【書籍化&コミカライズ】魔法女学園の売店ではたらく俺は、異世界から召喚された『ハーレム奴隷』です。 作:タイフーンの目
「待ってください!」
水泳の授業(ラミア姉妹とのセックス)を終え、さっさと着衣を済ませた俺は、校舎に戻っていくジュリ先生の背中に追いついた。
ジュリ先生は、全身甲冑のせいで俺の声に気づくのがワンテンポ遅れる。
「……はい?」
ようやくこちらを向いてくれたのは、俺が隣に並んでからだ。
「何かご用でしょうか?」
相変わらず、露出しているのは目元だけ。それも露出と呼んでいいものかどうか。
メガネをしていて、そのレンズも汗と熱気で曇っているのだから。
水泳の授業中も、先生は律儀に生徒たちを見守っていた。炎天下に全身甲冑。暑くないわけがない。
鎧の中は魔術を使って冷やしているらしいが、それも焼け石に水だろう。
「事情は分かりませんけど、そんな無理しなくても」
「――いえ。いかなるときも職務は全うします」
誰かに強制させられているふうはない。
どうやら鎧を着込んでいるのも自分の意思で、水泳の授業への参加も、彼女自身が決めてことのようだ。
「それで、何かご用があったのでは?」
「それは……いや、ジュリ先生と歩きたいなと思って」
ジュリ先生にいくら体力があっても、これじゃいつ倒れてもおかしくない。
せめて校舎に着くまでは近くに控えておいたほうがいいだろう。
「お気持ちは嬉しいですが、私は1人で――……、あ……」
言ったそばから、ジュリ先生の脚がもつれ、フラフラと倒れそうになる。
「先生!? 大丈夫ですか――って熱ッ!?」
支えた拍子に触れた甲冑は、熱されたフライパンのように高温だった。
これ、中はサウナどころじゃないだろ?
「も、問題ありま……せ……」
「あるでしょう!」
こういうときの浮遊魔術。
甲冑を含めたジュリ先生の重量はかなりのモノになっているが、その重さを軽減してやれば俺の筋力でも抱えて運ぶことができる。
鎧が熱いなんて言ってられない。
校舎に駆け込み、保健室へと向かう。
が、その途中で。
「おい」
校舎からひょっこり顔を出した学園長ちゃんに呼び止められた。
「こっちじゃ。こっちに連れてこい」
「……? はい!」
狐幼女の学園長に手招きされて、校舎の中へ入る。
性行為実習室のひとつだ。
ここならベッドもある。アツアツになったジュリ先生を横たえる。
「少し下がっておれ」
学園長ちゃんが扇子を広げ、ジュリ先生のことを仰ぐと、離れた俺のところまでヒンヤリとした空気が届いた。
空冷の魔術を使いながら、テレジア学園長はぼやく。
「まったく。こやつも強情じゃ」
「ジュリ先生、どうしてこんな格好してるんですか?」
「それは妾の口からは言えん」
「プライベートな問題?」
「まあな。……じゃが、一歩間違えば世界を滅ぼしかねん問題じゃから、こうして結界を施した鎧を貸し与えておるんじゃがな」
「へえ、なるほど……、えっ?」
世界を滅ぼすかもしれない? なにが? ジュリ先生が?
「お、気づいたようじゃな」
ガシャガシャと音を立ててジュリ先生が身じろぎする。
「まだ起きるでない。そのままでおれ。急に動くとまた倒れるぞ」
「……私は、倒れたのですか?」
「リュータが運んで来てくれたわい」
「それは……すみませんでした」
「なあに、気にするでない。当然のことをしたまでじゃ」
何で学園長ちゃんが俺の代わりに答えているのかは分からないが。
「……学園長。リュータ先生には、私のことを話しておこうかと……」
「よいのか?」
「何度もお世話になってしまっていますし……最後かもしれませんし」
「ふむ――」
学園長ちゃんは思慮深げにうなずいてから、
「見せる、ということじゃな? そちが決めたことなら良いじゃろう」
「もし何かあったときにはお願いします……」
「分かっておる。皆まで言うな」
不穏な言葉ばかりが飛び交って、2人のあいだで話が進んでしまっているが、俺にはさっぱりだ。
「ご覧ください、リュータ先生……」
いくらか体調が落ち着いたのか、ジュリ先生はゆっくり立ち上がると、鎧を脱ぎ始めた。
鎧の下には鎖帷子……ではなく、黒いゴムスーツを着込んでいた。ライダースーツとウェットスーツを掛け合わせたような格好。
頭からつま先までをピチピチに包み込んだ、かなりキツそうな密着感。鎧を脱いでも、肌が露出するのは目元だけ。
……こんなものまで着ていたら、そりゃあいくら対策しても熱中症になるはずだ。
「ん――、ふぅッ……」
顔のところから下腹部までは、1本のジッパーが通っている。ジュリ先生はその頑丈そうなジッパーを下ろし、少しずつ、スーツを下ろしていく。
「は、あッ……んんッ」
密着したスーツを脱ぐために身をよじって、艶めかしい声を漏らすジュリ先生。
束ねられた長い濡れ髪。肌は火照りきっている。そばにいるだけで蒸せ返りそうなほどの、甘ったるい汗と肌の臭いだ。
ゴムスーツの下には何も着用していない。
普段は肌を隠しがちなジュリ先生の裸なんてもちろん初めて見る――二十代半ばで、この学園の教師なのに、男を知らない無垢な肌。
「うおっ……」
そして、思わず感嘆の声が漏れるほどの圧巻のバスト。狭苦しいゴムスーツから解放されると、どたぷんっと揺れて汗の雫をまき散らす。
プルプルと美味しそうな乳首。そのすぐそばには、控えめなホクロ。
「ん、くッ……ご、ご覧ください……」
悩ましげな声を上げつつ、ジッパーをさらに下へと。
胸とは違って、下半身には薄紫色の下着をつけていた。
ただしそれは、特殊な下着――
ガーターベルトにも似た形をした、複雑な構造のものが、へその辺りから下腹部までを覆っている。
「あれは貞操帯じゃよ。一種の、な」
学園長ちゃんが説明する。
「布ではあるが、その辺の金属などよりよっぽど強固じゃ。妾が貸し与えた鎧などは、アレの補助に過ぎん」
「貞操帯って……誰が」
「――私自身です」
ジュリ先生は熱っぽい瞳でこちらを見つめて、それから自身の下腹部へと視線を落とす。
「コレの魔力を封印しなければ危険なので……私がこの貞操帯を製作したのです。……学園長。いきます」
「うむ」
ここにきて学園長ちゃんの声も固くなる。どうやら、彼女ですら注意を払わねばならないものが、これから明かされるらしい。
――パキン
と、何か金属が折れるような音。下着――貞操帯に金属類は使われていないから、これは何かの魔術が解けた音なのだろう。
するりと落ちる貞操帯。
そして露わになったジュリ先生の腹部には、複雑な模様が施されていた。ぼんやりと妖しげに光る、逆三角形の紋章。
「うッ、……くっ……♡」
うっすらと点滅するその光に併せて、ジュリ先生は下唇を噛んで苦しげに喘ぐ。
「これって……淫紋?」
「ほう、知っておるのか。意外に勉強熱心じゃの」
「い、いやその」
褒められてしまうと、前世のエッチな知識だなんて言い出せない。
しかしまさか正解とは。
「誰かにこれを?」
「いいや。これも自前じゃよ。生まれつきではないが、確か発症したのは十歳のころじゃったかの?」
「――は、はいっ……ん、ぅ……♡ ある日、急に下腹部が疼き出して……見ると、この淫紋が浮かび上がってきていました……」
俺に向けて、ジュリ先生が語ってくれた。
ヒト族であり、名家の生まれであるジュリ先生は、それまでは普通の女の子として育っていたそうだ。将来は学校に通い、性行為実習を受け、立派な淑女となることを夢見る……そんな少女。
しかし、この淫紋が刻まれてからというもの、その夢をあきらめざるを得なくなったらしい。
「私の淫紋は強力すぎたのです……性的接触を持った相手に、身も心も絶対服従してしまうという……そのような危険な代物であることが判明して」
「絶対服従……」
「ジュリのご母堂は高名な魔術士、賢者とも呼ばれておっての。しかし、彼女の手にも負えぬほどの強力な淫紋じゃった。ゆえに、ご母堂は妾に相談を持ちかけてきた」
ジュリ先生はそれから、短期間だけ学園長ちゃんに預けられていたらしい。
「さすがの妾でも、この淫紋を除去してやることはできんかった。淫紋の魔力が外部に漏れてしまわぬよう押しとどめる――そんな対症療法しかできんかったのじゃ」
ジュリ先生は学園長ちゃんの下で、結界魔術を学び、自身に才能があった縫製魔術をミックスさせて先ほどの貞操帯を完成させた。
「それでどうにか普通の生活は送れるようになったのですが……時折、こうして発作のように淫紋が疼いて……下腹部が勝手に、他者との性的接触を求め出すのです……それはもう、鮮烈な快感を伴って……んっ!? ンンンッッ……♡」
ビクビクっと痙攣して、ジュリ先生は軽くアクメする。
「ハァっ、はぁっ……ッ♡ ですが、欲望のままに性行為に耽ってしまえば、その相手にも迷惑がかかります――それで、夢だった性行為実習への参加もあきらめて……んんッ♡」
「淫紋付きの体で性行為実習に及べば、『性奴隷の奴隷』になってしまうからの」
――セックス相手と、お互い望もうが望むまいが離れられない関係になってしまう。
俺も似たような境遇だが、俺の場合は相手がラビだからむしろ幸運の極みだったわけで。
そうか。
貞操帯はまさしく自分の身を守る鎧でもあったわけか。もしも誰かに無理矢理犯されでもしようものなら、その相手に服従し続けなければならない。
ようやく、この淫紋の恐ろしさがわかってきた気がする。
「ジュリの場合、厄介なのはそれだけではなかったのじゃ」
「え? それってどういう――」
「……文献をあさったところ、これは古代の魔王が開発した淫紋と同様のモノでな。ひとたび発動すると、周囲の他者も巻き込んでしまい、世界を滅ぼす」
「巻き込むと、どうなるんですか?」
学園長ちゃんは、うむ、と頷いて、
「ジュリが性行為に及んだ瞬間、この凶悪な淫紋は本格的に発動を始める。以後、ジュリは『あるじ』に逆らうことはできなくなり、性行為中であろうとそうでなかろうと、そやつのいいなりに成り果てる」
発動状態にある淫紋は、見境なく周囲にその触手を伸ばし始める――魔力の触手を。
「そうすると、近くにいた他の者にも、同様の紋が刻まれる。そしてその者は『ジュリの奴隷』になり、同じように性行為への渇望がわき上がる――それを繰り返すのじゃ」
「淫紋が……拡大しつづける?」
「そしてその頂点には、ジュリの最初の性交相手が君臨することになる、というワケじゃ。淫紋が世界中に拡大しきってしまえば――」
世界中の人間を意のままに操れる。
魔王の誕生だ。
淫紋が勝手に発動してしまう以上、最初の相手が善人なら良い、という話でもない。誰も彼もが自由意志を失ってしまうようなことは、許容できる事態ではないだろう。
「そんな事態だけは、避けなければいけません……それは分かっていたのですが、でも私は、憧れだった性行為実習を諦めきることができなくて……せめて、私以外の女性にはその素晴らしさを知ってもらいたいと思うようになり――学園長に、この学園で働かせてもらうようお願いしたのです……」
ジュリ先生は言う。
「淫紋は、『発動したい』と疼くのをやめず、しかも月日を経るごとにそれは激しくなってきました……ですから、本当に発動しそうになったら、容赦なく私を追い出して欲しいと――そのように併せてお願いもしていました。……そしてどうやら、その時が来てしまってようです……」
「え――」
「この数日間、疼きが治まることはありませんでした。むしろ強くなるばかり……もう私は、コレを押さえられそうにありません。ですから、この学園を去ります……」
ジュリ先生は両手で下腹部を覆うようにして、
「ありがとうございました、学園長。そしてリュータ先生……貴方のおかげで、最高の性行為実習を生徒たちに与えることができました。どうか、これからも彼女たちのことをよろしくお願いします――」
苦しそうにしながらも優しく微笑み、ジュリ先生は目を潤ませた。
■ ■ ■
「そんな……ジュリ先生が……」
自宅で俺が打ち明けると、ラビはショックを受けて絶句してしまった。
ジュリ先生は生徒たちには一切説明せずに学園を去るつもりらしい。
だから、本当ならラビにも秘密にしておかなければならないのだが。
でも俺は、彼女には伝えなければならなかった。
とある提案を持ちかけるために。
「ラビ、お願いがあるんだ。協力して欲しい」