「それからは
「……私は、余計なことをしたということ?」
「いや、余計なことじゃない。むしろ助かった。あの女は暴走しかかっていたからな。俺に不要だと思われていることに気がついたのか、かなり危険な匂いを発していた。俺も最近はどうやってあいつから離れるかを考えてばかりだったから、あの女を未成年淫行で豚箱にぶち込んでくれたのは渡りに船だった」
「そう……」
ここ数年間、俺の身に起こっていたことの全容をやっとミヤコさんに説明し終わった。昼間にあった警察の事情聴取よりも詳細に話したから少し長引いた。喉の渇きをコーヒーで潤す。
「それにしてもよく俺とあの女の関係に気がついたな。変なボロを出したつもりはなかったんだが」
「アクア、あなたは嘘をつくのが上手いのね。息子がこんな目にあっていたというのに、今の今まで気が付かなかったなんてね。本当に自分が情けない……」
「嘘をつく才能はアイから引き継ぐことができたな。それで、どうして今になって気づけた?」
「最近のあなたの様子が変だということはルビーも私も気がついていたわ。何か憑き物が落ちたように明るくなったと思えば、ようやく顔が売れて役者の道が軌道に乗ってきたってところで急に辞めるだなんて言い出すし、誰が見ても変でしょう? それであなたが出かけた後に跡をつけてみたら……」
あの女とのアブノーマルなセックスがバレたってわけか。
その後、ミヤコさんは証拠を集めてから警察に通報をして女は逮捕。今日行われた俺への事情聴取で不同意性行罪が成立して刑務所行きは確実。
数年続いたあの女との関係は、最終的にこの結末に行き着いた。
「ルビーは今回のことを?」
「知らないわ、教えてない」
「それはよかった。もし知ってたら朝に顔を合わせた時にとんでもなく気まずい状況になるのは確実だからな。いつか必要になったら俺から話すよ」
俺はまたコーヒーを一口飲む。味はよく分からない。少し前から何を食べても美味しいと感じなくなった。
「アクア。まだ聞きたいことがあるのだけど、いいかしら?」
「今更隠すようなことはない。聞いてくれれば何でも答える」
「なら、遠慮なく」
ミヤコさんは手で目元を覆って俯いていたまま俺の話を聞いていたが、ここでようやく顔を上げて俺を見た。その目は酷く充血している。今までずっと泣いていたのだと分かった。
「どうして私に何も言ってくれなかったの? どうして私に何も相談してくれなかったの? 私は、お母さんはそんなに頼りない?」
哀しそうな顔をして涙ながらに訴えられる。
「ミヤコさんやルビーに話せなかったのには理由がある。俺は少し前まである男を追ってた」
「ある男?」
「俺たちの父親だ。俺はアイを死に追いやったのは父親だと思ってる」
「え? アイさんを殺した男はすでに自殺して……」
「実行犯が死んだのはもちろん俺も知ってる。問題はあの男の裏にいたのは誰かということだ。あの男はただの学生だったんだぞ? 引っ越したばかりだった新居の住所を特定できたのは何故だ? 裏に情報提供者がいると考えるのはおかしなことか?」
「まさかっ……! それがアイさんの夫!」
「俺はそう思ってる。だから俺は父親がいる可能性が高い芸能界に入った。父親を見つけ出して、殺す。それが俺の生きがいだったんだ。こんな事、家族にだって話せないだろ」
そう、生きがい
今は違う。生きがいなんて、もうない。
「……それなら何故、役者を辞めるだなんて言い出すの? もう父親を見つけたとでも言うの?」
「ああ、見つけたさ。呆気ないほど簡単にな」
ミヤコさんが驚いた顔を見せた。しかし、それはよく考えれば必然だった。
あの女は売れっ子なだけあって芸能界の各所に顔が効いた。アイの残した携帯の連絡先を手掛かりにトントン拍子で状況は進展していき、結果として父親を特定はできた。
「だけど、もう死んでた」
「死ん、でた?」
「名前は上原清十郎。DNA鑑定を用いて突き止めた。父親であることに間違いはない。軽井沢のコテージで何年も前に妻と心中していた」
「そう……それでよかったのかもしれないわね。あなたが極端な事をする必要はないということなのだから」
「全く良くない。したくてもできないんだからな。だがそれはともかく、父親を探し出してアイの仇を討つということは不可能になった。同時に役者になる必要も無くなったってことだ」
全く望んでいない形ではあるが、とにかく俺の復讐劇は終わりを迎えた。これから俺は嫌でも自分の人生にだけ向かい合っていかないといけない。
「……じゃあ最後にあと一つだけ聞かせて。アクア、あなたはこれから役者を辞めて、何をして、何を楽しみに、何を生きがいに、これからの人生を生きていくの?」
「そんなことを聞かれても困る、俺にも分からない。でも、世の中それが分からない奴ばかりだろ」
おそらく、ただ漠然と時間が過ぎるのを待つだけ。自分の死が来るのをただ待つだけ。
それが面倒になれば早めに
アイのいない世界に用はない。アイが殺された直後の、全てがどうでもよくなっていたあの頃の俺に戻ったというわけだ。
「もういいか?」
「ええ……」
そう言うとミヤコさんは崩れるように机に顔を伏せてしまった。俺は立ち上がって自室に戻る。
「うっ……うっ……どうして私の子供たちは、こんな辛い目に遭わないといけないの……?」
戻ろうとしたが、苦悩に満ちた悲しみの言葉に違和感を感じて途中で足を止めた。
(私の子供たち……?)
俺の中に邪悪な欲望が首をもたげてくる。だがこのまま好き放題に振る舞えば、その末路は――――
(まあ、どうでもいいか)
「そういえば、俺もミヤコさんに一つ聞きたいことがあるんだけど」
机に伏せていたミヤコさんは涙を拭い、顔を少し上げた。俺は彼女の横に立ち、耳元で囁いた。
「どうして最近は毎日、俺でオナニーしてるわけ?」
俺の言葉を聞いた瞬間、ミヤコさんは飛び跳ねて起き上がった。彼女の顔は酷く動揺して、その瞳は瞳孔が大きく開いて揺れていた。
「なっ……!? あ、アクアっ! い、一体、何のことを言って……?」
「しらばっくれても無駄だ。俺とルビーが寝静まる深夜の一時くらいから、毎日のようにやってるだろ」
「違うっ! 違うわ、アクアっ! あなたの勘違いよ! 私はそんなこと――――」
興奮して詰め寄ってきたミヤコさんを、俺は逆に突き飛ばす。壁に背中を打って苦しそうに歪めたその顔は、思わず舌舐めずりしたくなるほど綺麗で魅力的なものだった。
「毎晩毎晩、俺の名前をうわごとのように何度も呟いて。片手では拳を作って腹に打ち付けて、もう片手では股を弄って。初めて覗き見た時は何をしているのか、全く理解できなかったな」
「うぐっ……そ、そんなこと、してないわ……お願い、信じて」
「だけどミヤコさんが俺とあの女の関係に気がついていたってことを知った時に、あの奇妙な行為の意味を理解した。俺に腹を殴られる妄想をしてオナニーをしてたってことを。あの女が俺に殴られる姿を見て羨ましがってたってことを」
「……ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい……こんな私を、嫌いに、ならないで……」
「そして――――」
俺は絶望しながら涙を流すミヤコさんの頬を鷲掴みにして、自分の顔の前にまで引っ張って持ってくる。その時にふと気がついた。
いつの間にか、俺の身長はミヤコさんを追い抜いていたという事実に。
「俺の事を息子じゃなくて一人の男として見てるって事を」
俺は無理やり唇を奪って口付けをした。ミヤコさんとキスなんて当然今までしたことはない。初めてのキス。
だからといって唇を触れ合わせるだけのような初々しいものではない。いくら初めてとはいえ、俺と彼女とのキスにそんなものは似合わない。
俺たちがするのは欲望を解放するためだけの乱暴なキスだ。俺はどうにもならない現実への苛立ちを少しでも和らげるための、ミヤコさんはドロドロとした女の暗い情欲を好みの俺にぶつけるためのもの。
しばらく続いたキスを終えて、お互いの舌の間にできた唾液の橋が消えるのを見届けてから俺は言った。
「ふっ……ふっ……」
「
ここ数年程ですっかり言い慣れたこの一言は、あの女と事に及ぶ際の合図。ミヤコさんは俺とあの女の行為を見ていた。何をすれば良いのかは分かるだろう。
ミヤコさんはすぐに着ていたワンピースを脱いだ。ブラジャーもショーツも全て即座に脱ぎ捨てた。俺は女にぐずぐずされるのが好きじゃない。あの女には脱げと言われたら一切躊躇うことなく脱ぐよう躾けておいた。そしてそれを見ていたのだろう彼女も同じようにすぐに服を脱いだ。
だが、俺は制服を脱がない。何故なら俺とミヤコさんの関係は決して対等ではないから。
俺が上で、ミヤコさんが下だからだ。
それからミヤコさんは腋を見せつけるように両腕を頭の後ろで組み、足を軽く開いて腰を僅かに前に突き出した。これも俺があの女に仕込んだ事の一つ。服を脱いだら次にこれをやるのは確かに俺とあの女の情事での定番だが、ミヤコさんは俺が何も言うまでもなく勝手にこれをやった。
「念願叶って大喜びか? 気持ち悪いんだよ、マゾ女」
「ふっ……♡ふっ……♡ふっ……♡」
当然次にやるのもお決まりの流れ、手マンだ。といっても、そんなに本気を出して弄ってやるわけではない。ただ膣内に中指を差し込み、手前を擦るように出し入れするだけ。
その程度のやる気のないものでも問題ない。そんなものでも三十路の女を感じさせるには十分すぎる事を、俺はよく知っている。実際、一分も経たないうちにミヤコさんは顔を蕩けさせて弱音を吐き始めた。
「い、イクイクイクっ……♡♡あ、アクアぁぁっ♡♡♡」
男日照りで三十代の性欲真っ盛りの時期のミヤコさんには刺激が強過ぎたらしい。女の弱点を熟知した指遣いに腰を落としてビクビクと感じていたマゾ雌は、自分がすぐにでも果てることを相手の雄に媚びるような甘い声で知らせる。
もちろん女がイク前に指を引き抜いた。これもまた流れの一つ。それから俺は、寸止めをされて切なげな顔を見せるミヤコさんの下腹部にぴたりと拳を当てて、壁に背中をつけさせた。
「かなり上手い自信はあるから、気をしっかり持てよ。じゃ、いくぞ」
「腹パン……♡腹パン、来るっ……♡♡」
少し身体を引くと、マゾ女は恍惚とした表情で熱い吐息を漏らしながら両目で拳の行き先を追う。
それから俺は一切の加減のない速さで腕を振った。
「あぎっっっ!?!!???」
ミヤコさんは目を瞑り、悲痛混じりの大きな声を上げて勢いよく身体を跳ね上げた。
だが大袈裟な反応とは裏腹に、俺は自分の拳をゆっくりとミヤコさんのお腹に張り付けるだけだ。
「――――えっ?」
ぴたりと下腹部に張り付いて僅かな力で押してくる俺の拳を感じて、ミヤコさんは自分が揶揄われていただけだと悟ったらしい。無意識のうちに腹部にこもっていた力が抜けていく。
そして完全に脱力し切った瞬間、俺は瞬時に力を入れてミヤコさんの下腹部を思いっきり圧し潰した。
「オ゛ッ゛♡♡♡ ーー!? ゛゙!! ♡♡♡」
言葉にならない断末魔を上げてミヤコさんは絶頂した。それからガクガクと身体を痙攣させてどうにか逃れようと暴れ回る。
拳と壁に挟まれて逃げ場なく潰れる子宮の感触、それは俺以上にミヤコさん自身が感じているに違いない。たまらず頭の後ろで組んでいた腕を解き、俺の腕を掴んで何とか引き抜こうとする。
が、それへの対応は極めてシンプル。更に力を込めて下腹部を押すだけ。脱力したタイミングを見計らって拳をめり込ませたんだ。もう今更腹に力を入れて自分を守るということはできない。もはやまともに力を入れることのできないミヤコさんの暴れ方は段々と大人しくなっていく。
虐められ続けて弱ったマゾ女は最終的に抵抗を諦めた。ぐったりとして俺の肩に顎を乗せ、耳元でぼそりと力無く呟く。
「好きよ、アクア……愛してるわ……」
「それは息子として? それとも男として?」
「男としてよ……最近のあなたは、垢抜けて、魅力的な、男性に……」
もちろんミヤコさんを圧す力は一切緩めていない。意識が薄れていっているのか、耳元の声はだんだんと断続的で小さく掠れたものになっていく。
「あの女のおかげか。周囲の女からの目線は変わったのは気づいたが、自分の何が変わったのかはよく分からない」
「あの子も、ルビーも、すぐ気づいたもの……女には、分かるわ……それで私、あなたによ、欲情して……は、母親……失格、ね……」
「確かに母親失格だな。でも安心してくれ」
最後に力を入れて子宮をぐじゃりと潰し、ミヤコさんを完全に屈服させた。トドメの一撃にぶるぶると震えて気をやる寸前のミヤコさんにそっと囁く。
「これからは母親ではなく、俺にとって都合の良い女として生きていけ。あの女と同じように家畜同然の待遇になるけど、別に良いよな?」
「…………は、い……♡♡♡」
しばらくしてから、俺は下腹部に埋めていた拳を引き抜く。とっくのとうに気を飛ばしていたミヤコさんは倒れそうになるが、首を掴んで壁に抑えつけてそれは防いだ。
「新しい家畜をゲットだな」
前の家畜はいきなり警察に連行されて出荷されてしまったからな。代わりを早めに手に入れられて良かった。
「あ…………」
下腹部への圧迫が無くなったからか、ミヤコさんは音を立てて失禁し始めた。白目を剥いて口から泡を吹き失禁しているものの、その表情は明らかに多幸感に満ちている。
慈愛と凛々しさを持ち合わせるも、どこか影のある暗い美女。それがミヤコさんなのだが、今の彼女は普段の姿からはまるで想像もつかないほどにまで壊されていた。そしてそれを為したのが俺だということに暗い悦びを覚える。
「もう復讐相手はいない。好きに生きて、良いよな?」
?「したい事をするのが人生でしょ! 何もできないまま終わる人生だってあるんだよ。悔いなくかわいい妹を襲っちゃおうよ、お兄ちゃん!」
アクア→復讐相手がいないと勘違いして無気力モード。ただ色々あったので原作よりも捻じ曲がった性格。有名女監督の作品でやたら贔屓されて世間からの知名度が爆上がりした。最新の主役級のキャラを演じた作品が大ヒットして興行収入30億円を記録した。ちなみにサド。
ルビー→最近お兄ちゃんがかっこいい。見ていると何故か胸がドキドキして股が濡れる。ちなみにマゾ。
ミヤコ→有名女監督の家の窓から情事を覗き見た。夜には女に自己投影して腹パンオナニーをしていた。ちなみにマゾ。
有馬かな→アクアの活躍を最近とうとう耳にした。そこまで出世してすごいと思っている。映画館で見たアクアは昔よりずっとかっこよくなっていて毎晩思い出しては発情してオナニーをしている。ちなみにマゾ。
有名女監督→黒髪ロングメガネの真面目系監督。とんでもない売れっ子だったが魅惑的なショタに釣られて破滅。ショタコンではなくたまたまご主人様になって欲しい人がショタだっただけ。捨てられそうになって心中をしようと企んでいた。ちなみにマゾ。