見事に剥ぎ取られていた。もしかして私の身体が勝手に反応して彼に協力して剥ぎ取りやすく動いていた気がする。
(もう、自分の身体さえ信頼できないなんて)
七草の血は、どこまで欲する遺伝子を求める事に貪欲なのだろうか。
「よく、潤っていますね。」
「・・もう、達也くんの助平」
彼の指が私の股間を探っても、私には言葉で抵抗する事しか出来なかった。身体はもう完全に本能に乗っ取られ、貪欲に達也くんを求めている。今は、彼に抱かれなければきっと一生後悔すると、そう私には分かっていた。いえ、分からされていた。
「どうですか?」
達也くんが服を脱ぎ、そそり立った股間のモノを見せつける。グロテスクな姿に驚いてしまうけれど、私はそれが欲しくてたまらない。
「兄弟がいるから見た事くらいなら、でも、そんなに大きいのは初めて。」
「七草先輩に興奮しているから、こうなったんですよ。」
彼が見せつけるそれは、確かに怒張して先端が濡れていた。したたり落ちる液体が糸を引く。
「ひゃっ」
気がつくと達也くんの舌が私のおっぱいを舐め回している。
「七草先輩の体、全て味合わせてください。」
「せ、せめて下の名前で呼んで。」
「真由美」
達也くんにそう呼ばれた瞬間、とても懐かしいような嬉しい気持ちがした。これは本能なんてものではない。前世か、あるいは産まれる前から出逢う事が決まっていたかのように、身体と心の両方が彼を求めていた。
気がつくと私は大きく足を開き、自ら彼を導き入れていた。処女なのに、まるで手慣れた娼婦のような仕草だと自分でも感じる。そして達也くんの男性器は、よく濡れた私の膣内に入り込んでいた。
「ん、達也くんがいっぱい」
達也くんに押し広げられる感覚と共に痛みがある。しかしどんな脳内麻薬が放出されているのだろう、私の心は喜びで溢れていた。
「七草先輩、痛いですか?」
「ううん、ただ達也くんが気持ちいいの」
数日前に出会ったばかりの後輩に、告白される前に自ら体を差し出すようなふしだらな自分。それが私だった。生徒会長という意識はまだ自分の中にある。でもでも、弾けるようなこの喜びには変えられない。
私の女性器は破瓜の痛みに溢れ疼いている。きっと2人の性器は血だらけだ。でもそれ以上に、この繋がりには悦びがある。
「お願い、2人きりの時はずっと名前で呼んでほしい。」
「気持ちいいよ、真由美」
名前を呼ばれると嬉しくて再び心がざわめいた。達也くんが腰を動かす度に、体内を電撃が突き抜ける。私はもう、達也くんの為すがままだった。
「俺も初めてだから、もう。」
「うん、達也くん来て、来て。中に欲しい。」
気がつくと私は達也くんにしがみついて、膣内に射精して欲しいと懇願していた。
「早く、早く、達也くんお願いっ」
「いくよ、真由美」
達也くんのおちんちんが脈打つと、膣内に達也君の温かさが溢れる。
(これが射精なんだ)
じんわりと熱気を帯びた塊が、体内を拡散していくようだった。私の腰はまるで自分のものじゃないみたいに動いた。達也くんの放出した精子を、一滴も無駄にしないと宣言するかのように。
行為を終えた達也くんが、私から離れて立ち上がる。彼の去るその瞬間も、私には強い官能的な刺激があった。
「ふう・・しちゃったね。責任、とってくれるんだよね。」
立ち上がる彼の姿を愛しいと思う。ちょっと予定外は続いたけれど、私は彼との行為を後悔していなかった。
達也くんは手早く自分のものを拭いて綺麗にすると、床の上で脱力して快感の余韻に浸る私を眺めた。
今の私は手足を投げ出したままで、体裁を取り繕う余裕もない。力を全て使い果たしていた。血と精液を股間から垂れ流す今の私は、達也くんにどう見えているのだろう。達也くんに征服された今のこの姿は、まだ十分に魅力的だろうか?
答えはすぐに分かった。達也君が再びおちんちんを大きくしていたのだ。
「達也くん、もう。まだしたりないの?」
「正直にいえば、はい。でも、今はお互いに時間がないでしょう。会長は生徒会が、俺には風紀委員会があります。」
達也くんの言葉にハッとする。そうだった、生徒会を抜けて来たのだ。私もすぐに戻らないといけない。しかしこんな格好にされてしまっては、すぐに戻れるはずもない。皆、異変に気がついてしまうだろう。
「責任は取ります、任せてください。」
達也くんのその言葉に嬉しいと感じると共に、不思議に思う。彼はこの急場をどう処置するつもりなのだろうか。私の身体も制服も下着も、彼の手で酷い有様となってしまったのに。
達也くんがCADを私に向ける。
「今の記憶はなくなりますが、服も身体も元通りになります。また、2人で楽しみましょう。」
彼のCADに撃たれると、私の身体は意識を無くした。意識を喪失する前、エイドスについて達也くんに何か操作されたようなそんな気がした。
「あら、ごめんなさいね。少しボーっとしてしまって。」
目の前にいるのは達也くんだ。春の陽気にあてられて私は少し眠気を催していたのかもしれない。何か達也くんといけない事をしていたような気もするが、私の服装に乱れはない。ちゃんとしている。よだれを垂らしたりも、多分していないだろう。
「あの、何もおかしな事はなかったのよね?」
気になって達也くんについ聞いてしまう。何か達也くんと親密な時間を過ごした、その名残のようなものが準備室の中にもまだ残留している気がするのだ。
達也くんは真面目な様子で首を振る。
「ええ,七草先輩。先程の模擬戦の話をされていただけです。少しお疲れなんじゃないでしょうか。」
「あら、いやだ。模擬戦で達也くんが勝利して安心したのかもしれないわね。では、生徒会実に戻ります、達也くんまたね。」
私は笑顔で達也くんに別れを告げると、急ぐ足取りで生徒会室に戻った。達也くんと親しくなる機会は、まだこれからいくらでもあるだから。
その日、七草真由美の屈託の無いその笑顔に、異変の兆候を感じる者は誰も居なかった。ただ深雪だけが何か異常を感じ、兄に《再生》の行使を余儀なくさせる程の重過ぎるお仕置きを行うのだがそれはまた別の話である。
魔法科高校の劣等生ダブルセブン編の放送を記念して七草真由美の魅力を知らしめるべく書きました。
見直すと割とこの通りで、七草真由美は達也くんに惚れ込んでいると感じさせてくれるのです。