【書籍化&コミカライズ】魔法女学園の売店ではたらく俺は、異世界から召喚された『ハーレム奴隷』です。 作:タイフーンの目
「ローション……ぬるぬる、ネバネバ?」
放課後の錬金術教室で、1年生のマキノは首をかしげた。
「それって、スライムみたいな?」「たぶんそう……だと思う」
同級生のエリーゼが自信なさげにうなずく。
2人は錬金術部の友人だ。
マキノは、エリーゼが前夜に受けたというマッサージの話を聞いているところだった。
性奴隷のリュータとの甘い時間。最高のマッサージ。羨ましいことこの上ない体験談だった。
そして話は、リュータが『ローション』を欲していたというくだりに差し掛かったところだった。
「スライムを造るって、かなり高度な錬金術になるね」
「……うん。でも」
「それがあると、もっと凄く気持ち良くなれるんだ……」
「…………、うん」
エリーゼは頬を染めて目を伏せる。 彼女が体験したオイルマッサージとは別の、とても気持ちのいいマッサージ。
そのことを思い描くと、マキノもぼうっと火照ってくる。
(先生のマッサージ……ぬるぬるで、ネバネバで……い、いいなぁ☆)
部室には2人だけ。
錬金術部はもとから不人気な部活だ。先輩もほとんど幽霊部員。
小難しい理論の多い科目なので、授業以外でも錬金術を学ぼう、と考える生徒はごくわずか。
みんな、錬金術の有用性は認めているものの、自分で勉強するのは苦手。この学園は貴族のお嬢様などが多いこともあって、やはり趣味系の部活のほうが人気があるのだ。
その中にあって、マキノもエリーゼも、もとから研究者の血筋。
入学してすぐに意気投合し、2人そろってこの錬金術部の門戸を叩いたのだった。
「スライム族じゃなくて、普通のスライムのほうでいいんだよね?」
「うん。野生のスライム……みたいな感じだと思う。体に塗りつけるって言ってたし」
「生き物を造るのは禁忌だもんね」
「あれ? 植物までならセーフじゃなかった? スライムってギリギリ植物って聞いたことあるけど」
「それはアルゴ派の学説だよね。最近の論文だと――」
準備室などで使えそうな素材を探しながら、理系女子たちの議論は加熱していく。
「樹液とか、海藻の粘性成分を使えばヌルヌルネバネバはすぐに――あ、これ使えそうだよ。在庫も多いし。……でも、気持ち良くなるってことは媚薬の要素も必要なのかな?」
「媚薬じゃなくても、魔力の流れを促進できれば快感は得られるかも」
「じゃあ魔素を練り込んで定着させたら――ああ、無理かぁ。すぐ魔素が逃げてっちゃう……難しいね」
「先生に聞いてみる?」
マキノは、錬金術部の顧問のことを思い浮かべる。
「あ、今日は出張だって」
「出張? 学園外に出られるの?」
「学園長先生だけは定期報告でお城に行くんだって。先生はそのお付き」
「そっか、じゃあ……」
他に、錬金術のことで相談できそうな先生といえば――
■ ■ ■
「な、なんでふか!? んぐんぐっ! い、いくら可愛い生徒でも、このプリンはあげられませんよっ?」
マキノたちが保健室をたずねて行くと、養護教諭のミリアはおやつの真っ最中だった。
ヒト族の教師。
フレンドリーな人柄で、見た目も生徒に近く、なんならマキノたちより背も低い。
ただ、いわゆる『ロリ巨乳』と呼ばれる体型で、サマーセーターに包まれた胸の膨らみは十分すぎるほどに大人の女性だった。
気軽に相談しやすい相手なのだが――プリンの事となると、異常なまでの執着を見せるところがある。
今も、手にしていたプリンの皿をマキノたちから遠ざけるようにして、ガルルル……と低くうなっている。
「いえ、あの、錬金術のことで」
「……! なぁんだ、早く言ってくださいよ。人騒がせなんですから」
こんな調子だが、彼女の知識や技術は確かだ。
治療や検査のために各種薬品を扱うことがあり、ミリアは錬金術にも詳しい。
性奴隷リュータの身体検査にあたっても、錬金術部はいくらか協力することがあって、だからマキノたちはミリアともよく交流がある。
経緯を説明すると、
「ふーむ……人造スライムですかぁ……ローション……いいかもしれませんねぇ」
真面目な顔になってうなずく。
「お2人の着眼点もナイスですよ」
「私たちの?」
「ええ、魔素を練り込むという点です。魔力の流れというのは、実は性行為では大事なことなんです。体内で魔力を循環させることで快感も増しますし……何より、いざ子宮の結界を外したあとにも役立ちます」
「妊娠したいとき……ですか?」
マキノとエリーゼは顔を見合わせる。
「そうですよ。精子をしっかりと捕らえるために必要です。かなり高等技術なので、3年生の2学期で学ぶような内容ですが――さすがはリュータ先生ですね。出張マッサージでそんなことまで伝授していくとは」
「へえ……! じゃあエリーゼって」
「一足先にその一部を体験させてもらった、ってことですね」
「そ、そんな……」
2人から注目を浴びてエリーゼは照れて小さくなる。
「人造スライム――ローションに魔素を練り込んでマッサージに用いれば、魔力の流れをより体感しやすくなるでしょう。……いい試みです! 私もお手伝いしましょう!」
ミリアは立ち上がり、鍵の掛かった薬品棚を開けると、中から小さな瓶を取りだしてきた。
親指ほどのサイズのガラス瓶だ。コルクで栓がされてある。中には液体。
「……キラキラ、光ってる?」
「これはリュータ先生の魔力から抽出した、魔素です」
通常、魔力の源である『魔素』は不定形で、特殊な液体に溶かすことで保存が可能だ。
しかし、その状態では何の力も発揮できないので、こんな風に綺麗に発光することはない。
「規格外の魔力……なんですね、やっぱり」
「そういうことです。身体検査のときに合意を得て抽出してもらったものなんですが……これを使ってみましょう」
「でも貴重なんじゃないですか?」
魔素を取り出し保存する行程――その面倒さを考えると、申し訳なくもなる。
「これも性行為実習のためです! やっちゃいましょう!……まずは、プリンを食べてから!」
■ ■ ■
錬金術教室に戻って、マキノたちはミリアに試作品を紹介した。
「ほうほう、いい感じですねぇ……」
ビーカーに入った、ゼリー状の試作品。
つつくと弾力があって、指ですくうとドロリと液状になって、さらに指の腹で擦り合わせるとネバネバした触感になる。
指を離すと――
ネチャァっ……と、なんだかいやらしく糸を引く。
「これをリュータ先生の手で、あんなところやこんなところに塗り広げられて……」
「き、気持ち良さそうですよね……☆」
感触についてはエリーゼのこだわりを多く採用している。マッサージ体験者としての実感を受けて、粘り気などを調整したのだ。
「改良点はありそうですか?」
「そうですねぇ、あとは美容効果の高い素材も入れちゃいましょう。……これを使うのは生徒の皆さん……そして、あわよくば教師陣。お肌にいいものは大ヒット間違いなしです! えーと、アレとコレと、アレも入れて……びゃーっと混ぜて、それから匂いも重要ですね。フローラルな……いえ、その時々で自在に変えられるように? であればカメレオン草の効果も――」
再現は難しそうなレシピだが、改良された人造スライムローションは、確かにさっきよりも上質なものに出来上がった。
「さて! ではいよいよこちらの出番ですね!」
リュータの魔素が入ったガラス瓶を掲げるミリア。
マキノとエリーゼの期待も高まってきた。
「いきますよー……」
キラキラと綺麗な魔素の液体がビーカーに注がれる。
人造スライムローションは、すぅっと魔素を吸収して――
――プルンっ
「う、動いた!?」
「あっ、でも一瞬だけ……」
「ふむふむ、魔素が混ざったことによる反応でしょうか? 初めて見る現象ですね……」
しばらく3人は凝視するが、それ以外に目立った反応はなかった。
匂い、手触りにも変化はない。
「これって上手くいったんでしょうか?」
マキノはたずねる。果たして、性感マッサージ向けのスライムローションになったのか……。
「そうですねぇ。まだ魔素を含んだとはいえ、活性化には至っていないようです。少し寝かせてみましょうか。あさってには錬金術の先生も帰ってくることですし。……『封印庫』に入れておきましょう」
封印庫とは、危険な薬品などを収めておく専用の棚だ。
「準備室の奥のやつでいいですか?」
「いいえ。個別に入れておきましょう。これは貴重なものですし、他の薬品と反応でも起こしたら大変ですからね」
ノリは軽めなミリアだが、こういうところはさすがに教師だ。マキノは、言われた通りに、他の薬品が入っていない封印庫を案内する。
小型の金庫に似た形状。
その中へビーカーを大事に仕舞って、しっかりと鍵を掛ける。
ミリアも指差しして封印庫をよく確認してから、
「ヨシ! これで大丈夫ですね! 実用化が楽しみです!」
その大きな胸を張って喜んだ。