【書籍化&コミカライズ】魔法女学園の売店ではたらく俺は、異世界から召喚された『ハーレム奴隷』です。 作:タイフーンの目
ラビが学園長との交渉で成果を得たその日――俺が奴隷小屋を去ることが決まったその日のうちに、事態はさらに動いていた。学園長が決定を下したその日に、恐るべきことが起きていたのだ。
なんと。
「じゃじゃーん!! ここがおぬしらの、愛の巣じゃ!」
さも楽しげな、キツネ獣人のテレジア学園長ちゃん。
まさかまさか。
半日も掛からずに俺たちの新居は出来上がっていた。
「……ここって」
俺は、隣のラビとそろって顔を引きつらせる。
「そう、
新居が建てられたのは、学園の中庭。
もっとも、中庭というよりは庭園といった風情のロケーションで、確かに校舎には囲まれているのだが、俺の住んでいた国のそれとは比べられない広さだ。
その庭園のど真ん中で、1限目の終わり頃から工事が始まり、終礼の時間には見事な2階建ての立派な一軒家が完成していた。
「色とりどりの花が咲き乱れるエントランス! もちろん、風呂トイレは別! 使いやすいシステムキッチンに、何より目玉は豪華なラブラブベッド(各種機能付き)! ……まあまだ突貫工事でなんとか完成させただけじゃから、これから更に面白く淫らな機能もぞくぞくと追加していく予定じゃ! 安心せい!!!!」
「あ、安心せいって……」
外観も、絵本にでも出てきそうな可愛らしいものだ。奴隷小屋とは、比べようにも比べられないレベルで快適そうな家。
「不満はなかろう? ここなら寮からは離れておる。通勤・通学も楽々じゃ。なんなら、登校直前まで2人で『魔力交換』とやらに励んでおってもかまわんぞ? 休み時間に2人でふけこんでもいいしのぅ……ふっふっふ」
「……」
この人を敵に回すと面倒くさいことになるんだと、このとき痛感した。ありがたいのはありがたいんだけどな……。
「家事は2人で仲良く分担してもよし。……うむ、そうじゃな。1年生に手伝わせてもよいかの。持ち回りで。『日替わりメイドは1年生! ~ご主人様の奴隷ちんぽは私がメンテします♡~』 じゃ!!」
「俺は奴隷なのかご主人様なのか……」
「衣装はリュータの好きなデザインにしてよいぞ? どんなリクエストでも構わん。……のう、ジュリ?」
立ち会っていたジュリ先生に水を向けると、眼鏡の女教師は淡々とうなずいて、
「メイド衣装はもちろん、下着からカチューシャ、パンプスまで。お好みのものを繕いましょう」
「ジュリは縫製魔術の達人じゃからな! おぬしらも、夜を盛り上げるために欲しい衣装などがあれば、どんどん頼むがよい! なんといってもこれは、『この学園にとって大事な性奴隷を守るため』の行いじゃからな! 妾は、なんでもしてやろう!!!!!!」
「「……………………」」
こうして、俺とラビの同居生活は始まった。
■ ■ ■
「なんだか、すみません……変なことになっちゃって」
その夜。
学生寮から荷物を移されたラビは、新居のリビングでぽつりとつぶやいた。
すでにお風呂は済ませてあり(別々に)、彼女はパジャマ姿。俺も、リクエストしていた部屋着姿だ。前世で着ていたようなものがいいから――とジュリ先生に依頼すると、あっというまに製作してくれた。着心地もバツグン。魔術ってすげー。
魔術といえば――
「あ。じゃあそこに座ってください。乾かしますね」
風呂からあがったばかりの俺をリビングの床に座らせ、ラビはその背後で膝立ちになる。
濡れた髪を、ラビが風の魔術で乾かしてくれるというのだ。
「いきますよー」
「うぉっ?! おー、気持ちいい気持ちいい」
ラビの両手から、乾燥した温風が発生する。その手で彼女は俺の髪の毛を梳(す)いて、手早く乾かしていく。手の平からだけでなく指からも温風が出るので、とても効率がいい。そして温度も風量もちょうどいい。
「……なんか、毛繕いされてる気分だな」
なされるがままに頭を撫でられて、軽くマッサージまでしてくれる。
「ヤな気分ですか?」
「いいや、最高の気分」
「それは良かったです」
風の魔術によるドライヤーは、あっという間に仕事を終えた。
「はい、おしまいです。男の人はいいですね、短いからすぐ乾きます」
言って、ラビはソファに座り直す。心地よい時間がすぐに終わってしまったのは少し残念だったが、俺も礼を言って彼女の隣に座る。
校内にある住居なので、夜はしんと静かだ。
さすがにテレビやネットはないのでちょっと寂しい雰囲気はあるが、どこか別荘にでも泊まりに来たのだと思えば、これはこれで趣がある。
「快適すぎるよな、この家」
「こんな贅沢なおうち、私も初めてです」
「ハリキリ過ぎだな、あの学園長……」
「【遠視(とおみ)】の魔術でリュータさんが居た世界をのぞき見して、なるべく近い雰囲気であつらえたんだと、ジュリ先生が言ってました」
パない。
異世界の魔術と学園長の行動力がハンパない。
「あの、それで……さっきもお話したとおり……」
「分かってるって。まだ発情モードになりやすいんだもんな」
「はい……」
せっかくの初夜なのだが、今夜は別々に寝ることにした。
遠慮するラビを説得してベッドルームで眠ることにさせて、俺はこのリビングのカーペットで眠る。ソファは2人掛けのカップルソファなので、床のほうが寝心地がいいだろうとの判断だ。これでも、昨夜の奴隷小屋よりずっとマシだ。
理由はひとつ。
ラビの発情を抑えるためだ。
あの状態になったラビは、理性が働かなくなってしまう。孕みたいという本能のままに俺を襲ってしまう。前回のように俺が断って事が収まるのならまだいいが、首輪の魔法を本格的に使われると、どれだけ抵抗しようと無駄だ。
したい気持ちは山々なんだが……。
横目で盗み見るラビのパジャマ姿。
何度見ても愛らしい横顔。シルク生地の長袖パジャマ。湯上がりの肌からはほのかに石鹸の香りが漂ってきて――
って、こんなお決まりの状況で『おあずけ』とか。天国だけど地獄だな。
とはいえ。
俺たちが我慢するのには、別の理由もあった。
「……明日、3限目ですね。性行為実習」
「そうだな――」
さまざまな身体検査の結果、『超優良』との評価を下された俺は、明日初めての性行為実習に臨む。俺にとっての『初めて』というだけでなく、この学園にとっても、そして生徒たちにとても『初めて』だ。
そしてその初めての相手が――
「……あはは、緊張しますね」
ラビだ。
召喚主として、彼女はこの学園で初めての性行為実習を行う生徒として選ばれた。
「手順は聞きましたか?」
「ジュリ先生から。――教室で、他の生徒に観察されながら2人でするんだよな」
「はい……」
生徒たちにとって、初めて生で見る性行為。
まず初回の実習では、生徒と性奴隷が一対一で性行為を行って、他の生徒はその様子を見学するというカリキュラムになっているらしい。
衆人環視の中でのセックスなんて――
「ラビ、大丈夫か?」
「もちろんです。本当なら、1年生のときにやるべきことですから……遅いくらいです」
この授業は、処女がするから意味があるのだという。初めてのとき、どんなふうになってしまうのか。それをまず1人が身をもって示してみせ、他の生徒はそれを参考に次回からの実習に活かす。
確かに効率的かもしれない――と納得してしまうあたり、俺もこの世界の常識に染まりつつあるようだった。
それはともかくとして。
その『処女喪失実習』の前にプライベートでラビの処女を奪ってしまうわけにはいかない、というのが俺たちの事情なのだ。
ああ、でもしたい!
ラビと一夜を過ごすのに! おあずけなんて!!!
……くそ、あの学園長ちゃんめ。まさか、こういう葛藤があることを承知のうえで、今日のうちにこの家を建てたんじゃないだろうな? そうだとしたら相当なドSだぜ……。
「やっぱり、私がリビングで寝ますよ? 私の体格ならソファでも大丈夫ですし」
しきりに遠慮するラビを寝室に追い立てて、リビングの【水晶灯】を消灯し、俺はカーペットの床で眠りに就いた。
……このあと、ラビが隣の寝室でどんなことになっていたのかも知らずに。